第17話 「ある晴れた日のこと」
座学の集合は早朝も早朝。
まだ真っ暗けで雪こそ止んでいるものの凍てつく冷気が漂う中外で行われる地獄のような状況に胃酸が上がってきそうだ。
ルフレを全員にかけ、暖かくなる魔法を施したがそれでも寒い。
おそらく氷点下二十度くらいだと思う。
「はい、それでは皆様。初めていきます。
私、ホーリーナイトコーチング担当のアサと申します。
清く美しい心をもつものだけがホーリーナイトとして活躍できます。
皆さんにはしっかりと基礎を身につけていただき最高位のホーリーナイトを目指していただたいと思います。」
そこからはなんだかもう目を白黒させるようなマナーやら品位やら厳かさやらナイトシップやらなんかのありがた〜い講習が始まり、それが身についたかどうかの心理チェックのロールプレイやらなにやら盛りだくさんで少々参ってしまった。
ちなみに早朝...もといほぼ深夜から始まったが終わる頃には真っ暗。
アベルは見事に体調を崩した。
「すみません。」
部屋に戻ったあと
熱を出し寝込むアベルをハルートの癒しの調べと俺の魔法で癒していく。
ただし月の物で受け入れる体制が少し弱かったりマナのバランスが整っていないため若干治りが遅い。
「大丈夫だ。寝てろ。ハルートも断髪をされて魔力が安定してない時があるみたいだな。お前まで倒れたら元も子もないから無理せずダメなら俺に任せろよ。」
「はい、ありがとうございます。」
は〜全くモンエナがぶ飲みしてたあの頃を思い出すエーテルの消費量だ。
俺自身も消耗してるからマフィールごときじゃ魔力の回復が追いつきゃしない。
そんなこんなでどうにかこうにか座学を乗り越えた俺たちは晴れて騎士団の仲間入りだ。
「サーシャルロッテ!新人を案内してあげなさい。」
全員の前での挨拶が終わったあとは騎士団長は不在のため副団長がシャルに命令した。
聖騎士団の寮をシャルが先頭切って歩きながら俺たちに小声で囁いた。
「俺も今少し動きにくくなってる。やはり怪しいという話が出てたもの達が一気にいなくなってるのが疑念の種なんだと思う。表向きには遠征ってことになってるけど...こりゃ思ったより早く動いていかないとろくな事にならないかもしれねぇぜ。」
あ〜めんどくさ。めんどくさすぎて草通り越して森って感じ。
「すまないシャル頼みがあるんだ。シャルが仲良くしてる中にももしかしたら怪しいのがいるかもしれない...こんなことお願いするのは心苦しいのだがリストの中にいるやつでお前と仲いいヤツと俺を上手くコネクションしてくれるか?」
「あぁ。それなら今夜食堂でお前らの歓迎会がある。立食パーティを開いてもらうように手配したからそこで上手いことやれ。」
シャルちゃん...カッケー。いつもの子供っぽいガサツな彼女はどこにもいない。
威厳のある騎士団の威厳のある位の先輩だ。
「ありがとう。」
寮の部屋は三人部屋でハルートと俺とアベル。
そこもおそらくシャルが上手く手を回してくれたのだろう。
アルスより頼りになる俺の仲間....絶対に俺もシャルやマカフィーが自由に生きる道を取り戻してみせる。
「ダイゴさん、僕...そのアレが明けました。これで体も自由に使えます。今日は立食パーティならお酒も絡むでしょうしうまく情報を掴めそうです。長く潜入をするつもりできましたが今回で決められるかもしれませんね。」
「無理はするなよ。デキちまったら大変なんだから。」
「つけますし大丈夫です。それにもしできても...堕ろすのには慣れてますから。」
「アベルさん...今言うべきではないかもしれませんが、私からも言わせてください。あなたの体はあなたのものです。搾取されるために生まれてきたのではないです。長い間苦しんできたのですね。
