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第7話 「お前は俺の仲間なんだよ」

「はぁ...お金がないよぉ。」

俺は自分の財布を広げながらギルドの広間でしょんぼりしていた。


「ダイゴ!今日飲みに行こうぜ!」

シャルが俺の肩を組んで大きく笑う。


「ねえ、シャルたん...僕のお話聞こえてましたか?」


「奢ってやるに決まってんだろ!?」


「まじ!?」


「パーティメンバーになった記念な!」


うおおお!正確にはまだ依頼に行ったではないので仮パーティなのだが。


「ありがてぇ!なぁ、ハルート!行こうぜ!」

隣にいるハルートにも声をかける。


「...。」


「ハルート?」


「あぁ、すみません。少し考え事をしていました。」


「で?今日行くだろ!」


「え、えぇぜひご一緒します。せっかくですから私が予約しておきますよ。」


「ほんと!?たすかるぅ!お前のセンス確かだからなぁ。」

俺はハルートの肩を叩いた。


「あ!シャルさん、マカフィさん食べ物の好みや苦手なものはありますか?」


ハルートは二人の方を向いて優しい笑顔を向けた。


「んー、そうだな!食い物はほぼなんでも平気だけどあんまり物静かなところは苦手だ!」


「僕は...お肉があんまり得意じゃないんだ。でもお酒はそこそこ好きだよ!麦酒とか!」


「それなら...この前の麦酒の専門店なんていかがですか?ダイゴ。」


「あぁ!ビアバーね!あそこ良かったよな!行こう!」


「それなら予約もいらないのでみんなで初依頼にでも行ってその後に行きましょうか!」


「ん〜いいね!あ!せっかくSランク冒険者のシャルやマカフィが居るんだしSSランクの依頼に行ってみたい!」


「おぉ!いいぜ!ダイゴ!おもくそつえーモンスター倒す依頼とかどうだ?」


「いいねぇ...あっ、でもあまり遠くに行くのとかはナシにしよ!それにハルートがついて来れないような場所は出来れば避けたいな。」


「いえ...私は平気ですので皆さんの行きたい依頼に行きましょう。」


...俺はハルートが少し悲しそうな顔をしたのを見逃さなかった。


「ハルート。なあ...怖いか?」


「何を言ってるんですか。ダイゴ、この短い期間にも私たちはどんな困難も乗り越えてきたじゃないですか。」


「そうじゃない。あ、ごめん!シャル!マカフィ二人で話したいからちょい外出てくるわ!」


「おう!行ってこい!」


「さんきゅ、ハルート?外行くぞ。」


ハルートは黙って俺に着いてきた。


「...お前さ。また仲間から見捨てられるかもって思ってんじゃないか?自分が足手まといなんじゃって思ってるだろ?」


「......。ダイゴはなんでもお見通しですね。」


「ははっ、伊達に30年近く生きてねぇよ。あ、それでさ、俺にはお前が必要だよ。もちろん難しい依頼をこなすことも今俺たちにとって必要なことだ。ただお前が無理して辛い思いをするくらいなら別に今できる範囲のことをすればいい。」



「ダイゴ...。」


「お前はさ!俺にとって大事な友達だかんな!つーかよ将来レストランやる時にはお前無しでは何も見えねぇよ。繊細な味覚と高い知力、それから観察眼と強かさ。どれも料理人にには欠かせないものだ。お前は俺の仲間なんだよ。それは出会ったばかりのシャルやマカフィだって同じさ。

俺が一緒にいると決めた以上は誰も傷つけねぇし誰も蔑ろにしねぇ。わかったか?」


「...。」


「シャルはあれでいて結構優しいと思う。お前がついて来れないからと言ってお前を責めたりしない。不満は抱えるかもしれないがそれは誰しも誰かに対して持つものでみんなそれぞれが調子のいいところで折り合いをつけてくんだよ。

もし、そこで仲間同士がぶつかるなら俺はお前を取る。お前は俺恩人でもあるしな!」


「ありがとう。私も精一杯頑張ります。皆さんに付いていくのでいっぱいっぱいで足を引っ張ってしまうでしょうが挽回できるところで挽回して見せます。」


「おう、その意気だぜ!さ!二人とも待ってる。戻ろ!」


「はい。」


俺はハルートを連れ広間に戻ってきた。


「おかえり〜。」


「おう!ただいま!すまんな!お!依頼それにしたのか。」


シャルが持っていた依頼書はSランク依頼で図書館からの依頼だった。

内容は図書館で魔素に当てられた禁書が魔物化したから退治するようにというものだったがおそらくシャルなりにハルートが参加しても大変じゃないものを選んだ結果なんだろうね。


