第10話 「やっぱり...は黒いのかしら?」
前回結構な矛盾があったので訂正に訂正を重ね、今回はそれも兼ねて確認しまくってたので恐ろしく時間がかかってしまいました。
予定の五日より少し遅れ、約1週間くらいに及んで逃げられない辛い雑居房生活を乗り越えた俺たちはやっとエズルドーラに到着した。
陸地に立つとまだ浮遊感がありこんなに大きな客船でも影響があるのかと思った。
「うひ〜なんかまだ足がふわふわするぜ!」
シャルも久しぶりの陸地にはしゃいでいる。
「それなぁ!ここの停泊の間だけでも野宿でもいいからあの雑居房に戻りたくないなぁ。」
俺も思わず本音が漏れるがハルートは俺のふにゃっとなった心を正してくれた。
「...ん〜そうですねぇ。逆にここで耐えて依頼をこなし予定通り船の部屋のランクをあげるのはどうでしょう?」
「....ん〜そうね。そうしましょうかねぇ。」
「レストランに行く分でお金はとってあるんでしょ?それならここでは依頼に集中してやっぱ船のランクを上げるために稼ご!」
マカフィも優しいのにほんと芯があるよなぁ。俺ってばレストランにいないとこんなにふにゃふにゃさんだったのね。
俺たちは、エズルドーラの街を見て回りながらギルドを目指した。
街の中は白い石造りで漆喰とは違う均一に塗られた美しい四角い建物が立ち並んでいる。
民家のあるエリアは今いる所から少し離れているがマルシェや立ち並ぶ店の人たちが住むようなコンドミニアム的なところがあったりとなんだかとてもリゾートな雰囲気。
「ん〜明らかにリゾートリゾートしてるな。なぁ、ハルート!どんな依頼があるんだろう?余裕があればここでもレストランは絶対に行きたいな。」
「...そうですねぇ。近場の依頼となるとおそらくレストランのことを加味すると受けられるものは限られるかもしれませんね。」
「だよなぁ。つーかギルド遠くね?」
歩けど歩けどギルドには着きません。
アクアベリーもだけどなんで街がこんなにでかいの?
「あははここは王都ですから。アクアベリーよりも広いですよ。ほら!」
とハルートは高台を指さす。
よぉく目をこらすと遠くの方にうっすらお城が...そして段を連なす用に何段にも街が入り組んで広がっている。
あーん。嫌かも、嫌かも嫌かも!
つーか!船だよ!俺たちが乗ってきたイカれた値段の船!
何度も言うけど、日本円で言うと四人で1600万円の...お部屋。
どうなってんねん!あの部屋で1600万円!?
日本なら会社始められますよ!?
どうなってんねん!
「なぁ...もしいい依頼がなくて金ないまま船に戻ったら心折れそう。ハルート俺のフープルで四人でタッカンブルに行こう。ここの魔力配置はもう何となくわかったしいちいち戻ってくればいいと思う。」
「ダイゴ...非常に申し上げにくいのですが。」
...ほよ?
「時差があるためにそれは難しそうです。」
ほよほよ?タッカンブルなら!一晩11Jなんだよ!?
もういいよ!朝でも!泊めてもらおうよぉ。
「...まじか。」
「ええ、あそこはシュリ大陸の中でも真ん中に当たるので...ここからだと 約9時間ほどの時差のためなかなかに...難しいかと。」
「はい...僕頑張ります。温泉は我慢して10Jかかるきったねー船の大浴場で頑張ります。」
「あははは...ダイゴ、ロイズ方面に行ってからでも遅くありませんよ。ロイズにも温泉地はありますし。一度休憩してからグレイスランドに行ってもいいですしそこでタッカンブルへ行っても良いのですから。」
「へーい...。」
シャルはマカフィと楽しそうに話してるので邪魔したら悪い気がした。
ハルートは建物を見てはうんうんと頷き歴史やらそういったものを少しづつ喋っていた。
俺に教えると言うよりはオタクが独り言を言うのに近い感じ。
俺...取り残されちゃってますか?
俺もキュルルン観光モードになっちゃおっか!
