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転生相手は復讐者(仮題)  作者: ジョセフィーヌ
行き倒れ少女と盗賊狩り
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第26話

 始まりは突然だった。一瞬グラついた俺の視界が突然下がり、身体の操作を失う。そのまま勝手に動き出した身体は、俺が練習しているレベルの剣とも、クレアが見せる流れるような剣とも違う動きをしていた。明らかに力任せで強引、それなのに的確に一撃で敵を薙ぎ倒す戦い方。何が起きたか分からない俺は、クレアの怒声でさらに混乱した


(ショウ!何をした!!力任せにも程があるぞ!)


 この言い方はつまり、今の動きはクレアがしているわけでは無い?考えがまとまらないままに、俺も言い返す。


(知らねえよ!!お前じゃないのか!?)


 言い合う間も身体は止まらない。時には剣、時には蹴り、更にはこれまでに仕留めた相手の武器を奪い取り無造作に叩きつける。グラバイドすら一瞬で押し込むほどの暴力の中で、彼女には笑みが張り付いていた。


「キッ、クカ。アハハハハハハハ!」


 狂ったような笑いと共にをグラバイドに挑み、横槍を入れる盗賊を屠る彼女。


「おいなんだよこれ!急になんなんだよ!!」


 グラバイドの叫びには何も答えず、狂気に飲まれた剣を叩きつける。その暴力的なまでの攻めは、ほんの数秒でグラバイドの身体に傷を付けていく。


「クソッ、『剛斧断』!!」


 振り下ろされる大斧に対し、彼女は斬り上げるように剣を振るい、グラバイドの武技を正面から受け止める。


(嘘だろう!?あの武技は威力強化系の武技のはずだ!)


 クレアの叫びは俺にしか聞こえない。ただ分かるのは、武技で威力を高めた振り下ろしを、今の彼女は片手の剣で受け止めてしまったことだ。


「クソがっ!!こんなバケモンとやり合ってもしょうがねぇ!!ずらかr……」


斬っ。


 グラバイドが叫び終わる前にその首は胴から離れていた。

 一瞬の静寂。怯えた盗賊達は逃げようとするも、それすらも一息に追いつき殺してしまう。圧倒的とも言える力。だが俺は焦燥感に駆られていた。


(このままでいいのか)と。

それはクレアも同じだったらしい


(身体、奪い返すぞ)


(同感だ。この私はめちゃくちゃに過ぎる。返してもらおう)


 俺たちは身体を奪い返しに掛かった。だが勝手をし始めた身体は意外と頑固で、なかなか支配を取り戻せない。普段は専用の空間に入って体を操作するイメージだが、今はその部屋の前に重い蓋を取り付けられたような気がするほどだ。その内に生きた賊は居なくなり、残った1人、ナギナに視線を向けた。彼女はどうやら、俺たちの様子がおかしいのを察して少し距離を取っていたらしい。クレアの身体は彼女を見据え、飛び掛った。



ーーーーーーーーーーーーーーーーー


(なんやねんあれ)


 ウチの中にそんな思いが浮かぶ。さっきまでの慎重に、丁寧に賊と立ち回っていたクレアの姿はない。そこにあるのは真紅の髪をほのかに青く染め、荒々しく剣を振るい、周囲全てを薙ぎ倒す獣のような姿だった。


(あれは何者?ホンマに人間かいな?)


 元々彼女はアンバランスな人間だった。野営の際にウチらは交互に休んでいたけど、ウチは浅い短い眠りが続いてもあまり問題無い。やから寝たふりをして彼女を見よった。

 彼女は日によって色々と違う。一番大きいのは体の動かし方やな。身体能力は扱いきれているのに剣士の技をやり直しているような日、逆に剣や格闘術を複合した動きは出来ているのに微妙に身体に振り回されている日に大別されていた。後は目線やな。技術面が足りん日はよう胸に意識向いとったな。向こうは無意識やったかも知れんけど、意外とバレるもんやで。

 そんな事より今のこいつや。少なくともウチが知っとる範囲の行動やない。ここまで本能的な戦い方が本来のやり口には思えへん。何よりおかしいのは


「く、来るな!炎よ我が前の敵を撃て!ファイアーショット!!」


 半狂乱の賊が撃った魔法。集中が甘いからか威力は無い。それでも目隠しくらいにはなり得た魔法やった。けれどもそれはクレアに届く前に不自然に消えてもうた。まるで構成していた魔力が霧散したかのように………


(いや、ちゃうね。これは……吸われとる!?)


 自分の中にある魔力も、空気中にある魔力も、不自然にクレアに吸われよった。本当に吸ってるなら、取り込んだ魔力が身体の中で暴走しかねないレベルの魔力吸収。普通ならあり得ない現象だが、目の前で起きている以上あり得んと言う訳にもいかん。

 そして賊をことごとく殺した奴は無造作に山賊が持っていた剣を奪い、少しだけ距離を取っていたウチに目を向けた。怪我をしていたはずの左腕はいつのまにか治っている。浮かんでいたのは血生臭く凄惨な、しかし見るもの全てを惹きつけるような魅力的な笑み。こんな時やなかったらウチも見惚れとったけど、命の危機なのに見とれるわけにもいかん。


「今も魔力は減り続けて魔法が使いにくい。なんや分からんけど単純な力も上がっとるっぽいし……。賊に目が向いとる内に逃げとくべきやったなぁ、ホンマ割りに合わん仕事になってもうたわ」


 深く息を吐き、いつでも刀を抜き打ち出来るように構える。そこにあるのは程よい緊張と、言葉とは裏腹な喜び。


(嬉しいなぁ。こんな所でこんな化け物と出会えるなんて良い日や。もしどっちも生きとったら彼女に付いて行こう。)


 全力を出す為にウチは擬態を解く。髪は金髪に、そして狐の耳と7本の尻尾が生える。身体に力がみなぎると同時に、彼女が飛び掛かってきた。



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