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種族 人形 はチートだった  作者: 天漏り
表紙  俺 ト 冥王 ト おじいちゃん ト
4/6

1 冥王と俺とおじいちゃんと そのさん

 冥王は意外にも、気さくで良い奴だった。


「こんな奴が管理する霊界なら、面白い人生が送れそうだな――――・・・」

 こっそりと、虫がしゃべるように呟いた。

 まあ、もう死んでるんだけどね。

 本人に言うのはなんかこっ恥ずかしいし、小さく言ったのだが、冥王は「だろお?」とでも言いいたげに口角を上げている。地獄耳かな?

 

 入界手続きも、あとはサインを書くだけ。

 そんな時だった。



「おーい、冥王よ、聞こえとるかあ?儂じゃ儂。」

「どなた様でしょうか」

 オレオレ詐欺のような口調の、老人の言葉が響いた。

 冥王は、めんどくさい奴に絡まれた、という顔をして、軽く流す。

 しかし、老人は話を聞く気がないようだ。


「実はな、今、娘を破門しちゃったのじゃ。」

「はあ。」

「でもな、子供は欲しいの。」

「へえ。」

「だからな、2号を作るため、魂を1個、送ってくれーい。」

「ハア・・・」

冥王は困っている!どうしますか?

 俺は、成り行きを見守るコマンドを選んだ。


「なんでなんじゃ!儂、通話相手がいないんじゃ」

「ソレハタイヘンデスネー」

「暇なの」

「へーソウナンダー」

冥王は白目をむいている!どうしますか?

 俺は、迷わず成り行きを見守るコマンドを選んだ。


「いいのか?このままじゃ、儂、お前しか話し相手いなくなるぞ?」

「しょうがないですね」

 ピシッ

 そんな効果音が相応しい、冥王の変わり身の瞬間だった。


「望む魂の特徴とかはありますか?」

「そうじゃな、通話だけでなく、旅を覗きたいからな。 楽しそうな旅をするような、面白い奴を頼む!」

 声だけでも、老人の喜々とした様子がわかる。

 なにをするつもりなんだ、こいつら?

 どうでもいいけど、俺の手続きはどうなった?

 そう思い、冥王に目を向けると、入界者リストから該当の魂を探しているようだ。老人の絡みから逃れられるのがそんなに嬉しいのか、という顔をしている。


 決して短くない時間が過ぎた。

「――――だめだ、いねえ。」

 冥王は諦めたのか、老人に報告しようとしている。

―――――――――……ねえ、俺の手続き忘れてるよね?

 そう思ってヤツ(冥王)にちらりと目線を向けた。

 

 その瞬間、冥王は<探し物が突然自分から現れてきてくれた>かのように驚いてから、邪悪とも呼べる笑みを浮かべた。

「わりィが、生贄になってくれ」

 そう呟いた唇を、俺は見逃さなかった。

 

 ヤバい。

 全身から冷たい汗が流れ、悪寒が走る。血管が収斂(しゅうれん)するのが感じられる。

 そうか.

 これが、生命の危機。


「あー、目の前に面白れぇのがいました、送ります。」

「そーか、そりゃ楽しみじゃ♪」

 楽しみじゃ♪じゃねーんだよ!

 可愛くもなんともないぞ?

 

 そう(心の中で)ツッコミを入れている間にも、事態は進む。

 目の前に、豪奢な箱が現れたのだ。

 その箱は、無音で開き始める。

 その瞬間、俺の体が宙に浮く。そして、そのまま箱へと吸い込まれていく。

 舐めるような感触が体にまとわりつき、何とも言えぬ不快感を残していく。

 どうやらこれは、強制イベントのようだ。

 それにしても、ダイ〇ンもビックリの吸引力。吸い込むスピードはゆっくりだが、体にとてつもない負担をかけているのはわかる。


―――――――――――――――どうなるのでしょうか、僕は?

 暗澹(あんたん)となる。

―――――――――――――――なぜこうなってしまったのでしょうか?冥王?

 ちらり、と冥王の方を向く。

 彼は、満面の笑顔をして、手を振っている。

「俺の名前はな、ハーデっつうんだ。また会うことがありそうだし、一応覚えとけよ?」

――――――――――いるか?そんな情報?

 いらんわ!状況がいまいち飲み込めねえっつてんだよ!!

 しかし、ハーデにそんな俺の心情が伝わるわけもなく・・・

 いや、伝わっていないことはないが、答える気などなかったな、奴には。

 

 吸い込みが止んだ。

 箱の底を照らす光が、段々と細くなっていく。

 「眠くなってきた・・・」

 どうやら、箱には<毒ガス(睡眠薬)>が充満しているようだ。

 箱が閉め切ると同時に、意識も暗闇に落ちていく。

 そのなかで、俺の耳が最後に拾った音、それは


「グッドラック!!」

という、明るい男の声だった。


(殴りたい、あの笑顔)

 しかし、殺意が芽生える前に、俺の意識は完全に途絶えた。

加筆しました。

次回から1章に入ります。

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