復讐の結末4
「うん? どうしたんだ。さきほどまでの威勢のいいおしゃべりなさまを見せてくれ。俺はすでにお前を悪だと割り切っている。なぜだか知らないが俺はあまり命に対して価値を見出していないようでな。もちろん、私が守ると決めたものはまた別だぞ? 今回で言えば少し前まで目的としていたこの屋敷に住んでいたやつやお前のような奴に対して命の価値が見いだせないというだけだ」
「……」
これだけ言われてもいまだに不審者は反論すらできないようだ。塀の上に着地していた不審者は、しゃがんだ姿勢のまま微動だにしていない。
「おっと、そういえばお前がアイリーンと戦ったおかげでその事実を知れた、という意味ではお前に感謝してもいいのかもしれないな? 一応名前を聞いておいた方が良いかな? 初めは答えてくれなかったが、いつまでもお前では不便だしな」
俺のその言葉にようやくわずかに反応を示した。
「……なら、それ相応の、名前を聞くだけじゃない感謝の姿勢ってやつを見せてくれよお」
強がりなのか何なのか、先ほどとは打って変わり弱弱しい、とまではいかないまでも、平坦な声。わずかに怒りがにじんでいるようにも聞こえる。やはり名前は残念ながら教えてくれないのかな?
しかし、そんなことは気にせずに、むしろ煽るように話を続ける。
「もちろんだとも! 感謝の姿勢を示すためにも、俺は本来の姿で戦おう! 貴重な竜との戦い、ぜひ楽しんでくれたまえ。――そして、死ね」
吠える。ただ大きく息を吸い、ただひたすらその息を吐く。怒りと、歓喜の感情とともに。
人の身でありながら、あたかも竜のように威圧を伴って、街を駆け抜けた。誰もが身をすくませ、その声の対象にされたものは、完全に動きが止まった。声すらも封じ、視線をそらすことすら許さない。
そして、人の身であったそれは、変質する。
光に包まれ、元の姿に。
宣言通り、本来の姿へと。
「GuRuaAaaaaaaaaaaa!!!」
再び、咆哮。
盗賊に襲われたときとは違う。明確な自分の意思での咆哮。はっきりと戦うという覚悟を乗せたそれは、まるで合図となったかのように、一度止まってしまっていた全てを動かし始めた。
「はっ、はぁあ~、とてつもない威圧だあ。もしかしたらあいつよりも上だなあ。そう言えば、名前が知りたいんだっけえ? 俺の名前はコラン、コラン・ドランシーだ、覚えておいてくれよう?」
すぐさま、冷や汗をかきながら、怒りよりもなぜか、期待を膨らませ、そいつは言った。いや、思い返してみれば、一度目の咆哮の時からどこなく自信というか、自分自身を取り戻していたようにも見えた。名前をわざわざ名乗るほどの余裕。
……もしかしたら何かあるのかもしれない。
「さあ、始めようか」
しかし、何があろうが関係ない。上からたたき潰すだけだ。
「おうともよう。予行演習、多分あんたの本番はあいつの後だなあ。今回は現状確認だあ」
「ふん。何をたくらんでいるのか知らんが、行くぞ? まずは軽めだ」
俺がこの体で真面目に戦うのは今回が初めてだ。今までは戦闘らしき戦闘行為はこれと言ってなかったのだ。もちろんこの体だからこそ、ただ腕を振るうだけでも十分な脅威にはなるだろう。しかしそれではだめなのだ。戦闘とは言えない。
俺は、あれほどまでに気分が高揚していても、頭の中では不思議と冷静でいられた。だからこそ、初めは慎重に行かねばならないという判断を下す。もしも戦闘になって、周りが見えなくなり、周りを巻き込むなどという事になってはたまらないのだから。
では、初めはどんな行動にするか。まず魔法だ。体を使った戦闘であればまだ直接的な制御だから大丈夫な気がするが、魔法の方は夢中になればどうなるか分からない。たとえ魔力事態の操作にはだいぶ慣れてきていたとしても、だ。だからこそ、俺が唯一使ったことがある攻撃用の魔法であろうウォーターボールは今回は使わない。
