第13話「洗ってください隅々まで」
「なんだここは!」
「ここが空の世界ってことかね?やたら空が近くない?でも草原なんだ。」
「んー!まずは地図とステータスの確認だな。」
「ステータス呼び出し!」
マカフィがそう言うと俺たちの目の前には今のこの世界でのステータスが表示された。
ダイゴ Lv 10
HP 250
MP 380
体力 125
攻撃 80
防御 70
魔力 190
素早さ 100
なるほど...今の本物のステータスの五分の一以下ね。
使える魔法も正直そこまでは多くない。
炎、氷、雷、闇、回復、サポートの魔法の中級程度までが使えるみたいだ。
「みんなどう?」
「俺はレベル15スタートだな。」
シャルは鼻を擦る。
「どうも実際のレベルの五分の一くらいになるみたいだねこれ。」
「てことは120とかのやつだったら最初から相当強いのか?」
「いや。どっかで上限が決まってると思う。ゲームバランスが崩れそうだし。」
「なるほどぉ。ハルートお前はどう?」
「あははは...レベル11ですね。しかも吟遊詩人なので...全てのステータスが高くありません。ご迷惑をおかけしたらすみません。」
「いいんだよ!こんなの!遊びなんだから気楽にやろーぜ!マカフィは?」
「僕?僕は15だよ!信仰魔法は中級程度は使えるみたい!」
「お!俺と同じだな。よし!次は地図だ地図!」
そうして現在地と現在の目標地点を確認しまずはそこを目指すことにした。
ちなみに目標地点はマップを表示させておけば分かりやすく光っている。
地球の現代のゲームみたいだ。
聞けば昔はこんなに親切設計ではなかったとか。
...つーか俺ファンタジー世界に転生してファンタジーゲームやってるってこと?
頭わりんか?ってなるな。
「道具袋は何が入ってる?」
「あ、そんなのもあるのね。」
マカフィに声をかけられ足元を見ると腰のところに袋がぶら下がってた。
ぶら下がっている袋って言っても変な意味じゃないんだからね!
なにかの魔物の皮できたそれは結構丈夫そうで魔法カバンみたいに無限にものが入るようになっている。
おーイベントリ的なやつ?
手をかざすとリストで入っているものが表示された。
...ド〇クエかよ。
ちなみに俺の持ち物はポーション×1 魔導書×1 エーテル ×2 だった。
この魔導書はどうも読むものではなく装備するためのものらしい。
こんな感じでそれぞれにあった武器ひとつと道具がいくつかみたいな感じでそれぞれの袋に入っているようだった。
純粋な疑問なんだけど魔法を使う時以外は敵をこの本で叩くという認識であってる?
大丈夫そ?弱くない?角とかで叩けばいい?
「マカフィの武器はアンケットなのね。」
アンケットとはロザリオみたいなもんでグレイス教徒が祈りを捧ぐときに使うもの。
外の世界の武器がモデルになってるので宗教関係なくアンケットが出てくるってわけね。
「これならベルか錫杖のほうがいいなぁ。アンケットって初心者向けだし。」
「ほーん。そういうもんなんか。」
「あー!俺は槍だ!扱いずれーぞ!」
シャルは自分の武器を見て大きく騒ぐ。
「スキルもそれに準じたものになってるんじゃね?」
「そうだけどよぉ!剣とリーチがちがうだろ?俺向きじゃねぇよ。」
「さいですか...。」
「私はハープでした!しかしかなり魔力の弱い初心者向けですね。」
「適性のある普段と違う職業を選んでもいいようになってるってことなのかね。」
「そのようですね。」
俺たちは不満で若干ムー〇ンみたいな顔になりながらひとまず目的地を目指した。
歩き始めてしばらくして草むらが揺れ魔物が飛び出してきた。
「フシャー!」
イタチの姿をしたような細長い魔物だ。
目は四つある。ん〜きも!
