第8話 「ネコチャン」
...目が覚めるといつものホテルの天井...じゃない。
どこですかここは。
少々飲みすぎたかな。
「昨日は...たしか...ってうぇー!」
両隣を見るとシャルとマカフィが寝てる...。
し、しかも肌着だ。
どゆことどゆことどゆことぉ〜。
てかシャル鎧を脱いだらそんなにスタイルいいんですかぁ!?
つーかよく見たらハルートも居るですけどぉ!?
え、俺全然記憶ない...うそうそうそ!
うそだ!
俺がワチャワチャ慌ててるとハルートが目を覚ました。
「おはようございます。ダイゴ。」
「お、おはよう。ねぇなにこれどういうこと俺何したの...。答えによってはもういっぺん死にたい...。」
「ブフッ何言ってんですか。ダイゴが今日はみんなで朝までいるぞぉ!って騒いだ挙句マカフィとシャルの泊まるホテルに押しかけて飲んで暴れて勝手に寝落ちしたんですよ。」
...あ〜よかった。
お前とはどうにもなってないのね。
きもいきもい絶対無理!
まぁ...横にいる女の子たちとも何も無かったとみて問題ないですねこれ...。
そっちはいいんだか悪いんだか。
「おはよう。ダイゴ。」
俺が騒いでたらシャルが目を覚ました。
声ガラッガラ。
いつもよりふんわりしたロングヘアーは女の子らしさを強調させて...肌着だからボディラインやら...その大きさやらがくっりハッキリ....。割れた腹筋と上腕二頭筋は俺よりもかっこいいし...。
朝で元気になった俺の息子様が暴れ出す前に服を着てください。お願いします。
マカフィは丸くなって横向きに寝ていて...なんかネコチャンてかんじ。
こちらもローブじゃないとはっきり女の子だとわかる。
まじでボディラインやわらか過ぎ。
あんまり見たら失礼なので俺はユニットバスにある洗面所で顔を洗い、上着を着るとハルートを連れ外に出ようと声をかけた。
「一度帰るよ!また依頼の時な!ハルート行くぞ!」
「はい!ダイゴ...せっかくなので朝風呂などいかがですか?」
「え?大衆浴場みたいなのがあるの!?」
「もちろん、アクアベリーにもありますがせっかくですから本物の温泉があるタッカンブルの村にいきましょう。フープルの練習にもなりますし、村の皆さんにお渡ししたいものもありますので。」
「おぉ!いいぜ!行こう行こう!」
「あ!ずるい俺たちも連れてけよぉ。」
俺たちの会話を聞いてシャルは起き上がる。
下はパンツしか履いてない。
勘弁してよぉ。勃っちゃうよぉ。ねててくれよぉ。お前とはいい仲間でいたいよぉ。
「マカフィも寝てるしまた後でな!みんなで行こう!それにもタッカンブルまでの距離を全員的確に飛ばせるかまだ自信ないし!また後でな!あ!それから昨日はご馳走さん!」
「ちぇ〜っ。わかったよ!じゃまた後でな。」
残念そうにするシャル。
俺はホッと胸を撫で下ろし二人の部屋を後にした。
外に出ると俺はハルートに声をかける。
「俺1度宿に戻って着替えだけ取りに行ってくるよ。」
「えぇ私もそうします。私はここから近いのでこの辺にまた来て貰えますか?」
「あー!いいよ!この辺高級外近辺か!この距離のフープル、一人でなら多分確実に成功するし即戻ってこれると思う。お前の宿の前まで飛ぶよ。」
「おぉ!頼もしい。エーテルも用意しておくのでキツかったら言ってくださいね。タッカンブルの村の朝風呂は宿泊しなくても顔なじみであればタダで使わせてくれます。せっかくですから疲れを取りましょう。」
「俺たち一泊してないのに顔なじみなのか!?」
「はは、あなたが勉強してる間私がルコニア地方出身だと言う話で盛り上がりましてね。まぁ詳しい話はお風呂でしましょう。」
「おう!だな!じゃあまた後でな!」
俺はフープルを使用し自分の宿の部屋の中に直接飛んだ。
ちなみに、宿代はしばらく分払っておいているので出入りは自由だ。
着替えを取り終わると俺は、ハルートの泊まる宿へとフープルする。
「うん!魔力も全然余裕がある。成功してるし!いいじゃん!確実にできるようになってるよぉ。」
おっと思わず心の声が漏れてしまった。
フロントの人に変な顔をされたけど気にしません。
「ダイゴ!できるのですね!?もう。」
降りてきたハルートは俺の顔を見て俺より嬉しそう。
ふへへ、えらいっしょ。
「おう!完璧だぜ!魔力も辛くない!さっ!ダイゴ便がハルート君をタッカンブルまでお連れします。」
この時の俺の頭の中には世界の車窓からのBGMが流れていた。
「ぶはっ!なんですかそれ...。」
相変わらずいちいち笑ってくれるこいつは気持ちのいい野郎だ!