「キュルルン!」
俺がひとりでポーズを決めていたらハルートが後ろで吹き出した。
マカフィもシャルと笑ってる。
そうそう笑えばいいさ...俺はピエロ。
いつもみんなの心の真ん中さ。
...やっとギルドに着く頃にはなんか夕方になってましたハイ。
「お疲れ様です。エズルギルド受付ですか?冒険者様ですか?証明書をお願いします。」
こっちの受付はシャム猫のお兄さん。
なぁんだお姉さんがよかったなぁ。
...やっぱりおきんたまは黒いのかしら。
俺は、疲れと余分な考えで上の空になりながらぼーっと冒険者証明書を差し出した。
ギルドの受付は読み取り機に全員分のそれらを通してエズルでの依頼を受けられるようにしてくれた。
「それでは依頼が決まりましたら再びこちらへお願いします。」
証明書を受け取ると俺たちは早速ボードの方へと足を運んだ。
「SSSランクの依頼...場所的にも長期のものばかりだな。」
シャルは髪を揺らしながら目を細める。
「SSの方もわりとここから距離がある場所が多いね!それならSSSでなるべく短いやつを受けたらいいかも!」
俺はとりあえずAランクのところをハルートはSランクのところをと役割を分けて探してみた。
俺たちはじっくり依頼を吟味し良さそうなものを相談しあった。
「あったぞ!SSSランクで良さそうなの!」
シャルは依頼書を手に持ってそう言った。
「おぉ!どんなの!」
「エチュートアリゲータードラゴンの討伐らしい!ここから近い場所に出たらしいぞ。どうも何人も死んでるみたいで、結構やばそうだけどどうする?」
「...行くしかねぇっしょ!今夜中に出発して最短で戻りたい。」
「ハルートは大丈夫?僕らだけで行ってこようか?」
「...。いえ私もお供します。皆さんのカバン持ちくらいにはなれますしそれに私も少し魔力が上がってきています。歌を長く歌えるようになってきましたから皆さんのサポートはお任せ下さい。」
「おっけー!僕もカバーできるように頑張るから前衛はダイゴやシャルに任せて僕たちで援護しようね!」
「あぁとても心強いです。」
...仲間になったんだな。
俺は二人の何気ない会話を聞いてそう思った。
元はと言えば俺が金を集めたいと言って依頼を受けることになったのにありがてぇな。
「よぉし!じゃあ受付に行ってくるぞ!」
シャルがそのまま依頼の受付を済ませるとこちらへ戻ってきた。
「よし!今度は買い出しだ!ダイゴ!装備品買いてぇな!フープルでマルシェまで頼むぜ!」
「あぁ!たすかるぅ!俺にもしもの事があった時や...魔力切れた時のために転移札も買いたいな。エーテルではどうにもならない時もあるかもしれねぇだろ?」
「...考えたくはないですが...備えは必要ですね。それは私が買いますよ。」
「じゃあ僕はベルを買うよ。サポートに回るなら装備はベルの方がいいと思うから。」
みんなすごいなぁ...。え?俺?
「お、俺はみんなの夕飯買ってくるよ!屋台があったから!」
「おう!ダイゴ!あんまり高かったら無理すんなよ!」
泣けてくる〜!俺すげー貧乏じゃん!
「サンキュ...じゃ俺に掴まってくれ!」
フープルでマルシェまで戻ってきた俺達はそれぞれ散り散りになって買い物を済ませた。
マルシェはなんだか昔父さんと旅行しに行ったシチリア的な雰囲気と前世で動画で見たタイのプーケットやパタヤを合わせたような不思議な雰囲気。
どこかドバイやシンガポール的な感じも醸し出していて全くもって不思議な感じ。
マルシェの入口の方に出ている屋台は少し衛生観念が悪そうだったので真ん中辺りにあるケバブのような食べ物が売っている店にやってきた。
クルクルと回し焼きされる肉塊...。
一件普通のケバブ屋に見えるが、日本のように整った調理場でさっきの現地感溢れる屋台とは少し様子が違っていた。
店の前に行くと陽気な感じのアロハシャツに似た服を着た黒い豹の獣人のお兄さんの店員が俺に話しかけてきた。
「いらっしゃい!観光の人!?
いいねぇマルシェは夜市もやってるぜ!」
「おぉ!そうなんですか!?夜と昼だとやってる店が違うんですか?」
「ん〜そうだね!わりと通しでやってるところもあるんだけどさ、食材や売り物を変えるのがこの辺では普通だよ。お兄さん迷わずにこの店に向かってきたように見えるけどもしかして料理人かい!?」
「...なんで分かるんだ!?」
「あっはっはっ!そりゃ観光客なら入口にあるこの辺の名物を買うんだよ!でもアンタは迷わずうちの店にきたろ?
まずアンタはこの辺の名物にも詳しく無さそうだ。
うちの店で売ってるのはこの辺の名物じゃないロージニア方面の名物なんだよ。向こうの店は...衛生的にどうかな?と思ってこっちの屋台まで来たんだろ?」
...この人すげぇぞ。
「あぁ...その通り、なんでそんなことまで分かる?」
「あんたの目線は調理器具や食材に行ってたよ。そんなの真剣に料理に向き合ってる人間にはすぐに分かるさ。」
「あははは...すげえや。アンタはこの辺で店やって長いの?」
「いんや!俺はここら出身なんだがロージニア大陸に料理修行に行ってたんだ!それでこっちでも店をやってみたくなったんだけど...何せ物価がべらぼうに高ぇ!どうにもならねぇから親が持ってるここのスペースを使わせてもらって商売してんだよ。」
「立派だぜ...俺も自分の店を開きたいのに金を集めるため今は冒険者さ...。」
「あっはっはっ!人生色々だよな!いつかあんたが店を開いたらお邪魔させてくれや。
って...いけねぇ!商売商売。
で?何を何個買っていく?」
「あっそうだったな!すまないけどその肉のパンを四つくれないか?」
「お!まいどあり!これの名前な!グルーブって言うんだぜ!
