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頭上の鶏

今回は本当に短いです。ただ、切りがよさそうだったのでここでいったん投稿しました。ご容赦いただければ幸いです。


「さて、あの二人とも完全にお別れだな」

「そうですね」


 今、俺たちは双子をネウルメタに送り届けた後、ネウルメタより少し離れた場所にて予定を確認しようとしていた。

 その際、送り届ける役はアイリーンに任せ俺は少し離れた位置でまっていた。無用な騒ぎになりかねないからな。


「さて、今後だが一応あの貴族の息子の家に向かおうと思っている。さすがにほっておくわけにもいかないのでな。それで、場所なのだが――」

「はい、お任せ下さい。すでに二人を送り届ける際にギルドにて詳しく聞き出してあります。それによればここから、先ほどの村の方角から僅かに逸れたこちら側の方向を少々見えにくいですか道沿いに行けばおよそ一週間で到着できる位置に存在している、ドーグという街に住んでいるとのことです。もちろん一週間と言うのは人の足でと言う意味になりますので、カース様の飛行速度で有ればどんなに遅くても数日中には到着できるはずです」


 相変わらず有能だなー、アイリーンは。まあ、流石に今回は簡単に予測できるような行き先だしな。

 本来なら、ここでどこにあるのかなどを軽く相談してから行こうかと思っていたのだが、人の足で一週間と言う事であれば、今から向かい始めれば宿が閉まる前にはたどり着けるかもしれない。別に、野宿でも我慢できないことはないが、どうせなら野宿ではなく宿に泊まりたい。現代っ子だからか、さすがになんの抵抗もなく野宿というのは難しいものがあるのだ。それしかないときはとくに何の抵抗もなく野宿を選択するだろうけど。そもそも、一番初めの夜にすでに野宿をしているわけだし。


「そうか、ありがとう。ならば今から出てそれなりに速度を出せば今日中にはたどり着けるな。せっかく来たわけだし、ネウルメタでしていきたい事はあるか? あるのであれば、あまり長くならない用事であればしていっても問題はないが……」


 そう。実を言えば、それほど急いでいるわけではない。ことが事だし多少なりとも急いだ方がいいとは思っているものの、実際の所、ものすごく慌てて行かずとも大して変わらないと俺は考えているのだ。理由は、二つ。

 単純にあまり現実感を得られずにそれほど心配できないと言うのが一点。

 そして、こちらはあくまでも希望的観測だが、恐らくあのぼんぼんが出歩いているのは、今、奴隷の引き渡しが行われていなからなのではと思ったからだ。先ほどの口ぶりから、まず間違いなくあのぼんぼんは奴隷売買に、それもかなり深いところまで関与しているような口ぶりだった。それなりに詳しく知っていたのがそう思った理由だ。そしてそれだけ深くかかわっているならまず間違いなく、取引現場にも立ち会っていることの方が多いだろう。まあボンボン自身かなり我が儘そうな性格だったから、無理にでも頼み込んでその場に立ち会っていた可能性もあるが、どちらにせよ取引があればこちらには来ていないのではないだろうか、と思ったのだ。

 そして、取引が無ければ、一日や二日は大した問題ではない。商品である奴隷をむやみやたらと気付付けるようなバカでは商売など成立しないだろうし、もしバカであったとしても、さすがに奴隷しょうひんこわすようなことはしないだろう。……底抜けのバカでなければ、だが。まあ、あのぼんぼんを育てた親だからその底抜けである可能性も完全に否定できないのは難しい所ではあるが……。

 ともかく、そう言う訳なので、確かにあまりちんたらしているわけにはいかないが、多少なら余裕もなくは無いはずなのである。

 それに、二時間も三時間もここで何かしていくというようなことでもない限りさすがに到着に一日以上の差は生まれない。この世界に生まれたときの森に帰ってきた時のような速度でも出さない限りは、到着の時間などさして変わらないのだ。


「……いえ。これと言ってやっておきたいことはございません。このまま出発してしまっても私は問題ありません」


 わずかの間やりたいことを考えていたであろうアイリーンがそういってきた。どうやら特にやっておきたいことはなかったらしい。


「あ、そういえば、カース様。私が話を聞きに行った際、ギルドにて、蜘蛛の軍勢より助けた冒険者を確認しました。元気でやっていたようです。あの蜘蛛との戦いによっての肉体的精神的な怪我はなかったようです。また、今回の情報も最終的に《・・・・》彼らに教えていただきました」


 なにやら最終的にって部分をいやに強調したような気がするが今回はおいておこう。

 どうやら、ギルドで聞いたといっていたので、ギルドの受付にでも行って聞いたのかと思っていたが、冒険者に聞いたらしい。しかし、助けた冒険者?


