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私の小失敗の本質  作者: リノキ ユキガヒ
報告「思わぬ伏兵」
29/41

疑心暗鬼≠仕事

 コラムの連載という事で私の趣味は職場の人達に露呈してしまったが、運よく悪い方には転がらず良い方へと動いていった。

 仕事の幅は増え、意外なところから仕事のオファーがあったりもした。

 冒頭でのべた戦時中なら云々の類ではないが、防衛庁の自衛官募集のポスターの仕事も来た。

 打ち合わせの時に

「実際に野外で行い、自衛官の方が使用している装備と待遇で撮影に望ませてくれ」

 と珍しく条件を出した。こんな機会は滅多にない。自衛隊の装備を実際に使用できるチャンスを得たも同然だ。旧軍マニアといえどもこの機会を黙って指を咥えて見ている訳にはいかない。

 私は嬉々として撮影に望んだ。

 64式小銃を手渡された時、説明も無く銃口を地面に向けセーフティーを確認して別命あるまで待機の姿勢をした。その間勿論トリガーには指はかけていない。

 その一連の動作を見ていた自衛官の方からありがたい事にお褒めの言葉を頂いた。もちろん渡された小銃に実弾はおろか、模擬弾も装填されてはいないのでこのような仕草を行う必要はない。

 しかし、この所作しょさは実銃を扱うものにとっては当たり前の事なのだ。

 銃口は目標が定まるまで絶対にあげてはならない。

 匍匐前進も自ら躊躇無くした。

 銃撃戦の最中にボンヤリ立ってるなど論外だ。

 広報の方が申し訳そうな顔をするがマネージャーさんが

「大丈夫ですよウチのリタはあーゆーの好きですから」

 とフォローにならないフォローを入れる。

 そうして刷り上がったポスターは異常なまでの気迫を放ち瞬く間に評判となった。

 展示したそばから盗難の憂いにあうので、急遽。朝霞の陸自広報センター・リッくんランドで販売されるまでに至った。

 私としては当たり前の事をしただけなのにエライ騒ぎになってしまった。

 そしてお礼にという事で

「富士総合火力演習」

 にまで招待されてしまった。これは一般の人には解らないことだが大変な栄誉だ。

 陸自の人達の感謝の度合いが伺える。

 こうして私は幸運にも趣味を仕事に生かす事ができるようになった。

 昔は疑心暗鬼でしていたモデルの仕事も自信を持って出来るようになっていった。

 こうして私は少し変わったモデルとして世間にそのイメージを定着しつつあった。

 かといってJ&Jの仕事を疎かにしている訳ではない。

 ここがあっての私なので仕事がバッティングした際はJ&Jの方を優先してもらっている。

 別に仕事を選ぶとか、驕り高ぶっている訳では無いが私もマネージャーさんもJ&JがあってのRitaという事を痛いほど解っているのでそうしてるだけだ。

 勿論、依頼主にはその旨は伝えてある。

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