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第5話 「僕は石ころ以下です殺してください。」

朝、トイレで大をしている時スマホがないとこんなに退屈なのかと思う。


いやね、俺ってば仕事が忙しかったからスマホといえばうんこしてる時に触るもんだって印象があるんですよ。


レストランで働いてる間はトイレにほぼ行けないので寮のせまーいくらーいきったなーいユニットバスでうんこをしながらやるパ〇ドラ。


あぁあれがもうできないのかと思ったら結構残念なわけで。


聞けばスマホは普及しているがかーなーりー高いらしい。

タブレットも仕事用で使う以外の物はかなりの値段で仕事用に使うならギルドガードのランク次第では値段は変わるみたいだけど...用途が仕事のみに縛られるというデメリット付き。


この世界...うんこしてる間に俺はどうやって暇を潰せばいいのよ。


「はぁ...稼ぐしかないかね。」

金を集めないことにはレストランを開くどころか料理ギルドの依頼にすら集中できやしない。


俺は今日も仕方なく準備してギルドへと向かった。


「おはようございます。ダイゴ。」


「おっは〜ハルート。」


ギルドには先にハルートが来ていて俺を待っていた。


「今日はこの依頼を受けてみませんか?」


そう言ってハルートがカップボードに大量に貼られた中から手に取ったのは...。

Aランク依頼の果樹園に出た魔物退治。


「...ねぇこれってさ。」


「あっ!別にしましょっかね、虫ダメでしたもんね。」


詳細のところガッツリキラーアント千体退治とか書いてありますやん。

そりゃないですわぁ。


「うん、そうして貰えると助かりやす。」


ハルートはそれを戻し今度は別の依頼書を手に取る。

火山のマナ調査の依頼だ。

火山の中の鉱物や魔物の素材を持ち帰り、依頼主である研究機関に提出する依頼だ。

魔素の濃度や質を調べるらしい。


「おっ!これいいんじゃね!面白そう。」


「行きはアクアベリーから北上したところにあるタッカンブルの村で休んで向かいます。

火山の中も南側の入口からルコニア側の北側までが調査対象なので割と時間がかかりそうですね。」


「ほーん。その分報酬いいんでしょお?」


「みたいですね。しかもこれ前金でお金を渡してもらえるみたいなので準備資金にできそうですよ。」


「おぉ!アツい!魔法カバン欲しい!」


魔法カバンてのは大賢者メトロが開発したもの一般販売したものでカバンの中が特殊な空間に繋がっており倉庫を持ち歩けるようなアイテムである。

キャンプ道具や食材を沢山ちゃんと揃えてその中にしまっておけば長旅でも安心なのさ。


今の俺の全財産はルカに言われて買ったジャケットのせいでそこそこ少ない。

魔法カバンなど到底買えません。

買えてもしょっぱい魔力で作られた酷い収納のやつだけ。


「じゃあ受付をしてきますね。受付をすればキャンセルは効きませんがこちらでよろしいですか?」


「うん!頼むわ。」


ハルートが受付を終わらせると、

サバトラの受付嬢が依頼主から予め受け取っていた前金を金庫から持ってきた。

これがまたウハウハな感じの金額でブランドの魔法カバン買えちゃうかも!って感じだった。

まぁ質さえ良ければなんでもいいから買わないけど。


俺たちは受け取った前金で火山に行くのに必要なものを買った。

ハルートは転移札をまた買っていたので帰りはそれで帰れるみたいだ。


俺は魔法カバン、火の耐性付きのコートを一着と男なら誰でも憧れるキャンプの道具を一式揃えた。

あと少しだけおまけもね...。

あっ、スキレットも買っちゃったああ...早く使いたいな。


「ちなみにタッカンブルを出てからは火山はすぐなのか?」


「いえ、おそらく途中でも1泊必要になるかと。大昔はタッカンブルから火山までの間にも村があったようですが滅んでしまったようなのでキャンプで一泊しましょう。」


うひ、キャンプ。じじいになったら始めようかしらなどと思っていたことが思わぬ形で叶った。


「ほーんそうなのか。火山の中は1日で調査しきれるのかな?」


「強いあなたがいれば抜けるだけなら丸々一日かければ抜けられると思いますがこれで調査となると多分中で2、3日過ごすか、火山の中が嫌でしたらいちいち外に出てキャンプをして過ごすということになると思います。」


