隊長=Rita
久我山組の視線を感じた私は慌て姿勢を低くした。
しかし元々長身な私が背を屈めたところでその身を隠しおおせる訳は無かった。
ひょっこりと出た頭を久我山編集長はめざとく見付けたようだ。
しかし気にする様子もなく、そのままスタッフな方々と打ち合わせを始めた。
私は心の中で安堵の溜息を付くと、カネコさんに戦艦大和の装甲について得意気に説明をした。
カネコさんは私の説明を一通り聞くと「んぁ。成る程ね~」と感慨深い返事をした。
「因みに日本の複合装甲の技術は現在トップレベルなんダナ」
そう小川さんが補足を入れる。
「奇跡の戦車ヒトマルね」
これは現代兵器に疎い私でも知っている。防御力を上げた上に軽量化にも成功した自衛隊の10式戦車の事だ。
「んぁ。大和とは対照的だな」
カネコさんはそう言うと私に挑発的な目線を送った。それに応じるかの如く私も言い放つ。
「フンっ!46サンチ砲を積んでる戦艦にしては驚異的にコンパクトにできてるのよ」
「んぁ。言うと思った」
「あっはっはっは。この辺の流れはお約束だな」
二人のやり取りを見ていた小川さんが笑い飛ばす。
その間隙をぬって
「リタ…ちゃん…?」
と、私を呼ぶ声がしたので条件反射的に声のした方を向くと私の視界に久我山編集長が飛び込んで来た。
その瞬間に私の頭の中は真っ白になったが
「あーっ!この人あれだよ!ファッション雑誌の編集長!」
小川さんが素っ頓狂な声をあげる。それに釣られてカネコさんも「んぁっ!?」と声をあげる。
正直、私の事より旧軍マニアの二人が久我山編集長の事を知っているのに驚いた。
久我山編集長はいつものように人懐こい笑顔をすると
「はい。J&Jの久我山です」
と挨拶をした。
「んぁ。知ってる知ってる。ウチのカミさんよく見てる雑誌だ」
「あら、ご愛読ありがとうございます」
そう久我山編集長は言うと軽く頭を下げた。しかし私は
「えっ!?カネコさん結婚してたの!?」
と驚きの声を上げた。
「んぁ。」
私の驚きをよそにカネコさんはヒョウヒョウと相づちをうった。
「そっかぁ~。僕らは隊長とはここでしか会わないから知らなかったんダナ」
小川さんがフォローを入れる。すると、久我山編集長が不思議そうな感じで
「隊長ってひょっとして、コチラの…」
と言って私を手の平で私をさした。
小川さんとカネコさんはさも当然といった表情でうなづいた。