軽く魔力を意識して、人間サイズに合わせた小さな岩のつぶてを数個、目前に創る。
そう。岩だ。水では形を保てなかったときどんな被害が出るか分からない。ならば操作も水よりかは楽だし、イメージとして銃弾などを連想しやすく操作が簡単な岩の弾丸を選んだのだ。
「そらっ」
出来上がったそれを不審者――コランの下へ飛ばした。
風を切りながら俺の想定よりも速い速度でそれは飛んでいく。どうやら俺の戦おうとしている意思が思いのほか早い速度にしているようだ。ちなみにイメージは確かに銃弾だが、それよりもだいぶ遅いものを想像していた。しかし、実際は弾丸とほぼ同等だと思えるほどの速度だった。
「ひょう!」
コランは奇妙な声をあげ塀から、屋敷の屋根を超えるほど飛び上がり、なんとかそれを躱す。
「ふえい。やるなあ。やっぱりまだ竜は早いかあ。まあやれるところまでやるか」
その言葉と同時に、落ちてゆくコランから、見えない何かが空を割きながら迫る音がした。
俺の視界にはどこにも何も見えない。確実に何かが迫ってきている。しかし何も見えない。
そこで俺はひらめいた。見えないならば見ればいいのだ。そう、竜眼だ。
とっさに発動した竜眼は確かに視界にそれをとらえた。視界中を縦横無尽に走る糸。アイリーンの物ではない、間違いなく敵の攻撃であると断言できる其れ。理由は簡単だ。見えたそのすべての糸がコランに向かって、いや、コランから伸びていたのだ。
「はああ!」
思いっ切り魔力を前方へたたきつける。それだけで思惑通りに糸を叩き落すことに成功した。
ついでにすっかり忘れていたコラン自身の情報を得るためにそのまま竜眼を向ける。
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そこにはいくつもの文字が重なったかのような不気味な文章が表示され、もはや何が書いてあったのか何もわからなくなっていた。
あまりにも異様な光景。竜眼の文字が浮き出るという性質上、視界いっぱいに広がったその情報はただ、俺を威圧した。
「馬鹿げた魔力の使い方だなあ。こりゃたまらん」
コランがなにやら言っているが、一瞬とはいえ完全に気を取られ聞き逃してしまった。
「さあ、次は俺の番だ」
とっさに言葉を返すが会話になっているか気にしている余裕はあまりなかった。
戦闘は続く。
先ほどの一回ではそれほど多くのことは分からないが、それでも十分戦えることは分かった。我を忘れるという心配も、今回であれば問題はないだろう。魔法はイメージ。つまりよっぽど変な物をイメージしなければ、少なくとも予想とはずれた現象が起こることはない。戦闘中であろうが、想像する際の集中力さえ切らさなければなんとでもなる。
では、どうするか。一発の岩では躱されてしまった。ならば数を増やしてみるのはどうだろう。
俺は自分の前の空間に、面での制圧ができるように3~40発程度の岩の弾丸を作り上げた。
「さあ、行けっ!」
それは俺の指示に従い勢いよく同時に飛び出した。
「ひゅう。シャレになんねえなあ!」
すぐさま地面に着地したコランはすぐさま両腕を前に突き出し、何かを叫んだ。
「『下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる』ってな。お前の鉄砲はずいぶんうまいなあ!」
その瞬間すべての弾丸が奴に届いた、はずだった。
奴の周囲の地面をえぐり、土煙がコランを隠した。しかし、煙が晴れた中から出てきたコランはまるで縁を型取りしたかのように無傷だった。
「何……?」
「くはっ、くひひひひ! やっぱりとんでもねえよお! まっさか、ただそらすだけでもバカみたいに消耗するとはなあア!」