どうかこの件が終わったならば...いやこの件が進んでいく中でも無理だけはなさらないでください。」
ハルートはいつもこういう時黙っているのに今日はやたら情熱がこもっている。
「いいんです。僕はアルスさんの為に生きると決めたのですから...その為にはなんだってします。娼年をやっていた頃は自分では何も決められずそこしか生きる道がありませんでしたが今は選べるのです。僕が皆様の役に立てるなら僕はなんでも平気です。それがアルスさんの為になりますし。」
「...それでもあなたの体はあなただけのものです。それだけはどうか...どうか忘れないでください。」
俺は黙ってふたりの会話を聞いていた。
ハルートも過去に何かあったのかな。
いつか苦しかったそういうのも笑ってみんなで話し合えたらいいな...。
夕食までは剣の稽古やら武道やら魔術の試験があった。
剣はへっぽこすぎて俺は全くダメだったが先生はシャルだったのでどうにか誤魔化せた。
驚いたのはハルートが結構剣を扱えるということ。
アベルはなんか...可愛かった。
武道もシャルが先生になってくれた。
今度は俺はそれなりに強かった。
ハルートはダメダメ。
アベルはやっぱり...可愛かった。
魔術の先生はマカフィーがやってきた。
ま!言うまでもなく俺は何もすることがなくてハルートは魔力が切れそうになってて大変そうだったしアベルは基礎的なところがまだいまいちらしく俺とマカフィーで教えてやった。
...思ったがこれおそらくシャルやマカフィーが相当頑張って自分たちが先生になるよう動いたんだろうな。
お陰で何も外部に露出せず上手いことやれた。
でもこれやっぱ長引いたら長引いただけ相当まずいな。
なるべく今夜で決められるようにしていかないと。
稽古が終わったあとは少し自由時間があったのでリストに乗っている先輩方に挨拶回りに行った。
ちなみに残りのリスト入りの奴らは全部で六人...。
既にしょっぴかれたのが十五人だ。
アベルが菓子折を用意してくれそれのお陰でそれぞれの人達と結構打ち解けられた。
その中で早速ぼろを出したやつが二人ほど居た。
一人目の時は菓子折を出しただけでは冷たく無視をしてきたのでこういう奴は大概...本当に底意地が悪いか素行が悪いかのどっちかだ。
俺は、一か八か賭けに出てみることにした。
「実は...なんか先輩のところに来ればいい話があるって...聞いてきたんです。何か知っていますか?先輩のようにまだ若くして位を持っている方は珍しいです。その立派さには秘訣があるのですか?自分のようなバカには分かりませんが宜しかったら教えを説いていただけませんか?」
「お、お前はそういうのがわかる口なのか...これさ、見てみろよ。いま巷ではやってるんだよ。まだお前らはペーペーの騎士だろ?給料だって生きていくさえ怪しい金額のはずだ。俺がお前に紹介してお前が他の奴に紹介していく事でどんどん報酬が増えていくんだ。教会としても信者が増える仕組みになってるし何も悪いことじゃない。」
資料を出しながら俺に一生懸命説明するパイセン。
ね、ねねねネズミ講ーーーーーー!
生ネズミ講初めて見たァ。感動〜。
俺はとりあえずその場で興味がある振りをし散々聞き出し挙句すぐに法皇に報告した。
ちなみになんでこいつが炙り出されなかったのか聞いたところ普段は真面目で研究職の頃は博位も持っているほどの勤勉な男であったという。
それから徹底してネズミ講で紹介したヤツに次の紹介の前には必ず自分を通せとターゲットを精査させていたらしい。
こういう奴ってのは仲間意識が強いからな...そんなやつほど自尊心を高めてやってゆさ振ればボロが出る。
二人目は...もうなんて言うかサイテー。
最初は無口であまり喋らなくてどちらかと言うと強くて寡黙で評判も良さそうな男だったのだが俺があの手この手で誘導していると仲良くなったと勘違いしたのゲロった。
