第9話 「あなたの痒みはどこから?私は...」
俺たちが乗り込むのは...アクアベリーからロイズまでを行き来する定期便。
途中エズルドーラで停泊をする予定だ。
かつてメトロとレオはアジーニャ大陸までフープルで来たあと、歩いて密林と砂漠を超えてアクアベリーまでやってきたらしいが...。
正気の沙汰ではない。
というのもこれから乗る大型客船でもアジーニャ大陸の奥の方にある砂漠の国エズルドーラまでの道のりは、5日くらいかかるらしい。
伝記によると、どうもメトロはアジーニャの大陸への侵入を制限されていたようで歩いていくしか無かったようだ。
うんうん、勇者と賢者はやることが違うなぁ全く。
「ダイゴ〜遅くなってごめん!」
いつもより少しだけ女の子らしいローブを着たマカフィといつも通りゴツイ聖騎士の鎧に身を包んだシャルが船着場にやってきた。
「いんにゃ俺も今来たとこ。ハルートが一番乗りだったよ。」
「あははは。そうか!マカフィの服選んでたら遅くなっちまったんだよ!すまねぇな!ダイゴ!ハルート!」
「うんうんかわいいかわいい。似合ってるよマカフィ。」
「んな!まじでそれな!こいつは女らしくしてた方がかわいいよな!?」
「あははは...それは多分シャルもだよ。」
「いいんだよ!今の俺にとってはこれが俺らしい格好だからさ!」
俺たちは乗船の手続きを済ませて四人部屋へとやってきた。
「ん〜ほこりくせ。」
埃って言うかカビですよこれ。
大丈夫?ねえ船だよこれ...カビ臭いの大丈夫?
て、ていうか窓ないんですか!?
部屋は二段ベッドが左右にひとつずつのロッジタイプ。
ん〜!日本のフェリーのやっすい部屋みたい〜!
豪華客船を楽しむことは金持ちのためだけに許された遊び...貧乏人は所詮移動の手段でしかないということを思い出させてくれる素敵な仕様です。
勘弁してよぉ。フランス時代の寮よりひどいよぉ。
早くエズルドーラについてくれよぉ。
停泊は三日あるからその間だけでもホテルで寝ようかしら...。
いやいやいや...それじゃ節約にならん。
せっかく割4ならやすいよねという話でまとまったのに...。
デッキで寝てもいいですか?
こんな狭いところに四人で寝るの嫌なんです。
波にさらわれて貝になりたい。
「お、趣のあるお宿ですね。」
ハルートくん顔が引きつってます。
それにお宿って...お部屋の間違いだよ。頭働いてないのかい?めずらしいねぇ。
「そ、そうだねぇ。」
マカフィはのほほんとしているけど少し嫌そう。
「そういやマカフィ!行きはどうやってきたんだ?」
「あぁ、それね。転移魔法が使える旅の人が近くの街に居たからお願いしてアクアベリーに飛んでもらったんだよ。なんか遠いところにお願いします!って言ったらアクアベリーだったの。」
「なるほどぉ。たしかに地図で見たら最北と最南であげく最東から最西に移動してるもんな。そのフープル使いはすごいなぁ。」
「なんかね、今思い出したけど伝説の賢者の末裔で世界中を旅してるんだって。文献を漁ったりとかそういうののためにさ。」
「ほえ〜!そりゃすげぇな!」
「そうそう!それがなかなか賢者メトロに雰囲気が似てたよ。この前本の中に入った時びっくりしたよ!あ!あの人に似てるって!」
「...?妙じゃないか?賢者メトロは子孫を残せないはずだろ?」
「あぁレオと結婚したからそうなるよね...?となるとあの人は賢者メトロ本人...?まっさかね〜。」
....だとしたらどんだけ長生きしてんだよ。
いや?まさか禁断の時間移動の魔法を使って移動してきたとか?