俺はさっきより気合を入れて魔力を高めるとタッカンブルの村までハルートを連れフープルした。
虹色の光に包まれ次の瞬間には共にタッカンブルの村へたどり着いた。
うんうん、成功。
「やったぜ!ハルート!」
「すごいじゃないですか!ダイゴ!」
俺は同性の同年代くらい...と共に過ごす時間がこんなにおもしれぇのかと思った。
高校の頃も中学の頃も料理に夢中になってたし、友達というか学校で話す人はいたけど
こんな風に嬉しいことを共有できる相手は父さんだけだった。
まあハルートの方が少し年下だけどね。
「ダイゴ!さ、朝風呂に行きますよ。」
「おう!」
ハルートに連れられこの前泊まった宿屋にやってきた。
ここには本当は温泉があったのだ。
俺は勉強に夢中になって気が付かなかったんですけど。
「おはようございます!この前のスパイス大変美味しかったです女将さん。
そこでお礼と言っては何ですが、キャベツの種をお持ちしました。
以前、この村では取れない新しい野菜を何か育てたいとおっしゃってましたのでこの辺の土や降水量実際に生えている草木を見てこれが適切かと思いまして。」
ハルートは女将さんにキャベツの種を手渡した。
「あらぁ。この前のお兄さんだね!あ〜んありがとう!あんたって人はなんて気が利くんだい!」
「...。」
俺はハルートの卒の無さに言葉を失ってしまった。
おんおんすげえなこいつ。すげえなこいつ!
火山道に行く途中でやたら調べてたことをここで活かしてくる!?
つーか降水量!?そんなのいつ調べたんだよぉ。
「いえいえ、野菜もいただきましたし、たくさん良くしていただきましたからね。この辺ではキャベツが育ちやすい風土をしています。名産の白菜やクラヌールなんかと一緒に栽培をすると良いかもしれません。」
...栽培時期や収穫時期も計算してんのか。すげぇな。
こういうとこほんと尊敬するわ。
しかも人のために動けるのがすごいよね。こいつ。
うんうん俺もへっぽこ冒険者やってる場合じゃない。
「実はさ、キャベツはねぇ、私よりずっと前の世代が栽培に失敗してしまったらしくてね。だからなかなか手を出さないでいたんだけどあんたがそういうならもう一度育ててみたいと思う。」
女将さんは鶏らしい立派なとさかをなびかせて頬に手を当てた。
「はい、それも調べたところわかっていましたので今回は専用の魔法生物の肥料を買っておきました。土を起こす頃に村へ届くよう手配しておきましたからぜひ使ってみてくださいね。」
「ありがとう!作ってみて上手く行けばアクアベリーに出荷もできるものが増えるしこの村も潤うねぇ。」
女将さんはニコニコと嬉しそうな顔で笑う。
「喜んでいただけて何よりです。それで今回は朝風呂をしたいので温泉をお借りしたくてきたのですが、よろしいでしょうか?」
「あぁん!もうそれくらいの事!いいよいいよ!あ、でも最後に軽く掃除だけしてもらえるかい?」
「はい、構いません。」
「ありがとうね〜お湯は魔法で洗浄できるしデッキだけブラシで擦るだけでいいから!あっ!あと村のおっさん達が何人か入ってるけど気にしないでおくれ!」
「こちらこそ、村の方の時間を邪魔してしまってすみません。」
「いいんだよ!そんなもん!どうせ客が泊まってる時だってあの人たちは喋りたくて入ってくるんだらぁ!」
俺たちは宿の一階から渡り廊下を通り温泉までやってきた。
ちなみにアクアベリーはここの運び湯を提供してる宿もあるらしい。
今度からそっちに泊まろうかしら。
提供してるのは宿だけで、大衆浴場の方は普通のお風呂らしい。
温泉の入口の引戸をあけると...おっ!これは。
日本の温泉にクリソツ。
脱衣所にはカゴを入れる棚がある。
そこに服を入れる感じ。
魔法カバンはロッカーにいられるようになっててコイン一枚の返却式。
ここまで類似してたらもしかして、俺の他にも転生者います??
