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私の小失敗の本質  作者: リノキ ユキガヒ
報告「職業と趣味」
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Rita≠連山

 私の意に反して世間では自分の事をカリスマモデルの「Ritaリタ」と言ってもてはやす。

 ちななみに私の名前は「田中信子」と平凡な名前だ。勿論バリバリの日本人で芸名は事務所があれこれ考えて付けてくれたらしい。

 正直、この芸名を聞かされた時は我が耳を疑った。

 Ritaっていったら私の中では18試陸上攻撃機「連山」のコードネーム。そっちの印象が強い。

 旧日本軍の四発爆撃機。大型の爆撃機の割りにはホッソリとした外見を持つこの機体と同じ名前を付けられるとは思いもよらなかった。

 まぁ、私の外見も世の人からみれば大型の部類に入るから合ってるといえば合ってる。と、自分に言い聞かせてみる。

 まさか180センチの長身がバスケットボールやバレーボール以外で活かされる職業があるとは思わなかった。

 って言っても部屋に篭ってばかりいる私がスポーツ選手なんてなれる訳が無い。

 かと言っても今の仕事が向いてるとも思えないが…。

 鏡に映ったノーメイクの自分を見てそう心の中でボヤいて、さらに相変わらず地味な顔だわ。とボヤきを重ねる。

 この仕事を始めからボサボサで伸び放題だったロングをやめてショートヘヤーにかえた。

 ていうか、半分仕事の都合みたいなもんだ。しかしプライベートではこの方が楽なので重宝はしている。

 元々、自分の外見なんかに興味があった訳でもないし髪型なんてどうでもいい。メイクなんて自分でするなんて殆どない。

 普段着ている服だって近所のダイエーで購入している。

 サングラスをかけて鏡台の前から立ち上がると一人の女性が私を見つけて親しげに話しかけてきた。

 茶髪のセミロングにバリっとスーツを着こなし、いかにも「私、仕事できます」と言った雰囲気をムンムンに出している。

「いやーリタちゃんお疲れ様。今月も期待してるよ~。どれだけ部数がのびるか」

 そう、笑顔で話す女性は私をよく起用してくれるファッション雑誌の編集長だ。

 私も慌てサングラスをとり頭をペコリとさげてから笑顔を作り

「いや、私のおかげなんてとんでもない。スタッフの皆さんのおかげですよ」

 そう言い返す。

 普通こんな事を言うと「なにを見え透いたお世辞を」と思われ兼ねないが、相手がどう捉えようがこれは私の本心に近い。

 本当に私は何もしていない。

「相変わらず謙虚ね」

 編集長はそう言うと再び満面の笑みを私に振りまいてからマネージャーさんの所に行き次回の打ち合わせか何かを始めた。



注釈:コードネーム・敵国の兵器を判りやすくする為のあだ名。

注釈:爆撃機・地上に爆弾を落とす専用の飛行機

注釈:四発・エンジンの数。四発の場合は飛行機にエンジンが四つ付いてるという事。

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