学力検査7
(…あれ?)
仰向けに倒れている秋雨
「何で…、僕は…?」
「秋雨…!立て!!」
「竜山…?」
「お前が要だ!!」
「急げ!早く!!」
「何が…?」
「何やってんだ!お前が倒れたら…!!」
「誰が××を守るんだよ!?」
「××…?」
「××って…、誰だ?」
「お前が告白した相手だろうが!!」
「しっかりしろ!!」
「僕が…?告白した…?」
「いつ…?誰に…?」
「水無月さんに?それとも…」
「秋雨ッ!!」
「ッ!!」
「寝るな」
「俺の授業は寝るほど退屈か?」
不機嫌そうに眉をしかめるコクト
「す、すいません…」
(そうか…、今は社会の授業中か)
「まったく…、イタリアから寝る生徒を怒りに来たワケじゃないんだぞ」
「次の問題は…」
「…珍しいな、秋雨が寝てるなんて」
小さく笑う竜山
「昨日の天鹿和さんの部屋での掃除が原因かな…」
「おいおい!それだったら俺だって掃除したぞ?」
「…昨日の晩、GLの愚痴を聞き続ける役目を負ったのは誰だっけ?」
「竜山は「火衣良ちゃんが寂しがるから」って、すぐに寝るし…」
「いや-、眠かったから」
「で?何の愚痴だったんだ?」
「「勉強が上手くいかない」らしいよ」
「学園には長く居るけど、勉強は苦手らしいね」
「そうなのか…」
「ん?」
竜山の腕の下には黒い影
「何だ?コレ」
パコォン!!
「ぶっ!!」
「話をするな」
「ふぁ、ふぁい…」
「では、1192年に…」
「何だ?今の…」
「さ、さぁ…?」
キ-ン、コ-ン、カ-ン、コ-ン
「じゃ、授業を終わるぞ」
「テストは3日後だ」
「残りの2日は解らない所を予習するための時間だ」
「遊ぶための時間じゃないぞ」
「解ってるな?」
「は-い」
「以上だ」
「解散!!」
渡り廊下
「痛~!あの黒い影、何だったんだろうな?」
「それは良いけど、授業内容は頭に入ってるのか?」
「テストが有るんだから…」
「それは良いけど…」
ぐぅ~
「…小腹が空いてるみたいだな」
「食堂に行こうか?」
「いや、喫茶店でパンでも買ってきてくれ」
「竜山は?」
「先刻、教室に教材を忘れてきちゃったんだよ」
「取りに行ってくるから」
「解った」
「火衣良ちゃんによろしく」
「おう」
喫茶店
「そう、そう」
「その後で水を足して…」
「すいません」
「お!いらっしゃい」
金田が店内から出てくる
「注文は?」
「チョコパンと…、メロンパンで」
「はい、毎度あり」
「火衣良ちゃん、頑張ってます?」
「うん!飲み込みが早くて助かるよ」
「昨日はミナモは見つかったの?」
「はい、無事に」
「良かったね」
「金田ァ!パスタが!パスタが燃えてるぞ---!!」
「えぇ!?」
「じゃ!少し待ってね」
「は、はい…」
「…お待たせ」
「何か…、大変そうですけど」
「今は火衣良ちゃんに美海ちゃんも来ててね」
「「花嫁修業」らしいよ」
「そうなのですじゃ…」
「執事さん!?」
「お嬢様は…!刃影様の良き花嫁になるべく、花嫁修行中なのじゃ…」
「うぅ…!何と刃影様は恵まれているのか…!!」
「本人に自覚はないと思いますけど…」
「そうなのですじゃ!!」
「何と!何と無自覚か…!!」
「し、執事さん!落ち着いて…」
「も、申し訳ない…」
「で、花嫁修業は上手くいってるんですか?」
「それがね…」
「ガルスさ-ん!この火はどうやって止めるんですか--!?」
「駄目-!それ、フランベ-----!!」
ガタガタ!!