アルフォンバードっていうでっけぇ鳥の魔物の肉を使う料理さ!
それを半分に切り中にオリーブオイルを塗ってレタスやキャベツ玉ねぎトマトなんかをたっぷり詰めてその上にたっくさんの肉を載せるんだ!辛いマヨは平気か?」
やっぱりケバブに似てるな。
「あぁ!平気さ。」
「向こうではこの辛いマヨをカラシマヨって言うんだぜ!」
おお、親近感湧くなぁ。からしマヨ。
「うまそう!楽しみだぜ。」
フレンドリーなあんちゃんは飛沫防止のマスクを付けると、調理をしながら俺にそれ以上質問するでもなくこの辺のことなんかを教えてくれた。
ある程度神からの入れ知恵で知っていることもあったが風土のことなどは知らない知識もあり助かった。
代金はとても安いとは言えない料金だったが感銘した俺はチップまで渡し、グルーブの入った紙袋を持ち解散した広場の方へと戻った。
「おぉ!ダイゴ!」
シャルが一番初めに戻っていた。
「あらかたエーテルやポーション最悪絶命した時の回復薬なんかも買ったぜ!
結構いい値段したけど今回の依頼が成功すればそんなの屁でもねぇからよ!頑張ろうな!」
「あぁ!」
そんなことを話しているとマカフィとハルートも戻ってきた。
俺たちはひとまずグルーブが冷めないうちに食べてみることにして広場にあったベンチに腰掛けた。
袋から取り出して一つずつみんなに手渡した。
「おぉ!グルーブじゃん!こんなとこにもあるんだ!びっくり。」
マカフィは嬉しそうだ。
好物かな?
「ダイゴ!入口の屋台に名物のヤムクルトンがあったのにそちらにはしなかったのですか?」
「あぁ...ちょっと衛生観念が気になってな。」
「流石ですね。」
「なぁ!もう食べていいか?」
俺たちが喋っていたらシャルは待ちきれなくなったのかヨダレを垂らしている。
君本当に女の子ですか?
「あぁごめん、食べようか。」
包み紙を丁寧に剥がすと暖かい煙とスパイシーな鶏肉の香りがほわっと広がった。
...うまそ。
俺はたまらず一口目を齧り付く。
ピタパンのもっちりした食感とオリーブの香りをふわりと広がるとすぐにシャキシャキとした野菜のみずみずしい食感と新鮮な青臭さが脳天を突き抜ける。
かと思えば、トマトの酸味と鶏肉のスパイシーかつ香ばしい醤油ベースのような味わいとからしマヨが上手い具合にマッチした味わいが口いっぱいに広がる。
まるでビックバンが口の中で起こっているように楽しい協奏曲が広がり主旋律の鶏肉を殺さないのに美しく主張する素材それぞれの旨みが口の中で渦巻いている。
トレビアーンって感じ。
「うま!なにこれうまっっっ!」
「屋台のレベルじゃありませんね。これ。」
「さすがダイゴだよ!なんで美味しいものがわかるのぉ。おいしいー!」
みんなそれぞれに喜んでいるところを見て俺はつくづく嬉しくなった。
あの人が積み上げてきた歴史や努力や時間を俺が選びみんなに提供した。
それがみんなに喜ばれる。
シェフを目指す人間にとってこれはけっこう嬉しい。
ここ最近で一番シェフに戻れた気がした。
ありがとな!グルーブ名人のあんちゃん!
食事を終えた俺達は、港にいちばん近い出口から向かうのがいちばん近いということで今度は船のあるエリアまでフープルした。
目的地はサルルーの街の跡地らしい。
ここから半日くらい歩いたところにある滅んでしまった街の跡地だ。
「エチュートアリゲータードラゴンて聞いたことないけどどんな魔物?」
神に与えられた知識の中にはない魔物だったのでハルートに聞いてみた。
「...知りたいですか?」
....え?その反応ってまさか。
「....いい。やっぱりやめてお...「蜘蛛とサソリの体をしたドラゴンだよ。」
俺がやめておくといいかけたところマカフィが答えた。
「...ボクカエル。」
俺が引き返そうとするとシャルが俺の肩を掴んだ。
「ダイゴォ?どこへいくんだよぉ。」
「ムシサンコワイヨ...。」
「ぷっ...。」
俺の言葉に吹き出すハルートとマカフィ。
シャルは俺の言葉が聞こえていないかのように俺を引っ張って街の外まで連れ出した。
「大丈夫大丈夫!あいつ夜型の魔物だから着く頃に攻めれば余裕だからさ!たぶん。」
そういう問題では無いんです。
僕は虫が嫌なんです。しかも何?サソリ?