と思ってしまう。
まぁ神様がいないって言ってたから居ないんだろうけど。
「ハルート!さんきゅ〜!温泉ずっと来たかったんだよ。ちょー嬉しい。」
「喜んでいただけて何よりです。さ、入りましょう。」
俺たちは魔法カバンをロッカーにしまい鍵を手にかけると服を脱ぎ脱衣所から右側にある引き戸から露天へ足を踏み入れる。
そこには、石造りの足場と湯船...それに周りにはこの辺でよく見る木々が植えられ日本庭園によく似た作りになっていた。
お湯は乳白色で煙からは硫黄の香りがする。
そして、中にはおじさんが五人...。
うんうん、いいじゃないのぉ!
「おはようございます!」
「おはようございまーーーす!」
俺たちはおじさんたちに挨拶を交わす。
おじさん達も嬉しそうに挨拶を返してくれる。
「あんたら!この前も泊まってくれたやいな?」
「ええ、そうなのです。
この前は温泉に入り損ねてしまいましたし、施していただいたお礼も兼ねてこの村に立ち寄ったんです。」
「礼儀正しねぇ〜?あっちらはこん村からあんまし出たことなくて共通語の標準語もあんましゃべられんのよ!きぃ悪くしたらすまんの!」
「いえいえ、気になさらないでください。こちらそ、あなた方の大切な朝風呂の時間に押しかけてしまいすみません。」
「いいんよ!いいんよ!この前はマンマ食うばかりであんまり話せんかったやいね!あっちら他所ん人の話ぃきくん好きだすけ...おめさんたちの話きかしてくれやいな。」
ちなみに転生者である俺も喋っているのは共通語。
これは獣人類の共通語で俺には日本語と同じように聞こえてる。
たぶんそういう風に神が俺の頭をプログラムをしてくれたんだろう。
この世界で話されているのはだいたい共通語なんだけど大陸の一部地域によっては旧言語だったりその国の言葉もあったりするけど...。だいぶ昔の頃から共通語を流通させる動きがあったらしく、大体の人達が共通語を喋れる。
その為、訛りやイントネーションの違いなんかは地域差が大きい。
訛りがこんだけ出るということは、この村にもどうやら昔は共通語以外の言葉もあったようだ。
それから勇者レオにもロージニア訛り、パラデモンクのオーリスにもルコスト訛りがあったようでコンプレックスから標準語をたくさん練習したとか。
「おぉ!そっちのあんちゃんもよかったら話聞かせてくれやいな!」
古ぼけた毛並みの...ちょっぴり薄汚れた感じのハゲワシのおじさんが俺にそう問いかけた。
「あぁ、オレはロージニア大陸のキノコの村メリッサ...よりさらに北のマルジニア手前の山奥の生まれで...あんましいい育ちじゃないんですよ。あはは!」
「おぉ!田舎出身かい!?その割には訛ってないやいな!」
「あはは両親はマルジニア生まれなんでそっちの訛りはすこしあるかもですが...厳しい人だったので。」
...少し心がいたんだけどこの場で俺転生者です!なんて言えないのでとりあえずそれっぽいことを言っておいた。
マルジニアはホント日本の文化に似てるからつつかれてもどうにかなるかなぁと。
「んじゃーマル酒はすきかい?あっちはあれが大好きなん!今度持ってきてくれんか?」
マル酒は日本酒と同じく米を醸造させた酒のことだ。
「ほんとですか!じゃあ今度またこの宿にお世話になる時には持ってきますよ!」
「くぅ〜!よかよか!ほんほんだわ!」
「??」
「あ、すまんの。ほんほんは喜んどるって意味なんよ。わかんねがったね。」
「マル酒のお好みの味や製造法はありますか?」
「辛いのが好きだず!辛いのたのむんわ!」
...なるほどそれなら本醸造かな?