人数に合わせてなのか四体いる。
「よし!多分チュートリアルの魔物だろうからそれぞれ一体ずつやってみるか!ハルートはもし無理そうなら俺たちに頼れよ!」
シャルの掛け声で戦闘が開始される。
まずは俺は魔導書を開きそこに魔力を流し込み増幅させる。
すると本から光の玉がひゅんと飛び出た。
どうやらこれが通常攻撃になるらしい。
「おー!すげ!」
改めて今度は火の基礎呪文を唱え本を通して魔物を狙う。
魔物は交わしてきたが威力は少し上がっているようで魔物の腹の横を掠めた。
「今度は当てるぞ!ヴォルカ!」
今度は炎の中級魔術をほんを通して唱える。
素で唱えるよりやはり威力は上がるようでスピードが付いた火の魔法は見事魔物に直撃し魔物は魔素に帰った。
気がつくとシャルも戦闘を終えていた。
マカフィは信仰魔法の攻撃型を使って魔物を仕留めているところだった。
ハルートは相手を弱らせる詩を唄い、ハープの先の尖った部分でトドメを指していた。
本では叩かないんにハープでは刺すんかい!
「よし!いい感じだな!まぁこの先はいつも通り役割を決めてそれぞれで動きながら戦闘していこう!」
「だね!さっ!進もっか!」
シャルはマカフィと前を歩き俺とハルートは後ろを歩いた。
ドラ〇エみたいに一列にはならず二列ずつの隊列だ。
まだこの辺の敵は弱そうだけど、俺たちは無意識的にそれぞれ強力な攻撃ができる者とサポートが得意なものという感じで別れているようだ。
ちなみに装備を確認したけど俺の装備は、
旅人の装いだって!
上下セットでここに来る前に着ていた服と一緒。
シャルは鎧、マカフィはローブ、ハルートはいつも通り複雑な形の吟遊詩人らしい服。
ちなみに適正に合わないものを着ていると勝手にこの世界での初期装備に変えられるらしい。
俺たちはたまたま着てる服が適正の服だったわけね。
俺に至っては装備を買う金がないのでこの本の中の世界でも外の世界でも元通り旅人の装いってやつなんですけどね。
せめてこの本の中では好きに金を使えるのだから装備くらい買おうと心の中で決意した。
冷静に考えてみて欲しい...パーティーのリーダーが浮浪者のような布1枚の服なのだ。
どう考えても....みすぼらしい。
泣けてくるぜ。
「ダイゴ!村みたいなのが見える!あれが最初の目的地だぜ!多分。」
シャルに言われてマップを確認すると確かに目的地のマークはぼんやり見えるあかりの集合体の方を指していた。
「おぉ!あそこか!まずは宿屋で体を休ませる的な流れなのかね?」
「あぁ!有り得るな!ダイゴ、お前ブッキングアドベンチャーやったことあるの?なんかやけに順応早くないか?」
「いやさ、元の世界にも似たようなゲームってのがあったんだよ。俺は父さんが買ってきたやつをたまにやらせてもらうくらいだったけど。」
「おぉ!そうなんか!ダイゴが居た世界にも似たようなもんがあんだな!」
シャルはそういうと再び前を向いて歩き始めた。
多くは聞いてこないが承認をしてくれてるのがわかる答えだと思う。
「おぉ!ここか!?」
先頭を歩くシャルは歓喜の声を上げた。
「星と月の村ルナって書いてあるな。」
手をかざすとコマンド→調べるを実行したかのように目の前に村の名前が表示された。
早速中に入ると辺りのBGMが虫の音から柔らかな音楽に変わった。
うーわ!めっちゃドラ〇エ。
す〇やま先生ライクな暖かなBGMは夜の村にピッタリな感じだった。
俺以外の三人はどスルーしてるけどこういうもんな訳!?