蜘蛛?キモいって!
蜘蛛ならもうホースデビルとも戦ったから!被ってるからァ!
「うぅ。」
諦めてしょんぼりしながら少し冷える砂漠の道を歩いていたらハルートは景気づけの歌を歌ってくれた。
どうやら即死を回避するような効果があるらしい。
夜の砂漠は厄介な状態異常を引き起こす魔物が沢山いるのでそういうものから守る加護らしい。
街から近いエリアはやはり冒険者が多いからなのか魔物は少なかったが確実になにかからの視線は感じていた。
船でほぼふて寝をして過ごしてきたので全く眠気は来ず現場まで到着することができた。
夜は更け始めていて空が白み始めていた。
「よし...。いくぜ!」
シャルの合図に続き廃墟の街の入口から静かに中へと入った。
瓦礫だけの街だった場所は辛うじてどこに建物があったのかわかる程度で正直文明があった軌跡すらうっすらと消えかけ、歴史という長い時間の中で風化しまうようなそんな場所のように感じた。
朝日に照らされる瓦礫はなんだかとても寂しく見えた。
静かだ。本当に魔物がいるのだろうか?
....あーんいましたねんねしてます。
奥に行くと外壁だけが残った建物がありやつはその日陰になる場所で眠りについていた。
ドラゴン...という名前だけにもう少し竜っぽいのを期待していたが...これはなんて言うんですか...蜘蛛の足と蜘蛛の複数ある目とワニの爪と薄気味の悪い虫ならではの透明な羽を兼ね備えた...そんな不気味な姿です。
帰りたい!
顔がひきつる俺に、
「大丈夫です...朝日が更に昇る頃には、より深く眠りに着きます。それまで音を立てずデバフやバフの重ねがけ魔法陣型の魔法の設置などを冷静に済ませて推しましょう。」
ハルートは囁き声でそう言った。
魔法を乗せて発したからなのかその声は魔物に届いていないようだった。
俺はありったけのバフの魔法を自分含め全員にデバフを敵にかけた。
シャルやマカフィも無詠唱で祈りのみで信仰魔法をつかい俺たちに加護やバフを添付した。
ハルートはその間にそこら中に魔法陣を描き俺が魔力を込めればいいだけにしてくれた。
道具の用意も同時に行い俺たちはそのときを待った。
やがて日は登り段々と蒸し暑いどころか今にも焦げてしまいそうな暑さになってきた。
「行くぞ!」
再びシャルの掛け声で俺たちは道中話していた作戦通りの動きを取る。
「ルクシス流闘気術...身体能力大幅向上...。」
シャルはさらに自分に最後のバフをかける。
シャルは獣人が身体能力が普通ではない。
普通だったら耐えられないようなバフのかけ方をしても耐えられる。
彼女にはありったけの身体能力向上バフ...具体的には腕力、瞬発力、耐久力などをあげるものをかけてある。
にもかかわらずさらに自分の加護を強化するのと同時に許容できるのか分からないほどのバフを自分にかける。
これは後で反動が来るみたいだけどこいつは回復力も普通じゃない。
普通なら1ヶ月くらいは体にダメージが行くらしい。
それを耐える体幹や体力や筋力などを持ち合わせてるのだ。
「主よ祈りを聞きたもう!シャルロッテに神なる光の力を!」
マカフィもベルを鳴らしさらにシャルに加護と信仰魔法を強化する祈りを捧げた。
ハルートは眠りの調べを奏で万が一にも魔物が騒音で目を覚まさないように静かに歌う。
俺はシールドと結界を全員に貼り付け防御のバフの効果時間が短くならないようにプログラムを書き換えた。
シャルは剣を胸の前で掲げる。
いよいよ始まるぞ。
「イオルド式...血剣術...狂華乱舞....!」
シャルは剣を舞のように振り回し光の力をまとった斬撃を敵に切り込んだ。
しかし、眠っているにもかかわらず敵はそれらを全て自前の爪で弾き飛ばす。
....聞いてはいたけどやべぇなこれ。
俺はハルートが準備していた魔法陣に魔力だけ込めた。
そして、その後最近開発した新たな魔術を準備した。
幾つもの魔法を組み合わせそれらが打ち消し合わないように上手いこと組み直したものだ。
プログラムを組んでおりそれらの発動条件は長めの呪文の詠唱の中にロジックを仕込みそれらが崩れないように魔力を一定に流し込むことだ。
メトロが使っていた古代魔術の模倣品を参考にさせてもらった。
「エルテ...オズドマ...アフィルドカル...。」
一言一句に意味があるためそれらを全て均一な声の音量と高さで詠唱しさらに緻密な魔力のコードを組み続ける。
慣れるまでは大変だが料理も1つズレれば全くもって違うものなりかねない為それに似ているこれはとてもやりやすい。
その間にもシャルは敵を攻め続け足の1本を切り落とすことに成功した。
だがその衝撃で敵は目を覚ましてしまった。
俺は構わず詠唱を続け最後の一言を口にしてより強く魔力を込める。
「ウィルトーブリザーディス!」
氷の嵐が吹き荒れ竜巻に変わるとそれは敵に向かって一直線に進む。
建物の外壁や瓦礫を巻き込みながら敵に命中したそれは敵を空まで巻き上げたたき落としさらには氷の刃が上下から突き刺さる。
身動きが取れなくなった敵はこちらを激しく睨みつけ呪いを飛ばしてきたがマカフィが加護で跳ね返した。
ハルートは俺たちの傷が癒える調べを奏でマカフィはその効果を大きくするようにベルで信仰魔法を使う。
俺とシャルは畳み掛けるようにそれぞれが即座に出せる最大の火力の技を放つ。
「ルフリージャス!」