まあその辺はマルジニアに実際行った時にでもどうにかするか。
「分かりました!次マルジニアに行った時にでも買っときますわ!」
「助かるじ〜!ほんほんだいや〜。」
このおじさん可愛いな。なんかじいちゃんみたい。
田舎のじいちゃんも俺が父さんに連れられ帰ると嬉しそうにしてた。
東北訛りやばくて何言ってるかわからなかったけど。
それから俺たちはおじさんと小一時間しゃべりその後は洗い場などの掃除をお願いされたよりも丁寧に済ませ女将さんにお礼を言いアクアベリーへと戻った。
「ん〜最高だったな。」
「ええ、本当に。
火山もありますからね。硫化水素の濃度が濃く...色の濃い白濁食の温泉ですからね。傷や疲れにはもってこいなんですよ。」
「ん〜そうなるとあの辺の大気的に野菜って大丈夫なの?」
「ええ近いとはいえ火口からはかなり離れていますから影響は少ないです。標高が割とあるため気候も涼しく温泉が流れてしまっている川とは別の真水の川が近くにありますしそういった面でもあの風土になりやすいのかと思います。」
「ほええ。すげぇさすが地学と歴史学の専門家〜。」
「あはは、まぁもうその権限はないので元でしかありませんけど。」
「まあまあ俺みたいに料理バカよりも知識があるということだけは間違いない!お!つーかそろそろギルドの依頼が更新される頃じゃないか?シャル達も来てる頃だろうし行ってみようぜ。」
「それもそうですね。」
俺とハルートはギルドまで足を運び依頼板の前にやってきた。
そこにはシャルが居てこっちに手を振る。
「おー!戻ってきたか!おかえりー!」
「シャル!おまたせー!ってあれマカフィは?」
その質問は彼女の顔を曇らせた。
「しらねぇ。」
およ?喧嘩かしら。めんどくさいよぉ。
「そ...っか。」
「....。」
シャルは俯いてしまう。
き、きまじ〜。
「何かあった...?」
「別になんもねぇよ。」
「...そうでもないでしょ...嫌じゃなかったらさ教えてよ。」
俺は、なるべく丁寧にシャルの瞳をのぞき込む。
「...。あいつが悪いんだ!俺のせいじゃねぇ!」
シャルは顔を真っ赤にして大きな声出した。
「喧嘩か?」
「まぁそんなところだ!とにかく!あいつは来ない!今日はあいつ抜きで行くぞ。」
弱ったな。めんどくさいぞ、かなり。
「そういう訳にも行かないだろ。」
「...あいつは来ねぇよ。今頃高級外で買い物でもしてんだろ。」
「...シャル。探しに行くぞ。」
「...行きたきゃお前たちだけでいけよ。」
「ったくしょうがないね。一旦そうしてみるからお前はここにいるんだぞ。」
「ッチ...わーったよ。」
一人で依頼に行かれて無茶をされて死なれたらたまらん。
「あ、ハルート、すまないけどシャルと居てくれる?フープルで移動するから魔力的にもいつまでもつかなって思ってさ。」
本当はシャルが心配だったからだけどハルートならそこを汲み取ってくれるだろ。
「ええ、かまいませんよ。あ、それじゃシャル、せっかくですから美味しいランチでも食べましょうか。シャルが好きそうな肉の丸焼きが美味しいお店があるんですよ。」
「おぉー!すげぇ!いくいく!」
さっすが〜。ハルートは俺のこともシャルのこともよく分かってるぅ。
...はぁ俺何してるんだろ?レストランから遠ざかってない?大丈夫??
