第24話
この森はニオ村の時の森と比べて木もまばらで、それなりに明るかった。耳をすませば小鳥の声も聞こえる、平和な森だ。
「ゴブリン達もいないな、この森は」
「おそらく盗賊が魔物を狩っているのではないでしょうか。盗賊にとっては魔物も敵ですから、自衛の為に狩っていても不思議はありません」
そうして調べていくが森はそれなりに深く、数時間程度では拠点は見つけられずに夜になった。その間に見つけた、多少開けた場所で夜営をする。盗賊に見つかる可能性はあるが、暗闇での戦闘を避ける意味で火を点けての夜営になった。
その夜俺が夜番をしていると、ふと気配を感じた。こういう気配を悟る能力はクレアの身体だから出来るのだろう。
(クレア、これはもしかして……?)
(ああ、どこかで見張られてたんだろうな。間違いないだろう)
腰の剣の重みを確認し、寝ているナギナの方を見る。よく見ると彼女は小さく目を開けていた。彼女は寝る時も刀を手放していなかったので、いつでも戦える状態だ。
(こっちから仕掛けるか?)
(ここで待ち続けるなら仕掛けるべきだろうな。ただ深追いだけはするな?暗闇に突っ込むのは危険だからな)
身体強化魔法を小さく唱え、目の前の焚き火から火がついた枝を取る。ナギナの視線が付いて来る。彼女の状態なら出遅れることもないだろう。
振り向き様に気配に向かって枝を投げ、そのまま突撃する!盗賊狩りの始まりだ!
盗賊の装備はあまり良くない。防具は皮の胸当てが精々で、武器も剣や短剣、斧などバラバラだ。
逆側で怒声と金属がぶつかり合う音が聞こえる。ナギナも戦闘を始めたのだろう。
「バレてやがる!囲んで殺せ!!」
男の怒声を聞き流し、目の前に居た短剣持ちを斬りつける。強引に切断した左腕から血が吹き出し、返り血が顔にかかる。なぜかイライラする。
さっき叫んだ盗賊がこのグループのリーダーかそれに近い存在なのだろう。そいつを狙うが周りの盗賊が邪魔をする。
振り下ろされる剣を躱し、隙だらけの身体に突きを入れ、武器を取り落としたところを蹴り飛ばす。盗賊相手とはいえ罪悪感や恐怖が湧かないのは、何故か分からないが好都合だった。
別の盗賊がナイフを突き込んで来るのを、左の籠手で受ける。素早くそいつの顔を掴み、腹を剣で突き刺す。剣に血が付く。その剣に付いた血にイライラが増す。そいつから剣を抜いた時に、
「その女から離れろ!」
と叫ぶ声が聞こえた。見るとさっき大声を出した男とは別の盗賊が大きな水球を作っていた。おそらく水系の魔法だろう。そしてその盗賊の声に合わせて周りの盗賊が離れる。
「撃ち放て!ウォーターボール!!」
声とともに直径50cmはあろうかという水球が発射された。クレアに言われていた通り、魔法は確実に避ける。後ろで太い木が折れた音がする。つまり直撃すればそれ相応の破壊力を受けるのだろう。
俺は倒した盗賊が持っていたナイフを奪い、次の詠唱を始めた魔法使いに投げつけた。その魔法使いがナイフを慌てて避け、詠唱が止まる。投げナイフなんて練習しなかったから適当に投げたが、ビビってくれたからまぁ良いだろう。
このままその魔法使いを潰したかったが、別の盗賊が突っかかって来る。斧を受け止め、強引に弾き返す。そこで気がついたが、そいつは最初に指揮を執っていた男だった。ガタイが良く、腕の太さで言えば俺の2倍以上はありそうだった。
「俺の斧を受け止めるたぁ、良い力してんなぁ?盗賊王グラバイド様が直々にぶっ殺してやるよ!!」
グラバイドと名乗った男は他の盗賊より装備が良いと感じた。胸当ては金属製で、斧も大きく、斬れ味が良さそうだ。
グラバイドの斧をなんとか受け、力を逸らす。反撃しようとするが、別の盗賊が割り込んできて邪魔をする。直々に殺すとか言って別の盗賊が乱入するのは良いのかよ!?割り込んだ盗賊を斬り捨てて叫ぶ。
「おいオッサン!一騎打ちって訳じゃ無いのかよ!?」
「誰が一騎打ちだなんて言ったよ?盗賊の世界は生きてる方が勝ちなのさ!!」
グラバイドが嘯き、斧を振るう。押し込まれるように夜営地まで戻された。そこではナギナが一人で複数の盗賊を斬り捨てていて、辺り一面血の海になっていた。火に照らされた血を見て、何故だかむしゃくしゃする。その怒りをぶつけるように、俺はグラバイドに斬って掛かった。