「まあいいや。それより今はこの酷い部屋で一ヶ月近くどう過ごすかの方が大事じゃないか?」
「....そうだねぇ。ベッドのフレーム歪んでるし今にも崩れそうだしね。」
「次んとこで思い切り派手な依頼こなしてグレードアップってのはどうだ?」
「ま、まぁね...そうねぇ...でも差額払うだけでも最低でも三倍くらいちがうんだよねぇ。」
「俺の分を気にしなければみんな払えるかもしれないだろうに...ほんとすまねぇ。」
松風大護...現在皆様に多大なる大迷惑をおかけしています。
「いんや、流石に僕たちもこのクラスの船のスタンダート以上のクラスにしてたらお金は持たないよ!でもね、大丈夫だよ!ダイゴ!エズルドーラは黄金の国!依頼の単価は高いらしいし!ハイクラスのラグジュアリーやらスゥイートは無理でもカジュアルとかその辺くらいなら窓のあるまともな部屋に移動できるだろうから。」
マカフィちゃん僕と結婚しよう!今すぐにこの海の上で...。
「まじ!?雑居房生活からはおさらばできそうなのね。そうなったらし仕方ない...エズルドーラではレストランを諦めて以来に専念しよう。フープルがあればいつでも来れるだろうしな。」
「おう!そうすっか!ダイゴ!今度こそ俺が暴れられる依頼にしてくれよな!体がなまっちまうぜ。」
君、本当に女の子だよね?あってるよね? あまりにもチンチンついてそうな血の気多さだけど大丈夫?生えてきてない?確認してみて。
「う、うん!そうしような!」
ていうかさぁ、それよりさぁ...船上のレストランにも行きたいのにさぁ...俺たちの部屋スタンダートコースの人間は食事が着いてない所かレストランにすら立ち入り禁止ってどういうこと?
入るのを許されているのは...食堂だけ。
しかも不味い飯に都度払い!やだやだ!
「ダイゴ...?もうすぐ船が出ますよ。みんなでデッキに出てみませんか?」
俺は終始不満気な顔をしていたんだろうね。
ハルートが気を使ってくれました。
ゴメンニ...。
「あぁ!行ってみようか。シャル、マカ行くぞ。」
「おー!」「はーい!」
シャルたちにも呼びかけ俺たちはデッキへと向かった。
海の風は気持ちいい。潮の香りと煙突から吹き出る煙から香る石油ストーブみたいな匂いが混ざって旅立ちますって感じの雰囲気満載だった。
ワン〇ースだったらル〇ィが大きな声で喜びそうだ。
「タバコ吸いてぇなこれ。」
シャルはタバコを吸う動作を手でしながらそう言った。
「こぉら!聖職者なんだからダメ!タバコ吸うホーリーナイトがどこにいんのさ!」
「...ちぇっ!マカフィはいつもそればっか!」
「シャル?タバコは体に悪いんだよ?」
「んな事はわかってんだよ!そうは言ってもこんなに気持ちいのいい旅立ちの瞬間...最高の一服を決めたいに決まってんだろ!?なぁ!ダイゴ。」
シャルは俺の方を見る。
「すまねぇ、俺は喫煙しないんだ。舌が鈍ったりしそうで。たまに水タバコの店には行ってたけどそれもフレーバー目当てだったし。」
水タバコ、つまりシーシャはこちらの世界でも普通にある。
のでこういう情報なら言っても問題ないかしらね。
「おめーも紙のタバコ吸わねーんかよ!ちっ...ハルートは?って吸うわけないか。」
「いえ、私はパイプのタバコをたまに嗜みますよ。あまり吸うと喉を痛めてしまうので本当にたまにですが。田舎の父が好きだったのでその影響なんです。
吸うとルコストの実家の香りを感じることができてなんだか懐かしい気分になれるんです。」
「あぁ...何それ。いいね。」
エモ...ハルート!エモすぎる!お前は今日からエモート!
