新たな仲間
「配下か。配下……配下か」
うーむ。そうか、配下か。いったい何があればその結論に至るのか。
……いや、この世界の竜という存在と、配下という立場を考えればおかしくはないのかも知れない。確か人気の職業? だったしな。うん。
そこでふと気が付く。みんながみんな、まっすぐに立っていることに。であったころも立ってはいたが、今はどことなく力強さを感じる。
そうか。みんなうまくいったんだな。よかったよかった。アレ、謎の存在の介入があるせいで成功したのか否かがよくわからんのよね。
ああ! もしかして助けてもらったから仲間になりたいとかそんな感じなのかもしれない。
なんと きずのりょだんが おきあがり
なかまに なりたそうに こちらをみている!
なかまに してあげますか?
▶はい いいえ
みたいな感じだろうか。……さすがに失礼すぎだな。一斉に頭を下げられるのに慣れていない弊害が出ている。うん。いったん落ち着こう。
まずこの世界の竜の配下という立場。人気の職業以前にもっとこう、特別な立場とかそういうのはないか? アイリーンに関しては、はっきり言ってたとえ特別な何かがあろうともここまで助けてくれて旅を共にした時点で、何がなんでも配下とするつもりでいたので大きな問題はないが、増やすとなると話が変わってくる。正直、彼女たちに関しては助けたのも直したのも、一応は俺という事になっているわけだから途中で放り投げる真似はできればしたくない。しかし、その立場が特別な意味を持ってしまうのなら、あまりむやみやたらと増やすのもまたお互いにとっていいことではないだろう。こういう時はアイリーン先生である。
「少し待っていてくれ」
そうサラを筆頭に旅団員全員に伝え少し離れたアイリーンの下へ相談しに行く。
「なあアイリーン。竜の配下ってそんなに軽く許可していい役職だったっけ?」
「どういう事でしょうか?」
なにやら意図が読めないといった様子のアイリーン。
「何か配下という立ち位置に特別な意味があればむやみに増やすのはやめた方が良いかと思ったのでな」
「ああ。なるほど」
軽く説明をしてやると俺の質問の意図を理解したようでうなずいた。
「そうですね。基本的には特別な意味はないでしょう。強いて言えば竜様自身に会いやすくなる……とかその程度でしょうね」
「そうなのか」
それなら特に問題はないか。
「はい。それに竜様方の配下とは、竜様自身に引き寄せられたものを竜様自身が気に入って配下認定するそうですからね」
そういやそんな話をアイリーンの過去話で聞いたような。
「そもそも、基本的にすべての竜様は、もっと配下にする基準は単純だったはずです。あくまでも私が旅をしているころにちょろっと聞いた話ですが、竜様の配下になるには各竜様の好みの傾向に当てはまったものがなれるらしいです。まあ、配下になれたもの自体は決して多くはありませんが」
へ~。好みなのか。確かにそう聞くと急に軽く感じるな。
「参考までに私が聞いた各竜様の傾向は、火竜様がそのまま『強さ』です。何でもいいから強さを示し認められれば配下と認められるとか。この方はそれなりに配下がおります」
何でもいいという事は知識的な意味でももっと別のことでもいいから何かとびぬけたものがある者を、って感じかな。
「次に風竜様ですが、この方の場合は自身に出会えるかどうか、そのうえで面白いかどうかだそうです。配下の数はあまり聞きませんがそこそこいるらしいです。この御二方が現状、冒険者を配下として認めている方々ですね。地竜様は配下の者自体は少ないです。ただ基準はうわさでしかありませんが出回っていて、なにやらやさしさが関わってくるのだとかなんとか。水竜様に関しては、配下はいないらしいです。一部では神殿の巫女長が配下だとかの話も聞きますが基準自体は不明ですね。それと、同じく光竜様、闇竜様ともに配下はおりません。あとは数少ない後に生まれた竜でありながら配下を持つ毒竜様ですが、基準は一目見たときに気に入ったかどうかというもので一人の少女を配下にしております」
そのまま「配下を持つ竜様は以上ですね」と話を絞められた。
なるほどなるほど。つまりは割と好き勝手にやってもいいという事だな。うん。理解したぞ。
「ありがとう、参考になった」
となれば、一つ質問をしてその答え次第で配下とするかを決めよう。
歩いてサラたちの下へ戻る。
「すまない。待たせたな」
「いえ、それでいかがでしょうか……?」
「ああ、それに関してなんだが一つだけ質問をさせてくれ。他の竜にも何かしら基準があるようだが、俺が設定する基準はたった一つ。思いだ」
「思い……?」
「なに、、難しく考える必要はない。俺の質問に心からの答えを返してほしい。それだけだ」
そう。俺がアイリーンの説明を聞いて決めた基準はそれだった。思いの強さ、というとなんとなく火竜と近しいものを感じなくもないが、俺は相手の思いが魔力を通しておおざっぱにだがある程度わかる。そして、俺がこの世界で生きると決めた覚悟。彼女たちにはある程度係わってしまった。それもほぼ自分から係わりに行った。どうにかできる保証もなにのにだ。だからこそできれば最後まで責任を持ちたい。見届けたい。それが今回の基準につながった。
何も、ついてきたいという思いを感じられなければそこで『ハイ、サヨナラ』と見捨てるわけではない。この国のトップがどうするのかも俺の勝手でついて言って見届けるつもりだし、帰りたいというのなら返しに行くのもやぶさかではない。つまり俺が知りたいのは心からしたいことだ。
