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第10話 最弱のままで


魔王顧問。


そう呼ばれるようになって、

しばらく経った。


リオネルの生活は、

相変わらず地味だった。


豪華な服も、

宝石もない。


あるのは、

机と椅子と、

話を聞く仕事。


人類の使節が来る。


魔族の役人が来る。


揉めごとがあれば、

間に入る。


「喧嘩しないでください」


それだけ。


それだけなのに――


戦争は、

確実に減っていた。


国境の砦は、

市場になり、


兵士の詰所は、

倉庫になる。


リオネルは、

城の庭で空を見上げる。


「……俺、

 強くなってないな」


剣も振れない。


魔法も使えない。


昔と、

何も変わらない。


そこへ、

ゼフィロスが来る。


「後悔しているか?」


リオネルは、

少し考える。


「怖いです」


「今も」


「でも……

 誰かが死ぬより、

 ずっといいです」


ゼフィロスは、

静かにうなずく。


「貴様は、

 最弱のままだ」


リオネルは、

苦笑する。


「ひどいですね」


「だが――」


ゼフィロスは続ける。


「最弱だからこそ、

 誰も殺さない」


「それは、

 最強だ」


リオネルは、

目を見開いた。


風が吹く。


遠くで、

子どもの笑い声が聞こえる。


人類の子と、

魔族の子が、

一緒に走っている。


リオネルは、

胸が熱くなる。


「……帰りたいな」


「村に」


ゼフィロスは、

小さく笑う。


「帰れ」


「ここには、

 貴様の代わりは

 いくらでもいる」


リオネルは、

首を振る。


「いません」


「俺しかいません」


ゼフィロスは、

少し驚いた顔をした。


リオネルは、

空を見上げる。


「俺は、

 最弱でいいです」


「そのままで、

 世界が平和なら」


こうして――


最弱の村人は、

最強の役目を背負い、


今日も、

誰かの間に立つ。


――終――




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