「なあなあなあ!新人!見てくれよ。俺の奴隷。」
そう言って見せてくれたのはスマホの中でペットカメラのように映っている性奴隷の姿。
美しい買ったであろうブロンドの紙はボロボロで白い猫獣人ならでは可愛らしい毛並みもボロボロ。
手枷と足枷を付けられ床に落ちた食べ物を食べていた。
あやうくぶん殴りそうだったが何とかこらえた。
「えー!すごい!なんでバレずに買えるんすか?俺もめっちゃ欲しいッス!」
「ふっふっ...タダで教えると思うか!?」
「...次の給料日まで待ってくれたら必ずお支払いします。いくらですか?」
「ジョーダンだよ。お前は話してて話な分かりそうなやつだからな。本当は誰にも言ってないんだけどお前には教えてやるよ。」
「アザス!」
「実は騎士団長すらそれで最近しょっぴかれたらしいんだけどよ!あの人とは別のルートがあるんだよ。イヒヒ...俺の仲間になハッキング得意な奴がいてな魔法もうまいんだ。そっが上手いことカモフラージュと斡旋してなんとか買い付けたんだけどよ...保管場所も聞いたらびっくりすると思うぜ。実はさこの寮の地下なんだよ。誰にも分からないように魔法で細工した部屋をそいつが五年かけて作ったんだ。」
は〜い実はアルスお手製のアプリで全て録音してます。
そしてそのデータは法皇の元へ届きます。
「すっげぇ!後で俺にもヤラせてくださいよ!横どったりしないから一回だけでいいんで。」
「っち仕方ねーなぁ。二本刺し試してみたかったんだよぉ。今度お前と試してみるかぁ。」
あ〜ぶん殴りてぇ。
というか俺の部屋の盗聴の犯人は十中八九こいつの友達だ。
そのお友達がこいつに俺たちの話をしてないところを見るとこいつですら信用してないのかもな。
しかも今まで挨拶してきた中に必ずいるってことだろ!?
あ〜嫌だねぇ、なんで転生してきてまで俺はこんなことしてんだろう。
そんなことをしているうちにあっという間に夕飯の時間になった。
立食パーティは食堂で行われる。
割とラフな格好でいいとの事で...アベルはショーパンに大きめのTシャツ...割と攻めてるな。
胸とかは分からないようにしてるみたいだけど見る人が見たら女の子にも見える...。
おそらくバレないところギリギリを攻めているのだろうけど心配だ。
ハルートは切ってもなお長いか髪を後ろで大きく縛りワイシャツと黒いロングパンツ。
俺はいつものみすぼらしい服を着て会場へと赴いた。
俺もちんこくらい舐める覚悟を決める必要があるかもと思ったが死んでも嫌なのでそんなことをするくらいなら皆殺しにしようと心に決めた。
「アベルめっちゃいいの匂いする。」
「えぇ、今日はユリとネロリ、イランイランの甘美なやつをつけました。しかもくどくならないように髪に塗ったり少し汗をかいて体温で調節してます。」
...あーこわいよ〜。さらっとこういうことするのこわいこわい。
「ダイゴさんはその格好になにか意味が?」
「あぁ俺の場合舐められやすい格好をしてきた。心の隙間に入りやすいからな。」
「なるほど...。」
ハルートは紳士的で笑顔を振りまきさり気ない会話をしていくことでその知識量を生かし嘘があるかどうかを見抜く作戦らしい。
最初に副団長の挨拶があり乾杯をみんなでするとパーティは始まった。
仮面舞踏会さながらの身分を隠したパーティ。
本当は料理を食って味を知りたいがそれどころでは無いので今日は抑えることにした。
ちなみに怪しくない人ともさりげなく会話をし談笑し上手いことやったあと怪しいヤツをつついたりふたりで話せるような環境に持ってったりした。
ここで生きてくるのが獣種による食べ物の好み。
これだけで生まれが何となくどんな地域であるのか特定出来る。