「ほらな!ハルート。お前が思っている以上にお前はもう仲間なんだよ。さ!依頼に向かうぞ!」


俺はせっかくなので街の図書館までフープルを試してみることにした。

というのもこの街は前に言った通り歩いてどこかに行くのはあまり現実的では無い広さで基本ロープウェイまたは余程の急ぎなら空中バス(タクシーみたいなやつだからもっと値段が高い)なのでお金が無い俺には続けて乗るのは厳しい。


図書館は前に高級外近くに行った時通りかかったのでわかっている。


「失敗して散り散りになったらすまん!そしたら自力で来てくれると助かりまぁす。」


「おう!構わねぇ!」 「はい!」 「やっちゃえ〜ダイゴ〜。」


三人に承認を貰ったところで俺は図書館の場所を正確にイメージし魔力を高めると四人に俺に捕まってもらいフープルした。

虹色の光が俺たちの周りを包み込み辺りが見えなくなる。

光が消えるとそこは図書館前だった。

俺とハルートは目の前にマカフィは少し後ろにシャルはだいぶ後ろの方に飛んでしまったがみんな見える範囲にいる。

成功した...と言えるのではないだろうか?


「ハルート念の為エーテルをくれるか?マフィールはもう少し取っておきたい。」


「はい、いいですよ。」


ハルートにカバンからエーテルコーラを出してもらい俺は飲み干した。

魔力はあまり減ってる感じはしなかったが念の為に飲んでおくことにした。

つーか正直喉乾いてた。

エーテルは向こうのジュースと同じだと思ってくれていい。

コーラやらサイダーがエーテルの成分入ってて飲めば魔力回復するようになってるって感じ。


「くぅ〜!ハンバーガー食いてえ。」


俺は金がなくて飯が全然食えてないのでコーラを飲んで腹に染み渡る炭酸を感じ、ハンバーガーが欲しくなった。


「こら!ダイゴ!腹減るだろ!」


「シャルは朝飯食ってきたんだろぉ?俺はココ最近ろくなものを食ってないんだよぉ。」


「全くいい若いもんが!俺も大して変わんないけど!」


「いや!お前のが年下だろ!?」


「あれ!そうだっけ?」


「そうだよ!お前26だろ?俺28!」


「え?そうなのか!?ハルートは?」


「私は今年で24になりました。」


「えー!?ハルートって24だったの!?」


「ダイゴ知らなかったのかー?」


「僕ですら知ってたよ!聞かなかったのかい?」


「あぁ、必要なかったから。」


俺たちはそんな会話をしながら図書館の中へ入り、受付に依頼できたことを伝えると奥にある禁書庫の鍵を持った司書さんが来てくれた。

禁書庫まで案内してくれるらしい。


図書館といえば冒険者ギルドまたはトレジャーハンターギルド、料理ギルドどれかに所属しない限りは使えない。

あ、一般市民の場合はその街の住民証明が出来れば特定のエリアには行けるみたいだけど。


E~SSSまでのランクで行ける場所の幅が増える。

しかもどのギルドのどのランクがという所まで確認されるのでなかなかめんどくさい。

今回は冒険者またはトレジャーハンターランクSランク未満立ち入り禁止の禁書庫に入ることができる。

ちなみに俺とハルートみたいなSランク未満の獣人たちは事前にギルドカードで身分が割れているので依頼であれば立ち入りはできる。

コピーの魔法やらを使うと魔化学式センサーが反応し普通に取り締まり対象になる。


ハルートくんくれぐれも頼むよ?