「ようこそ、ここは星と月の村ルナ。」
「こんばんわ、泊まるところを探してるんだ。」
シャルは話しかけてきた村人にそう返す。
「それなら村長に声をかけて宿屋に泊まるといい。」
「ありがとう。」
「良い夜を〜。」
村人はそう言い残すと去って行った。
「結構ちゃんと会話できるんだな?」
俺が嬉しそうにそういうとシャルは不思議な顔をした。
「何言ってんだ??当たり前だろ。」
だってだって!NPCのキャラだろ!?同じことを繰り返すのが定石じゃん!
と返したいがこの世界の常識はこういうものなのだと納得することにした。
「ちなみに村に入った瞬間宿を確保せよというミッションが出たから俺はそう聞いただけさ。あんまり変なこと言って矛盾を産んだらゲームオーバーになっちまうんだ。」
「あぁ、そうなのか。なるほどな。」
スクエ〇エニ〇クスさん今すぐこの世界のゲームを真似ましょう大ヒット間違いなし!
などと心の中でふざけながら村の中を散策し村長の家らしき場所へとやっときた。
手早く村長に挨拶をして宿屋でチェックインを済ませるとベッドの上に横になった。
すると...一瞬で疲れや傷や魔力が回復し朝になった。
これ!!これこれ!テーレーレーレテッテッテーだ!
BGMこそ無かったもののお決まりのアレだ。
「ハルート!すげぇなこれ。」
「そうなんですよ。どういう仕組みなんですかね?」
「不思議なことに眠気まで飛ぶよな?これってモード切替で眠るモードにできたりすんの?」
「できるぞ!標準はこの設定だ。サクサク勧められて楽しくないか?」
「あぁ!まちがいない。元の世界のゲームを思い出すよ。」
「おぉ!そうかそうか!あ、ダイゴこの世界では食べるイベントが起これば腹が減ったりするぞ!多分このアドベンチャー内にも説明があったしあると思う。」
「おぉ!そりゃ楽しみだ。」
そんなこんな俺たちは次々にメニューに表示されるプチクエストをこなし、村長の元へ行くと昨日はよく眠れたか聞かれ洞窟の魔物を倒してくれとお決まりのクエストが発生。
それらを難なくこなし戻るとパーティーが開かれた。
あぁこれね、お約束お約束。
次の日に惜しまれながら村を後にして地図に表示された次の目的地へと向かった。
ちなみに村で食事を出されたので食べたのだが...お世辞にも美味しいとは言えないこれがまた聞く話によると設定上そういうものらしく貧しい村が一生懸命に施してくれたというものらしい。
星と月の村と言うだけあって、洞窟では月の魔力に当てられた巨大な熊型のモンスターが星の魔術を使うお供ともに襲ってくるという感じだった。
それらを窘めたところ村から儀式が無くなったことにより怒り狂い我を忘れたとの事。
その為その事実を村に伝えこれからは伝統を大事にしますみたいな流れになった。
ハルートは生い立ちのせいで苦い顔をしていたがほか二人は解決したことが嬉しそうだった。
二つ目の村は雲の海と呼ばれる海のような雲のような場所の畔にある漁村でこれまた祟り的な内容の話。
漁師が次々に魔物に襲われ不作だと言う。
ちなみに知らない間に前の村や今の村で選択肢が発生していたらしくルートが既に分岐しているらしい。
村近辺の魔物が突然に強くなったのでどうしてなのか?とシャルに聞いたら本当は洞窟の中の魔物は負けイベ要素なんじゃないか?
