第4話「チート野郎は俺だけじゃないってことね」
「私の生まれはルコニアの手前にある火山の麓の村なのです...。でも訳あって故郷に帰れずアクアベリーに出てきてパーティを組んでいました。そして...知っての通りパーティーを追放されあなたに声をかけました。」
「あぁ...それでちなみに村を出た理由とかって...きいてもいいのか?」
「長くなりますが、聞いてくれます?」
「話してくれ。」
爽やかで優しいこの男がなんで元のパーティーメンバーや故郷の村から追い出されたのか俺は少し気になってしまっていた。
「うちの村では大昔に炎神を鎮めるために美しい女性が歌と舞を踊る祭りがあったそうです。
地理学や歴史学をルコニアの魔法大学で勉強していた私はそれを歴史書で知り、今はないこの風習がなぜなくなってしまったのか、どんなふうに廃れていったのかなどもっと詳しいことが知りたくなり故郷に帰ったあと村の資料館で文献を漁り研究したのです。」
「うん。」
「それで...なぜ廃れたのかは資料だけではわからず...村長や村の人たちにも知っている人や他に残っている資料を持っている人がいないかを聞いて回ったのです。
そしたら勇者一行の一人とされているトリックスターのミルフィーという少女が勇者と共に旅をすることを決めたからだと言う資料が見つかりまして...。
なぜミルフィーが居なくなったことにより文化は廃れてしまったのだろうと考えました。
そして、ミルフィーと言えば底抜けに明るく周りを癒し、勇者レオ、賢者メトロ、パラデモンクのオーリスを支えてきた人だと私は学んでいましたから...。
私はまずどういった経緯で彼女が村を出てしまったのかなど気になることが無数に溢れてきたのです。」
「そうか。」
「そして...勇者達はその時代における古代魔法と呼ばれる禁忌の魔法を見つけ当てをそれ所有していたのですが...私が調べていることどうやら無関係ではないらしいのです。
私はさらにそこからルコニアに勇者の時代よりさらに前の時代から伝わるという古代魔法が隠されているということを調べあげ、禁足地に赴いたり、禁書の類にも手を出してしまいました。」
「...しかし、私が行ったことはルコニア国の中ではご法度でした。政府に事がバレた私は、すぐに大学を退学処理になり、研究者としての権利も剥奪され村に返還されてしまいました。
そして...更には村からも追放され途方にくれてしまいひとり過酷な火山道や山道を超えアクアベリーを目指そうとしました。
やはり私のような弱い獣人では到底山越えはできず...途中で事切れそうになっていた所を私が元いたパーティーが依頼でたまたま火山道の近くに来ており助けてくれました。
そのあと彼らと一緒にアクアベリーに帰還後、ギルド登録を行い依頼をこなしていきました。
みんなのランクや推薦があり何とかBランクまで登ることができました。
料理ギルドも並行して依頼をこなして行ったのですが、そちらは私が入る少し前に抜けてしまった方のコックの方の穴埋めで、そのコックの方と一緒に料理ギルドの依頼に行っていたというパーティメンバーであるブレイカーのアビゲイルと共にこなして行きました。」
「いい仲間じゃないか。それなのに...どうして?」
俺は運ばれてきたビールを横目にハルートに聞いた。
「あ、麦酒が来ましたね。泡があるうちに楽しみましょう。乾杯をしてから続きを話しますね。」
俺の視線は予想以上にビールに向いていたらしくハルートが気を利かせてくれて乾杯した。
ビールをまずは一口飲む。
喉越しという言葉がふさわしい滑らかな完食とそれをさっぱりさせるキレ...。
あぁこれこれ。
これは恐らくラガー系のビールだ。
ア〇ヒスゥパァァァドゥラアアアイって感じで日本のビールとさほど変わらない。
でも俺はたまらなくこいつが恋しかったぜ。
スー〇ードライ結婚しよう!
