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第5話 怖いから戦う


リオネルは、

魔王城での生活に、

少しだけ慣れてきていた。


朝は、

質素だが温かい食事。


昼は、

講義という名の雑談。


夜は、

小さな部屋で眠る。


相変わらず自由はないが、

殴られることも、

怒鳴られることもない。


「……不思議だな」


魔族は、

もっと残酷な存在だと

思っていた。


だが実際は、

命令には忠実で、

規律正しい。


ただ――


「戦うこと」が、

当たり前なだけだ。


その日、

ゼフィロスに呼ばれた。


玉座の間。


二人きり。


「人類は、

 なぜ魔族と争う?」


唐突な質問だった。


リオネルは、

少し考える。


「……怖いから、

 だと思います」


「怖い?」


「角があって、

 大きくて、

 強そうで……」


「何を考えてるか、

 分からない」


「分からないと、

 怖くなるんです」


ゼフィロスは、

黙って聞いている。


「俺も、

 最初は怖かったです」


「でも……

 話してみたら、

 みんな普通でした」


「畑の話も分かるし、

 ご飯の話もするし」


「悪いやつばかりじゃ

 ないって思いました」


ゼフィロスは、

ゆっくりと口を開く。


「魔族も同じだ」


「人類は、

 狡猾で、

 弱く、

 数が多い」


「気づけば領土を奪う

 厄介な存在だと

 教えられてきた」


リオネルは、

目を見開く。


「それ、

 俺たちが魔族に

 思ってることと

 そっくりです」


沈黙。


ゼフィロスは、

小さく息を吐いた。


「……なるほどな」


「知らないから、

 殺す」


「知れば、

 殺す理由が

 減る」


リオネルは、

うなずく。


「はい」


ゼフィロスは、

しばらく考え、

言った。


「貴様の考えを、

 魔族全体に

 広める」


「ええっ!?」


「まずは、

 講義を制度化する」


「全将校は、

 貴様の話を聞け」


リオネルは、

頭を抱えた。


「俺、

 先生じゃないです……」


「だが、

 最も向いている」


ゼフィロスは、

静かに言い切った。


「争いを望まぬ者が、

 争いを止める」


リオネルは、

胸が少し痛んだ。


(俺、

 逃げたいだけなんだけどな……)


それでも――


ゼフィロスの目は、

真剣だった。


こうして――


「怖いから戦う」

という考えは、


魔王の中で、

根を下ろし始める。


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