目が血走っちゃってるからさ...。

口には出さないけど。



「うーん。埃クセェ!」


こらこらシャルちゃんやめなさい。

司書さんが聞いてるでしょ。

奥に進むに連れ人の手入れが入りにくいのか確かに埃臭いけど。


「コホン。」


案内人の司書さんは戦闘を歩いたまま俺たちに咳払いした。


ご、ごめんなすって〜。

俺がシャルに注意したらやかましくなりそうなので突っ込まなかったけど。


「わぁ...ハルート!見てみて!あそこの本!あれってさぁ。」

今度はマカフィがハルートに無邪気に声をかけだした。声のボリュームを落とそうね。

じゃないと....。


「図書館では静かにお願いします。」


ほらぁ!ねっ!俺が心で思った通り〜。


「す、すみません!」

とりあえず俺が謝っておいた。


「ダイゴぉ。おれおしっこ!」

今度はシャルちゃんおしっこですって。

...お前はガキか!


「はぁ?シャル!なんで依頼前に済ませておかないんだ。」


「...ごめん。」


「すみません、司書さん。悪いんですけどトイレ借りてもいいですか?」


「っチッ...はあ...こちらですどうぞ。」


今チッつった??ねぇ?チッつった?

...態度わりー!でもこっちが悪いから何も言えない〜。


トイレを済ませ今度こそ禁書庫前へ。


「あなた達?くれぐれもよろしく頼みますよ?大丈夫なんですか?チャラチャラしてるみたいですけど。」


「あ〜ははは。はい依頼はこなしてみせますし大切な禁書には触れないようにしますから。」


俺は、段々といらいらしながら司書さんの言葉を笑って受け流す。

こういうとき同じ職場のやつなら同じくらいの圧で返すのになぁ。


「ハルート!禁書にはなるべく触れるな?それからお前もだマカフィ!あとシャルお前は本を荒らさないように戦うんだ。」


あれれ〜俺保護者?俺ってしっかり者?

結構パッパラパーな自身があるのに...。

知識ジャンキーのハルートとマカフィ...豪快なシャル...獰猛な三匹の動物の手網を持つ俺....も犬です。ワン!


「はい、気、気をつけます。あまりにも目の前に素晴らしい本が並んでいてヨダレが....。」


ハルートくん自分に負けるな!


「ダイゴぉひとつくらいとってもいいでしょお?」


そんな可愛いお顔でこっちを見てもダメですよ。

マカフィちゃん。


「ダイゴ!どこだ!敵!早く倒してぇ!」


僕の話聞いてましたか?落ち着いてくださーい。


みんな顔整いの麗人達なのにばかばーっか!

俺も含めてアホ集団!

司書さんごめん!あんたが正しいよ。

俺達はアホ雑技団です。


司書さんが鍵を開けてくれた後、

念の為俺は禁書庫の触れてはいけない場所全てに結界を貼り傷つけないようにした。


へっぽこフライパンおじさんだと思われてたみたいだっけど結界を瞬時に貼ったことで司書さんはメガネをクイッと上げて見直しましたよと言ってくれた。


やったァ!褒められたよぉ。あはは。


「それでは私はこちらの鍵を閉めます。内側からは開くようになっていますので依頼が終わり次第外で待っているので声をかけてください。」


そういうと鶴の獣人の美女の司書さんは禁書庫入口の扉を閉め鍵をかけた。


「やだこわーい!」


「ダイゴ!暗いの嫌いか?」


「いや。言ってみただけ。かわいいかなって。」


「ブフッ。」

俺のアホな一言にハルートが正気を取り戻して吹き出した。


「なんじゃそりゃ!」 「ダイゴ面白いね。」


残りの二人も釣られて笑う。


「はは...いやさ、みんな自由すぎるから俺が馬鹿したら戻ってくるかと思ってさ。」


みんなはハッとした顔をした。

うんうんそうだよ今さ気づいたかい?


「すまん!ダイゴ!」 「ごめん!ダイゴ!」


「すみません...ダイゴ。」


「イインダヨ。これから気をつけようねっみんなでさ。」


みんなは黙ってうなづいた。

うんうんこれこれ。これがチームってやつですぁいね!


