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終わりに

  「初めに」の部分でも述べたので繰り返しになるが、アジア・太平洋戦争後、自由闊達な日本古代史研究の結果、実在性が否定された古代天皇の実在論そのものに、いつからか関心を持つようになった。そして大学院に入り、様々な実在論に触れていき、それに関する著作・文献を読み耽った。しかし、読んでいくうちに実在論は、伝承が創作されたものではなく代々語り継がれてきたものであると主張しているのであり、狭い意味での「肉体を持っていた人間」としての実在論には程遠いものであった。そして、実在論そのものの研究は無理であると考え、系譜伝承そのものを研究することに至った。その結論は前章で述べたのでここでは述べない。

 しかしながら私は、主に小論の第四章で多氏系氏族の系譜伝承と春日ワニ氏系氏族の系譜伝承を考察して、今回取り上げた一連の歴代天皇と氏族系譜伝承が代々語り継がれていたものであると論じた。しかしそのことから、歴代天皇の実在と結び付けたいと思うが、それは難しいであろう。何故ならば、伝承の古さと実在性はまた別の問題になるからである。

 このことについて、歴代天皇全員の実在を主張していた日本古代史学者の坂本太郎(26)は、「そこまでくれば、各人の歴史観、ないしその根底を支える人格の問題であって、如何ともするすべはない」と述べていた。

 日本古代史研究には『記紀』より古い史料はないし、これからも製本された書物という意味で『記紀』より古い史料は出てくることはない。それに、批判的精神を以って『記紀』を読み、それらの中の故伝を切り捨て続ける研究者が「『記紀』の史料価値は地に落ちた。『記紀』中心主義から自立しなければならない」と述べても、結局その研究者は『記紀』を読むであろう。日本古代史研究は『記紀』を読まないと始まらないからである。

 なお、今回『姓氏録』の春日ワニ氏系氏族について、「未定雑姓」に該当する「中臣臣」と「猪甘首」の二氏を取り上げなかったのは、本作執筆の際の都合上と『姓氏録』に本貫地がはっきり載っている氏族を優先してしまったで、今回は、取り上げることはできなかった。

 最後に、私は機会があれば、今度こそ「戦後の古代天皇実在論」そのものについて研究したいと思っている。また私は今、星野良作氏が『研究史 神武天皇』という著作を著したように、誰かが『研究史 欠史八代』を著してくれればと切に願っている。


  (26)「古代の帝紀は古代の造作ではない」『古事記と日本書紀 坂本太郎著作集第二巻』

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