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9章・デキるセールスマンは相手につけこまれるスキを見せない

久しぶりの更新ですね。

果たしていつ完結できることやら…………。

「ふぁ~あ……」


 大きな欠伸を噛み殺して、窓を見る。

 太陽は既に高く、ギリギリで朝と言える程度の時刻。

 至っていつも通りの起床だ。


「昨日あんな依頼があったばっかだし、当分無いよな、仕事」


 手早く洗顔を終え、着替えを済ませると、途端にすることが無くなってしまった。

 ……。…………。………………。……掃除でもすっか。


 ……数10分後。


 アッサリ終わったー。

 そもそも万屋稼業って、依頼が来なきゃ、やる事が無いからなぁ。

 掃除はもう完璧に行き届いてるぜ。

 今度こそやる事の無くなった俺はとりあえずソファに寝そべる


 そんな時だった。


 空気を読んだのか、読んでないのか、誰かが玄関のチャイムを鳴らした。


「はいはい。今出ますよっと」


 大方、新聞の勧誘だろう。

 平日のこんな時間に依頼人が来るワケねーもんな。

 俺は戸を開けながら「勧誘ならお断りですよ」と言おうとした、が。


「勧誘ならおこ「依頼がある」


 俺が言い終えるより早くに、ドアの前に立ってた若い男、依頼を用意してきやがった。


 ……。…………。……って、あれ? 依頼?


「む、ここは万屋ではなかったのかな?」

「いえ、確かにここは万屋ですよ。間違ってません、はい」

「では依頼がある。頼まれてくれないか?」


 …………まじか。

 昨日に引き続いてかよ。

 二日連続で依頼が来るなんて、そうそう無かったぞ。


「ええ分かりました。でも、その前に中に上がりませんか?」


 とにかく丁重におもてなしだ。お客様の心証を害するワケにはイカン。

 ああ、掃除しててよかった。


「では、お言葉に甘えて」


 男二人で事務所へと入ってゆく。


「それでは、お話を伺いましょう。どういったご用件で?」


 依頼人は優男風、ではあるが、目つきは妙に鋭いというか、力強いというか……『底が知れない』って言うべきか?

 とにかく、対峙してるだけで冷や汗が出てきそうだ。


「ああ、最近頻発している猟奇殺人事件について……と言えばお分かりになるかな?」

「ええ、まあ…………ですが、それは警察の領分では?」


 昨日と言い、最近妙に警察の領分を犯す依頼が舞い込んでくるな。


「そうだな。しかし『警察には信頼してもらえない内容の確定情報』を得ているとしたら、話は別ではないかな?」


 そいつは……まるで魔術みたいだな。

 実在するって確定情報があるのに、誰も信用しない。

 要するに、この情報、おとぎ話の世界止まりが良いところの情報、ってワケだろう。


「この地図を。指定した場所に明日の午後11時ごろ、犯人が現れ、人を襲う」


 地図を開くと、昨日行った廃墟街、その一角にバツ印がつけられていた。


「これが、確定情報?」

「そう、そちらにはこの犯人を捕まえていただきたい。ただ、間違っても殺してもらっては困る。殺人犯だと自白させる必要があるからな」


 当然。そんなことしたら俺たちの方が殺人犯だ。


「難しいことをおっしゃいますね」

「しかし、できない、とは言ってもらいたくないな。いかに相手が残虐な殺人犯だとしても『普通の人間』だ。『優秀な助手』がいれば何とでもなる……違うかな?」


 …………魔術だけならいざ知らず、アリシアのことまで知ってる。


 となれば、昨日会ったアイツ…………確かロジャーとか言ったっけ。アイツの関係者か?

 どうする? いや、少なくとも油断できない事は確かだ。


「……………………」


 コイツが魔術師なら、俺の首を刎ねることくらい、それこそナイフでステーキを切るくらい造作もなくやってのけるだろう。


 ヤバいって。俺、今丸腰だし。襲われて勝てる気がしないよ!


「あー……すまない。おそらくそちらの考えてる通りだが、勘違いしないでもらいたい。我々とて無用な争いは望んではいない」

「前回問答無用で殺されそうになったんだが?」

「それは、不法侵入者で、魔術師となれば、誰とて警戒するだろう。魔術を知る者なら、だが」

「はい、その節はすんませんでした」


 確かに、反論できない。

 魔術を知ってる以上、畑違いの魔術師ほど恐ろしいモノは無いもんな。


「まあいいさ。幸いと言うべきか、お互いに人的被害は無い。 …………それで、受けてもらえるかな? この依頼」


「…………正直、気が進みませんね」

「だが、放置すれば間違いなく今日午後11時に人が死ぬ」


 恐らくこの情報は本物だ。

 だが、なんで俺たちに依頼する?

 魔術結社だろうから、殺人犯の1人や2人、そっちで何とかできるだろうに。

 ……。…………。……ああ、アリシアについて探りを入れたいってことか。


 あ、連続殺人事件自体こいつらが犯人だったりして。

 …………って、さすがにこれは無いか。


「引き受けてくれないのなら、君は仕事に私情を挟んで何の罪もない人間を殺した万屋となるワケだ」

「さすがにそれは御免こうむります。……わかりました。引き受けますよ」


 なんだか、向こうの思惑通りに事が進んでる気がしないでもないが…………さすがに、人命には代えられない。


「で、犯人の顔は? 写真か似顔絵か、ありますよね?」

「その必要はないだろう。この場所に一人でいれば間違いなく犯人は襲い掛かってくる。襲いかかってきた者が犯人だ」

「簡単に言ってくれますね。それじゃあ、先手が打てないじゃないですか」

「問題ない。どの道、向こうが襲いかかって来ない限り、こちらから手を出す事は無いだろう?」


 おっしゃる通りで…………。


「納得していただけたようだな。では今夜10時ごろ、件の指定ポイントで待ち合わせ、これで構わないかな?」

「ええ。少々早すぎる気がしますが、いいでしょう」

「では、追加事項として、何か縛るものをそちらで用意してくれ、犯人確保のためのな。警察に取調べされても怪しくないようなもので頼む」


 そう言うと依頼人は席を立ち、玄関へと向かう。


「ああ、報酬は成功時、もしくはターゲットが現れなかった場合のみ支払わせてもらう。問題はないかな?」

「ええ、構いませんよ」

「うむ、今度こそ失礼する」


 玄関扉の向こうに男が消える。


「……。…………。…………緊張したぁ~」


 敵か味方か分かんない魔術師ってあんなに恐ろしかったんだな。

 体格やら容姿じゃあ、全く相手の能力が計り知れないもんな。


「まあ、とにかく電話電話、っと」


 とりあえず俺は、体格やら容姿に不釣り合いな実力者に連絡して、これまた体格やら容姿に不釣り合いな実力者を呼び出してもらう事にした。

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