おっといけない...今は真剣に話を聞いてるんだった。
「あ、どこまで話しましたっけ。」
「お前が元のパーティメンバーに拾われて依頼をこなしBランクになったところまで。」
「あぁそうでしたね。麦酒の美味さに爽やかな気分になっちゃいますね。」
自然な笑顔で笑うハルート。うんうんこの胡散臭さがない感じいいじゃんか。
「パーティメンバーは皆優しかったです。体力のない私は必死にみんなについて行くのがやっとで旋律を奏でる度に疲れてしまい...。それでも私を見捨てませんでした。
私はなるべくお返しがしたくて体力を摩耗しすぎない料理ギルドの依頼を一生懸命こなし、そのために料理の勉強やスキルを身につけ...なんとかみんなに捨てられないようにと頑張ってきました。
しかし、そんな努力もあの事件をきっかけに無駄に終わってしまいました。」
「あの事件?」
「えぇ、パーティメンバーのひとりが禁忌である魔術に手を出しルコニア王国からアクアベリーに出兵された者達により取り押さえられたのです。」
「....。」
「私はまだ認定研究者だった頃にかき集めた情報を元に作った禁忌の魔術に関してメモやノートをカバンの中に入れていました。
それをたまたま目にしたマジックキャスターのアラゼフが...試してみたくなってやってしまったようなのです。
私はレオ達が所有していた古代魔術も同時進行で研究したり調べたりしていました。
それはミルフィーとそれらがどう関係するかを調べる為に研究したことなのでまさか誰かが悪用してしまうだなんてその時は全くもって思いもよりませんでした。」
「そんな...。」
「アラゼフは好奇心旺盛な子でした。若いのに魔法の才に溢れ自分なら使えると思ってしまったようなのです。
古代魔術の類のものはそれに類似したものであっても魔法科学研究所が発明した機械によって検知されるようになっています。その為に使ってしまったことはすぐにバレました。まぁ魔術自体は大事に至る前に失敗に終わったのですが...。
アラゼフはどこでその知識を得たのかと聞かれた際に何も答えなかった為...禁固刑の刑期が長くなってしまいました。ルコニアの兵たちは他の仲間たちにも聞き出そうとしましたが誰一人私の書いたノートや研究資料だとは言いませんでした。
みんな知っていたはずなのに。」
「...。」
「大学の認定研究者であれば最も恐ろしい類の近所が封じてある禁書庫にあるもの以外であれば、ルコニア図書館の一般の人が読むことを禁止されている本をつかって研究することが出来ます。
私は本を使う権利こそ剥奪されましたが追放された時に何をどこまで研究していたかまではそこまで深く追求されませんでした。
おそらく村の人たちが盾になってくれて私を守ってくれたのだとその時わかりました。
みんなが...こんな私のことを思ってくれて守ってくれて...それなのに自分の知的好奇心と偽善の心で全てを...失ってしまった。私が...馬鹿なことをしなければ...。
パーティメンバーからは本当は追放された訳ではなく、私が自分で離れました。
拾ってもらった私が彼らのかけがえのない...友情を引き裂いてしまったのですから当然です。
私はパーティメンバーとして最後のできること...私を追放したのです。」
ハルートは涙を流していた。
俺は...どう言ってやればいいのか分からないながらにもハルートを攻めることのない精一杯の言葉をかけた。
「...優しいんだな。」
...こんなことを言ったら逆に傷つけてしまいそうだと言ったあとになって思った。
でも俺に言えるのはこれだけだった。
「優しい...そんな訳ないじゃないですか。私がやってしまったことは許されないことなのです。」
「ううん、優しいよ。自分がダメだっところをきちんと認めて相手を思いやれてるじゃないか。
俺がいた場所...ではさ毎日誰かが誰かを蹴落として自分が優位に立とうとする奴らばかりで...俺はそんな中自分まで自分を責めてしまったら壊れてしまうと思い周りに必死に合わせることしか出来なかったよ。
ハルート、お前は強い。
大したことは言ってやれないけどお前は俺にできないことをしてるんだよ。」
「うっ...。ダイゴさん...。」
ハルートは美しい顔をぐしゃぐしゃにして目には涙をいっぱい溜めてこちらを見ている。
「ハルート料理はまだ頼んでねぇだろ?ここは俺が会計をしておくから今日は一旦解散しよう。大の男が外で泣いてちゃカッコつかねーだろ?また明日飯にでも行こうぜ!そん時は今度こそお前の奢りな!」
俺は伝票を持って立ち上がりサッと会計を住ませてハルートに声をかけて店を出るためにハルートに背を向けて出口へ向かった。
「また明日な。」
「...がとう。ダイゴさん。また明日会いましょう。」
ハルートは俯いたたま俺に答えた。
それを前を向いたまま聞き店を後にした。
宿に戻りながら俺は最高潮に腹が減っていることを思い出した。
アクアベリーは別名夜の街...食欲性欲何でもござれ...。
うーんそこいら中からいい匂いの嵐嵐...。
地面に落ちてるハンバーガーを見つけてあれでいいから食べたいと料理人の風上にもおけないことを考えてしまった。
ひ...ひもじぃ。
しかしながらこういう街で店に適当に入るのだけはぜっっったいに許せない。
仕方が無いのでこういう時はコンビニだ!と思ってしまったがこの世界にはコンビニが存在しているようには思えない!
