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盗賊とうめき声

 私は遅筆です。時間が掛かってしまうのです。しかも、勢いで書いているので、あまりうまく書けませんが、どうかご容赦ください。

 先の事はあんまり考えていない気がします。

俺の趣味は、読書である。読むのは、ライトノベルやネットの小説ばかりだが、れっきとした読書である。

 その中でも俺が好きなャンルの中に、死んでしまった主人公が異世界に転生する、と言ったものがあるがのだが、まさにこの状況はそれに似ていた。

 ちなみにではあるが、読書に嵌ったのは丁度中学生後半ぐらいの時期で、その時期を境に徐々にコミュニケーションと言うものが苦手になっていった。


 まさか、俺がその状況になるとはな……。

 どうやら、俺は竜になってしまったらしい。

 まだはっきりと確認した訳ではないが、身体を見る限り間違いはないだろう。

 どこかくすんだような灰色の鱗に、長く丈夫そうな尻尾。背中からは、この巨体の半分ほどの立派な翼が一対生えていた。


 さて、とりあえず状況の確認を行う事にする。

 まず、転生したと言う事実。俺の持っている知識ではほかに思いつかないのでこれについては転生で通すことにする。きっとそのうち事実確認ができるだろう。


 竜になったと言う事実も今は納得する。と言うか、その点に関してはそれほど動揺していない。

 一度死んだと、自覚してしまっていると言う事も大きいのだろうか。なってしまったものは仕方がないと思えるのだ。

 当然未練が無いと言えば嘘になる。物語の主人公のように両親が事故で死んでいたり、仲が悪かったり、世界に絶望していたりと言った事は無い。友人も少ないとはいえ普通にいた。だから、もう一度家族や友人に会いたいと思うし、死んだ時の状況が喧嘩していたからこそ、俺からも謝りたいとも思う。

 しかし、本来なら死んで”ハイ、終わり”のはずが、こうして、しっかり記憶と自我をもってここにいると言うだけで御の字なのだ。竜になってしまおうが何だろうが、がたいことに変わりはない。


 次に、今いる場所だ。

 『転生』につきものなのは、『異世界』である。

 単純に読んだ話のほとんどが異世界に転生していただけなのだが、ここも異世界であると言える。

 理由は至極単純で、地球には竜なんぞいなかったからだ。

 さてそうなれば気になってくるのが、どういう世界か、だ。

 地球は、科学の世界で、俺のいた日本は、平和の国だ。

 戦争などはあるものの基本的に争いとは無縁で、のどかな世界。

 しかし、よくある異世界は剣と魔法の世界である。

 当然、争い事も必須だろう。生き残る事が重要になってくるはずだ。

 だが何よりも、異世界モノの話が好きだったのもあり、このの世界に少し期待して、気分が高揚していた事もありそういったものは後にしよう、と言う考えに至った。。


 争い事は後回しである。竜だし。


 改めて辺りを見回すと、どうやらここは深い森の一番奥の辺りの様だ。

 此処の周りにはほとんど生命と言う物の存在を感じない。たまにやってきた鳥が、木で休みさえずる程度。他には、何もいない。

 流石にこれだけではどんな世界か分からない。

 せめて、意思疎通ができる人間がいるといいんだけどな、と考えて、はたと疑問に思う。


 (俺、喋れるのか?)


 今の俺は竜である。当然人間とは違う生き物だ。喋れるか否かはかなり大きな問題である。言語が通じなくとも、喋れるのであれば、身振り手振りである程度の意思疎通は図れるはずだ。

 しかし、喋れないとなると、ただ吠えて襲って来ているように見えかねない。


「マイクテスト、マイクテスト。ん? あー、あ、あ、あーー」


 どうやら無事喋れるらしい。聞き慣れた日本語が耳に届く。耳があるかは知らない。

 しかし、その声にわずかに動揺した。

 その声は、この非常に大きな竜から出たとは思えない少年のようなそれでいて少女のような若々しい中性的な声だったからである。


「え、この声俺の声か? 全然似合わねぇな。……まあ、いっか。喋れるなら問題は無いだろう」


 ひとまず、声の問題は解決した。声に迫力があった方がそれっぽいが、今更どうしようもない。言語の方も実際に話さなければ分からないから、どちらもいまは捨て置くことにした。割と切り替えは早い方である。