そうなった時事前に持っている情報と照らし合わせ整合性のないことや敢えて吐かれた嘘なんかも軽く見抜ける。
クロージングのテクニックってのは商談なんかも少しだけやってたし割と見についてる。
まさかこんなことで役に立つとは1ミクロンも考えたこと無かったけど。
ハルートとアベルはバラバラに動いてくれていたが中間報告ということで一度真ん中に集まった。
「僕たち今のところは怪しまれてないみたいです。今夜1人の部屋で飲み直すことを約束したのでピロートークで何か聞き出せるかやってみます。それからもう1人少し抜ける約束をしたのでこっちは恐らくすぐ済みますのでその場で何か聞き出せるかやってみます。」
「私の方は今ところ何も掴めていませんが、盗聴やハッキングの魔法を得意としていると思われる人物は特定しました。その人物を突き詰めていきます。」
「俺の方は生まれを偽ってた。突き詰めてみる。」
怪しいヤツは残り四人...。
どいつもシロの可能性もあるが逆も然り。
まどちらにしてもハルートが攻めているやつはおそらく黒。
「このじゃがいも近くの村で取れたものらしいよ。マリーっていう品種なんだって。君ってすごく食べ物に詳しいけどマリーについては知ってる?」
俺が再び話しているリスト入りの男とはとりあえず食べ物のことで話題を繋いでる。
ちなみにマリーはキタアカリのような甘みの強い味わいで、今出てきているローストビーフの付け合せのマッシュポテトのことを指している。
「あぁ、甘みが強くてでんぷんが多いから粘り気もあってなおかつクリーミーな味わいのじゃがいもですね。」
「おーそうそう!俺趣味で料理をするんだ。」
お、それは違う意味で興味深い。
イカンイカン...。
「おー。それは良いですね。専門はあるんですか?」
「んー、もっぱらメルディアンにはまってるなぁ〜。ほらさっきも言ったすけ俺東大陸出身だし馴染み深いものと言ったらメルディアンかマリジャナンだべ?」
仲良くなったら急に新潟なまりみたいになった。しかもわざとらし!
「ですよね〜。俺もマルジニア近辺出身なのでわかりますよ。」
「あんれ!マルジニアと言ったらマルジニアの料理らて〜。おら割とマルジニアに遊びに行っとるが!最高だっけ。」
何を偽って新潟弁を喋ってる?
確か...新潟なまりっぽいのはこの世界だと...グレイスの北地だったような。
確かに東大陸エリアではあるが...。
「ですよねー!マル酒最高ッス!」
「ほんほんだ〜。あっ...最高だら〜。」
言い直したな...。
「...先輩もしかしてタッカンブル生まれだったりしますか?俺大好きなんすよ温泉。」
「あ〜親があっちの方なんだわ〜。俺はグレイスの北の方の生まれだすけ。」
...何目的の嘘なの?
今のところ掴めない。
「じゃあタッカンブルには行くこともあるんですか?」
俺のさり気ない質問に先輩は慌てた様子で強い言葉で返す。
「ね!けしてあんなとこいかね!」
おや...違和感があるな。何故タッカンブルを嫌う?
ちなみにこの人ドラゴン獣人...つまりルコニア周辺に多いと言われている獣種。
もちろんそれ以外にも沢山いるのだけどあくまで傾向の話。
そしてこの人の食べ物の好みはじゃがいもや白菜...それから人参それからヴァルドブルのローストビーフ。
どれもあっち側でおおく取れたり食べられてるものだ。
そこから約二時間、こういう人は酔わせるのが正しいと思った俺はひたすら飲ませてみた。
しかしザルすぎて中々酔わない。
さすが西大陸出身...。
ちなみに西大陸北部生まれの奴らはやたら酒に強いらしい。
これでほぼQEDのはずなのだが本人からわけを聞かないと話にならない。
でも...ひとつ思ったのはこんなにも嘘をつくのが下手くそな人...はたして悪い人なのか?