ゆっくりと俺は魔力をあたりに広めていく。先ほどまでの魔力は少々薄くなりすぎていたため、追加しなければ察知することができなかったからだ。もちろん、彼女たちの体調を崩さないように気を付けながらだ。
十分に広がり切ったあたりで前触れなく、できる限り力を、思いを込めて質問をぶつける。
「お前たちは本当に俺についてきたいのか? 本当にそれでいいのか?」
返事は、一拍遅れて帰ってきた。
「「「「はい」」」
「……そうか」
ああ、そうか。そうだよな。帰りたいよな。
見事にそろった返事だ。感じる感情は強い感謝、忠誠。そして……哀愁だった。
「なぜ、『帰りたい』ではなく、俺に忠誠を誓う?」
俺のその質問にサラたちははっきりと驚愕の表情を浮かべた。しかしそれを打ち消しすぐさま言い訳をしようとした。
「私たちは、別に––」
「俺にはある程度、強く願う思いを感じることができるんだ」
サラの言葉にかぶせるように真実を伝える。
「――そうでしたか。ええ、私たちはあなた様のおかげで普通に近い体を得ることができました。しかし、みなとまでは言いませんが多くは、故郷には多かれ少なかれ負い目を感じているのです。ただ攫われてきたものに関してはこの話の後に相談させていたこうと考えておりました。しかし、私たち傷の旅団の中で唐突に攫われたものはたった2人。ほとんどが何か外道な条件との引き換えでした。みな知っているのです。私たちを守れなかった家族の悲痛な顔を。自身が稼ぎ頭だったものだっておりますし、自分が抵抗したせいで村や町での立場を下げてしまい、あまつさえ結局は連れていかれてしまった者もいます」
なんだ。そういう事だったんだな。みんなどんな顔であっていいのかわからなかったんだ。そういう事なら――簡単だ。
「そうか。ならば簡単だな」
「え?」
「そんなものは、会ってから考えればいいのだ。うじうじ悩むな。手遅れになる。すでに最悪な状況だと思い込んでいようが、たいていの場合はさらに下がある。ならば悪化する前に会え。それでから考えろ。その場その場で考えても案外何とかなるぞ?」
俺はコミュ障故、人に会いに行くのが苦手だった。だからこそ、少しだけどうなるのか考えただけで、あとはただ突っ込むように勢いをつけて会いに行ったのだ。そうすれば案外なんとでもなる。コミュ障でも質問に答えることくらいはできるのだ。まあ、つっかえながらになることも多いけど。それでも相手もよっぽどのコミュ障でもなければ、よっぽど適当に答えなければ、それだけで会話は進んでいく。時にはその場しのぎの、勢いというやつがが大事な事もあるのだ。
「……え?」
「よし。お前たちは俺の配下にする! そのうえで順次帰れ! そのあとならまた俺の配下として活動するのもいいし、そのまま故郷に残ってもいい。だから、絶対に帰ること! 難しい場合は俺も手伝う。だからそれを条件に配下とする! ちなみに拒否権はなし! わかったな? はい、今からお前たちは俺の配下! 決定! 終わり! この話終わり!」
これで万事解決である! そう、これこそが勢いというやつなのだ!
まあ、手伝うとはいっても俺が直接運ぶくらいしかできないんだが。さすがに技術力だとか道の状況だとかを考えても、サラたちも俺がいけないほどの距離から連れて来られたという事はないだろう。
……若干面倒くさくなったのも否定はしない。そう、この世界で生きると決めたからこそ面倒くさくなることもあるのだ。うんうん。
ふと気が付けばあたりを静寂が覆っていた。
おや~? 失敗したか?
いやでもね。実際彼女たちに足りないのは勢いだと思うのだ。時間は十分すぎるほどたっただろう。きっとそれこそ、頭が爆発してしまうほど考えたはずだ。だから最後に彼女たちに必要なのは――
「ぷっ! あっははははっはは!」
言い訳を始めていた俺の思考を遮ったのは、突然響いた笑い声。それはサラの、いや、傷の旅団全員の声だった。
思わずあたりを見回してみれば、なんかアイリーンも優しい目で見守ってるし、三人組も生暖かい目でこっちを見ている。
どうすればいいのかわからず固まっていると一足先に笑い終えたサラが何かを旅団のみんなに確認して言った。
「はい。先にこれほどのことをしてきた罰を受けるかと思いますが、そのあとにでも一度、帰ることにします。ありがとうございます。そして、よろしくお願いします。いまだに会ったときどんな顔をすればいいのかはわかりませんけれどね」
どことなくすっきりしたような表情だった。
俺もつられて笑う。
「ああ、そうしろ。なに、表情なんて笑えばいいんだ」
どっかの主人公も言ってたしな。
その時、サラが固まったように見えた。いやそれどころか傷の旅団の連中もさっきまで微笑んでいた連中も、みんな固まった。
「? どうした?」
「い、いえ、何でもありません。そうですね。笑うことにします。笑顔がきっと一番です」
何かをごまかすようなサラの言葉に、なんとなく気まずくなり俺もごまかすように何かかける言葉を探し、とっさに思い付いたそれを口に出す。
「よ、よーし。そうとなれば鱗を渡すからしっかりと持っておくように!」
言った後で、アイリーンは忘れていた俺から苦労して鱗を受け取ったことを思い出した。……気にしてはいないかもしれないが、どこかでアイリーンに御礼をしておこう。
短めでも忘れないうちに投稿することにしました。
……たぶん一週間で投稿できるの今回だけですけど。