と心の中で一抹の不安を抱えながらもこれも仲間のためと思い直しフープルで高級街へ向かった。
ばっちいカッコできてしまったので店の中は愚か街を歩いても浮きそうだけどそんなことは気にしたら負けなので迷い込んだ冒険者か浮浪者のフリをしてフラついてみる。
そんなことをしているうちにマカフィはすぐ見付かった。
時計塔の下にあるベルが売っている店の前に居た。
「やぁお嬢さん。」
俺はそれとなく声をかけてみる。
マカフィは少し女の子らしい普段着を着ていた。
「...なんだ、ダイゴか。」
「ダイゴか、とは何かね。探したのだよ。」
「シャルに言われて来たの!?それなら僕帰らないよ!」
「あはは...そりゃ困ったね。まぁいいや。帰りたくないならせっかくオシャレしてんだし俺とデートでもするか?」
無理に引き戻しても逆効果かとおもったので俺は思い切ってふざけた提案をしてみた。
「何言ってんの!そんな浮浪者みたいな格好でこの場所にいたら通報されちゃうよ!」
「もちろん、下町の方での話だよ。」
「....ねぇダイゴ...僕可愛い?」
マカフィは一旦俯くと....瞳を潤ませて俺の裾を掴んで俺を見上げる。
俺は思わず抱きしめそうになるのを必死に抑えながらぶっきらぼうに答えた。
「あぁ可愛いよ。」
「....複雑、僕はシャルのお婿さんになるから男の子みたいにしなきゃ行けないのに。」
...ああ可愛いむり連れて帰りたい箱に入れてしまっておきたい。
「...僕本当は可愛いものも大好きだし、甘いものだってすきなんだ。ダメなんだよこんなんじゃさ...。」
「...マカフィ?俺に捕まって。」
「?」
俺はマカフィを連れて星の村があった跡地から近い高丘にフープルした。
「...?ダイゴ?」
「あぁいきなりびっくりしたよな。ごめん。ここなら落ち着いて話せそうだと咄嗟に思ったんだ。」
「...そっか。
でも、僕さっき泣きそうになってたし正しいかも。あのままあそこで喋ってたら本当に通報されちゃうかもだし。」
「はは...。良かったら聞かせてくれないか?お前たち2人の事さ。何も知らないままじゃ偉そうにアドバイスするのもおかしいだろ?」
「...うん。僕とシャルはね同じ教会で生まれたんだ。教会は聖騎士団を率いるこの世界でいちばん大きな教団なんだ。
それでそこの法王の息子として生まれるはずだったのが...僕。
騎士団長の娘として生まれたのがシャルなんだよ。
法王は男の人しかなれなくて...だから父上は僕を男として育てた。
小さな頃からお前はシャルとお前は将来結ばれるんだよと言われ続けてきて...。
物心着いたばかりの頃は苦しいとか嫌だなって思ってたんだけどね。
シャルは...お前が男になるのなら俺も男になるからって...ずっとそばに居てくれたんだ。
そうしてある程度大きくなってからシャルは聖騎士団に入った。才能があった彼女はみるみる腕を上げて...君も見ただろ?ふたつの剣技を使い分けていたのをさ。
あれは本来騎士団の高位の者しかやってはいけないことなんだ。
騎士団にはチームがあってそこのチームの長に選ばれた者またはそれ以上とされているんだよ。
だから彼女は既に騎士団でそれくらいの位置にいたということ。
約束された将来...仕組まれた僕たちの結婚。
僕は運命を受け入れてそれでいいと思っていたんだよ。でもね...ある日シャルは外の世界へ行こうと僕を無理やり連れ出したんだ。