「ハルート魔力探知して!まずは気配を探ろう!」


「...それなのですがあまり魔力の気配がしなくて...。」


「わかる!僕も探してんだけど全然何もいないよ!」


「仕方ねぇ!俺の出番だな!ダイゴ任せてくれるか?」


「あぁ頼んだ。」

シャルは俺に頷くと剣を抜いて片手で顔の前に持ってきた。


「ルクシス流...闘気術。魔探眼!」


すると光の波動が彼女の周りから波打つように部屋全体に広がっていく。

静かにゆっくりと広がるその波は本や本棚床や壁などをくまなく通り抜けた。

俺の結界すら通り抜けて進むそれは美しくまるで水中にいるようだった。


「!くるぞ!ダイゴ!」


俺たちがそれに見蕩れてぼーっとしている時だった。

結界を割り一冊の本が本棚から飛び出してきた。


その本は宙に浮きページがパラパラ捲られると俺たちを吸いこもうとすごい勢いで風を巻き起こしてまるでブラックホールのように俺たちを本の中に飲み込んで行った。


俺たちが目を開けると...そこは...。


「アクアベリー!?」


アクアベリーなんだけど...どこか様子が違う...なんか所々違和感があって...どこかでこの景色を見たような。


「あっ!レオの伝記だよ!これ!レオが生きていた時代のアクアベリーの写真にそっくりだ。」


まずロープウェイがない!それから絶滅した魔物ペガサスが至る所にいる!

金持ちの昔の移動手段だ。


「ハルートくん?」


ハルートは鼻血を出しながら道の真ん中に転がっていた。


「ダイゴ!!私たち!伝記の中に入ったんですか!?」


こいつはこの伝記を宝物にして闇市で手に入れたものを後生大事に自分のカバンに入れ死ぬほど読み直している。

歴史や文化を好きで研究していたのだから...こんなところ来たら倒れるのも当然か?


「マカフィ!これって凄いのか?」

ピンと来てないシャルにマカフィが興奮気味に説明していた。


「レオが!メトロが!生きてきた時代だよ!?やばいってこれ!本物に会える系?やばーー!」


こっちはこっちでおしっこ漏らしそうな勢で喜んでるな。


「みんな...とりあえずまずはこの状況に驚きなよ。本に吸い込まれたんだよ俺たち?」


「あっそうだな。マカフィがあまりに変なので忘れてた。」


「おーいハルートくぅんそろそろ起き上がってね。恥ずかしいよ。レオが通ったらどうするの?」

俺のその一言でバッと起き上がるハルート。


「れ、レオが!?私の目の前に!?ひゅー。」

再び倒れそうになるハルートを今度は俺が支えた。


いい加減にしてくれ〜。

などとふざけた事をしていても不思議と通行人はこちらを気にしてこない。

...もしかして大きくは干渉できないみたいな感じ?


「それでさ〜!オーリスの奴がミルフィとまた喧嘩したらしいの!ってメトロ!聞いてるか?」

...まずい奥の通りから伝記やら銅像やらでさんざん見た勇者レオそっくりの男がこれまた賢者メトロそっくりの男と歩いてくる。


「おい!隠れるぞ!みんな。」


俺は全員の首根っこを掴んで物陰に隠れた。


レオは伝記の通り俺と同じチンチクリン。

白の猫獣人で筋肉はかなりある。

メトロはパッと見細くて足が長い胡散臭い感じのキツネの獣人。

橙色のロングの髪の毛と青緑の瞳が美しい青年だ。


「なんで隠れるの?」

マカフィは文句を垂れる。

「この世界がどんなもんか分からない以上必要以上に関わるのは危険だろ!?」

二人ともやたら普段着だったけど...これってもしかして世界が平和になったあとの話?



「なぁ!ダイゴぉ!ここって大昔のアクアベリーなんだろ?面白そうだし見て回ろうぜ!」


「シャル!だめだ俺の話聞いてた?」


「この世界がどんなもんかわかんねーうちは手を出すなってんだろ?」


「はい正解よくできました。」


「えへへ。」

この子アホかも。助かるけど!


「マカフィ!こらこらどこへ行く!」


「勇者レオを追いかけるのさ!」


「うーん、こっそりだぞ。こっそり。」


「はぁい。」


「いいか!みんなで行動するんだぞ!誰もはぐれるな!」


俺がそう言ってる側からハルートが消えた。


「んもぉ。アタシイヤッ!」


ついついおかま口調になってしまう。

厨房でたまにふざけてたせいで癖になってしまっているらしい。


周りをよく見たら噴水のベンチに虫みたいに張り付いてた。なにしてんのあれ。



「ハルートくぅん。なにしてるのかなぁ。」


「このベンチ1200年代までに撤去されたものなのです。しかも絶滅してしまった木材が使われ加工法も今とは全く異なるもので。」


あ〜またはじまったぁ。

ベンチやん!それただの!ベンチやん!