「先輩...俺酔っちまいましたよ。」
「ありま!そいだら大変だぐ...。オラッチの部屋にすげえ聖水ある...あっ。」
今のもタッカンブルなまり。
ていうかすげえ聖水ってなんだ?怪しいな。
「ほんろれすかぁ。それぜひもらいたいれす。」
うまいっしょ酔ったフリ。これババアにも有効だよ。
「おう、じゃあみんなに声掛けて俺の部屋で飲み直すか。」
おや。訛りが消えた。俺が酔っ払ったと思って誤魔化さなくていいと思ったんだな。 馬鹿なヤツめ。
ちなみに俺はそこまで酒に強い訳ではない。のでしばらくの間解毒魔法が延々かかるプログラムを発動するように来る前に仕掛けてきた。
なので酒自体は結構飲んでる。内蔵に謝りたい気分だ。
先輩の寮室は綺麗に整理されていて無駄なものがない。
開けっ放しで丸見えのリネン室になっているクローゼットの中も整頓されていてその下にある荷物類も整えられている。
机の上には教本の数々。真面目なのがよく分かるな。
一人部屋を与えてもらえるクラスにそもそもいる時点で上からの評価はあるらしい。
「ささ、ベッドの上でいいぞ。座れ。出してやるからな。」
そう言って小さな冷蔵庫から怪しげな瓶に入った水を取り出し封を切るとコルクを抜き俺に手渡した。
あ、直なんだね。
魔力探知したが割と普通の聖水でエーテルが少し混じってるくらい...おっ...とこれはポーションも混ざってるなしかも...医薬部外品どころかちょっぴり犯罪的な寮の回復薬入りだ。
まぁ毒ではないし飲むか。
俺がそれを飲み干してみると先輩は嬉しそうにした。
「すごいべ?楽になったろ?だすけ!これはすげえ聖水なんだっけ!」
酔いが冷めたと想定して口調を戻してきたな。
「先輩...これどこで手に入れましたか?」
「おぉ!聞いてくれるかあ!俺の村のな広報が作ったんだよ!すごいだろ!これを教団で売ればすげー人達が救われるはずなんだ。」
口調が標準語寄りになった。もう訳わかんなくなってるね?恐らく。
「おぉ、それは凄い。」
「お前も売るの手伝ってくれないか?まだ認可は降りてないけど必ずとるからって広報が言ってたから!しかもすごく安く売るんだよ!」
...これは法律的に若干アウトだな。
アルスが真っ先にツツきたがりそうだな。
確かに効能は凄そうだし万人に設けそうな味に調節されてる。
しかし...おそらく飲み続ければ蓄積され分解が追いつかいない量の回復薬...しかも劇薬よりのやつが入ってるな。
エリクサーみたいなもんだと思うけどエリクサーは認可が降りてて販売許可もあるし1日の使用量や販売できる本数が決められている。
つまり...これがマーシェット商会だけだなく他で流通し副作用が出た時...通ってきた流通先だけでなく販売元の先輩たちが叩かれる。
おそらくそこで販売協定を結びたいと言っている広報とやらは手を離して責任を押し付けるつもりがあるのかも。
「...よく聞いてください。先輩のことが俺気に入りました。だからこそ俺のことも正直に話します。
まず先輩、これが強く副作用が出るかもしれないというリスクが孕んでいるということは分かっていますか?」
「あぁ...。」
「俺はマーシェット商会から先入に来ました。先輩にはこんなことで捕まって欲しくありません。」
「...。捕まると決まったわけじゃないだろ?俺が作った訳じゃないんだ。」
少し慌てた様子でそう答える先輩に俺は続けて話した。
「いえ、これが流通すれば必ず健康被害が出ます。そしたら大元を辿って先輩や販売元の広報が叩かれます。そのとき広報が先輩を守ってくれますか?先輩が叩かれれば所属している騎士団はおろか教団ごと叩かれます。そうなった時教団は先輩をタダで済ませるとは思いません。今なら...全て正直に話せば間に合います。どうか...そうしましょう。」
「...だめなんだ。嘘ついてごめん。
俺...本当はお前の言う通り、タッカンブルの出身なんだよ。でもな...こっちに聖騎士になりたくて来た時...途中で生き倒れたんだよ。そんな時に救ってくれたのが今の広報がいる村...バルデントなんだ。広報は村の人間じゃなかったけど...俺よりあとから村に来たのに村のことをさも考えているかのようにみせてすっかり人気者になった。そこから村を大きくしたいからと広報になり...。今度は俺を揺さぶったんだ。
