第4話 戦わない勝利
リオネルは、
自分の存在意義が、
分からなくなっていた。
朝起きる。
魔族に見張られながら、
部屋で座る。
質問される。
思いつきで答える。
それが、
なぜか戦術になる。
「おかしい……」
机に突っ伏し、
リオネルは呻いた。
そこへ、
扉が開く。
現れたのは、
バルザークだった。
巨大な体に、
黒い鎧。
だが、
以前ほど怖く感じない。
「村人」
「演習結果が出た」
「え?」
バルザークは、
分厚い報告書を置く。
「貴様の教えを基に、
模擬戦を行った」
「敵役の部隊は、
一度も剣を振ることなく、
降伏した」
リオネルは、
口を開けたまま固まる。
「ど、どうやって……?」
「まず、
敵陣近くに畑を作った」
「兵士ではなく、
農夫を配置」
「食糧を無償で配布」
リオネルは、
頭を抱えた。
「いや、
それ善意でやるやつ……」
バルザークは続ける。
「敵兵の家族が集まり、
補給線が乱れた」
「指揮官は、
戦う理由を失った」
リオネルの背中に、
冷たい汗が流れる。
「結果」
「敵部隊、
全面投降」
沈黙。
リオネルは、
小さく呟いた。
「誰も……
死んでないんですか?」
「一人もだ」
リオネルは、
胸を押さえた。
少しだけ、
息がしやすくなる。
「……よかった」
バルザークが、
じっと見る。
「貴様は、
戦を壊す者だ」
「魔族史上、
最も危険な存在だ」
リオネルは、
首を振る。
「壊したいのは、
戦争です」
「人じゃない」
バルザークは、
何も言わなかった。
その夜。
リオネルは、
城の庭に出されていた。
監視付きだが、
外の空気を吸える。
星が、
やけに綺麗だった。
「……村の空と、
同じだな」
そこへ、
足音。
ゼフィロスだった。
「戦果を聞いた」
「……どう思う?」
リオネルは、
正直に答えた。
「怖いです」
「俺、
誰かを助けたかっただけで……」
「戦争の道具に
なりたくない」
ゼフィロスは、
少しだけ目を伏せる。
「魔族は、
強さこそ価値だと
信じてきた」
「だが、
貴様は別の強さを示した」
「戦わずに勝つ力」
リオネルは、
小さく首を振る。
「勝たなくていいです」
「負けなければ」
ゼフィロスは、
静かに笑った。
「……面白い」
こうして――
魔王軍は、
少しずつ変わり始める。