「冒険者? ……ああ!」


 思い出した! ……たぶん。おそらくだが、アイリーンが蜘蛛の軍勢に突っ込んでいったときに聞いた理由の中にあった、軍勢に出くわしてしまっていた人間のことだろう。なんか、他にもいろいろとインパクト強いことが起こりすぎてすっかり忘れていた。

 こうして言われてみれば詳しく聞いてすらいない。確か、死んでないとか一人で歩けるとか、不穏なことを言っていたような気がするけど、大丈夫だったようだ。


「そうか、無事だったか。それは何よりだ。せっかくアイリーンが出向いたわけだしな」

「そうですね」

「……さて、では特にやり残したこともなさそうだし、行くか」


 それ以外に特に伝えたいことも、やりたいこともなかったようなので、そろそろ行くか。


「ところでカース様。その不届きものかつ不敬な鶏畜生にわとりちくしょうはなぜまだここに?」


 あ、鳥畜生から鶏畜生になってる……じゃなくて。


「そうだな。なぜまだいるんだろうな、しかもこいつ、俺の頭上からピクリとも移動しようとしない。あの双子についていくのかと思ったが、別れ際に一声鳴いただけだし、双子もなぜかそれを受け入れていたし……」

「消し飛ばしますか?」


 物騒だなおい。なんでアイリーンはそんなに鶏に対するヘイトが高いんだよ。絶対過去になんかあったな。しかもこれは触れたら面倒な奴だ。すごい根深そう。


「お、落ち着けアイリーン」


 そう、とりあえず、その握りしめたこぶしをほどいたうえでおろそうか。ンでもってこの鶏ももっとなんか反応しろよ。頭上で見えなかろうとさすがにわかるぞ、微塵も反応していないってことくらい。


「とりあえず、この鶏に聞いてみようじゃないか。今までの様子を見ている限りだと、それなりにこちらの言葉を理解しているようだしな」


 自分で言ってて思ったけどこっちの言葉をある程度理解する鶏ってどういうことだよ。いや、まあ、向うにいたころに飼っていたペットも妙に人語を理解しているのか? って思うようなことはそれなりにあったけど……。まあ、今はありがたいからおいておこう。

 ちなみに、一応、振り落とそうと首をぶんぶん振ったりもしてみたが、全然落ちないうえに、抗議の鳴き声を受けたので力ずくはあきらめた。位置的にも大声で鳴かれるとはっきり言ってうるさいのだ。


「さて、そこの名もなき鶏。お前、ずっとそこにいる気か? 別に好きなように行動してくれてもいいんだぞ?」

「コケ」

「……」


 どうやら、動く気はないらしい。


「お前は俺が人の姿を取った時もそこに居続ける気か?」

「コケ」

「……」


 この鶏、なかなかに図太いな……。俺、鶏を頭にのせながら行動できんのか? 確かに双子に乗ってた時はパッと見帽子に見えなくもないように縮まっていたみたいだけど……っていうか、もしかして。


「お前、ずっとついてくる気か?」

「コケ」


 ……ま、すぐに飽きるだろう。動物のやることはよくわからん。それにそれなりの速度で空を飛んでいくんだから、怖気ずくとかそういうこともあるだろう。


「はあ……。どうやらそういうことらしいから、アイリーンもしばらく我慢してくれ。動物のやることだ。じきに飽きるだろう」

「…………………………………………わかりました」


 なにやらとてつもない葛藤を目にした気がする。今までのアイリーンからは聞いたことも見たこともないほどの長さの沈黙だったぞ……。


「で、では、行こうか」

「はい。承知しました」


 やはり触らない方がいいだろうと判断して、出発を促すと、割り切ったのか、見ないことにしたのか、何事もなかったかのように頭上に向かって登り始めた。そして、鶏の隣あたりに腰を下ろした。


 冷や汗ものである。


 やっぱり無理にでも下した方がよかったのかなぁ……。でも無理におろしてもまた昇ってくる気がするんだよなぁ。そうしたら本格的にアイリーンが切れそうだ。うん、やっぱりこれでいいのだ。もう気にしない。さっさと飛ぼう。でもって目的地について心と体を休めよう。そうしよう。


 ああ、いい宿があるといいなぁ。ははっ。



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