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学園新聞13

「…」


不機嫌そうに眉をしかめる挽我


「動かないでくださいよぉ~」


挽我の腕に包帯を巻く七糸


「…なぁ」


「どうしたんですかぁ~?」


「自分で言うんも何やけどな?」

「ワイは怪我人や」


「そうですねぇ~」


「寺冬も軽傷やけど、怪我人や」


「そうですねぇ~」


「…七糸さん」


「何ですかぁ~?」


「アンタは無傷や」


「そうですねぇ~」


「今、ワイの治療をしてくれとうワケや」


「そうですよぉ~?」


「その怪我人2人の額に文字を書くとは…」

「どういうつもりや?」


「何となくですぅ~」


「「何となく」で書くかいな?普通」

「見てみぃ、寺冬やショックで微動だにせんで」


「寺冬君は「恥」、挽我君は「変」ですからねぇ~」

「で、どうでしたぁ~?」


「何が?」


「外で戦ってきたんですよねぇ~?」

「私は鏡燕さんに着いてきたので、戦闘には参加しませんでしたからぁ~」

「強かったですかぁ~?」


「…言う程でも無いわ」

「武装集団以下やな」


額の恥ずかしい文字をタオルで拭き消す挽我


「そうですかぁ~?」

「学園に攻めてくるから、もう少し手強いかと思ったんですけどぉ~?」


「簡単すぎるんや」


「はいぃ~?」


「簡単に殺せてまう」

「出てきたかと思えば、防御とか関係なく突っ込んで来る」

「殴り飛ばせば、それで終わりや」


「捨て身ですかぁ~」


「…そうやな」

「もしかしたら、それ以上かも知れへん」

「何て言うか…、命を命と思うてない」

「死んで当たり前、かすり傷で儲け物」

「まさに「特攻」や」


「…好めない戦法ですねぇ~」


「そうやろ?」


「だから、こんな事も出来るワケだ」


ため息をつき、七糸の肩を叩く天鹿和


「どうしたんですかぁ~?」


振り返った七糸は息を呑む


「コイツが腹に巻いてるモン、何か解るか?」


「だ、ダイナマイト…」


「そうだ」

「「捨て身」や「特攻」の類じゃねぇ」

「宗教の狂信者みたいなモンだな」


「傷が…」


天鹿和の肩から血がしたたり落ちる


「あ?あぁ…」

「狂ったみたいにナイフ振り回して来やがったからな」

「少し斬った」

「包帯、くれ」


「は、はいぃ~」


グルグル…


「…宗教の狂信者」


「どうかしたのか?挽我」


「もしかしたら、アイツ等は精神暗示系で操られて…」


「それは無い」


「な、何でや?」


「見てきたからな」

「このテの奴達は」


「どういう意味や?」


「心の拠り所が無い奴等ってのは拠り所を見つけると、すぐに拠り所にすがる」

「当たり前っちゃ、当たり前だがな」

「拠り所には絶対服従」

「「命を捨てろ」と言われれば捨てるし、「死ね」と言われれば死ぬ」

「どうしてだと思う?」


「わ、解らんわ…」


「…教えてやるよ」

「拠り所が無いのは、自分の存在意義が無いと感じる」

「そう感じるのは死んでる状態と同じだ」

「過ぎ去っていく時間と進んでいく周りの人間に恐怖を覚える」

「自分はどうして居るのか?どうして生きているのか?」

「心が恐怖、恐怖、恐怖で埋め尽くされていく」

「そんな時に拠り所が出来てみろ」

「偶然、百億円を拾うより、世界的な発明をして名誉を獲るより嬉しい」

「死んだも同然の状態から抜け出せるんだからな」

「そして拠り所を失いたくない一心で拠り所に従う」

「だから、命も惜しまない」


「…気に入らんな」

「拠り所ぐらい、自分で見つけろって言う話や」


「そんな簡単なモンじゃねぇんだよ」


グル…


「巻き終えましたぁ~」


「おう、ありがとよ」

「じゃ、守護に戻るわ」


「ちと待ちぃや」


「あ?」


「アンタも「拠り所」を無くした事が有るんか?」

「そうやなければ、そこまで言えんやろ?」


「…まぁな」

「ま、個人情報って事で」


手をブラブラとやる気無さそうに振りながら、天鹿和は守護へと戻っていく


「…テメェも人の事は言えねぇんじゃねぇの?」


「!!」


バタン…


「どうかしましたかぁ~?」


「…何でも無いわ」

(確かになぁ…)


挽我は気付いていた

自分も寺冬は勿論、本部役員の全てが彼等に似ている、と

意味なき特攻をするワケでもないし、命知らずなワケでもない

それでも挽我は感じていた


(ワイ達は…、神月総督と仲間を心の拠り所にしとったんや)

(アイツ達と同類か…?)


「違いますよぉ~」


「!?」


「アナタ達は彼等と同類ではありません~」


「何で…!?」


「能力で心の声を盗み聞ぎしましたぁ~」

「急に黙りこくっちゃったんでぇ~」


「プライバシ-もクソも無いな…」


「…アナタ達と彼等の決定的な違いを教えましょうかぁ~?」


「いや、別に良えわ」


「冷静に考えれば小学生でも解りますからねぇ~」


「そうやな」


小さくため息をつく挽我


「拠り所の違いや」

「命を捨てても良えって思える程のモンが有るんは結構や」

「ほなけど、捨てる事に疑問を持たんのはアカンやろ」

「ワイ等だったら、命令した奴が仲間を見捨てる様なら速攻で命令した奴をぶっ殺すで」

「仲間が、自分が大事やから」


「それが正解だと思いますよぉ~」

「まぁ、正解は1つじゃないですけどぉ~?」


「そりゃ、そうやろ」


「…頼もしい下っ端が居て嬉しいですねぇ~」


「そうやな…」

「…ん?」


「どうかしましたかぁ~?」


「「下っ端」?」


「そうですけどぉ~?」

「新聞部の下っ端ですよぉ~」


「もう少しマシな言い方せぇや!!」

「「部下」とか!「作業員」とか!!」


「面倒くさいですぅ~」


「おい!!」


「おやおやぁ~?楯突く気ですかぁ~?」

「いけませんねぇ~」


ギリギリギリ!!


容赦なく挽我の包帯を締め付け卑劣に笑う七糸


「痛でででででで!!」


「冗談は置いておきましてぇ~」


「「冗談」!?」


「何処に行くんですかぁ~?鏡燕さん~」

「鏡燕さんも少しは負傷してるんですよぉ~?」


「…ちょっとね」


「…トイレですかぁ~?」


「ま、そんな所」

「じゃ、行くから」


バタン


「…」


「変な感じやな…」


「…あのバカ」


「え?」


「何でも無いですよぉ~」

「それより、アナタも負傷者の手当を手伝ってくださいぃ~」


「ワイ、怪我人なんやけどな…」

読んでいただきありがとうございました

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