それはご法度に近い行為ですぐに連れ戻されたんだけど、
修行の旅を二人だけでさせてくれとなんとかこじつけの理由で期間限定ならと許可を取ってボクが嫌ですという間もなく飛び出してきたんだ。
...で、本来僕たちは一年くらい前に帰らなければならないことになっていたんだけどシャルはそれを無視した。
僕もシャルと一緒なら怖くないって思ったから...そうしていたのだけどね。」
「....。あぁ。」
「使者がやってきたんだよ。ついこの前君たちとパーティを組んだ時にさ。僕は...父上がどんなに恐ろしいかを知っているから...戻ろう...と言ったんだ。
でも...シャルは帰るつもりはない、俺とお前がいるべきはこの場所だろうが!と言われてしまったんだ。それで毎日少しづつ言い合いするようになって...それで今朝大喧嘩しちゃったの。
そしたらさ僕も気持ちがわかんなくなって...。
じゃあいっそ自分がしたいカッコをして好きなことをしてみたらシャルの気持ちが分かるかなと思ったんだ。
...でベルがちょうどないからこのベルとか売ってる雑貨屋に可愛いのあるかもと思って目の前まで来たんだけど...やっぱり葛藤があって...僕は男らしく居ないと...シャルを守らないと...って気持ちになって中々入れずに入口にいたんだ。」
「そうか...おまえはすげぇな。」
「...すごくなんかない!今もこんなに弱音吐いてウジウジして!本当なら男らしくして強がらないといけないのに。僕は君に助けてと言いたくてたまらない。弱く脆くて情けない!」
「...。強いよ、おまえは...そして誰よりもすげー頑張ってる。お前もシャルもな。」
「...頑張ってなんかない!」
マカフィは大粒の涙を流して俺に叫んでいる。
「...法王はさお前を法王にしたい理由があったのかな?」
「...それは僕が魔力が強いことと生まれながらにして回復魔法の適性が異常に強かったから...百年に一度生まれるか生まれないのかの奇跡だから...。」
「...そうか、おまえはそんなもんまで背負ってきたのか。すごいな。」
「すごくない!僕はすごくなんかないよ。」
「...シャルも同じように背負ってきたんだな。お前と自分の運命をさ。」
「...。」
「なぁマカフィ?俺はさ本当はこの世界の者じゃないんだよ。」
「え!?」
「別の世界で生きてきて...死んじゃってさこの世界の神とやらに選ばれて転生して今があるんだ。」
「何を言ってるの?」
「...ははこんなん言ってもなかなか信じられねーとは思う。でもさ俺、お前になら打ち明けてもいいかなと思ったんだ。
ハルートさえ知らないこの事実をさ。」
「なんで...なんで僕なんかに。」
「俺のいた世界ではさ...誰がどんなことをしてもいい世界だったんだ。
生まれも育ちもほとんど関係ない。
そりゃ...後継とかそういうのは色々あるけどさ、ほとんどが自分で選んで生きていいそんな時代が存在している世界だったんだ。」
「...。」
「そんな中で俺は...憧れていた父さんの店をさ...継ぐことを決めたんだ。
それは父さんが望んでいたからとかではなく...俺が決めたこと。
たくさんの選択肢がある中で俺が選んだこと。」
「....うん。」
「まぁ結果的に上手くは行かなかったけどさ。別の形で夢がかないそうになったところ死んじまってこの世界に来たんだ。
