第4話 楽園から外の世界へ
あれから2週間が経過した。
俺はリハビリの甲斐あって無事、今まで通りの生活を送れるようになったが―――――
俺はここを退院すると、何もできなくなってしまう......
俺はこの2週間病院の人に甘えてばかりだった。綺麗な看護師さんにたくさんお世話してもらったりもした。うん、あれはいい経験だったよ......
だが俺もこの2週間何もしていなかったわけではない。レイン様と一緒にこのフォルトゥーナの文字を覚える練習をしていた。いつもの俺ならめんどくさくてすぐに投げ出していただろう。でも、今回は別だ。何故なら、この世界の文字を覚えないと後々めんどくさくなるからだ。まだ半分ぐらいしか覚えてないけど......
文字の練習はとても大変だったけど、おかげで収穫もあった。文字の練習の時に前よりも詳しくレイン様にフォルトゥーナのいろんなことを聞くことが出来たからだ。そして、驚くことがわかった。
その1つが、このフォルトゥーナには、俺がもといた世界に似た歴史や神話、伝説が残っているということ。少し話の内容は違うらしいが......
そして2つ目がその伝説の英雄達が現実にいて、生活しているという。これには俺もびっくりして思わず笑ってしまった。
そして今ーーーーーーー
俺はとても危険な状態だ。
そう、病院から強制退院をされそうなのだ。
この1週間はなんとか誤魔化すことが出来たが、そろそろ俺の誤魔化しも効かなくなってきた。
「椎名さん、身体の具合はどうですか?」
医院長が突然俺の病室に入ってきた。
「は...はい。なんとか大丈夫です」
「それではもう退院ですね?」
俺はまた誤魔化そうかと思ったがーーーーー
「はい。退院します。今までありがとうございました」
これ以上病院に居座ると病院側にも悪いので、俺は諦めた。
「ではお大事に。またどこか痛めたら来てくださいね」
「はい」
そうして俺はーーーーーーーー
お金なし
住む所なし
食べ物なし
一文無しになってしまった........
俺は渋々病院を後にした。
そして、2週間病院に引きこもっていた俺の目の前に現れたのは異世界の市場だった。そこには種族の垣根を越えて、いろんな種族が存在した。普通の人間やあ人族、エルフに獣人族など様々だ。
そんな夢のような光景に俺は少し感動に浸ってしまっていた。
だが流暢な事を言っている暇はない。
これから俺は一体どうすれば......
俺は仕方なく市場を散策することにした。
すると、俺が見覚えがある言葉が目に入ってきた。
そこには、「人手が足りないので人員募集」と書いてあったのだ。
俺は今後お金がなくなり、辛いと思いをするのは嫌なので、バイトのことを考えていた。
だからレイン様との勉強の時に、人員募集や人手不足などのバイトに繋がる文字をちゃんと覚えていたのが正解だったな。
「よっしゃぁぁぁぁぁ!!!これでお金の心配はなくなったぜ!!!」
俺は大声で言ってしまったので、周りの人に”あの年齢でお金がない可哀想な子”という感じの目を向けられたのでちょっと恥ずかしくなってしまった。
だが俺は気持ちを切り替えて、そのチラシをもとにバイト先に向かうのであった。
そのバイト先には、俺の人生の歯車を狂わせる人物に会うとも知らずに......