「ルクシス流聖剣術クロスホーリーブライト!」
俺の氷の超級魔法とシャルの十字を切った光の斬撃は見事敵に命中し敵は粉々に砕け散ると魔素に帰っていった。
魔素に帰りきらなかった素材やキモめの毛むくじゃらの足だったものの破片...それから魔石を拾い集めると俺は残りの魔力をつかい全員をエズルドーラまでフープルさせた。
「....なんとかなったな。」
「...割と余裕だったかも?」
「それは俺たちがしっかり下ごしらえをして行ったし前知識があったからだろ。犠牲になったヤツらのおかげ...とも言えてしまうな。」
「...どうか安らかに。」
全員で犠牲になった冒険者に少しだけ黙祷を捧げたあとギルドのカウンターへと報告に行った。
日はすっかりと真上に来ていて結構な暑さだった。
「お疲れ様でした。それではこちら報酬になります。」
と受付の人がシャルに渡した金額はなんとびっくり125000J...。
四で割っても俺の全財産より多いです、ハイ。
金の取れる国は違うねぇ。っていうかそれだけ危険な依頼って事だよな。
「うおおお!ありがてぇ!」
俺は思わずガッツポーズを取り全員とハイタッチした。
「そんだけ大変な依頼だってことなんだねぇ。」
「あぁ、だな!まずはどうする?船に戻って風呂入る?それから...レストランとか?あ、船の部屋のアップグレードもしてぇな!」
「まずは...ねみーからアップグレードしたら寝ようぜ!俺結構無理しちまったからお前らに回復魔法かけてもらったけど万全じゃねぇし休みてぇな。」
シャルは俺の質問に大きな欠伸をしながら答えた。
「え〜寝るの!?ハルートはどうする?俺はもうレストランを調査したくて調査したくてたまらんのだが!」
「...そうですね。お付き合いしますよ。」
少し顔色が悪かったがハルートはにこやかに笑った。
「ハルート別に俺一人でも構わねーし無理はすんなよ?
つーか、シャルは寝るとしてマカフィはどうする?」
「僕はねー!ショッピングに行くよ!この街には宝石があしらわれた装備品が名産の地区があるみたいだし探しに行くんだ。」
「おぉいいな!俺は..どこのレストランに行こうか...。こういう時スマホがあればなぁ。」
「お!それなら俺が寝てる間俺のやつを持って行っていいぞ。どうせ俺大して使ってねーし。」
「シャル!まじか!助かるぜー!」
そんなこんなで次やることが決まった俺たちはフープルで船まで戻ってきた。
俺たちは船の受付があるフロアへと赴きアップグレード申請をした。
ちなみに渡航費は残りの距離も少しだけ減ったのにも関わらずきっちり取られるとこのこと。
もともとはカジュアルにしてもらうつもりだったが、
悔しかったのとエズルの依頼でそこそこ稼げたのもあって、カジュアル、ラグジュアリー、スイート、パレススイート、プレミアムスイートと続くコースのうちラグジュアリーを選ぶことにした。
その金額なんとびっくり120000J...。
四で割っても一人30000J。
ほぼ依頼で稼いだ分はここに落としてしまっている。
部屋の移動ができるのは準備があるからとの事で、船が出発する明後日からになるそうだ。
まぁ...いいけどなんとなく不服。
俺は風呂に入りエーテルサイダーをがぶ飲みして1時間だけ仮眠をとった。
その後シャルのスマホでこの辺の情報を頭に入れ評価の高いレストランを今夜で予約した。
お値段なんとびっくりの10000J...これで所持金は約18000Jになるが....このために金を残してきたので気にしないことにした。
「よしっ!完璧だ。」
俺はルカ事件の時に買ったスーツを魔法カバンから出すと魔法を応用しアイロンをかけた。
掌に衣の魔法をかけて、低級の氷魔法フリと炎の低級魔法ヴォルの威力を調節し風の低級魔法で照射しながら掌で圧縮する。
これがなかなかどうしてでアイロンを買う必要性がないほどピチッと決まる。
前にハルートが教えてくれた小技なのである。
ハルートは今は眠っているが起きたら街に楽譜を見に行くと言っていた。
みんなそれぞれ好きに過ごすことが出来てきちんとリフレッシュになりそうだ。
俺はレストランを予約した時間まで近くのエリアを散策することにし、フープルで近場まで飛んできた。
このエリアは大分、アラビアとかそっちみたいな雰囲気で妖艶な煙が漂っていた。
おそらくお香なのだろうが不思議な紫色の煙はなんだか甘く艶やかな香りがした。
ちかくにはムスクのようなものもありおそらくグレイスランド教とは別の宗教文化が成り立っているようだ。
夜市はこちらにもありまだ夕方だがチラホラとランタンが灯っている。
赤い絨毯を引いてその上で怪しげな雰囲気で営業をしているところもあれば出店のような形の場所もあり近代的なエリアとはかけ離れて異国感がある。
「オニサン...夜のお店イカガ?」
俺がぼーっと見て回っているとピンクの衣装に身を包んだ猫の獣人の女に声をかけられた。
なんというかベリーダンサー?みたいな
ピンクのスカートとマズルだけを覆う怪しげなピンクと黒のマスクベール。
胸は露出が激しすぎないようになっているが細い腰と腹回りはよく見えシャム猫らしい白くふわふわしたそれが顕になっている。
エッチデス。ハイ。
「オニサン?ヒトリデスカ?」
共通語が上手く喋れないところを見るとおそらく学がなく昔ながらのこの辺の言葉に引っ張られているのだろうか?