オーマイ!セ〇ン!
ファ〇マ、ロー〇ン派の人を敵に回してでもそう叫びたい気分だった。
俺がげっそりしながら街の中を歩いていると1人の少女が突然俺に声をかけてきた。
「あの...!すみません!」
「...はい?」
腹が減って機嫌の悪い俺は水色の毛並みの紫の瞳をした美しい狐獣人の少女に不機嫌そうに答えてしまう。
「あ、よ...よかったら!予約してたレストラン一緒に行ってくれませんか!?いきなり声かけた上に何言ってんだって思うかもしれないのですが実は一緒に行く約束をしていた友達がドタキャンしてきて...。」
うるうる涙目のその子は嘘をついているように見えないが、俺は日本人なのでこういうのは真っ先に怪しいと思ってしまう。
「あー...他を当たって下さい。すみません。」
「そ、そんなぁ!せっかくタイプの人を見つけたから勇気を出して声をかけたのに。」
タ、タイプの人ぉ!?俺はその一言に耳がピクリと動く。
それってもしかして俗に言うワンチャンてやつですか?
神様これは美人局ですか?ワンチャンですか?それだけ教えてください何でもします。
「...レストランてドレスコードとかあります?お姉さんすげぇオシャレだけど俺こんなきったねー服だし。」
あくまでも興味ない感じを装いつつ...ね?
「あー...多分あると思うのでできれば...着替えてきてきていただけるとうれ...しいなんて...厚かましいですよね!ごめんなさいやっぱりほかの人に声をかけてみます。」
おい待て待て待て、ここまできて引き下がったら男じゃねぇぞ。
俺ってば男だったんだ〜ビックリ〜って感じだけど目がギンギンになっちゃったよ。
よくそういう奴を軽蔑してみていたのにさ。
「一度ホテルに戻っても良ければ行けますよ。今から声をかけてもみんな店も決まっている時間でしょうから。」
俺がそっぽ向きながら優しく応えると少女は狐らしいフワフワっのしっぽを振って嬉しそうに答えた。
「えぇ!いいんですか!?ほんとすみません。勝手なこと言っちゃって!あたしルカって言います。お兄さんの名前も聞いていいですか?」
「ダイゴです。」
「うわぁ!かっこいい名前!嬉しいな嬉しいな!ずっと前から楽しみにしていたレストランなのでキャンセルにならなくて良かったぁ。」
蕩けてもいいですか?
