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学園新聞21

映画館


E列


「クソ!どうして俺達が払わなきゃならなかったんだ!!」

「って言うか、よく気付かれなかったな!?」


「文句を言わないでよね」

「私だって痛い出費なんだから」


「夜風に怒られる…」

「共同で使ってるんだぞ…」


「うぅ…、久しぶりの外出だからお菓子でも買おうと思ったのに…」


「お前は2000円しか出してないだろうが!!」

「俺は4000円だぞ!?」


「俺は5000円だが?」


「私は13000円だけど?」


「ぐっ…!」

「って言うか!俺達が払う必要性、有ったか!?」


「着いてきた事を後悔しなさい」


「こッのッッッ…!!」


「お客様…、大変申し訳ありませんが、もう少し落ち着いてくださいませ」

「上映が始まりますので」


「くっ…!!」



A列


「…?」


「どうかしましたか?」


「いや、聞き覚えのある声が…」


「?」

「あ!もうすぐ、始まりますよ」


「え-と、なんて言う映画だっけ?」


「呪羅疾駆VAIO葉座亜土です」


「何処かで聞いたような名前だね」


「そうですか?」



ヴァ----ン…


「間もなく上映が始まります…」

「寒いお客様などは毛布を貸し出しておりますので…」


「ッ…」


ブルッ


「寒い?」


「も、毛布!借りてきます!!」


「上映、始まっちゃうよ?」

「ほら」


「え?」


ファサッ…


天鹿和の上着が女の子の肩にかけられる


「コレって…」


「俺の上着が毛布代わりになるのなら」


微笑む天鹿和


「ありがとうございます…」



E列


「アレは完璧なカップルだろ」


「流石に刃影君でも解るわね」


「「流石に」って何だよ」


「まさか…、天鹿和が女性を気遣うとは」


「裏の尻ぬぐいには慣れてるんだろ」


「うぅ…、アメ…、買おうと思ってたのに…」

「コ-ラ味とラムネ味…、グスッ」


「解ったから泣くんじゃねぇよ!!」

「後で買ってやるから!!」


「うん…、グスッ」


「美海ちゃんの御陰で小さい子の扱いに慣れたわね、刃影君」


「水無月も俺達と同じ2年だけどな」



A列


「暖かいです…」


「良かった」


「はい…」


テテレッテテ-、テレレレ-♪

テレッテッテ-、テ-♪


「ある町中に…、世にも恐ろしい魔物が解き放たれた…」

「恐竜の遺伝子を配合されたゾンビが町を襲い…」



E列


「…フン」

「C級映画か…」

「見る価値も無い」

「寝させて貰う」


「私、こういうのは好きなのよね」

「寝るなんて勿体ない」


「俺も好きだな」


カタカタ…


「どうかした?水無月ちゃん」


「怖い…」


(ホラ-系は苦手だったわね…)



A列


「キシャァアアアアア!!」


「きゃぁっ!!」


ガバッ


天鹿和に抱きつく女の子


「あ!ご、ゴメンなさい…」


「…」


「天鹿和さん?」


「…ぐぅ」


(寝てる…)