「中は敵がうじゃうじゃいるんだろ?」


「えぇ、そうですね、でも大丈夫ですよ。外でキャンプするのと同じで私が買っておいた魔石で結界を張りますし。」


「それって魔石のがいいの?俺でもできたりする?」


「ダイゴの魔力をもってすればできると思います。確か...あっあった!」


そう言って自分の魔法カバンからハルートが取り出したのは勇者レオが自署で出した伝記だ。

ここには様々な魔法や戦い方が書いてあるらしい。

大昔存在していたズック社という出版社が出したもので、

とっくに廃盤になっており持ってたら闇市で億がつくレベルで売れるのだが...なぜこいつはそんなものを持っている?


「レプリカ品ですが内容は同じなのでここに書いてあるとおりにすれば大丈夫ですよ。」


ちなみにレプリカ品でも書いてある内容を悪用されない為に現在販売が禁止されてる禁書の類になるらしい。

今現在残っている原本もかなり回収されたのだとか。

だからレプリカですら闇市に出せば相当な値がつくようだ。


しかし普通は真似出来ないような事ばかりが書いてあると神がくれた知識の中にあったのだか本当に俺にできるのだろうか?


とりあえず開いて中を見てみることにした。


「おぉ...これは。」


冒頭、賢者メトロがつかうストックの魔法についてが書かれている。

これはおそらく魔法カバンの原型だろうか?

メトロは倉庫として使っていて冷凍冷蔵もできると書いてある。

なにそれすごいどういうこと?

冷凍冷蔵ってのは現代のこの世界で発売されてる魔科学式冷蔵庫の原型にもなってるよな?


俺もこのストックの魔法を覚えたら...超便利じゃね?

レストラン開いたとて、いちいちストレージまで行く手間が省けるわけでしょ?

最高じゃないですか?


あー違う違う、今は結界の魔法についてだった。

えーと?メトロがレオに初めて教えたのがこの結界の魔法か!

大賢者メトロは魔法の才能やばかったけどレオもレオで一般の賢者並に魔法が使えたと聞く。

勇者ってのはやっぱ違うね。


書かれているやり方はこうだった。


魔力で魔法陣を地面に書く。

その魔法陣にさらに守りのバフを付与。

更にその後自分たちの仲間以外からは見えなくするためにプログラムを書き換える。


以上、簡単だろ?と書いてありますが、簡単ですか?これ。

多分魔法を元素レベルまで理解してないと無理ですけど。


魔法のプログラムの書き換えってのは相当厄介なもので料理で言うところのテンパリング...いやちょっと違うか。例えるのやめよう...。


まぁ魔法ってのは魔力をプログラム化して放つものでそれを簡単に短縮したものが詠唱や呪文なわけなのだが、そのプログラムの一部を書き換えるっていうのは結構リスキーでエクセルのマクロがわかんない人が関数潰しちゃうような危険性があるのだ。


ハルートくん。僕これ難しいかもぉ!

などとは、今さら言えないから演算をしっかりと頭の中でやってみるのだが。

ただ...無理ですね正直これ。


それを簡単にやってくれる結界魔石ちゃん凄いねぇ凄いねぇ...。

僕は石ころ以下の人間です、殺してください。


「ハルートくぅん。僕これできません。」


「え!?二十詠唱ができるのにこれは難しいんですか?」


「だってプログラムの書き換えだよ?」


「簡単ですよ。大丈夫私にも出来ますしプログラムの書き換えだけなら。結界を張るには魔力が足りないので結果的にできないだけですから。」


えーとそれは君が魔法大学でお勉強していたからだと思います!

僕、高卒です!わかんないです!!!

と叫びたいところだったがやめておいた。


「それならこちらにプログラムの書き換えや魔術の転用についての論文があります。」

またこの人本出してきたァ。怖いよあの魔法カバンの中何冊本が入ってるのぉ?

勉強は好きだけどぉ。


「歩きながら読んでも理解出来るこれ?」


「はい!問題ないと思います。」


仕方がないからタッカンブルまで向かう間俺は渡された二つの本を読み漁った。

そして都度分からないことがあれば歩く図書館ことハルートに知識引用の本を出してもらうか聞くかして理解を深めた。

あーん俺ってこの世界でシェフやるんだよねぇ?