そうです、あなたがエモートです。
「あはは...ダイゴ。
あなたにもそういうのないですか?つい故郷を思い出すようなもの。」
...うーん?なんだろ。
「...。おれにはよく分からないけど料理をする時作ったものによって嫌な記憶だったり楽しい記憶だったり思い出すこともあるかなぁ。」
「いいじゃないですか!それも結構趣深いです。」
「ん〜そうかねぇ。アロゼしてる時とかはまだ子供の頃よく火傷して父親に手当してもらったこととかを思い出したり...考えれば出てくるもんだな。」
「おぉ!ダイゴ!俺にもあるぜ!」
「お?シャル。なになにいってみぃ?」
「この剣...師匠にもらったんだ。死んじまったけどな!この剣を見ると師匠を思い出すんだよ。」
「...そうか。お前にとってそれは世界に一つだけの師匠との繋がりなんだな。」
「おう...俺、だから教団を辞めても聖騎士は辞めないんだ。」
「あぁ...頑張れよ。お前がどんなふうに生きたって俺たちは仲間だぜ!」
っ...自分で言っておいてなにこれ!
はじーーーー!
海に飛び込みてえええええ。
恥ずかしさから広がる痒み。
あなたの痒みはどこから?
私は尻穴から...。
このままじゃ火を吹いてしまいますたすけてぇ。
「あっ...出航しますよ。」
ナイスハルート!
船は港から動き出しゆっくりと海の上を進み始めた。
「おお!ほんとだ!すげーすげー!」
シャルの視線は離れていく港に釘付けになった。
「あは...出航あはは...。」
あ〜よかった。このままじゃ俺本当に顔から火が出るところだった。
俺が恥ずかしさに悶えてる時マカフィの奴顔を真っ赤にして笑うの我慢してんだよ。
やな感じ〜。
僕にはあるんですよね...。
ふふ己の棒が...使っちゃうよエクスカリバー...。
「ダイゴ?船酔いですか?目を細めてどうしたんです?」
「あぁちょっと天誅が必要なおバカさんに狙いを定めてだけ。大丈夫!僕らは友達!」
「あっはははは...全く意味がわかりませんね。マカフィ...ダイゴはあなたを見てなにやらよからぬ事を企んでるようですよ。」
「ちょっ、ばっ、ハルート!余計なこと言うなよォ。」
「なになにぃ〜僕でえっちな妄想しちゃったのぉ?だめだよ!ダイゴ!僕はシャルの彼女になるんだから!」
...俺は不覚にも、自分がバカにされたことよりもシャルの彼女になると自然に言えるようになったマカフィに感動してしまった。
「マカフィ!?何言ってんだお前!俺もお前も女だろうが!?もう許嫁である必要はなくなるかも知んないんだぞ!?」
マカフィのトンデモ発言に慌てるシャル。
気にせず自信たっぷりで返すマカフィ。
「関係ないですね。僕はずっとずっとかわらずに君が好きだよ?これからは本気で彼女になる為に狙いに行くから!覚悟しておいてね。」
うっふ〜ん、天然の百合が発生してるわぁ〜ん。しかも美女二人よ〜!
間に挟まりたいわ〜ん。
「っ...。」
マカフィの言葉に珍しく照れた顔のシャル...。
尊い...こんなところに入る隙なんておじさんにはありません。
なんか生きててごめん。
生まれてきちゃってごめん。
「馬鹿なこと言ってんな...よ。」
照れながら絆されているシャルさん...。
あんたって人はなんて分かりやすいんですか?
はい、キース!キース!
と野次を投げたいの必死に抑えながらハルートの方を見るとうんうん頷いていた。
「...わかるよハルート、そうなるよな。」
「ダイゴ...なんですかその顔。ぷっは...。」
俺が渋い顔をしながら肩を叩いたらハルートはツボに入ってしまった。
俺たちってよそから見たらすごくバカっぽくない?大丈夫そ?