なにやらテンションが上がっているのか、いろいろとしゃべってくれている。
そらす、と奴は言った。つまり何らかの手段――おそらくは先ほどの言葉が何かしらの意味を持っていたのだろう。たぶんではあるがこの世界特有のスキルやスキル欄にあった『特殊』、あるいは固有魔法の類だろう。しかし、それと同時に奴は消耗した、とも言った。
ならば、対処は楽だ。次はさらに量を増やせばいいのだ。あいつは俺の、竜の攻撃を消耗が激しかったとはいえそらしてしまった。それでも奴が敵ではなかったのなら問題はなかっただろう。だが、あいつは邪悪で、明確な敵だった。ここで見逃すと厄介なことになる。この後の世界のためにも、何より、この後の仲間のためにも、排除する必要のある強さの『悪』だ。
俺は無言で次の準備を始めた。今度も根本は変わらない。しかし、位置と量が違う。
「っ!」
さすがに上がったままのテンションでも気が付いたようだ。
そう、俺はあいつを囲むように岩の弾丸を創っていたのだ。遠くになればなるほど当然だが消費される魔力の負担も大きいものとなる。しかし、もとより莫大な量を誇るであろう竜にしてみれば力技でも不可能ではないのだ。
コランが逃げる間もなく、球状に展開された大量の岩の弾丸が出来上がる。
「くひひひひひ! いい! 良いねえぇぇぇえ?! 強い! 馬鹿げてる! そんなお前らをいつか俺がぶっ潰すんだあ!」
コランはまるで狂っているかのように声を上げている。さすがに異様な光景だ。
俺の魔力によって作り出された岩に囲まれているからこそ、うっすら感情が伝わってくる。
それは、決して助けが来ることがわかっている、などからくる余裕ではなく、明らかに狂気をはらんだ、まっすぐすぎる自信。まるで生きる目的であり根底であるかのような意思。
「つぶれろ!」
コランのその様子に気圧されながらも、岩の弾丸による攻撃を行使する。
「嫌だねえ! でも今は俺が頑張る番じゃあない!」
球状に展開された岩の弾丸が中心に向かい一気に収縮し始めたときそんな叫びが聞こえた。いや、まるで合図のように聞こえた。
そして合図のようなそれは事実、第三の存在を呼ぶ合図だった。
何者かの影が、その岩の中に飛び込んでくる。
しかし、そのすぐあと、岩と岩がぶつかったことにより発生した土埃によって視界が遮られてしまった。
「……」
ただ、無言。俺はもちろん、後ろのみんなも何かを察しているようで全く動こうとしなかった。
静寂がその空間を満たしていく。俺とはわずかな間しか打ち合っていないが、それでも、騒音に包まれていたはずの、一種の戦場だったここがしんと静まり返っているのはかえって不気味にさえ思えた。
ただ、何もわからないここで唯一予想できることは、おそらくコランが無事だという事だ。
やがて、土埃が晴れ、そこに人影が二つ浮かび上がる。
「もお~、ほんっとに人使いが荒いわね、アナタ。ワタクシが間に合わなかったらどうする気だったのかしら?」
「良いじゃねえかよう。俺だって、お前が間に合わないようなら無茶なんかしないし、お前のそれが竜にも通用するっていうのはあいつにお墨付きもらってるんだしよう」
「はああ~……。まあ、いいわ。ワタクシわ優秀ですからね」
そこに居たのは、予想通り助かっているコランと、そのコランを助けたであろう幽霊のような少女だった。
「あらあらあら。ワタクシたち、注目の的ねえ。自己紹介しなければ失礼かしら? では、ゴホン。……皆様、初めまして、ワタクシとあるお方の忠実なるしもべを務めさせていただいております、フィアネア・ヴァランタインと申します。以後、お見知りおきを。それとワタクシ、ヴァランタインという家名をあまり好いておりませんので~、是非とも、名前でお願いしますね?」