一体全体どこに向かってんだよぉ。


ちなみに敵は少なくていても俺が集中したいので瞬殺していたら対して襲ってこなくなった。


「つ、ついたぁ。」


タッカンブルに着く頃には夕方でしたよ、あはは。

途中薄暗いから球体の光魔法で照らしながら一日中本を読み漁ってましたよ。

そんなことしてたから道中朝飯も昼飯も食い損ねましたよええ。


沢山本を読んだ甲斐あってかなんとなく魔法におけるプログラムの書き換えが何たるかをうっすら理解できた。

なんとなくでうっすらなので宿にいる間もお勉強会になりましたけど。


タッカンブルの人達みんな優しくて、田舎田舎してる雰囲気。

夕飯は村のみんな集まって鍋をつついた。

その間だけは俺は勉強のことを忘れていたけど部屋に戻ってからはまたひたすら勉強。


なぜ俺がこんなに必死になっているかといえば結界の魔法の習得はもちろんだが、伝記に書かれている魔法はどれもあったらいいな...と思うものばかりだったのだ。

まるで、ドラ〇もんの秘密道具みたいで現代の魔法や魔法科学にメトロが与えた影響の大きさを感じさせられる。


今の俺にできるものがあれば!

と思いそれらをひとつでも習得する為、神に与えられた持っている現代の魔法知識と歴史から読み取れる進化の過程を知識箱であるハルートに聞き出しながら照らし合わせて行った。


そして、夜遅くまでそんなことを続けていたらなんと俺はプログラムの書き換えは完璧マスターして、マフィーラルドの習得に成功してしまった。

うひゅ...フープルという転移の魔法を習得したくて練習したけどこちらは未完成も未完成。

ド〇クエのル〇ラなら便利なのに習得するまでそんなに時間かからないのに現実ってのは酷な物ね。


でも、まさにてててててってって〜っだよな。

知らない人はいないであろうレベルアップの音が聞こえてくるようだぜ。


もう少し頑張れば上級魔法のその先も習得できそうだしちょこちょこ勉強するのはありよりのありだ。


「ハルート!俺マフィーラルド使えるようになった!まぁ頻繁には無理でも魔力を完璧に回復できるぞ!」


俺は嬉しくてハルートのベッドの周りを飛び回った。


「すごいですね。頼もしいです。しかしも夜も老けてきましたし休んでくださいね。」


ハルートにそう言われたが俺は勉強を辞めるつもりはなかった。


部屋の灯りを消した後も光の球体魔法の光度を下げつつ夜通し勉強した。


朝の光が窓から差し込んで俺ハッとなった。

「やっちまったァ。」

テスト勉強とか夢中になるといつもこうなるタイプだった。


だがそのお陰で魔法の真理とは何かがなんとなく掴めた気がした。

超級と呼ばれている賢者並の魔法をいくつか覚えることもできた。

回復の呪文の幅も広がった。


しかし、同時に肝心のストックの魔法にはこれまた俺が欲しいフープルを応用したものなのでまずはフープルを覚えることが必須ということに気がいた。


「ん〜。SSSランク料理人になるどころかまずはレストラン開業までの道のりが遠すぎる。」


無駄遣いやめよ、ほんとに。


あ、ちなみにギルドカードでさっき確認したらレベルは37になってたよ。

年齢じゃないよ、年齢は28だよ...。

転生したら若返るかと思ったら全然そんなこと無かった。

若くしてくれと神様に言うべきだった。


「さて、ハルートを起こして朝飯食うか!」


俺は備え付けの洗面で顔を洗うとハルートを起こして昨日夕飯を食べた大広間に向かった。


朝食はこの辺で取れた山菜や魚がふんだん使われた地産地消の素敵なお料理。


あっちの世界ではあまり食べたことの無い味が多く例えようがないのだがとにかく食材が新鮮なこと丁寧に作られているということはよくわかる。


食べてもらう思いやりを持って作ってくれたのだろう。


あと米はカリフォルニア米のようなしゃきっと歯ごたえのあるタイプ。

この辺の農業の盛んなところをみると麦と米の二毛作ってところか?


