第3話 異世界フォルトゥーナ
目が覚めると、見知らぬ白い天井が目の前にあった。俺は、最初何があったのか思い出すことが出来なかった。
数分後――――
俺はなぜここにいるのかを思い出した。
「そっか〜俺は異世界転生した途端上空から落ちたんだったな。ちょっと待てよ......あんな高さから落ちたのに死んでないってことはレイン様の魔法が間に合ったってことか!!!よかった〜間に合って」
その時、俺のベットの脇から「大丈夫ですか?」と声が聞こえてきた。
俺がその方向を向くとレイン様が水晶を通して俺に話しかけてきた。
「本当にあの時はすみませんでした!!!私もすっかり椎名さんを異世界に送ったと思っていたら転送する場所を間違えてしまいました......」
(転生させる場所間違えるどころじゃないだろ......)
「もういいですよレイン様。それにしてもレイン様っておっちょこちょいなんですね。それよりも俺はこの世界のことも何も知らないまま来ちゃったんでいろいろ教えてください」
そう。俺はこの世界のことを全く知らない。知った情報といえば、俺がなぜこの世界に来たのかということと、この世界はすべてが運で決まる世界だと言うこと。
「そうでしたね。私ったらまた詳しく説明しないで異世界に人を転生させてしまったわ......」
レイン様はとてもしょんぼりしていた。
「元気出してくださいレイン様!!!それにしても、こっちの世界のことなんにも知らないし、異世界転生したらいきなり病院とかマジで俺って不運ですよね」
俺はまた自分の不運を恨みながら笑った。
「ではこの世界について説明をしますね。ちょっと長くなるかもしれませんがいいですか?」
俺は、どんな話が待っていてもちゃんと聞くことを心に決め、レイン様に”はい”と言った。
「この世界の名はフォルトゥーナ。運ですべてが決まる世界です。フォルトゥーナでは、今から300年前にパグローム戦争というとても大きな戦争がありました。その戦いはすべての種族が戦うほどの戦争でした。それをこの私が治め、今の世界になったのです」
「えっ?......ちょっと待って?......」
今この人なんて言った??
自分が300年も続いた大戦争を終わらせたって言ったの!?
「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!????まっ...まじですか!?」
「はい。ちょっといろいろありましたけどね」
俺はそのいろいろがとても気になって仕方がなかった......
「話を戻しますね。この世界は今、人間などが住む外界、魔族などが住む魔界の2つに分かれています。そして、今悠真さんがいる場所は外界の中でも最も王都に遠いはじまりの街”スタイト”です」
「魔界と外界が一緒にくっついているってことは人族と魔族は共存とかしているんですか?」
すると、レイン様は急に顔を俯かせ、暗い表情になった。
「あの、俺何か悪いことでも言いましたか?」
するとレイン様は顔を上げそんなことないと言っていたが俺はなにか引っかかっていた。
「人間と魔族の関係は最悪です。10年前はそこまで酷くはなかったんですけどね......」
聞かなきゃよかったと俺は少し後悔した。
「なんか話が暗くなってしまいましたね。すみません。ところで、この世界には椎名さんと同じで神器に選ばれた人達がいます。この世界の神話にも残っているほどとても強力な伝説の神器が2つ、そしてその伝説の2つの神器よりは力は低いですが、さらに100個の神器が存在します」
「100人も神器に選ばれた人がいるんですか!?」
俺は予想以上の神器使いの数にとても驚いた。
「はい。さらに、四神と呼ばれる神様がこのフォルトゥーナの均衡を守っているのです」
「なるほど。このフォルトゥーナの状況はよくわかりました。けど、今の俺はこんな状況で身動きもとれないのでとりあえずこの怪我を早く治して外の状況を把握したいと思います」
そう。今の俺は全身を地面に叩きつけられてとても動ける状況ではない。
「本当にすみませんでした!!!では私は悠真さんの神器についてまた調べてきますね。あと、転生する前に椎名さんかけた”恋愛スキル”の効果はまだ完全に発動されていないのでまた今度お教えしますね」
そう言ってレイン様は笑みを浮かべて姿を消していった。
「はぁ......俺はこの世界に来ても結局不運のままなのかぁ......」
病室に一人残された俺は思わずため息をついていた。
だが――――――この時俺は思った。
今この状況はある意味最強なのではないかと。
よくある異世界転生のアニメやラノベだと、主人公がいきなりお金持ちになり、裕福に暮らせることなんてまずない。どっちかというと異世界転生したばかりの頃は自分で汗水流して働き、食べ物や衣服に困ったり、住む場所を見つけるのも大変で生きていくだけでも精一杯のはずだ。
それに対して今の俺の状況はほぼ無敵だ。
何故かって?そんなの決まっている。俺が今いるところが最強の要塞なのだから。
そう。俺は今........
病院という名の楽園にいるのだから!!!
病院なら異世界転生したばかりの主人公が最初に困るであろう「衣食住」が充実しているからだ。
衣食住とは、つまり食べること、着ること、住まうことだ。「衣食住」の基本は、人が生活していく上で必要な、衣(衣服)、食(食事)、住(居住、雨風をしのげる寝場所)の確保だ。この三つを俺は最初から手に入れたのだ。
もう俺最強じゃん。楽勝じゃん、異世界生活。
そんな甘い考えのまま、俺は異世界転生1日目をこのスタイトの病院で過ごした。