「あぁ、でもこれから待ち合わせなんだ。すまないね。」
「ソウデスカ...バリファルマリカ.....。」
おっとなにか知らない単語が飛び出した。
おそらくこの辺に元々あったエズル語由来のなまりかな?
分からないけどなんか楽しんでみたいな雰囲気のことを表情的に言っているような気がした。
「じゃあ俺は行くよ。良い夜を。」
俺は軽くそのお姉さんに会釈するとそろそろ予約の時間を迎えるレストランへと向かった。
夜市をぬけた先にある少し閑静な場所にあるレストラン近辺は白い石造りになっていて水の張られた美しい堀となにやら魔物の形をした物の口から水が出ている噴水なんかもあった。
「おほぉ...これはこれは。」
一歩一歩丁寧に、庭園のような美しい地面を歩くと誰かが歩いたあとに残ったであろう砂混じりの音がした。
水が流れる音とその音...遠くの方で聴こえる太鼓や特殊な楽器の音...。
なんだか落ち着くな。
旅行感があって異世界に来たというのに地球にいた頃と同じように少し浮かれていた。
広い敷地を進むと遠くに見えていたあかりはライトアップされていた建物だということが分かった。
スライムのような形をした屋根に四角い形の建物は全てがキンキラキンで黄金の国らしい見た目だった。
「おお...これはこれは..。」
同じセリフを二回言ってしまうほど俺はこの状況にワクワクしていた。
さらに奥へと進み続けエントランス手前の一本道は近くを通ると左右に拡がる池から水が噴出するようになっていた。
入口をノックすると扉は中へと開き美しい顔をした狼の獣人のギャルソンが俺を迎え入れた。
「ようこそいらっしゃいました。お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?」
「ダイゴ・マツカゼです。」
「お待ちしておりました。マツカゼ様。お席のご用意ができております。こちらへどうぞ。」
ボウアンドスクレープの歪みのない綺麗なお辞儀をした彼は俺を連れ大広間へと案内した。
案内されている途中の廊下も赤を基調としたカーペットや壁紙にはなっているけどやたらキンキラキン。
生前中学の頃見た金閣寺みたいなキンキラキン加減。
大広間への扉は...うんやっぱりキンキラ金。
目が疲れそうですね。
ただこれはただのおそらく金じゃない。
純度の高い金を限りなく多くその上扉に貼り付けるだけでなく扉そのものや引手すら本物の金だ。
こりゃ...よく予約だけで入れたな。
普通は紹介制になりそうだけど。
扉を開いた先にある大広間は薄暗くランタンと青い照明の光だけで照らされる怪しい空間。
右側に天井までの大きな水槽があり養殖の海の魔物たちが沢山泳いでいた。
中央にはステージがありおそらくここでなにか行われるのだろう。
今はただ怪しい煙が漂っている。
俺が案内された席は水槽側の席だ。
水槽が目の前あり左を見ればステージも見れないことはない丸いテーブル席に案内された。
「...それではお料理がくるまでしばらくお待ちください。こちらはお飲み物のメニューでございます。」
フレンチのルールとは若干違いそうで分からないがひとまず最低限失礼のないようにしておけば良いだろう。
俺はメニューを受け取るとそこに書かれていた見たことの無い酒を頼んでみることにした。
やがて透明な瓶に入った酒が運ばれてきてグラスに注がれる。
ギャルソンはそこへ水を入れマドラーでステアをする。
するとどうしたことかそのグラスの中身は白濁した。
あ!これアラックみたいなもん?