危ねぇ口に出しそうだった。
と、とりあえず平常心平常心...。
俺はルカちゃんにホテルの前まで一緒に来てもらいフロントの椅子で待ってもらって、
その間に軽くシャワーを浴び髪を整え、買った服の中で一番高くてまともなワイシャツとズボンに着替えた。
買っておいてよかった。
でもさ、地球のフレンチとかみたいなところなら多分ドレスコードはジャケットスタイルだよな...。
ジャケットねぇよどうしよ。
「うーん...仕方ない。ここは恥を忍んでこの世界のルールを聞くか。てか俺金なくね?高ーいお店なんでしょ?うわここで断ったらださっ!どうしよどうしよ。」
部屋の中で無駄にぐるぐるしたけど時間の無駄なのでやめた。
俺はフロントに戻りルカちゃんに声をかけた。
「お待たせ!」
「ダイゴさん!お帰りなさい。あー!ワイシャツ似合いますね!」
「...それでさ一個だけ聞きたいんだけど、ジャッケットって必要かな?俺が住んでいた場所では高いレストランに行く時はジャケットが必要だったんだ。でも生憎、この旅に必要はないかと思って持ってきてないんだよね。」
「...あー、多分男の人はジャケットスタイルが普通なので多分要りますね。でも大丈夫です!未だこの近くの仕立て屋さん空いてるはずなので!」
おっふ!それは俺にジャケットを買って一緒に来いやぁって話ですかい?おっふおっふ!
「わかった。案内してもらってもいいかな?」
ルカちゃん案内されるがまま仕立て屋へ行きそこそこいい値段のジャケットを買った。
残りの残金...これで果たしてレストランが払えるのか?
そして払ってしまえばまた明日も一文無しですかい?
毎日毎日僕は金欠ですやんなっちゃうなぁ〜。
まぁ宿代は払ってあるし。
(馬鹿な俺が金を使い込むことは何となく予想してから...そうしておいて良かった。)
レストランは高級外の方にあるらしく俺はルカちゃんと共にロープウェイに乗った。
「あ!お金のことは心配しないでくださいね?もう予約の時にカードで払ってあるので!」
カードあるの!?え!カードあるの!?え!?
驚きすぎて二回も心の中で叫んでしまった。
てか高級フレンチなら事前決済なんてないのに...。
ぶ、文化の違いってやつですかい?
いやいやいやそこじゃないだろぉ!女の子に金出させて俺かっこ悪いな!
...までも金無いし...ご馳走になっちゃお。
「いいの!?」
「むしろ!こんな突然お誘いしてるのにお金払ってくださいなんて言ったら厚かましすぎますって!まぁ...ジャケットは買ってもらっちゃったけど。」
いいそれくらい!!むしろ!買わせてください!
なんなら足でも舐めます!と思ってしまう。
「いやいや女の子にお金出させちゃってかっこ悪いなおれ..。」
俺は申し訳なさそうに弱みを見せつけてみる。
こういうのに意外とおばさんは弱い...。けど今日の相手は若い女の子だ通用するか!?
「...そんなこと気にしないでくださいね!」
ロープウェイの中の向かいの席で薄暗い中でも街の灯りに照らされる美しい笑顔を俺に返すルカちゃんに俺の方が絆されてしまいそうだ。
「ありがとう。レストランなんて久しぶりだから楽しみだよ。」
行くのはね...久しぶりですよ。作る側だったんで。
マナーってフレンチと一緒かな....。
一緒だといいな。じゃないと俺恥かいちゃうよ〜ん。
「前は良く行かれたりしてたんですか?」
「...どちらかと言えば働いていんだ。高いレストランの厨房でさ。」
...おっとハルートにも話してないのに出会ったばかりのルカちゃんについ喋ってしまった。
「えっ!すごすご!そうなんですか!?」
目を夜景で光る眼をさらにきらきらさせて俺を見るルカちゃん。
あんまり見つめるなよ...照れるじゃないか。
「はは...まぁね。今じゃしがない冒険者やりながら料理ギルド上位ランクを目指してんだ。」
「...?」
「あー!俺の住んでた田舎ではさ...料理ギルドとかなくて...営業許可とかも国で出されたものだったり特殊なものだったんだ。」
「あっ!そうなんですね!そんな場所あるんだ...。」
彼女は少し不思議そうな顔をしていた。
そうですよねもう喋りません!
怪しいと思ったら110してください!
「ルカちゃんはなんのお仕事をしてるの?」
「あっソープ嬢です!」
そ、ソープ嬢?ん?ソープ嬢ってあの?