お前はこの村に救われただろ?この村で働かないで聖騎士になるなんて恩を仇で返すのか!?ってな。村の人間の怒りも一緒に煽ってみんなで俺を責めてきたんだ。それで...必ずこの村の役に立つことをなしてみせるから...一度聖騎士になって有名になってかえってそこで村の宣伝をするから...と無理やり出てきたんだよ。だから...俺は村に恩を返すためにここで一生懸命サーまで上り詰めた。それで村の人たちも広報も認めてくれて...この水を売って村を大きくする資金にしてこいと言われたんだ。
おそらく広報の目的は大儲け...その先にあるのは責任を押し付けられた俺や村の破滅...。
放っておけばじゃがいもしか特産のない村は滅んじまうかもしれないし...俺がやるしかないんだ。」
「よし、よく言ってくれた。聞いてたかい?アルス。」
俺は機転をきかせアルスに電話を繋いでおいた。
「きぃとったで〜。あんちゃん〜お水たくさん売ってしまってからやったらあんたを救うことはでけへんかったけど今ならどうにかできるで〜。あ、申し遅れたな、俺マーシェット商会ロージニア大陸代表アルスいいます。
横にはグレイス代表のシェリーもおるで。あんたとこの芋...実は卸たい卸さきあんねん。詳しくはおばちゃ...イデッぶつことないなやん!シェリーおば...ひぃ!すんません。
あ、すまんそのシェリーさんが手伝ってくれるさかい村が潰れるようなことはないで。あとでシェリーさんが村に行くさかいその時に一緒に会議に参加し〜。村には上手いこと広報がやろうとしてる事のあくどさを証明して俺らでとっ捕まえとくさかい...もう安心してええよ。」
その言葉に先輩は立ったまま男泣きをした。
天を仰いで上を向いておいお泣いてる。
...あちーな、俺もつられそう。
「ありがとぉ!新人...えーとダイゴだっけ?俺!もうこんな事しない。やりかけとはいえ騎士団も1度悪事に手を染めちまったしキッパリ辞める。法皇さまも謝罪をさせていただく時間を作っていただきたい。」
その一言に後ろからいきなり法皇が現れた。
「その必要はない。お前は...とても良い行いをしようと常日頃から努力してくれていた。私はちゃんと見ていた。今やめてしまっては立派な騎士が一人居なくなってしまう。こんなにも騎士道精神を持った最高のホーリーナイト...私はぜひ時期副団長にしたいとすら考えているのだ。」
「勿体なきお言葉あああああああ。」
ついには膝から崩れ落ちる先輩。
「ただし、やりかけてしまったことは感心しません。そこはきっちり償い一度サーの称号は剥奪になります。
副騎士団長になるのは遠のきますが位置から私の元でやり直してくれないか?」
「も、もちろんです。このアーサー貴方様...や親愛なる神様へ一生忠誠を誓います。」
ちっ!料理が趣味だしイイ舌持ってたから勧誘しようと思ったけど...そう上手くは行かないか。
このあとアベルがとっ捕まえてたヤツらもゲロり、1人はアウトもう1人は償いでセーフ。
ハルートの方は上手く吐き出させたみたいでこの中で誰よりも悪どいことをやっていてとても口に出すのも恐ろしいほどだった。
しかも臆病で人一倍警戒心が強く俺たちだけでなく外から誰か入ってきたら必ず盗聴をしていたらしい。
..おそらくハルートが捕まえたやつは死刑は免れない。
そんな感じでこの事件は全て丸く納まった。
勧誘チームの方は迅速に法律を変わり、勧誘チームで悪事を働いていたリーダー諸共特定され、金銭の授受が禁止になりもし寄付をする場合は一度政府に募金するという制度に変わった。
問題だったマカフィーの件も法皇が上手く段取り、シャルの方は副団長と良く話し合いもう二度と組織を腐らせたりしないからお前がやりたいことをやれと背中を押されようやく今まで通りの四人プラスモーティで度ができる所まで戻ってきた。
旅立ちの日の何日か前に送別パーティが行われた。
その後本当は正式に送り出し会が行われるはずだったところをマカフィーが静かに旅立ちたいとの事でパーティの次の日の早朝に旅立つこととなった。
限られた事実を知る者たちだけに見送られながら俺は久しぶりの大きな距離の移動の魔法に緊張していた。
「お父様。本当に本当にありがとう。大好きです。副団長様もシスターベルも...僕...いや あたし!絶対に忘れません。あたしがここで過ごした時間が本当にかけがえのないものでした。
