板橋≠ファッション雑誌
○月○日のマルハチ会。相変わらず周囲の様子をよそにワイワイとやっていた。
そこに板橋の高島平にしては異様な集団が入って来た。
その男女5人位の集団は明らかに板橋区民では無い雰囲気を放っておりファミレス内で少し浮いていた。
そしてその集団の後に少し遅れて一人の女性が小走りに叫びながら入店してきた。
「ごめ~ん。急に電話入っちゃって」
私は聞き覚えのあるその声の方を思わず向いてしまった。
そして思わず「アッ」と声を挙げそうになったが寸前のところで堪えた。
その声の主は何と久我山編集長だったのだ。
彼女の着いた席によく目をやるとそこにいたのはJ&J編集部の面子だった。
先程入店した集団は何とJ&Jのスタッフだったのだ。
道理で板橋区民らしくないと思ったのはファッション雑誌の編集者だからだ。
私はその動揺を悟られまいと平静を装ったがどうも態度に出てしまってるようだ。
小川さんが
「あれ?隊長ってコーヒーに砂糖入れたっけ?」
と指摘してきた。
私は内心「やってしまった!」と思ったが後には引けず
「た、タマには砂糖位入れるわよ」
と、さも気分転換に甘いモノを摂るような雰囲気をだした。
実は私、甘いモノが苦手なのだ。
我慢して甘ったるいコーヒーを啜るが、そのおかげで思考が回らなくなる。
そんな時に限ってカネコさんが
「んぁ。隊長、戦艦大和の装甲って何?」
とマニアックな質問を振ってきた。「なんで今そんな事聞くのよ!」と心の中で叫んだが、その声は届かずカネコさんは「どうだ?答えられるかな?」といった表情を浮かべていた。
その質問に答えられない事は無いが、その為には持参した戦艦大和関連の書物を用いらなければならない。
普段なら何処に何が書いてあるか直ぐ出てくるのだが、久我山組の存在と甘ったるいコーヒーのせいで思考がまとまらない。「うー、あー」と唸っていたら、小川さんが
「ところによって装甲の種類が違うから即答は無理ダヨ」
と、助け舟を出してくれた。しかし私はその助け舟には乗らず
「ちょっと待ってよ!今調べてるところだから!」
と思わず、少し大きめの声を出してしまった。
これが致命的なミスだった。
その声に反応した久我山組御一行は一斉にコッチのテーブルに視線を送った。