それなら父さんが昔どっかの国から買ってきてたな。
「お待たせいたしました。」
たしかアルコール度数高ぇんだよな。解毒の魔法の用意しておこ。
「ありがとう。」
俺はそれを目の前に置いてもらうと一口飲む。
そしてギャルソンへ目配せして大丈夫だということを伝えた。
これで合ってるか分からないけどアペリティフならこんな感じにするし大丈夫だろ?
つーか!甘ぇ!この酒!
ココナッツとかそういう類の甘さ。
なのにスパイシーでコリアンダーとかそっち系の香りも感じる。
なんとも不思議なお味。
予約の時にサイトで見たが料理はコースで決まったものが出てくると書いてあった。
うんうん落ち着くねぇ。
テーブルに置いてある今日来るメニューが書かれたものに目を通すとフレンチとは全く異なった順番で食べ物が出てくるということがわかった。
まず1番初めに運ばれてくるのはプレート料理。
これは鳥の魔物の肉まぁつまりチキン料理のプレートで骨付きの肉をスパイシーに味付け付け合せにはパクチーやら香りの高い野菜や漬物のようなものが着いてくるらしい。
次はサラダ...?にヨーグルトのようなものがかかっているらしい。
メニューの説明がなく名前だけの表記なので予測をすることはできるが実際運ばれてこない限りは何が来るのやらという感じ。
で次がおそらく二回目のメインでファラフェルつまりコロッケやとカブサ...まぁ牛肉の乗った米が来る。
おそらくこのメニュー見るに量自体は少しづつで来るのだろう。
まぁその後もデザートやらなにやらあるけどそれは来てのお楽しみでいいか。
「お待たせいたしました。バルバードカジルードプレートでございます。」
俺の目の前に置かれたそれはおそらく鳥の足部分が一本綺麗に焼かれその上には彩りのある野菜や更新料が散りばめられているものだ。
そこから上がる煙はスパイシーでかつ少し酸味と甘味を感じるような香りがした。
俺はフォークとナイフで綺麗に骨から肉を切り分けまずは一口上に乗った野菜と共に口へと運ぶ。
...うまい!調和の取れた味だ。
チリパウダーやガラムマサラの香りも強く少しだけ辛いがそれを打ち消すヨーグルトの風味と熱で飛んであろう酸味の抜けたまろやかさ...。
あとからくる強い甘みと塩味。
あぁ...これは一つ一つ丁寧に焼いて下ごしらえをしているんだなということが一瞬でわかってしまう味だ。
上に乗っているパクチーやらパプリカも半端じゃなくうまい。
味を邪魔せず香りと食感をプラスしてくれてまさに見た目の通り彩り野菜の名前に恥じない役割を果たしていると言っても過言ではない。
次に運ばれてきたヨーグルトのような何かがかかったサラダ。
こちらはおそらくこちらでは希少と見える葉物野菜にバナナやらザクロやらのっていてその上にヨーグルトソースがかかっている。
結構さっきのチキンが辛いから口直しの役割がありそう。
バランスよくスプーンの上に食材を乗せ食べてみる。
まずは葉物野菜のシャキシャキとしたみずみずしさにザクロのプチプチ弾ける食感と少しだけ残る苦味と種のガリッとした感触がやってくる。
そこにバナナの強い甘みと粘り具合...そこに酸味が強く濃厚なヨーグルトが絡まり合う。
ザクロはエグ味があって好きではなかったけどこれはおそらく下処理がしっかりされてるのか全くもってエグ味がない。
苦味はあるけどそれもバランスをむしろとってくれてバナナの強い甘味を上手い具合に調和させている。
あ〜うまい!昨日までの船上の食堂のまっずい食事を忘れさせてくれる幸せな味だ。
次に運ばれてきたファラフェルもカブサも半端なく美味い。
ファラフェルの方はメインで使われているひよこ豆独特の甘みの強さにコリアンダーやパセリの清涼感ある香りが絡まり、衣の間からは強いオリーブオイルの香りも合わさりさらにはかけられたソースの酸味と甘みと程よいスパイシーさで口の中は異国そのものだ。
あぁこんなにも地球の文化に近いなんてついてるな俺。
カブサの方は牛肉と羊肉まぁ...これも多分魔物の肉だけど。
香辛料たっぷりで炊き込まれたジャスミン米の上にかけられている。
カブサの具の方はこれまたたっぷりの香辛料とトマトやレーズンと一緒に炒められた異国ならではすぎる味。
これがなんとまぁ...美味以外の何物でもない。
1番初めに感じるのはやはり香辛料の強い香りと甘さ。
その後に来る辛さとバランス取れた塩味...。
そしてそれに合わさるジャスミン米の鼻に抜ける華やかな香り。
こんなにも殺し合わず調和の取れた料理が作れるのだからここのシェフは相当に研究を重ねてきたのだろう。
デザートは珍しいザクロのシャーベット。
こちらもザクロの美しい香りと酸味と苦味を蜂蜜の甘さが調和してくれる素敵な逸品。
あぁ...口の中幸せすぎる。
残ったアラック(こっちのせいではエズリアルと呼ぶ)を飲みながらぼーっと過ごした。
するといきなり照明が落ちたかと思ったらステージだけが激しく照らされた。
「皆様。お食事はいかがでしたでしょうか?すべてのお客様にお食事が行き渡ったのでこの後はエズル名物のルビーダンスをお届け致します。」
いきなりのマイクのアナウンスに俺はびっくりした。
が、ルビーダンス?ベリーダンスみたいなもんかな?