米と一緒にパンが少量出てきたので多分そういうことなんだと思う。


頭を死ぬほど使い魔力アホほど消耗した為、俺の食欲は思春期さながらでおじさんおばさん達に喜ばれた。


食べ終わった頃、血糖値バク上がりの俺は瞼がくっつきそうになった。

赤ちゃんかな。

それを見たハルートは俺を睨む。


「ダイゴ!?昨日ちゃんと眠りましたか?」


「ごめん。眠れなくてずっと勉強してた。」


嘘です。勉強したくて眠りませんでした。


「まったくもう...。火山は睡眠系の魔法や技を使う魔物も少なくありません。疲労が溜まっていれば体制が下がります。今日のキャンプはちゃんと寝てくださいね。」


「はぁい。」


怒られちった。


「ね、ねむ...くなんかないんだからね!」


「はぁ...。困ったものですね。知識に貪欲な人と言うのは他人からこう見えているのですね。反省します。」


目をしばしばさせている俺を見て自分を省みるハルート。

ふふん、あんたも徹夜タイプかい?

俺と同じじゃないか〜。


「ディ〇ニー。」

眠過ぎて俺の頭はあまり働いてない。

こりゃまずいな...解眠の魔法を詠唱したつもりなのにデ〇ズニーって...。


「ディスミン!」

今度はちゃんと言えました。えらいね!ダイゴくん。


解眠の魔法で眠気はどっかに行ったのだけれど

自分がくだらない言い間違いをしたことがじわじわ効いてきてしまって俺は出発の準備をしている間終始笑うのを堪えていた。


「く...。」


「ダイゴどうしたのですか?」


ハルートはもちろん俺らの世界の素敵なテーマパークのことなど存じ上げないので俺のことを本気で心配した顔で見てくる。


ヤメテ...ぼくそういう事されると余計に笑っちゃうんです。


「ひっ...。」


必死に笑いを堪えている顔がおかしかったのか今度はハルートまで吹き出した。


「なんですかその顔。やめてくださいよぉ。ふははは。」


そっからしばらくスイッチが入り俺たちは爆笑の渦に飲み込まれる。

連鎖していく笑い。

あーなんかこういう動画あったよね?

スカ〇プで赤ちゃん笑ってるのを見て大人がつられていくヤツ。


「ダイゴぉ...そろそろ行きますよ。こんな事してたら日が暮れてしまいます。」


ごもっともです。

笑いながら準備を終わらせ、何とか笑いを落ち着かせると俺たちは世話になった宿のオーナーたちにお礼を言って宿を後にした。 出ていく時宿の人からハルートはなにか受け取ってたみたいだけど。


笑いが収まり眠気が無くなると俺はとあることに気がついちゃったんだよね。

魔法強くなったし試したくね?


でもこの辺の敵穏やかシリーズかゴブリンかのどっちがだしなぁ。

レオの伝記ではこの辺でバハムートと戦ったって書いてあるし俺の時にバハムートでないかなぁ。


その後、俺たちはキャンプ予定地までおだやか〜な道を歩き魔法を試す機会もなかったので仕方なくまた勉強した。


キャンプ地に着いた時には途中で少々うんざりして本を閉じてしまっていた。

なので俺は魔法のことなどすっかり忘れていた。

それに憧れのキャンプができるんだもんねぇ。

俺の気持ちはそっちにシフトしていた。


「ではダイゴ。結界を貼ってみますか?」


なんの事?と一瞬思ったのだがそういやそのために昨日本を読まされたのを思い出した。

えぇと?確か、魔力を込めて地面に光の魔方陣を描く、そしてそこに守りのバフを付与、でそれからプログラムの書き換えで自分たち以外からは見えないようにするだったよな?


俺は初めての結界を貼る作業を40分くらいかけてやっと終わらせた。

理解できてても細かいところミスったりしてなかなか難しいでやんの。

成功の定義は魔法陣の光の色が青から垢に変わること。

変わるまでの間に何かミスればまた最初からやり直し。

ふふん、骨が折れるわね。


「ダイゴ!すごいじゃないですか!」


「魔力さえあればお前にもできるんだろ?」


「そりゃそうですけど普通は一回か二回失敗したら魔力が尽きますよ!?それをあなたは何度も繰り返してるんです!」


へーそうなんだ。

いいから俺に早くテント建てさせて。


「Sランク以上の魔法使いや賢者ならこれくらいはやるでしょうけどダイゴは料理人なのに凄いです!」


その付け足しいる?