「あのぉすみません。少しうるさいです。静かにして貰えますかぁ?」
俺たちが馬鹿やってたからなのかデッキに複数いた客のうちの一人の品の良さそうな男から注意をされてしまった。
「あ、すみません。」
「こちらこそすみません。妻が船酔いしてしまってまして...うるさいと響くようなので。」
よく見ると隣にはこれまた品の良さそうなプードルの獣人の女。
「...!あっ俺回復魔法使えます。奥さんを直して差し上げられますがどうですか?」
「...生憎聖職者以外からの魔法は金銭をせびられたら困るので受けないようにしてるんです。」
俺の提案に怪訝そうな顔をするおっさん。
こいつほんまいい加減にせぇよ。
「あ、それなら僕が...一応ビショップです。」
マカフィ...そんなやつ治してやることないと言いたいところだが男はマカフィを見るなりコロッと態度を変えた。
「おぉ...私たちはついていますね。このようなハイプリーストの方と乗り合わせるだなんて。早速なのですが妻の治療をお願いできますか?」
「はい、それでは奥様失礼します。」
マカフィは信仰魔法を使いいやーな感じの夫の妻を治療してやった。
直ぐにそのイヤミ夫人(仮)は顔色を良くして元気になった。
「あぁ、アナタ。あたくしもう、全然気持ち悪くないわ。」
「あぁよかった。ハーメリィ...。ありがとうございます。ハイプリースト様...なんとお礼を言ったら良いか...お供のみすぼらしい旅の方も失礼なことを言ってしまいすみませんでした。」
言ってるよーー今まさにもう一度言ってるよおおおおおお!
みすぼらしい旅の方ってのは俺の事ですよねぇえええ!
ですよねぇええ!?
「ちょっ...おっさん!お前ダイゴにちゃんと謝れや。」
シャルが急に出てきておっさんの前に立ち塞がった。
トラブルのよ、か、ん!
あぁめんどくさいよシャルちゃん...。
血の気が多いのよねほんとにやだわぁ〜。
あたし...獰猛なワンワン連れてます!
猛犬注意!
「シャル...失礼になる。俺のことはいいから下がれ。」
俺は優しい口調でシャルを止める。
うんうん大人だなぁ僕ちゃん。
「でもよぉ!」
「....だめだ。すみません、うちのホーリーナイトが...気性が荒くて。」
俺も少しだけ頭に来ていたのでシャルが聖職者だとおっさんにアピールしてみた。
「そこの大きな方はホーリーナイト様でしたか。それはとんだ失礼を...。」
おっさんは血相を更に変えてシャルに向き直る。
あれれぇ?俺は無視かなぁ。謝ってるのは俺なんだよぉ、おかしいなあ。
「ッチ...。」
シャルちゃん...お行儀が悪いわよぉ。
お船は皆のものなのよ。
「そちらのみすぼらしいあなた...優秀な旅のお供が居て素晴らしいですね。貧乏そうなあなたがどうやってこの方々を雇ったのかは分かりかねますがこの方達に失礼のないようにあなたも身なりを整えなさい。必要なら私が支援します。」
あ〜そろそろ我慢の限界であるからして、
ブチ切れそうであるからして。
「すみません、治療が済んだとはいえ再発する恐れがあります。海風は冷えますからお部屋にお戻りになったらいかがでしょうか?」
俺がぶち切れそうな顔をしていたらマカフィがそう冷たく言い放った。
「ええ、では失敬。」
その一言におっさん達はそう言い残して船のラグジュアリ客室入口の方へ消えていった。
気分が悪いので俺たちもキーキー言いながら客室...もとい雑居房へと戻った。
「んだっあいつら!ありえねーーー!クソ!」
「...恐らくグレイス教団を強く信仰する富裕層だね。教団を主に支援しているのはあの人たちみたいなのばかりだよ。」
「あ〜腐ってんな!全く!」
「...本当にね。」
マカフィは俺の言葉に俯く。
やはり教団を悪く言われるのはあまりいい気分では無いよな。
反省。
「マカフィ...すまねぇな。」
「いいんだよ。事実、腐っていると思う。
法王である父や一部の人たちはみんな慈悲の心を強くもったすごい人たちなんだ。
でも...団員の中には利益や自分の欲に忠実なものがいるのも事実で...あぁいう金持ちを利用している奴がいることも事実なんだよ。」
「...。」
どうしよう...なんて言葉をかけたらいいのだろうか。
マカフィが背負っているものを俺たちが一緒に背負うと啖呵切ったのにこれじゃ何もできてないのと一緒だ。
「...お前は法王になってそういうのも変えようと思っていたのか?」
「...うん。でも僕には背負いきれないよ。」
「...あぁ。お前が背負うべき問題ではないよ。法王になんかならなくていい...。
もう心を痛めなくていいんだよ。お前はお前だ。」
「...でも汚い部分があるんだよ?聖なる職業なのに。」
「...あのな、マカフィ...あの金持ちは不幸に見えたか?」
「...全然。」
「そうだろ?そういうことなんだよ。宗教ってのは救われる人がいたらそれでいいんじゃねぇのかな。信じてんのはそいつらの意思なんだからさ...。それが正しいかどうかで悩んでたらさ...お前の人生全部それになっちまうよ。」
「...。」
「俺もそう思うよ。マカフィ...俺たちはさ教団の為に生きてきた。でも...それが俺たちとって幸せなことだったか?