「行くしかないかぁ」


 ようやく重い腰を上げる。いや、なんか体が重い。

 どうやら、動かし方は分かるものの流石さすがに人間の時とは勝手が違うようだ。

 それでもどうにか、身体を起こしよたよたと動き始める。本当ならば、翼もあることだし飛んでみたいのだが、生憎あいにく、今いる場所が決して広くなくまだ、この身体にも慣れていないので止めておくことにした。

 行くあても、これと言った目標もまだないので、とりあえず森の大きめのけもの道に沿ってゆっくりと足を動かす。

 一応首を下げて木を傷つけないように配慮したつもりだが、竜の通ったけもの道は無残にも荒れていた。ごめんなさい、森に住まう動物たち。


==========


 どれくらい経っただろうか。申し訳なさもとっくに消えて、今は快調に森を突き進んでいた。

 ぎこちなさ過ぎて『歩く』とは言い難かった行動が、身体に馴染み『歩く』と言えるようになってからもう一時間くらいが経過しているような気がする。慣れるまでがだいたい30分かかっていない程度の時間だったと思うので、一時間半は経っていないはずだ。

 それでもこの巨体。これだけの時間でも相当の距離を進んだはずである。

 体感距離にして20キロくらいだろうか。そこそこ慎重に歩いていたので、この程度だろう。いや、それでもこのくらいは進んだ、と言うべきか。

 目の前に急に大きく開けた場所が現れた。

 そこは、ちょっとした広場の様になった水辺の湖だった。


「おお~……。これは、すごいな……」


 思わず感嘆の声が漏れる。しかし、それも仕方のない事だろう。何せ、その湖は端が見えないほど大きく、日本で言う琵琶湖よりも大きく見える癖に底まではっきり見えるほどに透き通っていたのだ。

 それは、まるで絵画か何かの一部のように、神秘的に美しく見えた。


「丁度いいや。ここで少し休もう」


 独り言を呟きつつ、湖に向かって歩く。別に、水浴びをするつもりはない。ただ、喉が渇いていた。


「ここの水は飲めるのか? まあ、飲む以外に選択肢は無いし、ドラゴンなら案外大丈夫そうだが」


 さっそく、顔を水面に近づけ、口を湖に触れさせる。竜の動きにも慣れたものだ。人間の時はこんな風に水を飲んだ事は無い。

 しかし、慣れたと言っても、見た目に慣れたわけではなかった。


「おぉう! ……ああ、びっくりした。これ、今の俺の顔か。……そうか、こんな顔だったのか」


 未だ、波紋一つない透き通った水面には、竜と言うには美しく整った、どちらかと言えば凛々しい顔つきの竜の顔が映っていた。

 ふと、よくプレイしていたモンスターを狩る(ハントする)ゲームの鋼の竜を思い出した。


「あそこまでいかつくはないがそっくりだな……」


 しかし、こんな顔だったのか。とすると、この声でもあまり違和感がないかもな。それならこの見た目や声は、アリだろう。

 少し前の悩みが自己解決した。

 ともかく、今は、飢えている、水に。止まってしまった顔を動かし、ためしに一口水を飲んでみる。

 しばらく待ってみる。

 ふむ……、特に異常もなさそうだし、うまいから問題ないだろう。

 そこからは、一心不乱に、とはいかないまでも、かなりの量を一気にがぶ飲みし、ほとりでしっかり身体を休めた。


==========


「さて、休憩もできたし、ちょうど広いところにも出れたし、そろそろ飛ぶ練習でもしてみようかな」


 誰に言うわけでもないが、口に出して確認しながら行動に出る。

 もともと、翼があり、折角なら飛んでみたい、と思っていたので直ぐに行動に移る。

 翼の動かし方はこの身体になってから何となく感覚的に知っていた。おそらく、人間が歩くのと同じことだろう。

 なので、取り合えず翼に意識を集中する。

 『知っている』といっても、「出来る」と言う確信があるだけで、実際に動かしてみるまではどのように動くのか、分からないため油断できない。

 翼は、広げてみて分かったのだがかなり大きいのだ。身体の三分の二くらいはあるのではなかろうか。これ程のものが、無造作に奮われれば周囲の環境は一たまりもないだろう。

 慎重に翼を動かす。まだ、それなりにゆっくりなのだが、すでに湖の表面には小さくない波紋が風圧だけで広がり、森のほうもざわざわと騒ぎ出している。

 少し気合いを入れて、ばたかせる。

その時ふと、ある考えが頭を過ぎる。

 もう少しで、浮く(・・)

