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第4章 誓いの先に

世の中では大型連休がスタートしたが健の職場は皆フル出勤していた。

シフト制と言う事もあり偶然、週末休みになる事も有ったが仕事が中心の生活を送っていた。

たまに帰り時刻が一緒になった同期と居酒屋で食事がてら寄ってみたり。

出社が楽しくて仕方が無かった。


「架電どうですか?」

同期の鏑木圭太が聞いて来た。

「自分は何を言うのか事前に知って整えて架電出来るのが性に合っているようです」

「羨ましいっす」

「そうですか?」

「いや、アレですよ。入電は若い子が多くて気後れしがちです笑」

「側から見ると凄く仲良くて元気なチームって感じですけど。架電も年代は似たり寄ったりですよ」

「多分、根暗なんすよ」

意外だった。


鏑木は男性陣の中では1番明るく皆をまとめていたからだ。


「架電チーム羨ましいっすよ」


鏑木ほど、どこに居ても直ぐ馴染むタイプに見えたが気を使い努力しているのだった。

人間関係とでも言うのか、人は少なからず悩んだりするものだと健は思った。

首の皮一枚繋がったと安堵している自分が小さい男に感じた。


「また飲みに行きましょう」そう言って別れた。


アパートへ戻ると母親から留守電が入っていた。

「もしもし母ちゃん、俺。なに?どうしたの?」

祖父が亡くなった。


健の両親は共働きで幼かった頃は祖父と二人で両親の帰りを待ったものだった。

桜祭りや夏祭り、町内のイベントへは殆ど祖父と一緒に参加していた。

両親との思い出より祖父との思い出も写真も多く有った。

幼かった頃の思い出が一気に溢れ

ずっと祖父は祖父のままで変わらず居てくれるものだと思っていた健は言葉が出て来なかった。

やっとの思いで

「じいちゃんが?なんで...」

健の母親が

「健に言うと心配するから言うなってお爺ちゃんがね。本当は癌だったのよ。最後の方は骨と皮だけでね。見ている母ちゃんも父ちゃんも辛かったっけ...」


母親の啜り泣きが健にも伝染して来た。


「明日の朝イチで帰るから。俺、ちゃんとじいちゃん見送らないとだから。明日着いたら電話する」

「仕事は大丈夫なの?」

「大丈夫」

「気を付けて帰って来るのよ」

「分かった。母ちゃんも気落ちしないで」

「健、あんたって子は...」

泣きながら電話を終えた。


暦の都合で葬儀は祖父が亡くなった翌々日になった。

何とか最後に間に合ったのである。


健は葬儀中ずっと祖父の遺影を見ていた。


高校を卒業して家を出る時も心配して

「いつでも帰って来いと言ってたっけ」

「何かあった時はコレを使うんだぞ」と小遣いをくれて送り出してくれた。

何ひとつ恩返しが出来ないまま祖父は亡くなった。


葬儀中よりも実家の自分の部屋に入った瞬間、涙が溢れ止まらなかった。

「うぅ...じいちゃん...俺...何にもしてあげてなかった...うぅ...」


もっと頻繁に電話をしていれば良かった。


日々の暮らしに精一杯で実家の事など頭からスッポリ抜けていたのである。


二度と同じ後悔はしたくない。

大切な家族、友人、仕事仲間には丁寧に接すると祖父の葬儀を経て心に誓った。


1週間ほど滞在し健は再び仕事へ復帰した。


仕事前に莉子にLINEをした。


お疲れさまです。

昨日まで実家帰っていて戻って来ました。

盛岡冷麺、渡したいんだけど。


既読がつく事は無かった。





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