ねぇ、いる?

俺一応転生してきてるんですけどぉ?


俺は魔法カバンからテントを出しながらハルートの何気ない一言に傷ついていた。


「うぉおお!テンション上げてこぉ!」

俺は無理やりキャンプできることだけに意識を集中させペグを打ちつけたりテントの骨組みを組み立てたりした。

ん〜楽しいねこれ。


「ダイゴ?私もなにか手伝いましょうか?」


「いい!俺にやらせて!前のキャンプの時はハルートの簡易セットでやったただろ?俺本格的なキャンプやってみたかったんだよ。だから自分でやりたい。」


「そ、そうですか。それなら私は鍋の用意をしておきます。」


うんうんいいじゃん?キャンプっぽくなってきたよぉ。でも今日はスキレット...使えないね。


テントや食事の用意が終わるといよいよキャンプそのものって感じになった。

焚き火は本当は焚き火台でやりたいけど魔法でつけた炎だしコントロール出来るから危なくないですよね。

あぁなんかつまんない。


「ハルート!今日は何鍋にしようか。」

キャンプと言えば、カレー!カップ麺!

のイメージだが剣と魔法のこの世界ではのんびりカレーなど作るのはナンセンスらしく準備も片付けも簡単な鍋が主流らしい。

結界用の魔石が流通してるんだからカレーもっと流行っても良くないか?


「そうですね、昨日の初めの方にダイゴがゴリゴリ倒していたラビッターの肉があります。君がキャンプの用意をしてくれてる間に血抜きなどの下処理は済ませておきました。これと昨日の宿で貰った地元野菜がありますのでそれを使いましょうか。」

ラビッターはうさぎ型の魔物で角がある。

ドラ〇エの一角うさぎみたいに角が生えている

しかも可愛くて鳥のようようにピヨピヨ鳴く。

でも獰猛で誰にでも襲いかかってくるのでめんどくさい。


ていうかさぁ、鍋じゃなくてコンフィにしたいよぉ。スキレット使いたかったよぉ。

二羽分もあるからコンフィじゃなくてもフレンチなら色々やりようがあるよな。

おそらくもう鍋用に切ってしまっているだろうから無理だけどミートミンサーや他にも食材が揃ってればファルスにして...ってイカンイカンそんなことを考え出したらキリがない。


「それから昨日の村で手作りのスパイスを貰いました。名産品なんだそうです。今日はこれを生かしたいのですがダイゴならどうしますか?」


「...。白ワインある?」


「ありますよ。」


「んー。それならまずもも肉は漬けよう。1時間かそこら付けておけば十分だと思う。調味料は何がある?」


「オリーブオイル、ブイヨン、ガラムマサラ、貰ったスパイスなど...結構色々あります。」


「ローズマリーはある?」


「もちろんあります。」


「それなら...ワインに漬けマリネしたラパンをソテして...残った白ワインでデグラッセ...それから。」


「メルディアンがお得意なんですか?」

あ、こっちで言うところのフレンチだっけ?