「ふ、風俗?」
「そうですよ!嫌でしたか?」
「ううん!びっくりしただけ!そういうのから遠い場所にいそうだなって思ってたからさ。」
色々びっくりしすぎて無理です。
あるんだ...ソープ。風俗街はあることは知ってたけどまさかソープまであるとは。
まぁ行ったことないからどんな所か知らないけど。
でも筆おろしという単語が強く私の頭に浮かびました。
ダイゴは悪い子...ダイゴは悪い子...。
「よく言われます!ふふっ!」
その笑顔はずるいよね。
というか色々腑に落ちた。
あぁなるほどねだから男にこんなに警戒心なく話しかけられるわけね。
だってかわし方も逃げ方も学んでるはずだもんね。
「ダイゴさんは今冒険者始めてどれくらい経つんですか?」
「ん〜...色々あってさまだ六日日目なんだよ。」
この世界に生まれて六日目ですからええ。
「えー!そうなんですか!ボロボロになってましたけど難しい依頼をやってきたんですか?」
バカにされ...てる訳じゃないよね?
「Bランクの依頼を一人でこなしてみたんだ。思った以上に大変だったよ。」
「え!?Bランク!?」
「うん俺をギルドに連れてってくれた友達とAランクの依頼をこなしたらDからCランクに上がったんだ。思ったより簡単だったからBランクなら一人で行けるかなってさ。」
「え!?え?Aランクが簡単!?」
はいぼくプライドが高いです、ごめんなさい。
こうやってマウントを取って小さなプライドを守っています生きててすまん!
でもルカちゃんの驚いた顔!
キモテイイイイイィ!
「俺レストランを辞めたあとは、山奥で修行したりしてたからさ...まだギルドとか詳しくなくて。」
うん。ほぼ嘘はついてない...ほぼね。
「凄い!ダイゴさん!Aランクって普通四人パーティの同じくらいの実力のBランク冒険者がやっとクリアできるレベルのクエストですよ!」
へ〜そうなんだ〜。
「え!そうなの!全然知らなかった。」
もしかしてやっぱり俺って...強い系?
モテまくり!勝ちまくり!ってコト!?
「そんなに強いのにどうして...。」
どうして...で辞めるのはどうして?
ねぇどうして?教えてよぉ!
「どうしたの?」
「いえ、なんでもないです。あ!もう着きますよ降りましょ!ダイゴさん。」
ルカちゃんが何を言いかけたのかわからず煮え切らない気持ちを抱えたまま俺はロープウェイを降りた。
高級外の方へと向かっていくと品の良さそうな方々が護衛をつけて歩いてらっしゃいます。
うーん!シロガネーゼみたい〜!
客で幾らでもああいうのが来てたからなんだか懐かしいき ぶ ん。
ルカちゃんに案内されるがままレストランへと到着した。
扉をノックし、入口でルカちゃんの名前を言う。
するとウェイターが俺たちを案内してくれるので
ルカちゃんをエスコートし、先にエントランスを通すとその後ろからウェイターに案内される席へと向かう。
丘の上にあるこちらのレストラン。
うん、大きなビューガラスがあり景色が見えるソファ席が奥になってる。
うんうんフレンチフレンチこんなの一緒ですやんけ。
案内された席は窓側に隣接したソファー席と向かいに並んだチェアの席。
はいはい、わーってるよ。
と言いたいところを必死に押さえつけルカちゃんをソファー席に自分はチェアー側へと座る。
あー!良かったマナーが一緒っぽくて。
しかし、安心するのは早い。このあとアペリティフの酒の確認が来れば俺の思っている通りなのだが...。
などと思っているとウェイターが聞いてきましたよ。
「お飲み物は如何されますか?」
「シャンパーニュをお願いします。」
「畏まりました。」
その後ウェイターはワイングラスをふたつとシャンパンをテーブルへと持ってきた。
「シャンパーニュはこちらで宜しいでしょうか?」
ウェイターは片手で持ったワイングラスを俺の方にラベルを向け後ろに構えていたもう一方の手で指し確認した。
「えぇ。結構です。」
うんうん、そうそうこれこれ。
ウェイターは黙って頷くと、丁寧に線を抜きシャンパンをテーブルの上に置かれた俺が指で支えたワイングラスに1口分注いだ。
俺はそれの香りを確認し、口へと含んだ。
う、うま...。
ぶどうの皮の渋みが強いのにエグ味が少なくマスカットの爽やかな香りが口に広がり、炭酸が調和を取る。
はいはいこれこれ。
俺はウェイターの方を見ると黙って頷いた。
そしてルカちゃんのグラスにも注がれ再びからになった俺のグラスにもシャンパンが注がれた。
このめんどくせ〜って思う作業がフレンチの楽しみ方なのですよ...はは。ってこれってこの世界ではなんて名前なんですかね?ははっ。
でもさ...この後運ばれてきたアミューズからそれ以降の食事がさ...。
劣るんだよなり悪いけど多分俺が作った方が美味いんだよな。
例えば、アミューズはポワッソンアミューズだったのだけど向こうの世界のサーモンに近い魚のコンフィ。マリアージュさせようとして変にくどくなってしまいサフランの香りがきつい。
ここがガッカリレベルに不味かったのでもはや次以降も期待できないし、アミューズは店の顔なわけで...なんつーかまじでがっかり。
もちろん顔には出さないけど。
つーかよく考えたけど、ルカちゃんやばくね?
