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第3章 続く同期の絆

翌朝、駅の改札を出ると後ろから大きな莉子の声が聞こえた。


「健っちぃーーーー!!!」


はあはあと息を切らせて走って来たのだ。


「あ、おはようございます」

「はぁはぁ..おはよーーー」

「昨日、不合格だったでしょ?連絡先交換してないし健っちにもう会えないのかなって思っていたの。そしたら見覚えのある後ろ姿が!」

「あ、はい」

「もーーーーー!!!今日は朝から縁起がいいよーーーー!!!よかったーーー!!また健っちと一緒に仕事出来るねっ!!!」

「あ、はい。でも僕、今日から4階で研修で」

「4階?」

「あ、はい。架電チームだそうです」

「おおおーーーアウトバンドだ!!そうね、健っちはそっちの方が良いと思う!て言うかさ普通は未経験者にインバウンドは無いよね」

「インバウンド?」

「入電のことっ」

「そう言うんですね」

「うんっ。ねえ健っち。うちら同期が結局10人居るか居ないかなんだよ」

「えっ??」

「ここのコール厳しいよね」


そんな厳しい現場でも莉子は一発合格だ。

本当に優秀だ。


「ねえ、健っち。今度同期会やろー」

「えっ??」

「やだー?」

「あ、いえ」

「ねえ、さっきからアタシばっかり話してる」

「いえ、そんな」

「アタシに話しかけられるの嫌?」

「いや、全然」

「なら、もっとフレンドリーに接してよーーー!アタシだけ?健っちに再会出来てテンション上がってるのわっ」


むくれた表情が可愛かった。


「いやいやいや、本当に。僕、前職がお年寄りばっかりで同世代が居ない所に5年居たんですよ。毎日毎日お年寄りばっかり。気が付いたら話し方とかノリとか忘れてしまって」

「うけるーー。同期会しよー!LINE交換しよっ」

「あ、はい」

「グルチャ作るから来てねーーー!じゃ、今日からまた頑張ろね、私たち!」

「あ、はい」


自分を見つけて喜んでくれる莉子は本当に可愛くて仲間思いの良い子だ。


僕にとって初めて出来た大切な仲間だ。


この会社にずっと居たい。

否、莉子と離れたく無いが正しい気持ちだ。



架電チームの研修は当然ながら入電チームの研修と重なる部分もあり健は更に知識が深まって行くのを実感していた。

公的書類の名前を覚えたりするので頭が混乱気味だったが。

それでもやる気に満ち溢れていた。


架電チームも健と同世代前後だ。

穏やかな雰囲気で入電チームの様な賑やかさは無いが居心地の良い現場だ。


架電チームはデビューテストが無く

しどろもどろ気味の健にとっては救われた。

クビを言い渡されない事が何より有難い。


「頑張ってみせる」



お昼休み。

グループチャットの招待を受けた。

「お疲れ様です。橘内です。今は4階で架電の研修受けています。みなさんとは離れたフロアになりましたが仲良くしてください」

なかなか砕けた感じに書けない健だが

その文面から健の真面目さが感じ取られ入電チームの同期は概ね好感触だ。

「健しゃん!」

「健くん元気ーー?架電ファイト!」

「おおー!橘内くんっ元気?今度男同士でも食事行こうぜっ」

「その前にみんなで飲み会でしょー!」

一瞬にして盛り上がるグルチャを見て

「こんな自分でも仲間だと思ってくれるんだ。嬉しいなぁ」

健はうるっとした。

なんでバカみたいに5年も整体院に居たんだろう...


一歩踏み出してよかった。


グループチャットは毎日どんな時間でも盛り上がっていた。

態度の悪い先輩や

本当にコールセンターの人間かと思うような言葉遣いの先輩の悪口を言い

一種のストレス発散の場になっていた。

勿論、仕事に必要な情報共有の羅としても使われる事もあるが、やはり悪口の方が断然盛り上がっていた。


初給料最初の金曜日。

同期会が開かれた。

「健っち!こっちこっちーー!」

莉子が声を掛け誘導してくれた。

そのまま莉子の隣に座った。

「お疲れさまです。久しぶりです」


居酒屋の安い酒と安いつまみ。

それでも健は高級酒と高級食材に感じた。


誰かが社員の市川が不倫をしていると言い出した。

健が入電チーム時に2回不合格になり面談をした社員だ。

「そーなのー??なんで知ってるの?」

「旦那も社内の人なんだよ」

「ええーーーー誰?誰?市川って居る?」

「市川さんって旧姓なんだって。入館証とか色々変えるの面倒だからって言ってた」

「旦那さんは7階の営業企画室の室長らしいよ」

「7階じゃ見たこともないよね」

皆がそれぞれ言い合う。


「アタシ、2人が一緒に出社して来たとこを見たことあるよ」と莉子が言うと


「旦那どんな人?かっこいい?」などと

質問攻めにされた。

「多分だけど、実年齢より若く見える人。室長ってイメージ無いかな。背も高くてカッコいい。お似合いの夫婦に見えたけど不倫かぁ...意外」

続けて莉子が「不倫ってどうやって知ったの?」と聞く。


同期の一人が

「入電が長引いてなかなか終わらなかった時があったの」

「あーー!有ったねぇーー!」

「うん、その時に電話終わって事務処理してる時に河野さんと楽しく話してたのよ」

「え?それだけ?」

「ちがう、ちがう」

「なにー?」

「仲良いなーって思いながらも、その日以来2人を見ちゃうわけよ。廊下で話してたり窓際で話してたり。段々怪しく思えて。したら先輩オペがあの2人は不倫してんだよって。どっちにも家族が居て家の方向も違うのに帰りはいつも一緒に帰るんだよって」

またもガヤガヤと騒ぎ

他人の噂話は本当によく盛り上がる。


会もお開きとなり解散になった。

帰り莉子と歩いていると

「不倫とかビックリだよねぇ!ドラマの世界みたいっ、ふふっ」

「身近で起こるなんて田舎者の自分はビックリ」

「健っちって出身どこなのー?」

「あ、東北です」

「東北?訛りないねっ、東北のどこー?」

「あ、岩手です」

「盛岡冷麺だっ!!」

「あ、はい」

「アタシ昨日ね、韓国人がやってる焼肉食べに行ったの。最後に冷麺たべたんだけど盛岡冷麺の方が美味しいよねって盛り上がって!」

「あ、盛岡冷麺好き?」

「うんっ!大好きっ」

健は自分の事を言われている感覚になっていた。

「今度、実家帰ったら買って来ますよ」

「ほんとーーー!わーーーいっ!健っち有難う!楽しみにしてるねっ!」



同期の面々も

莉子も

健にとって未来を明るくしてくれる存在のように感じていた。



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