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11章・身分だけで年齢は推測できない

 約束の場所は、昨日向かった廃墟街の中にある、空き地だった。


「おや、もう来たのか。約束の時間には少し早い気がするが?」

「そちらこそ」

「それで、そちらの可愛らしいお嬢さんが『優秀な助手』と言うことかな?」

「はい」


「ボソッ(お嬢さんって年でもないだろうに……)」


「あ、ちょっと待ってもらえますか?」

「「?」」


 2人して頭にクエスチョンマークを浮かべていると、アリシアに袖を引っ張られ、裏路地にまで引き込まれる。


「ひとつお訊ねしたいんですけど……」

「な、何でしょう?」

「私って、何歳か知ってます?」

「い、いや、シラナイヨ?」


 でも、大学3回生ともなればおのずと年齢は……。


「じゃ、私、何歳ぐらいに見えます?」

「にじゅうい――――っとお!?」


 気が付けば、アリシアの左掌には新訳・無名祭祀書が、右掌にはハスターの剣が、俺の喉元にはその切っ先が。


「そーですかあ、私って、そんなに老け顔ですかー」


 ま、まずい……アリシアの周りに凶風が吹き荒び始めた。


「大学3回生だからって、よりにもよって20歳ハタチ超えですか…………」


 ハスターの力だろうか?

 俺の身体はさっきから浮き上がった状態で固定されてしまっている。


 逃げられねー。どう頑張っても逃げられねー。


「私は――――『17』ですからねっ!」


 ハスターの剣の腹で頭を殴りつけられたことが、この時点から約1分後まで俺の記憶の最新情報として残った。


「お待たせしました」

「ああ、お待ちしておりました」


 巨大なたんこぶを作って戻って来ても、依頼人たるこの男は動じる様子が無い。

 大物なのか、俺などとるに足らない存在と見てるのか……どちらにせよ、無視されるのは悲しい。


「では、依頼の再確認をさせてもらおう」


・今日午後11時、この場所に連続猟奇殺人犯が現れる。

・それを返り討ちにし、取り押さえる。

・俺と依頼人は通りすがりの人として、警察に通報、身柄の引き渡しを行う。

・注意事項としては、取り押さえ、縛り上げる場合、携帯していてもおかしくないモノを使用すること。


「…………時間が余ってしまったな」


 ただでさえ待ち合わせの時間が早かったのに、それより早く来てたからな。


「ではそこの万屋、ナウなヤングにバカウケなギャグでも披露してくれ。追加報酬も出そう」


 いきなり無茶ぶり!

 つーか、ナウなヤングにバカウケって……。


「…………万屋を何と思ってやがりますか」

「『何でも屋』だろう?」


 おっしゃる通りで。


「さ、頼む。そこのお嬢さんも心待ちにしているぞ?」


 見れば確かに、アリシアは期待に満ちた眼差しで俺のことを見つめていた。

 やめて。そんな純粋な瞳で俺を見ないで!

 プレッシャーに潰されそう!


「え、あー、じゃあ、リック・イースデイル、いきます!」


 俺は無い知恵を振り絞り、過去に大学でやった一芸を披露することにした。


「……………………」


 二人とも反応薄ッ!


「お嬢さん、ここは女性が『わー、ぱちぱち』と言って拍手をするものだよ」

「そうなんですか?」


 …………間違ってるようで、間違ってないな、うん。


「わー、ぱちぱち」


 ホントにやってくれてる。

 アンタ…………素直なええ娘やのう。

 思わず涙が出るぜ…………。


「パントマイム『西遊記』、やります!」


「…………あのー、西遊記って、何ですか?」

「確か、東方のおとぎ話だ。我も詳しくは知らないが、向こうでは結構有名らしい」


 うむ、二人とも知らないらしい。

 これじゃ、ウケてはもらえないだろうなあ…………。

 大学の時も、元ネタ分かってくれる人限定で受けてたから。

 とにかく俺はパントマイムを開始した。


「……………………」


 知らぬ人にもきっと見えるはずだ。

 一行の旅路が!


「何がなんなのか…………」

「さっぱりわからんな」


 ……おー、ウケてないウケてない。

 やっぱ知らない人にはダメか……見えるワケないか、一行の旅路。

 今、天竺に辿り着くところなのになあ…………クライマックス付近なのに、まったく盛り上がってないよ。


「……おわり、です」


 終わっちゃったよ。

 クスリ、の一言も、感動の声も、まったく聞こえなかったよ……。

 もう、泣きそうだよ。

 こうして考えると、舞台役者さんの凄さが分かるってもんだぜ…………。


「これが今回の追加報酬だ。納めるがいい」


 渡されたのは、1ダロ硬貨。

 うれしい。マジでうれしい!

 極貧生活の中で1ダロっていえば、まさしく天の助け!

 最近10000ダロ入ったけど、スッゲー嬉しい!


「さあ、まだまだ時間はある。どんどん披露してくれたまえ」


 …………マジ!?


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