3章・努力だけで結果は残せない
やはりというべきか、2時間じゃ大して有力な情報は得られなかった。
「アリシアに期待……だな」
「あ! リックさ~ん!」
……と、噂をすれば、だ。
嬉しそうに駆け寄ってくる。これは、何か良い情報が手に入ったか?
「コンパスの使い方、思い出しました~!」
なんだ、有力な情報を聞いたワケじゃないのか。
ま、楽が出来るならそれに越した事はないけどな。
「そうか! 早速使ってみてくれ!」
魔術に頼っては情操教育にはならないような気もするが、この2時間の聞き込みは結構な経験になったはずだ。
「ここをこうして……ここを、こうして…………」
あ、そういえば発明者本人がここの図書館に居るんだから直接聞けばよかったな。
ま、それじゃ情操教育にならないから黙っておくけど。
「できました!」
アリシアの見せてくれたコンパスは、北を向かずに明後日の方向を指していた。
「N極の方へ向かえば良いのか?」
「はい、確かそうだったと思います」
俺達はそのコンパスが指し示すままに歩き出す。
「壁とかも突き抜けて表示されるから結構面倒だな……」
何の手掛かりも無いよりは遥かにマシではあるが。
「そうですね、シュアナさんに伝えておきます」
「改良品でも作ってくれるのか?」
「はい。不満な点を言ったら、あっと言う間に改善しちゃいますからね、シュアナさんは」
すごいヤツだな。
「そんなにすごいヤツなら1回くらい会ってみたいな」
「や、やめておいた方が……良いんじゃないでしょうか……」
「どうして?」
「シュアナさん、研究の邪魔をされたらすごく怒るんです。それはもう……遠慮容赦ない攻撃が……」
アリシアが惨劇(?)を思い出して身震いする。
「多分、普通の人が会ったら……死にますね」
「死ぬのか」
「はい……シュアナさんの『かいはついよく』に火が点いたら誰にも止められません……ほんとに」
アリシアでもシュアナってヤツには勝てないのか?
こう言うヤツは引きこもってて運動不足になりがちだと思うんだが……。
ま、どうしても会いたくなったら、フィーリスでも連れてきゃ大丈夫だろ。
そんなことを考えながら俺たちは目的地へと歩き続ける。