 どうやら、感覚がもう少しで浮くことを察したらしい。

 そして、実際にこの巨体が宙に浮いた。


「おお、すげー……、浮いてる」


 ためしに高く飛ぼうと考え、力を入れて羽ばたくと、高度はぐんぐんと上昇しだした。


「おお、おお、高い高い!」


 森が、小さくなる前に上昇を止める。どうやら俺が初めにいた場所は、この森の端だったらしく背後には背の低い岩山の様な地形が広がっていた。

 さっきまでいたあたりを見下ろしてみると、円形で外側に草は押し倒され、木もわずかにかしがっていた。


「こりゃぁ、すごい風圧だ。飛ぶときは周りの事にも気を使わないと駄目だな」


 しかし、飛べたと言う事実に気分は舞い上がっていた。取りあえず、何処でもいいからこのまま飛んでいきたい。ただ、特に目的地は無いので、来た方向とは逆方向に進む事にしよう。

 感覚に従い進むイメージをしつつ翼を羽ばたかせる。

 すると、空を滑るように体が動き出した。以外に速度が出ている気がする。風を切る感覚がなかなか心地いい。

 ただ、ここまでやってようやく違和感を覚えた事がある。


「なんか、翼を使って飛んでる、って感じがしないなぁ」


 と言う事だ。つまり、翼で空を飛んでいる、と言うよりは、翼も使いつつも何か別の力によって飛んでいる、と言ったような感覚だったのだ。

 テンプレ通りであれば、魔法的な物なのだろうが……。


「うーん……、その手の物が使えるんだったら面白いんだろうけど、正直使い方も分からんし放置しかないか」


 今は飛べるだけで充分楽しいので、忘れよう。と言う結論に至った。


 しばらく滑空することおよそ、10分。端の方から移動を始めたせいかもしれないが、それでも森はかなり広いようでいまだに端は見えない。しかしそんな中で何やら、先ほどの湖よりもかなり小さいものの、同様に開けた場所を眼下に発見した。そこには小屋らしきものも確認できた。

 しかも、近づくに連れて見えてきたのだが、人らしき影も大勢見える。

 徐々に速度を落とす。飛行もこの10分間のうちにすっかり慣れていたためスムーズに飛行できるようになっていた。


 どうやら、影は人であっていたらしい。こちらの世界の人とは初めての邂逅だ。

 ただ何やら雲行きが怪しい。

 まず、その人間の格好が怪しい。ボロボロのバンダナのようなものを頭に巻いて、薄汚れた七分丈のズボンを履き、袖無しの毛皮の上着を素肌の上に直接着ている、いかにもな服装なのだ。しかも、うろついている30人くらいの全てがその格好なのだ。

 しかも、こっちを見て、「化け物だ!」「らなきゃられるぞ!」等の声が飛び交っている。

 その声を聞き、おお、向こうに連中が何を行っているか分かるぞ! しかも、日本語に聞こえるな……、等と少し浮かれたが、どんどん状況は悪くなっている気がする。

 あれ? なんか騒がしくないか? ってか、なんか酷くないか? 化け物って俺の事だよな……。


「ああ、そういえば俺、竜だった」


 飛んでいるにもかかわらず、竜だと言う事をすっかり忘れていた。加えて言えば、竜の姿のまま会話に応じてくれる人間が果たして何人いるのか。それについての考えもすっぽりと抜け落ちていた。どうやら、この様子を見るに、このままでは普通の会話を期待するのは難しそうだ。そもそも、山賊か盗賊らしき恰好のやからと話が通じるのかと言う問題があるが、それについては、向こうの言っている言葉が分かるということから期待してもいい気はするが。