「…この有様でね」
「お嬢様は、つい先日に掃除を習得なされたばかりで…」
「料理は特に苦手なのでございます…」
「た、大変ですね…」
「ドジっ子属性…!それも良し…!!」
「…何してるんですか?骸瀧さん」
「いや、2人の妖精が喫茶店に居ると聞いてね」
「見に来たんだよ」
「そうなんですか…」
(「妖精」って…)
「いや-、可愛らしい」
「幸せそうですね」
「あの妖精に水無月ちゃんも加わってくれれば文句なしなんだけど…」
「水無月さん…、ですか」
「どうかしたのかい?秋雨君」
秋雨の脳裏に夢の竜山の言葉が過ぎる
(「お前が告白した相手だろうが!!」)
(僕が…、告白した相手…)
(僕が…)
「秋雨君!!」
「は、はい!?」
「ボウッとして…、大丈夫かい?」
「す、すいません…」
「授業だけでなく、喫茶店でも寝る気か?」
「コ、コクトさん!?」
「どうして、ここに…!?」
「俺でもコ-ヒ-ぐらい飲む」
「金田、頼む」
「毎度あり」
「…じゃ、私は妖精が見えた事だし、帰るよ」
「じゃぁね、秋雨君」
「はい、さようなら」
(竜山…、忘れ物して良かったな…)
ズズズ…
「…金田」
「何だ?コクト」
「あのガキ共は?」
「この学園に居る子さ」
「今は花嫁修行中だって」
「…ふん」
「不機嫌そうだな?コクト」
「イタリアから授業のためだけに呼び出されて、その授業でも寝る生徒が居る」
「不機嫌になるのも当たり前だ」
「ふ-ん」
「まぁ、ロックの要請だからな」
「断れないだろ?」
「…恩義は返す」
「お前らしいな」
「コクトさんって…」
「…何してる?」
「あぁ?」
コクトを睨むメタル
「喫茶店で何してるか、って聞いてんだよ」
「貴様こそ、何をしに来た?」
「働かない従業員が」
「あぁ!?」
「お、落ち着いて!!」
「あ-、良いよ、秋雨君」
「金田さん!!」
「毎度の事だから」
「えぇ!?」
「俺に負けた野郎が…、何してやがる?」
「あの時は手を抜いてやったんだよ…」
「本気でもない俺に負けそうになったのは…、誰だ?」
「戦るか!?」
「殺ってやろうか!?」
ベシャッ
コクトの頭に焦げたパスタが降ってくる
「ご、ごめんなさ--い!!」
「…チッ」
「興冷めだ」
「俺もな」
「ね?」
「「ね?」じゃないですよ!!」
「ヤバイ雰囲気でしたし…!!」
「まぁ、気にしなくて良いよ」
「どうしてメタルさんとコクトさんって仲が悪いんですか?」
「…昔ね、戦った事が有るんだよ」
「まぁ、メタルが勝ったんだけど」
「それが原因かな-?」
「あれは手を抜いたんだよ」
「嘘つけ」
「本気だっただろうが」
「あぁ!?」
「戦るのか?」
「そう言えば…、あの影みたいなのはコクトさんの能力ですか?」
「う-ん、「影みたい」って言うか「影」だね」
「コクトは影を自由自在に操るんだよ」
「影を?」
「そうだよ」
「影をエネルギ-で具現化したり、硬度を上げたり」
「メタルも苦戦したよ」
「勝ったけどな!!」
「手を抜いたって言ってんだろうが!!」
「あぁ!?」
「ま、そう言う事だよ」
「で?コクトは頭の上のパスタを乗せてるままで気にならないのか?」
「まだ乗ってたのか?」
「かぶり物の上だと解り難いんだよ」
「かぶり物?」
「その壺みたいな…」
「…そうだよ」
パサッ…
「…ふぅ」
「!?」
コクトが壺のようなかぶり物を脱ぐ
「…ッ!!」
絶句する秋雨
「驚いただろう?」
爆笑する金田
かぶり物の中からは絵に描いたような女性
「え…?え…!?」
「コレで男だから」
「男なんですか!?」
「当たり前だ!!」
「俺は、この顔が大ッ嫌いでな…!!」
「どうしてですか?」
「綺麗な顔なのに」
「だからだよ!!」
「この顔を見ると、訳の分からん女共が寄って集って来るんだよ…!!」
「ウゼェったら有りゃしねぇ!!」
(モテすぎて怒る人なんて初めて見たよ…)
「だから、コレを被ってるんだよ」
「そうだったんですか…」
「秋雨君、お待ち遠様」
「あ、どうも」
秋雨にパンを手渡す金田
「火衣良ちゃんに「よろしく」と伝えてください」
「うん、任せてね」
「じゃ、失礼します」
「うん、バイバ-イ」
帰って行く秋雨
「…コクト」
「何だ?金田」
「ジュラや幻塔、ロウは元気か?」
「…しばらく会ってないが、元気だろう」
「カンパニ-で仕事に励んでいるはずだ」
「どうしてイタリア支部に連れて行かなかったんだ?」
「…この世界では奴達は馴染めない」
「…そうか」
「また、会いに行くか…」
「金田、お前はジュラとは会うなよ」
「何でだ?」
「あの大会で、お前に負けたのを根に持ってるからな」
「アハハハハハ!アレは運だろ」
「ジュラは「運」で負ける様な奴じゃない」
「…そうかもな」
「お前は負けたけどな!!」
爆笑するメタル
「何だと!?」
「戦るか!?あぁ!?」
ベシャッ
メタルの頭に焦げたパスタが降ってくる
「ごめんなさ-い!メタルさん!!」
「…金田」
「何だ?」
「花嫁修業の前に、パスタを飛ばさせない訓練をしてくれ」
「…それには同意だ」
「…解った」
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