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確定した未来

 黒煙が上がり、周囲は熱気に包まれ、そこかしこで火の手が上がっていた。


 瓦礫の山の上に立ち血塗れの刃を持つ影。

瓦礫の山から転げ落ち、俯せのまま起き上がることができない金髪の少女。

瓦礫の山の下からその光景をただ見ていることしかできなかった少年。


少女の背中は赤く染まり、止めど無く鮮血が溢れる。その終始を目の当たりにした少年の胸中にはどうしてという疑念が尽きない。今までだって、これからだって一緒に居ると誓った。仲間だと認め合った。同じ釜の飯だって食べた。だから友達だとも少年は思っていた。


少年は悪夢のような世界で思うように動かない足を地に這わせるように動かす。

少女の呼吸は薄く、致死の溜池をゆっくりと、しかし確実に広げていた。

 血の滴る刃を持つ影がゆっくりと少年の方へと振り向く。


影は涙を流しながら笑っていた。


「君の人生は既に決まっていたんだよ。こうなる結末は脚本通り。君の意思だと思っていたこと全てが予定調和だったんだよ。君は主人公ヒーローのように全ての問題を解決できると信じ込まされた裸の王様。君一人の力では何一つ満足にできない。君の偽善によって救われるのは君自身だけ。手が届く一人の少女さえ助けられない不能で無力で非力な子供。掌で踊る無様で間抜けで滑稽な道化ピエロ。無知で蒙昧で白痴な案山子」

 影は笑いながら訳の分からない言葉を少年に次々に投げかける。赤く充血したその瞳は君には分からない話だろうけどと更に語っていた。


 少年は影が口にする言葉の全てが理解できなかった。

「そんなことはどうでもいい!!」

 少年は影が投げかける言葉を一蹴する。少年の中にある疑問はただ一つ。

「どうして……一緒に飯を食った仲間を刺せるんだ!」

 一緒に鍋をつついて笑った。

 皆で食べると美味しいと言ってくれた。

 また一緒に食べようと約束もした。

仲間だったと信じていた存在が一瞬にして敵になる。きっと何か理由があるに違いないと縋るように見つめる。何故こんな事をするのか。打ち明けてくれると一縷の望みに手を伸ばす様に。

しかし、少年は縋るように影を見つめるが、影は背を向け、無情に少年の心にも刃を刺した。

「君達と一緒の食事は真水のように味気なかったよ」

 抑揚の無い声でそう告げ影は消えた。

僅かな希望にさえ伸ばした手は届かない。少年が抱いていた友情は幻想だったと思い知らされた。

 その場に残されたのは血染めの少女と涙を流す少年の二人だけだった。


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