「ほら行くよ。この世界に時間制限とかないとは限らないでしょ?」


「たしかに...本に飲み込まれこの世界の住人になってしまう恐ろしい類のものかもしれません...でもそれもいいかもぉ。」


「よくない!俺はお前とレストランするの!さっさと終わらせて現代に帰るぞ!」


ハルートのしっぽを掴んで俺は無理やり連れ戻し、四人全員でレオ達を追った。


レオたちは海沿いの丘の方へ歩いていく。

え?これって高級買いに続く道ですよね?

もしかして歩く系?

あんたらフープル使えるんですよね?なぜ歩く?


「レオ!マーシェットに俺たちの結婚パーティ開いてもらえることになってよかったよな。あの商会ならコネも沢山作れそうだし。」


あ、そうだったレオとメトロは結婚したんだった。

ホモ展開なのよね。これ歴史的にも正しいらしいし本人の伝記に書いてあるんだから間違いないが...俺としてはあまり肯定したいとは思えないんですよね。


「そういえば、メトロ!マシェもメグレスと婚姻結んだらしいぞ!」


マーシェットってのはたしか伝説の商人でトレジャーハンターギルドのマスターだったような?

でメグレスはその相棒でマジックシーフ。

確かにこっちも伝記が残っていたな。

でそれを一緒に設立するまでに旅してた仲間が武道家ポルドー、東洋奇術師のハーティだったっけ?


「あー!きもちいいな!メトロ。」

幸せそうな笑顔でメトロを見つめるレオ。

海風に吹かれてキラキラした彼の金色の髪は勇者レオの伝記に出てきたそのままだった。


勇者レオは1度仲間を全員失っている。

そこからメトロと二人で見つけた時を遡る魔法を使うためデインという男と旅をする。

初めデインは敵として対峙するがレオに恋をして最後は時を遡る魔法の発動条件である勇者の自らの死を叶える為に最愛のレオをその手で殺める。

そしてレオは無事に遡りに成功し、みんなが生きていた時代に戻ってくる。

という感じで結構過酷な人生を送っている。


おとぎ話にも程があるっしょと思ったがあの感慨深い笑顔を見たらあぁそれは事実なのだと思わされる。


つーかレオの周りはホモばっか...。

好きになれば関係ない的なやつ?

レオも最初は男を好きになるなんて思わなかったって伝記に書いてあったけどほんまかいなっちゅー話ですわ!


ようやく高級街のいちばん高台にあるマーシェット商会へ辿り着いたレオたち。


インターホン代わりの魔法のベルを鳴らし中に入っていく。


「ん〜これ!俺たちどうやってはいるんだ!?」


と頭を抱えていたら突然引っ張られるような感覚になり場面が変わった。


「お!中に入れた。」

マーシェット商会の中に場面が切り替わり俺たちはレオの仲間が全員集合している大広間にやってきた。


ここで気がついたがどうやら俺たちの姿は彼らには見えないらしい。


「マシェお前すごくなったなぁ!」


「いえいえ、仲間たちみんなのおかげですからぁ。」


美しいピンクのおさげの髪の毛の白いキツネ獣人マーシェット。

商会の子供に生まれたが、七光りで成り上がるのが嫌で自分で商会を立ち上げつつ、もう二一つの目標であるトレジャーハンターの中でも希少なダンジョンハンターを目指しギルドマスターになるまで上り詰めた偉人である。


ちなみに彼?彼女?は聖女の生まれ変わりであるため両性具有者でメグレスとの間に三人の子供を設けた。

その後その子供たちが紹介を次ぎ各地で名を上げてマーシェット商会の名前は何百年経った今でも残っている。


偉人達はとても楽しそうに乾杯をしてシャンパンを飲んでいる。


それを見てハルートは涙を流して喜び、マカフィは失禁してしまい、シャルは酒を見てヨダレを垂らしている。

ねぇみんなどっかから何かを出してるやん。

やめてよ汚ったないなぁ。


「ポルドー!ほらこっちにはお前の好きなワインがあるぞ!」


「おぉ!さんきゅメトロ!オーリスくん一緒に飲もうぜ!ミルフィーちゃんもこっちにおいで!