フレンチの作法をたまたま俺が知ってたからいいけど...これ知らない場合だったらつまみ出されかねませんけど?
なになにどういうこと?
俺は途中からもう色々気なってしまい、食べ慣れてきたものの類似品または劣等品を食べてるせいで全く食事が楽しくなかった。
別にだからと言ってどうこうとい訳ではなく、退店までさりげなくルカちゃんをエスコートし上品な会話を心がけ見送りの時に名前を聞かれたので普通に答え退店した。
「あぁ...こんなもんなのか。」
思わず思ったことが口から出てしまいとっさに焦る俺。
「あ...やっぱり不味かったですよね!?」
ルカちゃんはあわあわする顔を覗き込むと笑顔で言った。
「...ルカちゃんも分かるの?」
「...はい。うちもレストランだったので。」
「え!?」
「親がルコニア経営していたのはここと同じようなメルディアンレストランでした。」
メルディアン?あぁモナ大陸のメルディル国のことかな?
「...うん。」
「ルコニアにいる頃私はルコニア魔法大学に通っていたんです。」
おや?なーんか聞いたことある系のお...は...な...し?
「うん。」
「そして、そこでとある青年に恋をしました。」
はい見えてきちゃいましたよオチってやつがなぁ!
まぁ最後まで聞きましょうか。
「結論から言いますね。あたしハルートさんのストーカーなんです。」
ん?今なんて?
ここではハルートに恋をして〜みたいな話が始まるかと思うじゃない〜。
やぁだ〜最近の子ドーパミン不足なの!?
Tik〇okみすぎよ〜やだぁ〜。
「え?」
「驚きましたよね。ハルートさんがルコニアから消えたあとから追いかけていたんです。
この街に来てからもあたしずっとずっとハルートさんのことを見ていたし盗聴もしてきました。だから貴方が料理に詳しいことも知っていたんです。ホテルでふたりでカナッペを食べてたでしょ?」
「おん...。」
うん、そうだね。まって...今俺、おんとか言った?
頭の中と言葉逆になっちゃってますね。
ハイ、動揺してます。
「あと私トリックスターもやってるんで少しだけ占いできます。占いのできるソープ嬢なんです!だから...あの辺にいればあなたが通りかかることも占いでわかってました。」
待って待って、おじちゃん頭がついて行かないよ。
①から順を追って説明してよ〜。
「あなたとハルートさんが離れることは盗聴してるので知ってました。」
うん、わかった。そこはもう言い、そうじゃないだろ〜そうじゃ〜。
「なぜ俺を誘ったの?」
「...それはこの街でいちばん美味しいと話題のメルディアンの味を確かめたくて。」
ふぅん?うんうんうん...わかんない。全然わかんないよー。
「なぜ俺を選んだ?ハルートだって舌は確かだよ。誘えばよかったでしょ?」
「ハルートさんは優しすぎます。きっとここのクソまずいアホ料理も私の前では不味くなかったように上手く振る舞うに決まってます。ていうかいきなり誘ったら変じゃないですか?」
おやおやおや〜面識もない君僕を夕方いきなり誘ったよねぇ〜おかしいなぁ〜。
「単刀直入に言います!ダイゴさん!」
あ、またなんか単刀直入に申し上げる系?