 と、すっかり自分の世界に入り込んでしまっていたが、どうやら、盗賊(仮定)たちは準備を整えたらしく、こちらに対して、弓を構えていた。


「弓か……、これ、射られたら流石(さすが)にヤバいかな? でも普通の弓っぽいし、一応俺は竜だから鱗で弾けるか」


 等と呑気に考えている間に、盗賊の頭らしき奴が声を上げた。


「撃てぇい!」


 どことなくドスの効いた重い響きの声の後に、次々と風を切るような音が飛来した。

 ただ、飛んで来る矢の音に異音が混じっている。明らかにただの矢の音じゃない。確かに風を切り進んで来るそれは普通の矢に見える。が、しかし、矢の周りを何か透明なものが、渦を巻いて包んでいるのだ。

 それでも、明らかに危険そうな矢に対して危機感を抱かなかったのは、無意識のうちにあの程度ならば問題ないと判断したからだろう。

 本能に近い部分で悟っていたそれは、間違いでは無かった。しかし、起こってしまったことは、そんな考えを貫いた。何が悪かったのか、と聞かれれば、ただ運が悪かったとしか答えられないだろう。

 一斉に飛んできた矢は、そのほぼ全てが風を纏っていた。しかし、そのせいで隙間を埋め尽くしてしまい、互いに干渉し、まるで光の乱反射のように暴れ回って矢の嵐と化してしまったのだ。

 その矢の嵐に上半身が包まれた。始めのうちは確かに何の問題も無かった。軽く(つつ)かれた程度のものだった。そんな中、吹き荒れる内の一本が顎と首の境目辺さかいめあたりに直撃した。

 一瞬の出来事だった。当たったその瞬間、視界が真っ白になり、(わず)かに遅れて恐ろしく鋭い、それでいて馬鹿みたいに重い痛みが全身を貫いた。


「GYAoooooooooou!」


 無意識のうちに、叫んでいた。そこに先ほどまでの楽観的な考えはない。

 余りの痛みに口を突いて出たその声は、人成らざる響きで森に行き渡り、そこに住まう全ての者を心の底から、身体の芯から震え上がらせた。

 盗賊達も例外ではない。すぐさま次の矢をつがえようとしていた盗賊の手から矢がこぼれ落ちる。仲間に指示を出していた盗賊のリーダーらしき者の怒号も止まり、歯をガチガチと打ち鳴らす。他にも、細かな作業をしていた盗賊の動きが止まる。

 竜の叫び声が止む頃には、森を不気味な程の静寂が支配していた。


 そして、唐突に惨劇の幕が上がる。

 すでに、はっきりとした意識は無い。


「ああぁっ……、邪魔だ!」


 朦朧もうろうとした意識のまま、鬱陶うっとうしいとばかりに、荒れ狂う矢をまるではえを払うかのように無造作に振るう。すると、その腕の動きに合わせて突風が発生した。

 突風は矢を巻き込み森へと吹きすさぶ。矢が、前衛で弓を構えていた盗賊達に当たり、強風が、その盗賊ごと木々をなぎ倒す。そのまま木々は砕け木片となり、さらに盗賊を巻き込んでいく。

 風に煽られ盗賊のほとんどは宙に舞い、決して柔らかくは無い地面に叩き付けられ、真っ赤な花を咲かす。

 運よく避けた盗賊は、盗賊よりも高く吹き飛ばされた木片により、ハチの巣と化す。


 一瞬だった。ほんの二、三秒のうちに辺り一面がらくたの山と成り果てた。そこには鬱蒼と茂っていた森も、そこに住まう動物も、動き回っていた盗賊も、その盗賊が住んでいたであろう小屋もなにもかもが無くなっていた。

