1 冥王と俺とおじいちゃんと そのに
樹は今までの人生を振り返る。
―――――思えば残念な人生だった。
大学3年の22歳。それが俺の年齢であり、(享年)となった。
七階建てのアパートの6,7階(管理費を抑えるため、6階に住む人には7階も与えられる仕組みだった)に住み、親はいない。捨てられっ子だったっぽい。
端から見れば<イケメン>と言われるルックスの俺だったが、自他ともに認める<残念イケメン>だったのだ。
趣味はゲーム。特技は太鼓●達人あだ名は太鼓の変人。
俺の青春はゲームに捧げてしまった。だから、年齢=彼女いない歴なのはしょうがないのだ。
むしろゲームが嫁なのだ。 そうでも思わないとやってられない。
また、運動はまあまあできるものの、球技がまるでだめなのだ。必殺技は、顔面キャッチだった。そのため、球技の授業があった日には、自動的に保健室のベットの予約が入っていた。
次に思い出すのは、鮮明な死の記憶。
俺が死んだあの日、俺は、友達を電化製品店から迎えに行くつもりだったのだ。 二階でジャージに着替え、黒のウエストバッグにスマートフォンを放り込み、外に出るべく自宅の階段を下りた。しかし、財布を忘れていたことに気が付き、再び駆け上った。
――――――――――――――――――――――悲劇はそこでおこった。
憧れのバーチャルに気を取られ、目の前の段差の脅威に気づかなかった。
踏み外した。
あっ、と思った時には遅かった。
ゴッッッ―――――――――――――――――――
俺は脛を強打した。
急いでいたために、いつもより足を運ぶスピードが速かった。
それはもう、感覚がなくなるほどの衝撃だった。
生まれて初めての痛みに、悶絶した。
意識が朦朧とする。
体を揺らして、その痛みに対抗しようと、がむしゃらに暴れた。
体が、近くの高い棚に当たった。棚から、何かが落っこちてきた。
それは、複雑な処理も可能とする、重量、質量ともに、俺の所持しているなかでも最大の・・・
ゲーム機だった。
おれは、ゲームにすら裏切られたのだ。
か―――――――――――ン・・・
いい音が響く。しかし、意識すら奪うその痛みに贖いきれず、俺は命を手放した。
なにせ、金的に当たったのだから。
「どうせなら、頚椎にでも当たってくれればよかったのにな。最後の最後で”男”って称号も亡くしたのか・・・・・・・・・・・・流石に同情するぜ。」
回想にふけっていた俺は、その言葉で帰ってきた。思い出した途端、ゲームに対する恐怖がこみあげてくる。
声の方に目を向けると、冥王が股間を抑えて、憐れみを込めた視線をおくってくる。余計なお世話である。
というか、冥王も男だったのか。性別なんてあるんだな。
「あるにきまってるだろ?!」
「え、聞こえてんの?!」
そんな会話をしながら、俺は「霊界」に入るための手続きを進めていた。