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ローズ

 ある時ローズが思い出したようにこう言った。




「フォーン様と一度お話をした事があるのだけれど、本当はどういう方なのかしら」




 ローズに尋ねられて、改めてアイリスはフォーンの事を振り返ってみた。


「どういうって……うーん、見たままだよ?」

「とても美しい方でしょう?成績も優秀だとお聞きしているし、私の学年でも女生徒に人気があって―――あっ」


 ローズが口に手を当てて言葉を切った。


「どうしたの?」

「あの……いえ、アイリスはそういう話、嫌でしょう?」

「え?『フォーンが人気者』って話?ううん、別に?」


 それはアイリスにとっては当り前で、今更の話だった。フォーンは綺麗だし優しいし、努力家で真っすぐで。周囲の人間が彼を好きになるのは当然の事だと思っている。


「そう……」

「どうしたの?」

「皆がアイリスみたいに考えるなら、私も誤解されて悩まされる事も少なくなるのに、と思ったの。ねぇ、フォーン様のこともっと教えてくださらない?」

「フォーンのこと?何故?」


 アイリスは純粋に、何故ローズがフォーンの事を知りたいのかよく分からなかった。するとローズは目を伏せてせつなそうに溜息を吐いた。


「あの方はとても魅力的な方で……女性にもその、とても人気があるでしょう?なのに私と違って女性だけじゃなくて同性の方にも人気があって。その秘訣が何なのか知りたいって思っていたの。そうしたら私も上手く異性の方をあしらえるだろうし、同級の女生徒達にも避けられずに過ごせるかもしれないって」


 いつも明るく、皆の注目の中心にいるローズ。彼女の秘めた悩みを聞いてから、そんな風に落ち込む気持ちを隠して常に明るく振る舞っていることを、アイリスは気の毒に思っていた。だから顎に指を当ててしばし考えこんだ後、こう提案した。


「じゃあフォーンと話してみたら?」

「え?」

「夜会の時にでも。秘訣……があるか分からないけど、ローズ様の悩み事を打ち明けたらアドバイスくらいくれるかも。フォーンって女性よりきれいに見える時もあるけれど、意外と頼りがいがあるのよ」

「そんな……良いのかしら」


 ローズが躊躇っている意味がよく分からなくて、アイリスは純粋に首を傾げる。


「良いって?」


 何となくローズがそれを望んでいるからこそ、アイリスにフォーンの事を尋ねたのだと考えたからだ。彼女の求めに応じて提案したのに、何故今更『良いこと』なのかどうかが気になるのか分からなかった。普段察しが良い筈のローズのそんな様子に疑問符が浮かんだのだ。


「だって、フォーン様はアイリスの婚約者でしょう?皆の前で私が直接話すのはちょっと抵抗があるわ……誤解されるでしょう」

「誤解って?」


 アイリスは本気で分からなくて、ますます首を傾げた。


「私が……アイリス様の婚約者に迫っているって思われたら、ますます周りの女性から反感を買っちゃうわ。だから、いいの。私はアイリスからフォーン様のひととなりを伺えればそれで充分だわ」


 なるほど、とアイリスは思った。


「ああ、じゃあ私の家で会ってみる?ちょうど長期休暇に入るから、フォーンも寮から帰って来る筈だから」


 そう言ったアイリスの提案に、ローズはやや躊躇いを見せたが「それなら」と嬉しそうに頷いたのだった。

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