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私の小失敗の本質  作者: リノキ ユキガヒ
報告「仲間とは」
16/41

初めの頃≠今現在

久我山編集長はファッション雑誌『J&J』の発行部数を伸ばした人で、今いる出版社で一目おかれている存在だ。

出版不況がさけばれて随分経つが、そのなかでも低空飛行を続けていたJ&Jは久我山編集長の力量によって発行部数をV字回復させる事に成功した。

その輝かしい功績は「出版業界の奇跡」と呼ばれ、様々な業界で注目されている。

本人は「好きな事を好きなだけしただけ」とその事を鼻に掛ける事をしていない。

凄くサバサバした性格でここで働いている人達は楽しそうだ。

私も含め、J&Jに関わる人達はここで仕事を覚えていっている人達が多い。

入りたての頃はいつもベテランのカメラマンやスタイリストの方に怒鳴られた人達が多かったが、久我山編集長の尽力によって一人前になり今ではJ&Jの屋台骨として働いている。

そして久我山編集長の元で仕事を覚えた人達は「久我山組」と言われて一つのステイタスのようなものになっている。かくいう私もその久我山組の一人だ。

モデルの仕事をここで覚えていったようなものだ。

なので久我山編集長をはじめJ&Jの編集部には頭が上がらない。

そんな事をボンヤリしながら思っていたら、知らない間に私の周りにスタイリストさんや編集部の人達が取り囲んでいた。彼ら彼女らは次々に

「リタさん。今回はこんな感じでいこうと思うんですけど」

「こっちのコーデとこっちのコーデどちらが好みですか?」

「メイクはどうしましょう?」

「最近どうスか?あっ。このアクセなんスけど~」

と速射砲の如く質問の嵐が飛んで来た。

私の頭のCICは今、情報の整理で手一杯だ。それを見ていた久我山編集長は

「いいわね~、リタちゃんは皆に愛されているのね~」

とケラケラと笑いながら言った。

私はまるで着せ替え人形の様に次々と服を着ては脱いでを繰り返していって次回の撮影の際に使う衣装を決めて行く。

これがフッティングの作業だ。

実際に衣装を着てみて似合うかどうかを試すのだ。

フッティングのほうが一段落つくと次は次回の撮影の打ち合わせだ。

こちらの方はフッティングと違い淡々と進んでいく。単に編集部と私のスケジュールをすり合わせていくだけだ。

私は編集部の方が用意して頂いたミネラルウォーターをチビチビの飲みながらその様子を伺っていた。

マネージャーさんが上手い具合に定例会の日を外していく。

このマネージャーさんも入りたての頃は冴えなかったが今となっては「売れっ子モデルRitaを育てた名マネージャー」として事務所内でそれなりの地位を築いている。


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