とのことで勝ってしまった為、話がズレらしい。
地図上ではこの漁村は一つ目の村からここまではそう遠くないが恐らく二、三個の町や村を経由して再び洞窟の魔物を倒す流れでそれが終わってから来ることになるという村のようだ。
「ちゅーことでアンタら旅の人にはわりんだけどもろくにもてなしも出来ねんだよ。すまんのぉ。」
早速挨拶に行った村長が眉をひそめて俺たちにそう言った。
村長の家を後にし原因を探すために船を借りて雲の海に出た。
そこでのザコ魔物も結構強くて倒すとレベルがガンガン上がって行った。
気がつけば現実世界のレベルにだいぶ近づき戦いやすくなっていた。
白いフワフワの海の上にあるポツンと洞窟があるのを見つけた。マップの行先はそこをはしていてるので入ってみることにした。
洞窟の中は瘴気が漂っていた。
「ルフレ!」
衣の魔法で瘴気のダメージを防ぎ洞窟の奥へと進む。
最深部では怒りで我を忘れた巨大な魚の魔物が暴れていた。
強そうに見えたが....俺とシャルがあっという間に倒してしまい手応えがなかった。
大人しくなった魔物は魔王の手先が近くにいて安心して暮らせないと俺たちに嘆いた。
次の行先も決まりサクサクと魔王の手先を倒しヌシ的な魔物の元へ戻るとお礼を言われ漁師を襲わないということを約束してくれた。
そして村に戻り報告するとお礼にと船を貰った。
ここからは船の移動になるようだ。
正直...ここからはさらにテンポも上がりだいぶ内容が薄くなった。
船で世界をめぐり困った人を助けその中にちょこちょこ魔王的なものの存在がチラつきその小さな伏線を集め宇宙のような場所にある魔王の住処に赴きパッとしない手下共を倒し最深部で魔王を倒す。
すると世界が暗転し、俺たちは真っ暗な場所に飛ばされどこからともなく出てきたでかいスクリーンのようなものから、
エンディングのようなロールが流れ始め製作者の名前が映像として流れる中、途中途中いつの間にか撮られていた俺たちの写真が流れた。
この演出はなかなかいいなと思った。
ちなみに途中省略された村の映像も流れてどこだここ?とみんなで笑った。
流れていたエンディングの音楽も止まり再び暗転すると今度は強い白い光に包まれいつの間にか船のかなに戻っていた。
「いやぁ〜ちょっと簡単すぎたな。」
「上級者向けとか書いてあったから身構えてたのにな。」
「でも、エンディングには少し感動したよぉ。」
「美しい音楽と美しい景色の振り返りがあったので感情が入りやすかったですね。」
そんな感じでみんなで感想を言い合いながらルームサービスを頼みカンパイした。
ちなみに現実世界の時間はあまり進んでおらず本に潜ってから2時間程しか経過していなかった。
目安が4時間だったから半分くらいの時間でクリアしてしまったようだ。
本の中では半年くらいを過ごしたような気がするので脳がバグりそう。
「ふぁ〜。なんか体は全然疲れてないのに心だけ疲れた感じがするなぁ。」
俺が欠伸をしながらそういうとマカフィは笑いながら俺を見た。
「ふふっそうだよね。ブッキンアドベンチャーの中では半年くらい過ごしたはずなのに二時間しか経ってないもんね。あ、僕お風呂入ってきてもいい?誰か先に入る人いるかな??」
「あ、俺も一緒に入る。」
「おっけー!じゃあシャル悪いんだけど僕服とかタオル用意するからお湯ためてきて貰える?」
「おう!」
女子二人は風呂に入るのか。僕も混ぜてください洗ってください隅々まで
と言いたいところを我慢し、仕方が無いのでハルートとツマミの感想を言い合いながらブッキンアドベンチャーのストーリーの矛盾をつついたり高等魔術の論文の脆弱性などを語ったりした。
気がつくと夜はだいぶ更けていた。
窓の外に見えるのは黒い海とそれを照らす地球と似たような月。
この世界は結構地球に似てるところがある...。
のだが微妙に概念や物理法則なんかが違ったりエネルギー源なんかが異なってたりする。
そりゃ魔法の世界だからな、わかるんだけど時々混乱することがある。
例えば今日みたいに満月の日潮の満ち干きに影響があるのはもちろんだがそれの原因が引力とかそういうものではなくマナそのもの流れが変わるというものだったりそれによって未熟な魔法使いは魔力が暴走しやすくなったりするとかしないとか。