「それではエズルの素敵な夜のひと時をお過ごしください。」
そのアナウンスが流れ終わると再び真っ暗になった。
そしてどこからともなくシタールって言うんだっけ?
なんかシャラシャラ音が鳴る元の世界のインドかどっかの楽器。
それの音がしたかと思えば今度はステージの奥で炎が燃え上がり激しいボンゴの音がした。
そして怪しげな笛と今度は柔らかな音楽がなり始める。
そしてどこからともなく現れた美しいダンサーたちがステージ上に並ぶと情熱的な表現のダンスが始まった。
赤と紫とピンクの衣装に身をつつみ体を揺らしながらも花のようにしなやかな湾曲した動きをする彼女たちはまるで宝石のようだった。
クルクルと回る度フワフワと衣装がそれに合わさて動くのでそれがまた美しい。
転生前にベリーダンスを見た事がないので比べることはできないけれどルビーダンスというものはこの国の宝と言って間違いなさそうだ。
日本の舞の様な特殊なものなのだろうか?
みていると文化として大切にされてきたことがよくわかる。
そしてダンスはさらに緩やかになっていき、
演目の時間は静かに暗転することで終わり告げた。
怪しげな煙だけがその場に残りにランタンや青い光が会場を灯す。
「皆様。いかがでしたでしょうか、まだまだエズルの夜は終わりません!華街へ行かれるお客様はどうぞお声がけください。転移にてお送りいたします。」
アナウンスが流れるとそこにいた客たちも散り散りになった。
俺は食器をもう一度だけ眺めてテーブルチェックを済ませるとから店をあとにした。
「美味しかったです。エキゾッチクな夜をありがとう。」
出る時にギャルソンにお礼をいい店を出るとゆっくり歩いてモスクのあるエリアを通り過ぎ中心街の方へと戻ってきた。
中心街は相変わらず賑わっていて怪しげな煙とともに怪しげな女が夜の店の勧誘をしていたり怪しげな裏路地への道へと手招きする男がいたりと...なんともまぁって感じだった。
俺はその雰囲気込みで街が楽しかったので出店でやたら値段の張るごく普通の瓶ビールを買い飲みながら街を港のほうへと下った。
フープルで帰っても良かったけど時間をかけてゆっくりこの街の夜を楽しみたかった。
明日には港をたつから。
「お兄さん!!フライパンどうだーい?」
出店から聞こえる魅力的な声の数々を無視しなんとか港まで辿り着く。
深夜を通り越しなんだか空がしらみ始めていたけどこの街は動き続けているんだと思った。
朝方近くなると今度はヨガだか太極拳だか分からない集団が街の中で堂々とストレッチをはじめたり、ランプを持った警備員がウロウロし始めたり。
世界や種族は変わっても...そこで生きてるやつはは同じだと感じた。
思えばこの世界に来てからなんと慌ただしい日々を過ごしてきたことか。
こんなにものんびりと自分の時間を過ごすのが心地いいとは...。
この世界に来てからとか言ったけど前の世界の方が休みなかったし...もしかしたらこんなにも自由に過ごしたのは子供の頃以来かも。
そう思ったらなんだか泣けてくるぜ。
夢がかなったならまだしもその夢まじかで死んだ俺かわいそすぎない!?
ま...この世界で叶えますか...。
「おかえりなさいダイゴ。」
船内の部屋に戻るとハルートは二段ベッドの上の段でランプを灯し本を読んでいた。
「おお起きてたのか。」
「ええ、あの後休んでから本市へ行ってこの本を買ってしまってから...夢中になっていたらこんな時間になってしまいました。」
「はは...いんじゃねーの?どうせ明日からまたしばらく船の上でつまんねー時間を過ごすことになるしなぁ。俺も少し寝てから本でも買いに行こうかなぁ。ふぁーあ。」
さすがにまる2日寝てないのでそろそろ身体が堪えてきた。
二段ベッドの下の段に横向きで寝転がる。
目線の先には向かい側の二段ベッドの下の段でシャルとマカフィがすやすやと寝ていた。
そんな様子を見ていたら俺も意識が薄れてきて眠気に身を任せて目を閉じた。
「おやすみなさい。ダイゴ。」
ハルートの歌声のような優しい声だけが遠のく意識の中聞こえてきていた。
〜続く〜