んで、俺はこの世界でも野望を叶えたいその一心で今できることをコツコツやっている。
...マカフィはさ、どうしたいの?この後。」
「僕は...自由に...シャルと生きていきたい!」
「...答え出てんじゃん。」
「...でも父様が...。あっちがう...父上が...。
それに教会だって....。」
「ははっ...今大事なのはお前がどうしたいかだよ。」
「...でも、君がいた世界とちがって...僕が居ないと困る人が大勢いて...それで。」
「それで?勘違いしてるみたいだけど俺のいた世界だって勝手をすると決めたら必ず誰かには迷惑がかかる。
だがな、みんなそれくらいの覚悟を持って自分がしたい事の方向へ進むんだよ。
なぁマカフィ?お前が優先したいのはみんなの期待か?それともお前の気持ちか?」
「そんなの!わかんないよ!」
「...わかんなくないだろ?どうしたいか聞いた時に答えは出ているんだ。」
「...自由に...生きたいよ。
すごく苦しいよ。何も背負いたくないよ。」
マカフィは年相応の少女の顔で涙を流した。
「マカフィ...お前が選んでいいんだよ。覚悟ができないなら俺が...俺とシャルとハルートで三人で背負うから。」
「...。」
「大丈夫、法王はまだそんな歳じゃなかったはずさ。それに高位の僧侶なんていくらでもいるだろ?法王になりたいヤツだってそんなもんやりたいヤツにやらせておけばいいんだよ。本当に必要なことなんてそう大して多くはないんだから。」
「...最後のひと言シャルも同じこと言ってた。騎士団の団長なんて出来るやつがやる。
俺はお前と冒険がしたいって...。」
「はは!だろ!?そんなもんなんだよ。もしかしたら勘当されて帰る場所も無くなるかもしれないし追い回されるかもしれない。 でも安心しろ!俺は故郷にどう頑張っても帰れない!
それにハルートだって訳あって帰れない!
そしたら俺たちみんな帰る場所なんてないだろ!?
逃げるのだってみんな一緒に逃げればいい。 俺たちの居場所は俺たちなんだよ!それじゃダメかな?」
「...ダイゴ僕なんと言ったらいいか。」
「マカフィ!俺には夢があるんだ。ルカっていうぶっ飛んだ女との約束もな。
だから良かったら...無理にとはいわんけどもさ、せっかくなら少しの間俺の夢に付き合わない?」
「夢?」
「あぁほら俺は前世、心半ばで死んでるだろ?だからこの世界で今度こそシェフとして自分のレストランを持ちたいんだ!そして、料理人ランクSSSランクを目指す。それが叶った時にはルカっていう俺より先にそこにいる女と戦うんだ。
でさ!勝った方が今度は世界一を目指したレストランのシェフになる。
お前にはひたむきに自分と戦ってきた強さがあるんだ。きっとなんだって上手くやれるよ。だからその夢を一緒に叶える手伝いをしてくれないかな」
「...そんなこといきなり言われても。」
「あっはっはっ!そりゃそうだな。
別に一緒にレストランをやってくれってんじゃないんだ。何するにもまず金が必要なんだ!
だから、今まで通り一緒に自由にさ、依頼をこなしたりしようぜ!
出来たらでいいけどさたまに料理ギルドの依頼なんかに付き合ってくれてもうれしい!
もしその中で俺とレストランをやってもいいという気持ちなればその先も着いてくればいいし、その間に他に夢ができたなら俺はそれを応援する。
それまで俺達がお前の居場所になってやるから...さ!