突然の闖入者のせいで、啖呵を切った初めのころの勢いがあっという間にしぼむ。アイリーンを心配していた気持ちはあれど、怒りが鳴りを潜めてしまった。
にしても、また新しいのか。しかも、あるお方って誰だよ。しかし、あの方という発言から相手はまだ数がいて、かつある程度組織立っている可能性もある。厄介だ。
うーむ。さっぱりわからん。情報がなさすぎる。まあ、会ったところで何ができるという訳ではないんだがな。でもできれば、ここで仕留めたかったところだ。どう見ても、あの二人の実力はかなりの物なのだ。
先ほどの俺の攻撃をどうやってか凌がれている時点で、ここで仕留め切るのは難しい。種が割れれば何かしらやりようはあるのかもしれないが、それが全く分からん。あとから来たフィアネアのみの力なのか、二人で協力したからできたのか、何回もできるのか、一回しかできないのか。
恐らく、誰がやったのかはまず間違いなく、後から来たフィアネアだ。それも単独だろう。お前の力は竜に通じるなどと言っていたし、間に合わなかったらなども言っていたので、そう判断できる。問題は回数だ。何回もできるとなれば、少なくとも何をされたのかわからない以上、フィアネアは確実に取り逃がす。
情報を知るために便利なのは竜眼だ。しかし、すでに先ほどコランでまともに情報が読めなかったせいで嫌な予感しかしない。
まあ、それでも使うしかないんだが。
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案の定だった。くそぅ、竜眼ってなんでも見えるんじゃなかったのかよ……。確かに、一応、文字が出てきているわけではあるから、見えないわけではないんだけど。それでも読めなければ意味がない。
「もう、そんなに怖い顔で睨まないでくださいまし。ワタクシ怖くて余計な被害が出てしまうかもしれませんわ。ワタクシはただ、この馬鹿を回収できればそれでいいの」
どうやら、こちらが攻めあぐねているのがわかったのか、そんなことを言い出した。
「……あら? 後ろにたむろしているあなたたちわ……」
それと、何かに気が付いたようにそうつぶやいた。
しばらく、悩むそぶりを見せたかと思うと、フィアネアは唐突に叫んだ。
「そうですわ! あなたたちわ、ワタクシがそそのかした輩に連れていかれた子たちじゃない!」
謎の首輪の出所がなんとなく読めた。
どうやら、こいつらは思った以上に逃がしてはいけない存在らしい。
「……なんですって?」
サラが、今までとは比べ物にならないほど低い声を上げた。その一瞬で俺が手出しできる隙も空気もなくなった。
これは奴から情報を知るチャンスであり、サラがすべてを知るタイミングなのだ。
それにいずれにせよ、奴はこちらに対する警戒を解いてなどいなかった。むしろ、視線でこちらを挑発している。今攻撃して来ればそれに乗じて逃げ出してあげる、と。
「ああ、そういえばあいつの御屋敷ってここじゃない! ざあんねん。せっかくワタクシが深い悲しみを提供してあげたのに、もう助けられちゃったの。でも、十分かしらね? あまり長い時間ではなくても、きっとそれわ次につながるわ」
それはあまりの言い草だった。
「ふ、ふざけないで! 何が次につながるよ! こんな、こんな経験なんか、おぞましい記憶なんかいらなかった!」
当然の反論であるはずのそれに、帰ってきたのはあまりにも平坦な声だった。
「なぜ?」
彼女のおどけたような表情が一瞬消えたように見えた。
その瞬間に、こちらに対する警戒もとぎれた。だが、その威圧は俺よりも弱いはずなのに、竜の姿の俺ですら動き出せないほど強い思いを抱えていた。
「私は、あなたたちに最高の思い出をプレゼントしてあげたのよ? 知ってる? 記憶って深い悲しみを忘れないのよ。だから、いい思い出に出会えるし、それをずうっと覚えていられるの」