あっ、結婚生活はどう?オーリスくんには優しくしてもらってるかい?」


「そりゃもう!あはは幸せです。」


トリックスターミルフィはパラデモンクのオーリスと結婚して今現在は妊活中だとこの辺りの伝記に書かれていた。

あっ、この人達は普通だよ。

ちんちんとまんまんの恋愛です。


ポルドーとハーティはレオたちに出会う前に最愛の恋人を亡くし生涯独り身だったとか。



こう見ると勉強した通りのことが起こってて正直かなり面白いな。

ここが確か伝記の最後になっていたはずなので俺はこの先を知らない。

もしかしてハルートが持っているレプリカの方には書いてなかったけど図書館にあるんだから本物の伝記だろうしこっちには書いてあるのか?


とその時辺りから灯りが奪われた。


「っ!なんだこれ敵か?」

突如テレビがプツンと消えるように場面が切り替わることもなく真っ暗になったのだ。


様子がおかしいので俺みんなに声をかける。


「おい!みんないるか!?」


「ダイゴいるよ!」 「いるいる!俺も!横にはヘロヘロになったハルートも居るぞ!」


光魔法で当たりを照らして全員で固まった。


「これはどういうことだ?」


「...おそらくほんの終点に辿り着いたのかと。」


ハルートは突然真面目モードになって喋り出す。


灯りを付けたはいいが、周りは光を吸い込む程の暗闇で仲間たちの顔を見るのが精一杯の程度。

上の方から響くような声が突然する。


「そのとおりでーす!僕はブックデビル。本に魔素が溜まってモンスター化した魔物だよん!君たちにはこの続きを書いてこの物語の一部になってもらいたいんだ!」


「何勝手なこと言ってんだ!この世界から出せ!」


「あはは!それは無理だよん。続きを書いてくれるなら出してあげてもいいよー?」


「何言ってんだ!これはレオが書いた神聖な歴史書だろうが!?そんなことをして溜まるか!」


「そうですよ!なんと下劣な悪魔なのか。歴史を冒涜するものは私が許しません。」


ハルートは優しい声でそう言い切ると静かにハープをかき鳴らす。

聖なる調べだ。

賛美歌にも聞こえるその優しい歌声は真っ暗で何もないこの空間に響き渡る。


明かりひとつで真っ暗なだけの空間は大きく揺れて俺たちは勢いよく外に吐き出された。


「うげ!最悪!何その歌!」


「お前のような不浄なるものを消し去る調べです。私の大切なものを汚した罪は大きいですよ。」


ハルートはさらに調べを大きな声で歌う。

美しいその歌声は図書館全体をも包み込む。


「僕も協力するね!ハルート!」

マカフィは十字を切りロザリオを掲げる。


「主よ...我の声を聞きたもう....。不浄なるもの...消し去りて...神聖なる日誌が浄化されんことを...。」


祈りを捧げ始めると美しく柔らかな光が本を包み込む。

宙に浮いたまま紫色の瘴気を放つ本はだんだんとその闇の力が弱まっていく。


言霊の塊である本は祈りや願いという希望に満ちたものに包まれ...禁書として誰にも読まれずしまい込まれた悲しみを癒しているのだろうか?


「ダイゴ!俺も祈りを捧げる!お前も光の魔法でなるべく暖かく大きなものを作ってくれ!」


シャルに言われるがまま俺はルシャイマを攻撃用ではなく柔らかな光を放つものにプログラム書き換えを行う。


「ルクシス流...聖剣術。主への祈りの光。」


シャルも同時に剣から眩く暖かい光を放つ。


「勇者レオに光あれ!」


俺もなるべくそれっぽいことを叫んでみる。


本も...悲しかったんだろうな。

禁書としてこんな明かりもない薄暗く寂しいところにしまわれて。

魔物になったレオの伝記が浄化されかけると、他の禁書たちも共鳴するように優しい雰囲気を放っていた。


「あぁ、どうかここにある物の悲しみが...少しでも報われるよう...祈りを捧げます。」


最後にハルートが自身の魔力をいつもより強く込め聖なる調べは完奏になった。


俺たちの光も消え、真っ暗に戻った禁書庫は最初に入った時と同じく静かだった。


「...終わりましたね。」


ハルートは息を荒くして俺の方を見る。


「あぁ...。静かだ。」


「えぇ、とても。

本というのは言霊ですから...そのもの自体に力があるのです。魔導書の類は特に...ましてやレオが後世のために書いた伝記にはたくさんの魔術が乗っています。そういったものや...寂しさが作用しあって今回のことが起こったのでしょう。」