不幸なことばかり背負ってきただろ?
...終わりにしよう。」
「ぷう...。」
やっべ...屁が出ちまった。
さっきからうんこに行くタイミングをずっと探してたんだよ。
「おい!ダイゴ!ふざけんなよてめぇ。ここ密室だぞ!?早くドア開けろ!ハルート!」
「ハルート!?」
ハルートは俺の屁でツボってしまって転げ回っていた。
いい所だったのにい!せっかく俺かっこいいこと言ったのに!
屁で締めるなんて!
サイッッテェだ!
「あのお...毒ガス撒き散らしといてなんなんだけどさ...便所行ってきてもいい?うんこもうすぐそこにいるんだよ。」
俺が申し訳なさそうにそう言うとハルートはさらに笑い転げる。
釣られてマカフィも笑い転げた。
「はぁ...、行ってこいよ。」
図書館の時とは逆なのね。
俺がため息つかれちゃったよシャルに。
すっきりして戻ってくるとシャルたちはお茶会をしてた。
雑居房のスペースを上手く使いハルートのTセットで飲んでいる。
「ねぇ...俺うんこしてる間にさ思ったの。」
「なに?ダイゴ。」
「伝記にさ乗ってたメトロの記録だよ。
旅の途中で疲れすぎた時に魔力の痕跡をその地点に残して違う大陸の宿にフープルして一晩休む、次の日同じ地点に戻ってきて冒険再開って書いてあるんだ。
船に魔力の痕跡残せばもしかしたら...宿屋に行けるんじゃ?」
「ダイゴ...?無理です。それはメトロの膨大すぎる魔力があってこそです。
街や遺跡のようなイメージや魔素そのものを感じやすい場所とは訳が違います。
その場所の魔素の流れと軸を全て緻密に正確に魔力の中に刻み込まなければなりません
そしてもし叶ったとしてもこの人数を運ぶのは難しいでしょう。往復になれば魔力はその分消費します。あなたの今の魔力ですとおそらく難しいかと。本の中に入った時見てしまったんですよ。伝説の賢者と勇者の魔力量を...。あれはレオが書いたものですから...その当時のメトロそのものが出てきているはずです。」
「...そっかぁ。やっぱこのまましばらく我慢するしかないのねぇ。」
「あきらめろ!ダイゴ!二段ベッドの上使っていいから!」
「シャルちゃん...僕何歳に見えますか。」
「あっはっはっ...。」
マカフィ、ハルートお前ら笑いすぎな。
「おりょ?俺なら大喜びなんだけどなあ。」
うんそだろうね。
君なら大喜びだろうさ。
「あっ!じゃあ僕とシャルが一緒に寝るのはどう??そしたら体重の軽いハルートだけが上に登るだけ済むし!」
「ちょ!マカフィ何言ってんだおめぇ!」
「シャルは黙っててよ!」
「うーん。つまり俺がこの二段ベッドの上に登るのは危険と?」
「うん、君やシャルみたいな筋肉多い人が乗ったら多分これ1週間と持たないよ。」
「ふええ...ほかの冒険者はどうしてんのかな。」
「多分4人で泊まるのはレアケースで大体この部屋に二人づつが多いと思うよ!だってクチコミ見た?すごいよ。」
マカフィはスマホを取りだして俺に見せた。
あっ、そんなのも見れるの?急に近代的になってきた。
ちなみにマカフィが見せてくれたクチコミには、スタンダートクラスは部屋が狭すぎる、4人では泊まらない方がいい、カビ臭い、高すぎるなどと悲痛な叫びが書かれていた。
「ねっ!?いまパーティのうち誰かはスマホを持つのが普通だし...多分みんな調べてるんじゃないかな?」
「乗る前に...。」
俺はマカフィのケロッとした言い草に俯いていしまう。
「???」
「乗る前に教えてよおおお。」
「だ、だって君がなるべく安くしてレストランに資金を回したいって言うからさ!」
「....っそうだったぁ。」
まぁここまで酷いと思わないじゃない?