もういいよ、それ。驚きはないないナイアガラだよ。
「私とレストランを開きましょう。」
ってえーーーーー!?えーーーー?
「??どういうこと?」
「実家のレストランは世界一美味しいと名高いレストランなんです。あたし啖呵切って出てきてしまったので戻ることもできなくて....。」
「うん...。うん?」
「あなたみたいな本物の方が居れば絶対親のレストランを越えられると思うのです。」
「うん...。うん?」
あれ?何を言ってるのかな?
この子は何を言ってるのかな?
俺の目的なんだっけ?えーと確かこの世界でレストランのシェフを勝ち取ること。
このこの夢レストランを世界一美味しいものにすること。
ふんふんふん?
一致しちゃってますね利害ってやつ。
...え?こんなラノベみたいなこと起こります?ふつー?神様運命をいじれないとか言ってたけど...これ操作されちゃってます?
ま、いいかレストランをやる仲間を1人見つけられたのだから。
僕ちゃんロボット!神様の言いなり!もっと動かしてガチャンガチャン。
「...ごめん、ちょっといっぺん整理させて。」
心はYES!と大きく言ってます。
でも...頭が着いてきません。
「それって俺がシェフでもいいやつ?」
俺が恐る恐る聞いた質問をるかちゃんは容赦なくぶった斬る。
「いえ!私がシェフやるので!オーナーかスーシェフで!」
交渉決裂だぜベイビー...。
「...それじゃ俺の目的と合わないからな。イエスとは言えないよ。」
「...分かりました!いつかダイゴさんが料理ギルドSSSランクになった時私と勝負してください。その勝負に勝った方がシェフ!負けた方は言うことを聞くってことにしませんか?」
言うことを聞く!?それってえろいことでもいいんですか?
せんせー!エロは言うこと聞くに含まれますかー?
「ふふん。面白いやってやろうじゃないの。」
「Sランク以降で開いた店が繁盛してSSランクに、ルジェ星三つ認定をとった時にSSSランクに上がれます。あたし、既にSSSランク持ってるので!でも自分だけでは世界一にはなれないと思い1年で店を閉めました。もちろんまくら営業もなんでも使ってチート級に早く上がってるんでダイゴさんはもっとかかると思います。でも必ず上がってきてください。もし店を出すなら資金を全部出します。そのためにソープで働いてるんですから!」
え?ハルートってそんなに長い間この街にいたんですかい?とかストーカーしながらあんた一流の店を開いてたんですかい?とかなーんだか色々ツッコミどころ満載だよん。
とはいえ話を聞く限り、まぁこの子のぶっ飛び加減見てたら普通の速度で上がって行った訳ではなさそうだし...
アクアベリーって流行の入れ替わりも激しいみたいだから店がひとつ現れてはきえなんて普通なのかしら?
チート野郎は俺だけじゃないってことね。
このこの場合生まれながらのサラブレットちゃんだから俺以上にやばいと言うはよーくわかりました。
つーかまず演技力やべぇな。
「わかった!必ずその時は戦おう!俺も一刻も早くSSSランクになれるように精一杯やってみるから!」
俺のその言葉にルカちゃんは腕を組みニヤリと笑う。
「じゃ!あたしここら辺に住んでるんで!会いたくなったらソープのお店にでも来てください!源氏名メル!なのでよろしくお願しまぁす♡」
それだけ言い残して俺に軽快に挨拶をしてルカちゃんはあっけなく消えていく。
あ...え?あ?お持ち帰りコース...ではないよな。
そうだよな。
俺は激しくモヤモヤモヤモヤしながらひとまず明日からの資金繰りのことに思考を戻し一人でたっかい値段のロープウェイに寂しく乗りホテルへ帰るのであった。
え?てか源氏名聞いたのに店の名前聞いてなくない?もしかして呼ぶ気ないの?
俺行く気満々ですけど?
「ちくしょーーーーーー!!」
〜続く〜