「あぁ、そうなんだ。」


「私も1番好きなのはメルディアンなんです。」


「まじ!?将来俺とレストランやらない!?」


「ダイゴ...。そう言って貰えるのを待っていました。」

俺が恐る恐る聞くとハルートは待っていましたと言わんばかりに喜んだ顔をした。


「やったぁ!これでもう一人従業員ゲット!」


俺はいつか来る自分の店を持つ日が大層楽しみになった。

だってこいつは努力で積み上げてきたものもあるがなにより勉強狂いで繊細な違いにも気がつける男なのだ。


「そのためにはまず資金を集めて料理ギルドの依頼もこなして行かないとですね。」


「だな!よーし!頑張るぞー!」


久しぶりの料理に俺はワクワクしていた。

本当はハルートにも手伝ってもらった方が早いのだけれど今日はひとりでやらせてもらった。


久しぶりのパッセはアクを取るだけなのに手が喜んでいるのを感じた。


自分で作る料理を人に食べてもらう俺にとってはそこも楽しいポイントである。


完成した料理はもうフレンチそのもの。

うんうん、これだよ俺様の求めていたものはさ。

ここにバゲットかブールがあれば完璧なんだけど今はないので我慢してみるか。


「ブール...欲しいですね。」


「あぁ...ラパンにはブールだよな。」


メルディアン好きのハルートはよく分かっているな。

こういう所に料理人としてのセンスが出るんだよな。


マリネしていた時から数えたら結構な時間を料理に使ってしまって夜はすっかり更けていた。


「あぁ!ねみ〜。さすがに今日はもう寝るわ。」


片付けまで終わらせた俺は欠伸をしながらテントに入ろうとする。


「そうですか。私は星空を見ながら1つ歌を奏でてから寝ますので先に休んでいてください。」


そうだ!こいつ!吟遊詩人だった。忘れてた。


「そうかい、おやすみ。」


「はい、おやすみなさい。」


俺は、テントの中に入り寝袋に包まれる。

テントの外側ではハルートがハープを奏で優しい歌声を夜空に静かに響かせている。


...目を閉じるとなんだか高揚感に包まれる。

ハルートが外で奏でている夜の調べのせいなのか俺がフレンチを久々に作ったからなのかはわからない。

外から聞こえるその優しいそのメロディはなんだか懐かしい気分にもしてくれる。


その日は久しぶりに子供の頃の夢を見た。



「父さん!今年の夏休みこそどっかに行こうよ!」


「すまんな、大護。今年はミシュランが家に取材に来るんだ。その準備で忙しいから難しいんだよ。」


「父さんの嘘つき!」


「ごめんな。大護。」


困り笑いをしていつでも強かで真っ直ぐだった父。

俺の憧れだった。


「だめだ!大護!高校を卒業したらフランスに行きなさい。」


場面が切り替わり進路相談をしていたシーンになった。

優しい父はあまり怒らなかったけれど俺が店をつぐと決めてからは厳しいことを言うことも増えた。


再び場面は切り替わり俺が父の店で働くようになった頃に変わった。


「大護!君のお父さんが...遥斗さんが...シェフが...。」


これは...父さんが死んじゃった日かな。


「すぐに病院に行ってあげなさい!」


スーシェフの舞川さん俺にいつも厳しくて怒ってばかりだった。

父にすらいつも怒ってたし...たぶん甘いところがある父を支えていたのはこの人だよね。


...今俺思ったのだけどハルートって父さんにどこか似ている。

名前もハルートで父さんはハルト...偶然かな。


...あいつはこっちの世界で生まれてるし違うよな。

つーか何歳なんだ?だいぶ若く見えるけど明らかに俺よりは年下だよな。


父さんが事故で死んだ日を俯瞰してみながら俺は物思いに耽っていた。


というかあれから6年か...。

その後父の店は舞川さんが継ぐことになりそうだったが本人が辞退し閉店。

そうして俺はホテルの本格フレンチで修行の日々。

5年以上かけてやっと上り詰めたシェフの座...。

俺にとってはクソ長く感じていたが、業界的には異例の早さだった。

そりゃ周りから恨まれるわな。


まぁ死んじゃったんで何もカンケーないんですけどね。



「ふぁ〜あ。」


次の日目を覚ますとハルートはいつも通り美しい顔で眠っていた。

なんちゅー綺麗な顔しとんねん。

ルカちゃんは面食いなんだなぁ、俺じゃ勝ち目ね〜や。


可愛い顔ではあるけどこんなに美人では無いしなによりハルートと違って短足のちんちくりんなのである。


「おはようございます。ダイゴ。」


俺がデカめの欠伸をした音で目が覚めたのかハルートが体を起こす。


「おはよう。ハルート。」


朝の挨拶をハルートにした俺は、懐かしい夢を見て父の姿を久しぶりに見てなんとなーく気分のいい。

外に出て思い切り伸びをしてみた。

朝の空気を思い切り肺に吸い込んで吐き出すと、こっそり買っておいたコーヒーセットでコーヒーを淹れた。


...無駄遣いじゃないよ、ミルとコーヒー豆とハンドドリップ用のフィルターとだけだもん。


「ハルート!コーヒーが入ったよー。のもーぜ。」

テントでぽや〜っとしてるハルートに声をかけ俺たちは朝のコーヒーを楽しむ。


朝飯に食べられるものはなかったけどコーヒーだけで結構満足。


今日こそ、火山であたらしい魔法を試せたらいいなぁ。


俺はそんなことを思いながらぼーっとべらぼうに晴れ渡った空を眺めてた。


〜続く〜

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