この世界にいるうちに通貨日本円との差額が掴めるようになってきた。
この船の運賃は日本円で換算して一人頭約400万円。スゥイートやラグジュアリーはその5倍くらいから...らしい。
ダイヤモンドプリンセスや飛鳥IIもびっくりなお値段です。
ちなみに定期船も出ている。そっちは比較的お手頃で定期券などもあってさらに市民証明またはギルド証明で若干割引がある。
そちらはエズルドーラまでしか行かない上小型船なので揺れも半端なくて上級者向きらしい。
それにその場合エズルドーラに着いたとて、そこからロイズまでの乗り継ぎが1週間かそこら以上空いたりと全くもって現実的ではなくそちらの案はなしになった。
ちなみに余談だが、調べたところクレジットカードはSSSランク冒険者、料理人、トレジャーハンターにしか持てないようになってるらしい。
「あぁ。お金がないよぉ。」
この世界の通貨の名称はは共通でJ。
国によってコインや紙幣のデザインは全く異なるものの言語統一が行われた頃単位だけ揃えられたらしい。
僕ちゃんの現在の所持金?
聞きたい?
30000Jです。
日本円で言うと約1000円で1J。
つまり今の所持金は3000万円てこと。
お金持ちに見えるでしょ?
この世界を舐めちゃ行けませんよ。
俺たちが居たアクアベリーの宿は一晩あたり安いところでも100J、考えられますか?
品川あたりのビジネスホテル2万あれば贅沢できるでしょ?
その5倍ですって奥さん。
なんなら環境最悪のホームレス街にあるお宿ですら50Jよ!つまり5千円あれば泊まれちゃうような上野のカプセルホテル位の場所でも5万くらいはしまっせ。
港町だからなのか物価がべらぼうに高くてクラクラするぜ。
アクアベリーから出るまでは一桁間違えて認識してましたよええ。
ちなみにルカと行ったレストランもコース料金を調べたところ2000J...。
言いたいことわかると思うけどレストランを開くなんてなったらあの街なら辺鄙なところでも結構なお値段が必要なわけですよ。
ちなみに第一候補地のマルジニアでは物価は半分くらいらしいけど...せいぜい半分よ?
お店を開くには莫大な資金がいるのは変わりはない。
アクアベリーのAランク以上の依頼はね単価が高いんですよ。
それでもこの有様なんだよね。
黄金の国エズルドーラの依頼に期待をするしかありませんよ。 宝くじでも当たんねぇかな。
まぁそもそもこの世界にあんのかわかんねーけど。
「ダイゴ...地道に頑張りましょう。大丈夫です。四人もいるのですから。」
「そうだよねぇ...なぁ、エズルドーラって物価高い??」
「...えぇ、世界最高の物価高はルコニアかエズルドーラかですからおそらくアクアベリーよりもさらに高いと思います。」
もう...神様?ねぇ?僕の所持金増やしてよおおおお!
運命操作してよおおおおお。
「えぇ!?まじ?」
「逆に言えば依頼も報酬が期待できるということですよ、それにダイゴこの前ようやくAランクに上がったじゃないですか。」
「俺一人なら大いに意味はあるけどさ、同時にSSになったシャルやマカフィが居ればその上も受けられるしなんの意味もないよぉ。」
「ダイゴ!?ロイズの街は物価が安いです。ちかくのキノコの村メリッサはもっともっと物価安であちらに着いてからならレストランも数件回れますよきっと。」
落ち込む俺を宥めるハルートはなんだか父さんみたいだった。
俺のが年上なんだけどなぁ。
な、情けねぇ。男らしくカッコつけたい!
でも...金がねぇんだよマジで。
まぁ頑張るっきゃないか!
