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私の小失敗の本質  作者: リノキ ユキガヒ
報告「定例会について」
10/41

オフ≠Rita

 ○月○日

 私は高島平にあるファミレスの前に立っていた。

 今日は完全オフの日だ。

 この日はモデルのRitaも休んでもらって地味で冴えないノッポな女。田中信子になる。

 普段はコンタクトなのだが今日は普通の銀縁メガネでロングのフルウィッグを付けて高校生の頃に逆戻りする。

 服は勿論ダイエーで買ったブラウスにカーディガン。スカートも膝下まである地味目のものだ。

 このようなコーディネートは今時の娘から見れば少し野暮ったい感じのするモノだが、私からすると高校生の頃に戻ったような気がしてかえってウキウキする。

 そしてこれは私が私である事を取り戻す時でもある。そうやって仕事とのギャップを埋めて自分の中で帳尻を合わせている。

 なので毎月この日だけは無理を言ってオフにしてもらっている。

 丸一日はダメな場合でも、最悪午前中だけでもなんとかスケジュールを調整してオフにしてもらっている。

 それだけ私にとっては「定例会」は大事な日なのだ。

 文面上○月○日と伏字にしてあるが、これは雰囲気的に秘匿性を出す為であって定例会の日時はとある雑誌の販売日に合わせてある。

 その雑誌の名は


「丸」


 恐らくだが大体の人がこの雑誌のタイトルを聞いて内容を予想できる人はいないだろう。

 しかし私の様な旧軍マニアにとってはマストアイテムなのだ。

 マストアイテム…。こう言うと何だかファッション雑誌のインタビューみたいだからココはあえて、「必携品」と言おうか。

 で我々旧軍マニアの必携品である雑誌「丸」はどの様な雑誌かと一言で言うと、軍事に関する事が載っているのだ。

 それも第二次世界大戦の頃についての記事が圧倒的に多い。

 それもそのはずこの雑誌の生まれた経緯が過去の戦争体験を風化させない為なので、記事の割り当ても自然と二次大戦の頃が大多数を占める。

 そしてその雑誌を小脇に三冊挟んで私は高島平のファミレスの前に佇んでいる。

 はたから見ればどんな風に私は映るのだろう。

 ノッポな女が(普通の人から見れば)得体のしれない雑誌を抱えてファミレスの入口近辺に立っている。

 天気は快晴。平日なので外から伺う限りファミレスの店内はガラガラだ。

 駐車場の方も空いている。休憩のためか?タクシーが一台停まっている程度だ。

 幸いと、いうか平日の午前中なので人影もまばらだし私の事を気にする通行人もいない。

 近所にある大東文化大学のおかげか?板橋区民の特性か?

 私のような女が立っていても違和感を感じないのだろう。

 と、希望的観測で待ち人を待っていた。


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