先ほどの一瞬の雰囲気に少し気圧されたようになりながらも、サラは反論した。
「いい思い出なんて……!」
「あるわ」
それは、あまりにも力強い断言。まるで自分が正しいのだと疑わない、まっすぐな言葉だった。
「ほら、今ここにいるのがその証拠じゃない。あなたたちは竜に会い、竜に救われた。最高の出会いを演出してあげたじゃない。実に劇的で、忘れたくても忘れられない最高の一瞬。一番下だと思っていた瞬間から、一気に最高峰まで上り詰めるその瞬間こそ、記憶に深く刻み込まれるのよ」
「なっ……!」
その言葉に、あまりにもずれた認識に、サラは二の句が継げなかったようだ。事実、その異様な有様に俺自身、何もできずにいる。
「わたし、ヒロインにあこがれていたの。いえ、私だけじゃない。きっと世界中の多くの女の子のがヒロインにあこがれていたのではないかしら? いろいろな物語に登場する、幸せになる女の子。その道中に、その最後にどんな悲劇が待っていようとも、いつでも必ず立ち直り歩き出す。そんなヒロインに、私はあこがれていた」
急に、彼女はそんなことを語り始めた。恐らくは、理解されないことに疑問を抱き、なぜそうなったのかの説明を、説得を始めたのだ。
「……いいえ、ヒロインのすべてが前を向いて歩きだせるわけではない。中には立ち直れないような悲劇に遭遇し、そこで歩みを止めてしまう子もいるわ」
突然変わった話題に、しかし、先ほどとは違う空気となったおかげでサラは、会話をつづけた。
フィアネアはサラの言葉に、少し考えたそぶりを見せ思い当たることがなかったのか、サラの方を向き問いかけてくる。
「例えば?」
「例えば、主人公が死んでしまい、悲しみに明け暮れて死を選ぶ、そんな話だってあるでしょう?」
すると心底不思議そうな顔をして彼女は言った。
「あら? 何をおかしなことを言っているの? そのヒロインだって前を向いて歩き出しているじゃない。いったい何がおかしいのかしら?」
「何を言って……」
サラが訪ねた言葉を、フィアネアはまるで喰うように遮り答える。
「だって、主人公と、愛しい人と同じ場所に行こうと歩き出しているじゃない。ほら、とっても前向きでしょう?」
「っ!」
「到底私にはできないわ。愛しい人と同じ場所へ進む事も、悲劇に見舞われて、それを糧に立ち直ることも、私にはできない。結局今でもできなかった」
フィアネアのその言葉には、確かにフィアネア自身の今までが詰まっていたように感じた。
「……」
それをなんとなくサラも察したのだろう。返す言葉を失ってしまっている。
「でもね、私は見つけたの。誰でも簡単にヒロインになれる方法」
「……それは?」
「あら、簡単よ。周りの誰よりも少しだけ不幸になればいいの。そうすれば、あら不思議。あっという間に悲劇のヒロインの完成よ。たまに、もっと不幸な人がいるなんてのたまう輩がいるけれど、そんな遠くの人なんて関係ないわ。みんなの世界は思ったよりもずっと狭いもの」
「悲劇のヒロインになりたいやつなんているものか!」
思わず、といった様子でサラが声を荒らげた。
「あら、なぜかしら? ヒロインって大抵は何か悲劇に会うものよ。それが後か今かの違い」
言外に、目が語っていた。その程度の覚悟もなく、ヒロインになりたいなどと言うやつに資格はない。だからこそ、誰もがその覚悟を持っているはずだ、と。
「あなたが、その竜と出会えたように、ヒロインには簡単になれるの。そして私はそれをいろんな人に教えてあげただけよ? 私だってヒロインになりたいのだもの。良いことをすればそれだけヒロインに近づける。ええ、そうよ! あのお方のために頑張ればあのお方の最高のヒロインになれるはずなの!」
それは、誰の目から見ても間違いなく、狂気に満ちていた。