俺の思考回路はいつもこうなのである。
基本的に格好つけたいのでカッコつかなくなるとシャキッとし出す...そんなおちゃめさんなのだ。
「頑張るかねぇ。
ところで話は戻るがこの日まで不愉快な長い船旅をどうこなす?」
「まずは!大浴場に行ってみるのはどうだ?」
「お!シャルいいね!大浴場はたしか利用料そんなでもなかったよな?」
「ああ!10Jだ!」
うんうん、1万円ね。ってたっか!なんじゃそりゃ。
「うーん、安いとはいえないけどまぁ払えなくはないな!
他には何があるんだっけ?食堂以外の設備って。」
「あー...たしかカジノがあったような。」
カジノ!?それだそれだそれだぁ!
「あーでもスタンダートの獣人は低倍率のところしか入れないってサイトに書いてあるな。」
「いい!それ!めっちゃいい!」
狙おう!一攫千金!4人全員の全財産を賭けよう!
賭ケグルイましょう?
「ダイゴ...私タロットが得意なのですが...あなたは賭け事をしない方が良いと出ています。やめましょう。」
ハルートくぅん!タロットってのは所詮78枚の戯言なのだよ。
と思いつつもハルートの信用を壊したくないので...辞めるか...くぅうう!
絶対勝つ自信あるのにぃ。
「はぁい。」
ハルートは頷きマカフィは笑う。
ハイハイ笑いたきゃ笑えよ!
「この退屈な時間...を過ごす方法は見つからない...か。」
「...それならさ、ダイゴ僕ひとつ提案があるんだ。」
「んあ?」
「お互いのことをきちんと知りたいんだ。もちろん嫌だなとか話したくないとかなら別だけど僕はハルートにも僕のことを知って欲しいし...ハルートのことを僕も知りたい。それから...ダイゴ?君は君の話をハルートにちゃんとした方がいいよ。夢を手伝ってもらうのなら尚更ね。」
....ごもっともすぎる。
でも...ベラベラ喋んのはさ...なんか違うんだよな。
必要な時が来たら必要な話はするし...それでいいんじゃね?とも思ってしまう。
ましてや俺とハルートは男同士だ。
背中で語り合いたいという...黙って着いてきて欲しいし困った時とは黙って助けたいという...気持ちがあるんだよな。
「ダイゴ...無理にとは言いません。あなたのこと少し聞かせてくれませんか?」
「...わかった。」
それから俺たちは情報を共有しあった。
生まれた時から今までの事を。
出会ったばかりだけど正直こんなにも深い付き合いをできる相手は今までであったことがなかったからなのか自然に言葉が出てきた。
父さんへの思いとかそういったものまで包み隠さずとはいかなかったけど転生してきたこと...転生前の人生についてはしっかりと話せた。
必要なことはちゃんと伝えたつもりだ。
みんなは黙って聞いてくれたしハルートもシャルやマカフィもお互いの話をし合う時もそれぞれ黙って聞いていた。
前の世界や神の世界のこととかもっと聞かれると思ったけどそこは深く踏み込まない線引きができるやはり信頼の出来るやつらだ。
話終わる頃に気がつくと夜が更けていた...。
俺は何故か眠れなくてみんなが眠ったあともデッキでぼーっとしたりしていた。
俺...世界の異物のはずなのに...みんなは関係ないと態度で示してくれた。
...ぼんやりとそれを実感して俺は少し涙した。うっすら不安に思っていたんだろうか?
俺って...だせぇな!
転生してからというもの全くもって忙しすぎる日々。
自分の夢を追いながらも仲間たちやまわりに支えられ振り回され...。
思えば前の人生を振り返る時間すらなかったな。
きちんと言葉にして話したからなのか、前の世界が少しだけ恋しくなっていた。
...本当は父さんに会いたいだけなのかもしれないけれど。
それは前の世界に戻ったところで叶わない。
俺は前の世界での父との記憶がものすごく大切なんだろうな。
あ〜うじうじしてらしくねぇ!
クソッ!父さん!見ててくれよな!
俺こいつらと夢を叶えてみせっからよ!
父さんが叶えられなかった世界一のフレンチシェフになってみせるぜ!
よし、らしくねぇのはここまでさ!
松風大護第二章新たにスタートだ!
がんばるぜっ!!
〜続く〜




