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第1章 変わる勇気

健は高校卒業後、親元を離れ整体師の仕事をしていた。

手取り16万。

アパートの家賃、水道光熱費、携帯代を払うと手元には2〜3万しか残らない生活を送っていた。

これでは暮らせないので休みの日はスポットアルバイトで日銭を稼いでいた。

スポットアルバイトは全て物流倉庫だ。

ある日、以前から何度か一緒になった事のある中年女性とペアになって仕事をした。

「学生さん?」

「いえ、普段は整体師として働いています。

でも給料が安くて固定費を払うといくらも残らないので休みの日はこういうバイトをして

補填している感じなんです」

「そうなんだ。疲れ取れてるの?」

「まだ疲れを感じてなくて何となく乗り切っています」

「若いって良いねぇ。整体師の仕事は天職な感じ?」

「んーーー。そうでも無いです笑。

家から出たくて取り敢えず乗っかった感じなんですけど、ここまで来ると転職の仕方が分からなくて。僕、高卒でパソコンスキルとかも無いし」

「パソコンに対してアレルギーはあるの?」

「全然!むしろ学びたい欲があります」

「派遣でさデータ入力とか募集しているよ。時給1700円前後で派遣会社によっては交通費も出るところもあるから雇用形態を気にしないならいいんじゃない?」

「1700円....」

「安い?」

「逆です!美味しいなって」

「データ入力業務は1時間毎に10〜15分休憩取るらしいよ。友達が派遣でやってて、そう言ってたよ」

「へーー。ひたすら打ち込まなくて良いんですね」

「なんか、そうみたいよ」

「どこの派遣会社が良いんですかね」

「どこだろうね?

ネットで色々調べると自分に合う所が見つかると思うよ」

帰宅後、健は早速データ入力の仕事を調べた。

調べていくうちにコールセンターのオペレーターだと1700円より高額時給だと知る。

未経験者でも手厚い研修がある。

コールセンターの仕事はデータ入力より大体100円増しだ。

時給が100円違えば

1日で800円、月なら16800円の差になる。

今よりは生活が確実に楽になる。

物流倉庫でバイトしなくて済む。

1時間毎の休憩と時給100円高いコール

どちらが良いのだろう。

初めてのオフィス業務なら休憩が有った方が良いかも知れない。

でもプラス16800円は魅力だ。

健は迷いに迷い答えが出なかった。


派遣会社へ登録し未経験可のデータ入力とコールセンターの仕事両方を沢山エントリーした。

引っ掛かったところで仕事出来ればいい。


翌々日、健の携帯へ留守電が入っていた。

「もしもし橘内健様の携帯でしょうか?ジョブプラスの佐藤と申します。エントリー頂いてます、お仕事についてのお電話でした。お時間のある際に折り返しご連絡頂ければと思います。よろしくお願いします。」


遅い昼休憩時に留守電を聞き健は

もう仕事が決まった感覚になっていた。

折り返し電話をするとコールセンターの仕事案内だった。


「おっしゃ!」


健は生活を安定させ

いつかシステムエンジニアの勉強をし

将来的にSEとして仕事が出来ればと目標を定めていた。

2年...

その間に貯金をして、勉強して、資格も取る。

何が何でも、やり切るつもりだった。



整体院を当月で退社し翌月よりコールの研修が始まった。

5年も働いたのに退職金は1円も出なかった。

「週末とか忙しい時にさバイトに来てよ」

よく言えたもんだ。

「そうですね。タイミングが合えば」

着信が来ても、出るつもりはなかった。


ざけんなよ!

心の中で吐き捨てた。


それでも次の仕事のことを考えると、少しだけ気が軽くなった。


驚いた事に同期となる仲間は若者が多かった。

マツエクにネイル、赤い髪に金髪

オシャレに着飾った女の子が多かった。

いつも年寄り相手だった健には眩しい光景だった。


会社へ向かう途中に同期の莉子とバッタリ会った。

「あ、おはようございます」

健は自分の顔が赤くなっているのを感じた。

「おはよーでーす。眠いよねー。名前何だっけ?」

「あ、橘内です」

「あ、橘内さんですか」

「あ、はい」

「あのさーー橘内っちさ、話す時に“あ”って付けるの辞めた方が絶対いいよー」

「あ、はい。つい癖で」

「あのねー、頭に”あ”付けると相手はコイツ自信無い奴だなって見下してくるから。気がつくと同期なのに上下関係ができちゃうよ」

「....そうなんですね」

「ぎゃはははは!今、必死に”あ”言わないようにしたよね。いいじゃん、いいじゃん。その調子」

「ありがとう」

「いえいえー。いっぱい研修して早くコールデビューしようね!」

「あ、はい。あ、いや...うん」


遅まきながら、やって来た青春だ。


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