「...。俺この依頼選んで良かった。昔のアクアベリーにも行けたしな!」

シャルはにかーっと笑う。


「本当に趣深かったですね。あの世界は。」


「レオたちも見れたしな。」


「僕あそこの匂いわすれらんないよ〜。」


「海風は今と変わらなかったな。」


「ペガサス美しかった!」


各々が余韻に浸っていると入口の鍵が開かれドアがパタンと開く。


「どうやら終わったようですね。」

優しい顔をした司書さん。

始まる前の怖い顔はなんだったのかしらね。



「皆さんのことを私は誤解していたようです。本を思いやる気持ちが伝わりました。大切にしてくれてありがとうございます。私たちも今後このような事がないように努めます。今回はありがとうございました。」


...このクエストはほかのパーティが何度も挑み失敗しているらしい。

だから最初はCランクだったのに今ではSランクの依頼になってしまった。

それくらい本を思いやる心を持った獣人が現れなかったのだろう。


そしてこの司書さんは俺たちみたいな存在を待っていんだな。


「こちらこそ、貴重な体験ができました。伝説の人物たちを生で見ることができましたし。」


「あぁ、あなたたちは本に選ばれたのですね...。」


「どういうことですか?」


「通常、魔素に充てられ魔物化した場合....普通は本の中に入ることができませんし、もし入ったとしても帰って来れません。私はてっきりただ浄化を促してくれたものだと思っていました。本を愛すメロディと歌...それから祈りの光でこの図書館中が満たされていましたからね。」


「じゃあ過去には...戻れなかった人も?」


「はい、居ます。その場合浄化されたとしても外に出ることはできませんし、自分が外の人間だということを忘れ飲まれてしまいます。物語の一部として生きていく他ありません。あなたたちの場合は登場人物に干渉できなかったのでは?

それが本に選ばれた証拠です。傍観者として本に入ること自体普通は不可能です。」


「...悪魔になっても本は、自分にふさわしい人物を探しているということなんですね。」


「...あなたたちが来てくれて本当に良かったです。今度は指名依頼をお願いするかもしれません。その時はよろしくお願いします。」

指名依頼とは通常の掲示板に張り出されるものではなくギルドを通して俺たちが名指しされる依頼のことで普通は貰えないチームが大半だ。


「パーティネームをお聞きしても?」


「それが...これが正式結成初依頼なので...まだ決まっていなくて。」


「あら...そうなんですね。決まったらギルドで登録しておいてくれればこちらからまた指名します。」


「光栄です。」


「ちなみに司書さん、ひとつ聞かせてください。俺たち物には触れることができたし匂いや空気を感じることができました。これって干渉とは違うのですか?」


「それは...おそらく本があなたたちを伝説の勇者たちに重ねてロールを与えるつもりだったのでしょう。もし、取り込まれていたらならばもしかしたらあの物語の中であなたたちが勇者レオ達に成り代わっていたかもしれません。そのために本は様子を見て一旦傍観者として権限を与えていたということもあるかもしれません。しかし、本当のところは私にもよく分かりかねないです。」


「それって、もしそうならあの物語の中で永遠にストーリーをなぞり続けるということですか?自覚もなく。」


「その通りです。そうならかったのはあなた達が本を思う心で浄化を促したからだと思います。」


「そうですか...。ありがとうございます。」


「いえ、それでは出口までお送ります。報酬はギルドにてお受け取りください。この度はお疲れ様でした。」


司書さんに見送られ入口まで戻ってくると俺たちはだいぶくたびれていた。

だが、


「目まぐるしく色んなことが起こってつかれたなぁ!」


「あぁ...!ダイゴ!こんな時こそ!麦酒だろ!?」


「お、そうだな!じゃ!みんなで行くぞ!ハルート!マカフィ!シャル!今日は飲むぞーーー!」


俺たちは夕暮れの中を歩き、みんなで朝約束したビアバーへと足を進ませた。

お漏らししたマカフィは一旦パンツとズボンを変えに宿に戻っていって後から合流になったけどね。


〜続く〜



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