これからは自分の道をいきます。みんなと!」
法皇は黙って涙を流しながら娘をじっと抱きしめる。
「マカフィルーム、体には気をつけるのですよ。あなたは教会...いえ、私たちの宝です。たくさん厳しくしましたがどれもあなたを思えばこそ...。あなたに神の御加護があらんことを。」
厳かなシスターベルは俺たちを警戒していたときでは想像つかないほど優しい声でマカフィーにそう言った。
「本当に...ダイゴ!ありがとう!お前に助けられなかったら村どころか教団ごと潰していたかもしれない。」
「もういいって!あんたサイコーにあつかったぜ!アーサー!」
「ははっ...!元気で!」
グレイスランドでは99パーセント雪または曇り...晴れ間は十年に一度と言われている。
にもかかわらず...今日はあれだけ連日吹雪いていた雪も止み穏やかな風と暖かい日差しに包まれている。
キラキラと雪が乱反射する光にてされてめがしょぼしょぼする。
...そんな中、法皇は静かに話し始めた。
「マカフィルーム...お前が生まれた日のことを昨日の事のように覚えている。 今みたいに珍しく晴れていたよ。
女が産まれてくるということは魔法で事前にわかっていた。
わしは酷く絶望したのを覚えている。
初めの頃は乳母や産みの母に辛く当たったりもしていたが私はそんな自分をすぐに悔いたよ。
お前は...ワシそっくりだった。まほうの使い方の癖も...まだ話せないのに一生懸命離そうとするとき話し始めの癖も...。
私は...命が紡がれていくことの美しさに胸を焼かれたようだった。
愛している...その気持ちはたしかに私の中にもあったよ。
お前を男として育てている時も本当はずっと苦しめていることをわかっていた...。
本当にすまなかった。
...愛しているよマカフィルーム。
どうか健やかにこれからもお前が過ごせることを願う。
私が父親としての顔をできるのはきっとこれが最後だからね...。
最後にもう一度伝えよう、愛しているよ。」
マカフィーは鼻水を流してマズルを噛み締めメガネが涙で溢れかえり肩を震わせていた。
「お父様...いえ!ぢぢうえ...僕、行ってまいります。必ず救いを求めてる人達もすぐってみぜます。そしてあたしの...生きるみぢをみづけるがら...だから...お父ざまっ...もお身体にぎをつげで...。」
俺も耐えられず涙を流してまった。
その場にいる全員が美しい愛情という目には見えなはずなのにそれをこんなにも強く感じることに感動をしていた。
法皇は最後にシャルを抱きめした。
「行ってくるといい。お前のその自由で屈託のない笑顔や無邪気さ...団員たちはたくさん救われたであろう。」
それだけ言うと法皇は副団長の背中を押した。
眼帯をした豹獣人の副団長はシャルと握手を交わした。
「おめーのオヤジはな...すげーやつだったんだよ。でもな...ちーっとばっかし馬鹿やっちまったな。大丈夫だ!チャル子!俺が腐ったところ全部切り刻んでいつか牢屋からおめーの親父が出てくる頃には最高の騎士団にしておくよ。
まあ...あの人はここにもう戻ってくることはできねーけど...おめーの父親だっつーことは変わんねーよ。いつか許してもいいと思ったら会いに行ってやんな。
...俺もなお前を娘のように思っている。
その強い身体と心。いざとなったら仲間のために冷静な行動も騎士道精神を持っているからこそだと思う。元気にやれよチャル子。
なぁに泣いてんだよ。ばっかだなぁ。
ちーせー頃からぶん殴ったり半殺しにしたりしても泣き言ひとついやぁしねぇお前に涙は似合わねぇ...歯ぁ食いしばって生きやがれ!」
「うるせぇよ!ジジイ!俺もお前のこと!オヤジのように思ってるぜ...。ホンモンのオヤジは父親としてでなく騎士団長としてしか接してくれなかったけどよ。あんたはたまにオヤジみたいにしてくれたろ。俺、本当はすげぇ孤独な時もあったけど救われたんだぜ!あんたに!くたばんなよ!クソジジイ!」
最後に拳を合わせて抱き合うとシャルはそっぽを向いた。
「あ〜今日は陽の光が目にしみんなぁ〜。」
「それじゃあ行こうか。」
マカフィーが俺たちの方に戻ってきた。
「あぁ、世話になったな!グレイス教団の皆さん!じゃあ、いくぜ!フープル!」
七色の光に包まれて俺たちは一度ローズのマーシェット商会へと戻ってきた。