 森のあった場所は荒野のように地面を晒し、小屋は土台のような後と僅かな床の痕跡を残し更地と化していた。

 空に舞う一匹の竜を中心に直径1キロメートル程の範囲にはもう生命と呼ばれるものはいなくなっていた。

 そして、先程までの嵐が嘘のように静かな空間が形成された。酷く物悲しい空間だった。

 そんな静寂を一身に受け、僅かな間とは言え意識が朦朧としていた俺はようやく我に返る。


「これは……、俺がやったのか……」


 ゆっくりと地上に下りながら、思わずといった様子でこぼれた言葉には、されど人を殺したことについての後悔の感情などは無かった。強いて言うなれば、森を破壊してしまったことに対する申し訳なさや、たったの一振りの破壊力の高さに対する驚きの感情があった。


「なんていうか……、あんまり人を殺してしまった事についてあんまり後悔しないんだな……」


 何となくだが、理由は理解している。

 さっきは舞い上がって忘れてしまっていたが、結局は『俺は竜。元人間ではあるが、今は違う。だからさっきの奴等は違う生き物』と言ったような考えが心のどこかにある様なのだ。ただ、奴等が攻撃してきたと言う事も『殺人』と言う事実を容認しやすくしている一つの要素な気がする。違う生き物でも、結局は元同じ生き物と言う感覚もあるのだから。


「まあ、何にせよ有り難い。後悔はしなくとも、『罪悪感が無いか』と問われれば流石に無くは無いからな。後悔してここで立ち止まるってのが一番困る」


 先ほどの戦闘で、否が応でも理解させられた。ここが異世界で、そんなことで躓いていてはすぐに命を落とすであろう事を。

 そりゃあ、竜が頭上に飛んできたら矢くらい射掛けたくなろう。ただ、そういう事ではないのだ。

 地球ではそう思っても手元に弓矢などない。しかしそれがある。それこそ決定的で間違えてはいけない違い。盗賊だけしか見ていないからと言って、あれだけの数の武器を持ち寄れるのだ。少なくとも、地球よりも身近だろう。

 加えて、竜は決して無敵ではない。そりゃそうだろう、と思うかもしれないが、少なくとも、人間にはどうしようも出来ない存在だとばかり考えていた。無意識のうちに。人間は竜よりも下の存在である、と。

 しかし現実は、竜にも弱点があり、人間でもそこを付くことが出来ると言う事だった。

 確かに、地球の御伽噺に出て来る竜には、『逆鱗』という弱点のようなものがある。しかし、フィクションの中ではあまりそういう話を見なかった。俺が、そういった話を読まなかっただけかもしれないが、少なくとも、よくある話ではなかった気がする。大抵が、かなり強いか、それこそ神にも匹敵するレベルの存在だったりすることが多い。雑魚い竜でも、弱点なんて聞かなかった。そもそも、弱点があっても、盗賊が如何こう出来るものじゃなかったはずだ。


「取りあえず今は気を付けるくらいしかできないし、戦闘に関しては慎重に行こう。魔法的なもの……もう、魔法でいいや。魔法もうまく使えないし」


 そう。今はどうしようもできないのだ。先ほどの強烈な突風も偶発的な物で自発的にはどうすればいいかまだよくわからないし、弱点である部位はこの巨体では隠し様が無い。なので、決意するだけにした。もし、戦うことになったらその時に改めて考えよう。最悪は、逃げよう。


「さて、とりあえずどうするか……」


 呆然とし、いろいろと考え、ふと気が付けば、太陽はすでに頭上を通過した後だった。

 流石に夕方とまでは行かないが、もう三時位にはなっているのではなかろうか。

 

 先ほどの空からの光景を思い出すと、この森の終点はまだまだ先だったはず。このまま行けば、夜になってしまうだろう。

 人間だった頃は、夜目が全くといっていい程効かなかった。地球であれば完全な暗闇などそうそう行き当たらないが、こちらでは簡単にお目にかかれるだろう。

 はっきり言って御免被りたい。

 なにせ、こちらでは夜になったときに夜目が効かなければ命に関わる。

 仮に効かないのであれば、せめて、あの初めにいた場所で、壁を背にしておきたいのだ。何というか、先ほどの戦いで少し臆病になっている気がするが、このくらいがちょうどいいだろう。

 因みに腹は得に減っていないので、食糧についてはまだ考えていない。


 ということで今回は、ここいらで引き換えそう。


 そう、結論を出した矢先だった。

 何処かからくぐもったうめき声のようなものが聞こえたのだ。


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