だから来いよ!俺たちと。」
「....行きたい!僕自分で決めた道を生きてみたい...探してみたいよ、僕が本当にやりたいことを。
でも教団からも逃げたくもない。だから一度シャルを連れて帰るよ。
そしてちゃんと自分の道を生きることを伝える。もし納得して貰えなくても僕は僕の道を生きたい!」
「おう!やっぱりお前はすげーよ!最後まで向き合おうとしてんだから!」
「ダイゴ...もし良かったら僕たちについて来てくれないかな。戻るとは言ったけどさ....怖いんだ。」
「っりめーだろ!?最初からそのつもりさ、でもまずはシャルを説得しないとな。
お前ならできる。
一緒にシャルの所へ帰ろう。」
「...うん!僕シャルともう一度話してみるよ。」
俺は黙ってその言葉に頷きマカフィを連れフープルでギルドまで戻った。
ギルドにはシャルもハルートもいなかったけど併設カフェでコーヒーを飲んでるうちに戻ってきた。
「やっぱりお前の連れてってくれる店はまちがいねぇーな!ハルート。」
「光栄です。」
「おかえり!二人とも!」
俺は、カフェから声をかける。
「おぉ!ダイゴ!戻ってきたんか!...お前もいるのか。」
シャルはマカフィの方を見て少し不機嫌そうにした。
「シャル!僕きめたんだ!聞いて。」
「...あぁ。」
「自由に生きたい!君と僕で自由に!」
「...!」
シャルの顔はパッと明るくなりマカフィを黙ったまま抱きしめると静かに語り出した。
「ごめん、マカフィ。
俺...お前の言う通り逃げてるだけだった....。
でもお前をお前をさ...あそこに戻したくないんだよ。今のお前は無理をしながらもさ、自然に笑ったり怒ったり年相応のさ...女の子だ。あそこにいたお前は...無理してて辛そうで責任に追われて自分を追い詰めて追い詰めて...俺そんなお前見たくねぇんだよ。」
「僕こそごめんね...シャル。
ダイゴに教えてもらったんだ。僕の場所は僕たち自信なんだって...生きたいように生きてもいいんだって。
シャルに全部言われた通りだった。
僕は人のことばかり気にして自分の気持ち全部全部ないがしろにしてたんだ。
今日自分のしたいことをしてみて思ったんだ。僕は僕らしく生きたいって。
...でもね、教団と向き合うことらも逃げたくない。
だからさ、一度教壇には戻ろうと思う。
そしてきちんと自分の意思を話す。
納得して貰えないならその時は故郷や父様のことと縁を切ってでも出ていこうと思う。
シャル...僕と一緒に帰ろう。話に行こう。」
「...あぁ、そうだよな。」
シャルは俯いてしまった。
「ダイゴたちも着いてきてくれるから。だから僕たちみんなでグレイス教団に行こう。」
マカフィはシャルを抱き返すと優しい声でそう言った。
「....わかった。」
シャルはそのまま黙ってしまった。
その日は依頼所では無いので一旦解散になった。
次の日再度ギルドに集合してグレイスランド地方への旅立ちの計画をみんなで立てることになった。
「今から1週間...まずはこちらで資金作りをしたいと思う。」
「...それは現実的ですね。マカフィやシャルはそれでも平気ですか?」
「あぁ問題ないよ、転移札を買うことも考えけどそんだけ長距離用になるととんでもない値段するし...船旅をして行くのが現実的にいいんじゃないかな。」
「俺はマカフィとお前らについて行くだけだ。」
「俺の宿はちょうど来週に事前に払った分の宿代が尽きる。それも兼ねての一週間で申し訳ない。」
「いいよ。僕たちもグレイスランド地方への船旅代金までは持ってないし。まずロージニア大陸のロイズまで船で移動...その後北上した上でもう一度船ってなると結構時間もかかるしその間の生活費も考えるとね。」
「まぁロイズも大きい街なので、そこで依頼をこなすのもありじゃないですか?」
そんな話をしながら同時に今日行く依頼を探し、資金計画と同時に俺の要望で各地のレストランに寄らせてくれとお願いしそのための資金も作ることにした。
一週間後、なんとか船旅とこの先何日か暮らす分くらいは金が集まったものの...。
なんと言っても船が高い!大陸二つ超えてまる三週間以上にも及ぶ度になる訳だから....わかるんですよ?高いのは....でも高いよぉ。
一番下の部屋でも結構なお値段...。
雑魚寝のところもあるけどゴロツキ専用って感じらしいし...。
俺が頭を抱えているとシャルが俺の肩を組む。
「ダイゴォ!俺マナーとかわかんねーよ後でちゃんと教えてくれよなぁ。」
「ああ、それくらいはどうってことないんだけど...お金が足りないよぉ。」
まぁ...なんとかなるっしょ!
まずは1番初めの停泊場所、アジーニャ大陸最大の都市エズルドーラ...賢者メトロが生まれた街...そこで簡単な依頼をこなしてみるか...。
それにしてもさぁ...俺って転生者なのにずっとずっと金欠なんですけどぉ。
レストランを開けるのはいつになるんですか?
神様ああああああああああ!
〜続く〜