「寝てるなら…、大丈夫だよね…」


静かに天鹿和の手に女の子の手が重ねられる



E列


「良いなぁ…、私も鬼怒さんと…」


「…」


「寝るんじゃなかったの?」


「うるさい」

「今、寝ようとしてるんだよ」


「ヒッグ…、グスッグスッ…」


「何か泣き出しちゃったんだけど」


「怖いよぉ…」


「あらら…」



A列


「…」


すぅすぅと寝息を立てる女の子


「…チッ」

「映画館で寝てるんじゃねぇよ…」




上映終了


「あ-!怖かった!!」

「ん?面白かった、かな?」


「どっちでも良いんじゃない?」


「うぇ…、ヒグッ…」


「いい加減、泣き止め」


「だって…、あの恐竜型ゾンビ、タイラ-ンが出てきた時のね…」

「主人公がね…、タイラ-ンをナイフで滅多刺しにしてね…」


「滅多刺しにしたのは普通のゾンビだ」

「タイラ-ンは火炎放射器で焼き尽くしたんだよ」


「しっかり見てるじゃない、刃影君」


「偶々、そのシ-ンが目に入ったんだよ」


「素直じゃないわねぇ…」


「あれ?俺達、何か忘れてない?」


「え?」


「…」


「…」


「…」


「…天鹿和ァ!!」



ファミリ-レストラン


「…い!おい!!」


「ふぇ?」


「起きたか」

「手間ァ、かけさせんな」


「あ、天鹿和さん!?」


「裏だがな」

「で?この状況を説明しやがれ」


「えっと…」

「その…」


「心配すんな」

「俺は裏だ」

「表じゃねぇよ」


「…」


「あと…」

「そこにコソコソ隠れてるバカ共」

「出てこい」


「誰がバカだ?」


「は、刃影君!!」


「お前達も出てこい」

「コイツに見つかったら隠れても無駄だ」


「う…」


「さぁ-て、説明して貰おうか?」







「…フン」

「俺が?一晩の過ちを?」

「アハハハハハハハ!!!」


「何が可笑しいんだ?」


「幾ら俺でも、そんな事はしねぇよ!!」

「だろ?」


「はい…」

「部屋のことケンカしちゃって…、寮を飛び出したんです」


「で、俺が困ってるコイツを部屋で泣かせてやったんだよ」

「勿論、離れて寝たんだがな?」

「そういう風な状態には見えねぇな」


「…すいません」


「…どういう事なの?」


「春白ォ、説明しろや」

「何で表をハメやがった?」


「え?」


「お前等も鈍ィな」

「この事件の黒幕はコイツだよ」


「えぇえええ!?」


「…説明するわよ」

「この子が前々から天鹿和君に好意を持ってたのは知ってたわ」


「持ち始めたのは合同任務の時だろ?」


「はい…、合同任務で天鹿和さんと一緒に戦ったとき、助けられて…」

「それで…、その…、凄くカッコイイし、優しいから…」


「好きになっちゃった、と」


「はい…」


「春白が応援する理由が解らんぞ」


「この子ね、元鬼怒さんファンクラブの子なの」

「そのリ-ダ-に頼まれたのよ」


「「頼まれた」って…」

「お前がリ-ダ-だろうが」


「そうだよね」


「うん、2、3年生は全員が知ってるよ」


「常識だ」


「バレてねぇと思ってたのか」


「…え」


「で?その可愛い後輩の為ってか?」

「無理はさせたくないから好きなようにしろ、と?」


「…そうよ」

「私はキッカケを与えてあげたに過ぎないわ」


「春白先輩…」


「…なるほど」

「下らねぇ事なら今すぐ皆殺しにしてやろうかと思ったが…」

「計画、変更だ!!」


「?」


「幸い、表は寝てる」

「俺も協力してやるよ」


「って!アナタも「天鹿和 輝鈴」でしょ!?」


「そうだがな」

「表と俺は別だ」

「表にも迷惑をかけてるからなァ…」

「少しぐらいの恩返しはしてやりたいんだよ」


「珍しい事、言うじゃないか」


「うるせぇ」


「じゃ、私達でプロデュ-スね!!」


「俺は降りる」


「え?」


席を立つ刃影


「元から面白半分で見に来た様なモンだ」

「コイツの為?天鹿和の為?知った事じぇねぇんだよ」

「俺は帰る」


「あ、天鹿和君!!」


「春白!!」


「首狩君!?」


「…俺は刃影との付き合いが長い」

「見てれば解るさ」


「え…?」


「帰るぞ、水無月」


「え-!?」


「アメ、食いたくないのか?」


「う!うぅ…」


「…どうする?」

「今ならな…」


ボソボソと水無月に耳打ちする刃影


「…皆!ゴメン!!」


「水無月ちゃんまで!!」


「頑張ってね-!!」


「そんな…」


「…まぁ、2人は帰っても仕方ないだろ」

「…ッ」


「どうしたの?天鹿和君」


「日中だからな…、俺が表を抑えておくのは無理が有るんだよ」

「そろそろ…、表が目覚め…る…」


バタッ


「…隠れましょ」


「え!?え!?」

「あ!あの!天鹿和先輩は!?」


「起きたら適当に言い訳しといて!!」

「お願いね!!」


「そんなぁ…」

読んでいただきありがとうございました

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