地球の常識で考えたら随分ファンタジーな話なのだが俺の今生きてる現実はこれなのだからそうだと思って生きるしかない。
「ダイゴ。すみません私は先に休みますね。」
ハルートは歯を磨き終わるとベッドに横になり俺にそう言った。
「あぁ、おやすみ。」
なんだか....誰かのいる暮らしってのはいいもんだな。
実家を出てからというもの疲れて帰ってきてるのに誰かが居るなんて嫌だし想像もしたくなかったが...今はこの仲間たちとの暮らしが悪くないものに思える。
ホテルのレストラン時代の奴らだったら今でも反吐が出るほど嫌だけど。
こいつらはいい奴らだし。
風呂に入るためマカフィー達のベッドを横切ると丸くなって眠るマカフィーを撫でながらシャルがうつらうつらしている。
なんて人間らしいのだろうか。
獣人になったからと言ってもやっぱり何も変わらない。
常識が通じないことには未だに戸惑うけどこいつらを見ていると人類はどの世界でも人類なのだと思わされる。
俺は愛おしさを感じながら、灯りを消してやった。
月とぼんやりとした他の部屋や船の灯りだけが湯船を照らしていた。
湯船に漬かりながら俺は人差し指から炎の魔法を出してなそれを眺めていた。
ゆらゆらとロウソクの灯火のようにゆらめくそれはなんだか心を落ち着かせてくれた。
これってチルってやつ!?
よくアパートのきったねーユニットバスでもキャンプファイヤーの動画とか見ながら風呂に入ったなぁ。
体毛は水を吸って重くなり顔の毛からは雫が沢山滴り落ちる。
湯船を眺めると換毛期なのかめちゃくちゃ俺の毛が浮いてた。
ちなみにマカフィーとシャルの毛も浮いてるのでかなり毛風呂だ。
このふわふわの体はこんな風に毛が生え変わるのか。
この世界に来てからあまり深く考えずに自分の体を受け入れていたが改めて見るとちゃんと動物的な特徴があるなぁ。
おれってば可愛い子犬ちゃんなんだね。
年上の美人お姉さんの飼い主募集中です。
「はぁ...。」
なんだか突如虚しくなったので、
シャワーを浴び風の魔法で体を乾かしてタオルで拭きあげると腰にタオルを巻き再びマカフィーたちの前を横切り自分たちの部屋に戻るとベッドにそのまま横たわった。
このゆっくりとした時間がたまらなく愛おしい。
ロイズに到着したら少しゆっくりしてからグレイスに行くのもありなのかも。
もちろんマカフィーとシャルが大丈夫ならだけど。
まぁどうなるか分からないし、
あと1週間ほどで恐らく到着するみたいだしこの船の暮らしをのんびりと堪能してこう。
俺は段々とやってくる眠気に身を任せそのまま眠りについた。
ちなみに俺はこの後風邪を引き、しかもそれを強がってこじらせたため、ロイズに行くまで魔法が上手く使えずハルートの歌とマカフィの信仰魔法で看病をされ気がつくと停泊する日になっていた。
トホホ...。
ともわれ新大陸に着いたわけで待ちに待ったレストランにも行ける。
身支度を整え、合計1ヶ月以上世話になった船に別れを告げて陸の上に踏み出した。
二週間以上ぶりの陸地はやはりおかしな感覚。
雑居房の時より船は揺れなかったもののやはり大地とは感覚が違う。
「ロイズについたなぁ。まずはグレイス行きの船のチケット買うかぁ。」
シャルは伸びをしながら俺の方を向いた。
「あぁ、それなんだけどシャルとマカフィーさえ良かったら少しの間だけここに滞在しないか?もちろん急いだ方がいいのはわかってる。しかし金も続かなくなりそうだしなによりグレイスは極寒の地だろ?装備品を買う金を集めたいんだ。」
「あぁ。まぁ多少なら大丈夫じゃね?まぁどっちにしても船のチケットを買って日程を決めてからの方が動きやすいだろ?まずは乗船センターへ行こうぜ。」
「あぁ、そうだな。」
そんなこんなで俺達は船を降りたあと乗船センターを歩いてめざした。
途中物乞いやら商人が沢山寄ってきて色んなものを売りつけようとしてきた。
俺らはそれを物の見事に交わしながら目的地へと急いだ。
しかし、
「おう!そこのあんちゃん達。長旅おつかれさんやで。」
突然の関西弁に俺は思わず振り向いてしまった。
そこには白く美しい毛並みのライオンがスーツ姿で立っていた。
筋骨隆々なのが服の上からでも見て取れる。冒険者か?
