第7話 誇りの行き先
交易が始まって、
数か月。
国境付近の衝突は、
目に見えて減った。
魔王城の倉庫には、
人類の穀物が積まれ、
人類側の街には、
魔族の鉱石が流れた。
だが――
全員が、
それを喜んでいるわけではなかった。
訓練場。
巨大な魔族たちが、
武器を振るっている。
「俺たちは、
戦うために生まれた!」
「剣を握らずして、
何が魔族だ!」
声を荒げるのは、
将軍ガルドゥス。
数多の戦場を生き抜いた、
武の象徴。
リオネルは、
物陰から見ていた。
(怖い……)
そこへ、
バルザークが並ぶ。
「ガルドゥスは、
強硬派の中心だ」
「魔王陛下の方針に、
不満を抱いている」
リオネルは、
小さく呟く。
「……戦うのが、
誇りなんですね」
「そうだ」
「だが、
誇りの行き先を
変えねばならん」
その夜。
リオネルの部屋に、
密使が来た。
「ガルドゥスが、
蜂起を計画している」
「ええっ!?」
バルザークが、
歯を食いしばる。
「武力で鎮圧すれば、
血が流れる」
リオネルは、
震えながら言う。
「……話し合い、
できませんか?」
沈黙。
バルザークは、
ゆっくりとうなずく。
「試す価値はある」
翌日。
廃れた闘技場。
ガルドゥスと、
配下の戦士たち。
そこへ、
リオネルとゼフィロスが向かう。
剣は持たない。
ガルドゥスが、
嘲る。
「丸腰で来るとはな」
「話をしに来た」
ゼフィロスが言う。
「話など不要だ」
「魔族は、
強さで生きる種族だ」
リオネルは、
一歩前に出た。
足が震える。
「強さって……
誰かを守る力だと
思います」
ガルドゥスが、
睨む。
「守るためには、
戦う必要がある」
「でも……
戦わなくて済むなら、
その方がよくないですか?」
沈黙。
風が吹く。
ガルドゥスは、
拳を握る。
「……弱者の理屈だ」
リオネルは、
必死で言う。
「俺、
弱いです」
「だから、
誰かが死ぬの、
嫌なんです」
ガルドゥスの拳が、
震える。
「……考えさせろ」
完全な解決ではない。
だが――
剣は、
抜かれなかった。