「滞在場所に困ったらマーシェット商会にぜひ...宿舎もありますしなによりマルシェや商店街へも近いです。レストラン街へのご案内もできますよ。」
俺たちが不思議そうな顔をしていると、
その怪しげな男の横にいるスタイル抜群のヤマネコかオオカミかよく分からないねーちゃんが笑顔でそう言った。
「うちは安い、親切、素敵な商品をモットーにやらせてもろてますんでいい装備品なんかも紹介できますさかい良かったら贔屓にしてなぁ。」
男がそう笑うとマカフィーは男を一瞬睨みつけた。
しかしすぐにハッとした様子になる。
「マーシェット商会ロージニア大陸代表のアルス!?」
驚いた様子でマカフィーはそう言った。
「お、俺の事知っとるん?嬉しいなぁこないかわい子ちゃんに俺知られとるなんて罪な男やわぁ。」
「知ってるも何も...色んな本出したりていうか商会の中で最も若い頭領だって雑誌やサイトなんかでも取り上げられてて...ていうか僕あなたのグラビア写真持ってます。」
「いやぁ〜。買ってくれたん!?うれしな〜。ま、若気の至りやから恥ずかしいねんけど、うはは。」
「ちょ!アルスさん!なんですかグラビアって。」
横にいた美女は慌ててアルスと呼ばれる男の方を見た。
「あははは...アベちゃんはしらんのか。まぁ進められるがまま出たさかい...乗り気やなかってんで?」
「うそだ!僕写真撮られてるあなたとても楽しそうだと思いました。シャルだって一緒に見ててそう思ったよね?」
「ん?なんだっけ?それ。」
「んもぉ!シャル!」
「あはははは君らおもろいなぁ。申し遅れて偉いすんません。俺、この大陸のマーシェット商会代表アルスいいます。こっちは俺の女のアベル言いますねん。」
アルスはアベルの細い腰を抱き寄せながらそう言った。
その時、俺はアベルとアルスが小声で小競り合ったのを見逃さなかった。
「ちょ...いつからぼ...私がアルスさんの女になんてなったんですかぁ。」
「今や今。いいから合わしときぃ。夫婦っていう設定やったろ?忘れたんけ。」
アベルは顔を赤らめながら会釈をした。
「ところで君らどこへ向かっとるん?」
「グレイスランドに行きたくて船のチケットを買いに行こうとしてたんだ。」
「あぁ!それなら俺が瞬間移動で送ったるで船より早いやろ?それにグレイスには少し用事があるさかい行こうと思ててん。」
「まじ!フープル使えんの!?」
「フープルとはちゃうけど俺は東洋の気術や祈祷術が使えんねん。似たようなもんやけどな。」
「まじかぁ!助かる!」
「ただ条件があるで。俺たちの依頼手伝ってや。見たところ君ら結構強いやろ?
もちろん報酬も出すで。」
「いい!手伝う!何すればいいんだ?」
「とあるダンジョンに行きたいんやけどこの子戦えへんから二人では危険やねん。」
少々怪しいが宿を探す手間や依頼を決める手間も省けて一石二鳥かと思った。
「そのくらいお易い御用だ。いいだろ?みんな。」
俺が皆の方をむくと全員が頷いてくれた。
「きまりやな!まずはうちの商会に来てもらうで。飛ぶから俺の周りに集まってな。」
俺達はアルスに言われるがままアルスの周りへと集まった。
それから程なくして術の準備が出来たようで赤い光に包まれて港町は一瞬で見えなくなった。




