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第1話 「スーシェフ松風 大護転生する!?」

pixivには投稿をしたことがあるのですがなろうは初めてなので勝手が分からず変なところがあったらまじすみません。


俺はウキウキしながら閉店後の店を片付けていた。

長年夢見てきたシェフになれるのだ。


この7年間アホみたいに怒られてやっと手に入れたこのチャンス。

3年前にスーシェフを任され、

ほかのスーシェフたちとのシェフ争い会う日々だった。

毎日毎日朝から晩まで馬車馬の如く働き、メニューをかん考えろと言われれば朝までかけてでも完成させ、フランスに一年いけと言われれば文句を言わず向こうのレストランで働き、オーナーやシェフが白だと言ったものは黒でも白といい日夜努力に励んできたのだ。


そんな甲斐があってか、昨日オーナーと現シェフから呼びだされ次は俺がシェフだと辞令が出たのだ。


ここは品川区にあるホテルに併設されたフランス料理のレストラン 「ラ・グロワール」。

紹介制になっており簡単に来ることは難しい。


そんなわけで働くとなったら相当な修行が必要になる。

俺は小さな頃からフランス料理屋を経営する父の元で鍛えられてきた。

高校を卒業した時にはフランスにも3年留学させられた。


父も修行をしたことがあるという向こうのレストランで実際に働いたのだ。


なんだかんだ色々あって父の店は潰れてしまったが俺はフランス料理人で世界一の男になりたい、

そう思いここまで死ぬ物狂いの努力をしてたどり着いたのだ。



明日の仕込みも終え、店を閉める作業を全て終わらせた俺はウキウキしながらホテルを後にした。


今日はシャンパンでも飲もうか...。

そう思いいつもとは違うルートでちょっと高級なスーパーに寄ってから、寮がある大森まで帰ろうとチャリンコを走らせた。


...それが間違いだったのだ。


スーパーにたどり着くとなにやら人だかりが出来ていた。

人の波をかき分け中心の方に行くとナイフを持った男が警察に取り押さえられていた。


おいおい...嘘だろ勘弁してくれよ。

男はだいぶ興奮した状態で暴れ回ろうとしていた。

警察は男が動かないように取り押さえている。


どうも周りの人の話ではパトロール中にこのスーパーの周りを通りかかったところ男がナイフを持って暴れだしていたらしい。

だからまだこんなに野次馬がいるのか。


俺は関わりたくなかったので美味しい生ハムとワインは諦めて帰ることにした。


男に背を向け人混みの中に入ろうとしたその瞬間だった。

男はするりと警察の間をぬけ、警察官を殴り倒すと俺の方に一直線に向かってきた。

避ける暇もなく男に背中を刺された俺は何が起こったのかわからなかった。


近くにいたおばさんが


「キャー人が刺されたわぁ。」

と騒いだので自分が刺されたのだと理解した。

俺は血の気が引きその場にうつ伏せに倒れ込んでしまった。


じわじわと痛みが広がり実感が湧いてくるとそれは強く鈍い痛みに変わっていった。

男はナイフを抜くとそのまま倒れ込んだ俺の上に乗り何度も滅多刺しにしてきた。

すぐに警察が止めに入ったがその時には俺の意識はもう朦朧としていた。




目を覚ますと辺り一面真っ白な空間にいた。

あ、これ死んだんだ。

料理以外からっきしな俺でもそれだけは理解できた。


「おいまじかよ!くそだろ!神様ああああああああ。」


俺は地団駄を踏みながら真っ白な空間で暴れ回った。


「お疲れ様でした。あなたは死にました。」


俺が暴れ回っているとよくわかんねーおっさんこの声がした。

そいつは、突然白い空間のどこかから現れて俺に声をかけてきた。

その姿は...?あれ犬?の姿をしてる。

でも人みたいな筋肉の作りで二足歩行をしている。


「なんだ!バケモンか!?誰だよお前!」


「...失礼ですね。私はあなたとは違う世界に生きる創造主です。」


「...は?俺たちの世界じゃないところの神様ってとこ?」


「そう思ってくれて構いません。」


「で?俺はよくある転生ものみたいに転生させられるわけ?」


「平たく言えば...。」


「なんだよ!はっきり言えや!」


「まずは...怒りを収めていただきたい。」


「あ?怒りを収めろだぁ?こっちはやっと夢が叶うってところまで頑張ってきて転生させられるんだぞ?俺の身にもなれよ。」


「...そこに関しては大変申し訳ない。こちらの都合で呼び出してしまったのだ。」


「は?テメーのせいだってわけ?」


「....いや。君の寿命はどちらにしても今日までだったんだ。終わり方がなるべく辛くならないような方向に持っていたのは私だが。」


「...。元々は何で死ぬはずだったわけ?」


「溺死だよ。君を恨むスーシェフたちにやられる予定だったんだ。しかもすぐには死なず何度も死にかけながら苦しみながら死ぬ予定だった。」


「....たっくろくでもねぇな。」


「それから君の世界の神は君たちに姿を見せてはいけない事になっている。なのでこの場にはいないんだ。

我々は神の会合で転生者を決めるのだが、君の死期の近さと努力してきた人生や理不尽や逆境を乗り越えられるその精神力が評価された。」


「へー。でもなんであんたの世界に?」


「それはたまたまさ。君という人材がちょうどよく必要になりそうなタイミングだったからね。私の創った世界の運命バランスが君を必要だと判断したんだよ。」


「ふーん。つまりは俺みたいにちょうどいいタイミングで死ぬやつがいて転生に選ばれても世界の運命バランスとやらによっては必要とされねーこともあるってこと?」


「そういうことさ。理解力があるね。」


「難解なじじい共の嫌味やリクエストに散々答えてきたからな。これくらいのことなら解る。」


「....そうか大変だったのだね。君がこれから新しく送る人生では苦労を少なくするために君にはギフトを渡したいと考えている。」


「おぉ!そりゃいいや!じゃ俺を一流レストランで働くシェフにしてくれ!そしたら転生しても文句ねーから!」


「...残念だがそれでは一度に多くの人間の運命を変える必要があり運命バランスが崩れかねんからできない。」


「はぁ?じゃあ何?そういうチャンスが巡ってくるようにも出来ないわけ?」


「元いた世界での運命を背負ってきてしまっている為こちらで私がいじった運命の中でやりとりするには少々都合が悪いのだ。少しくらいなら背中を押すことはできるが...。他に欲しい能力などはないか?」


「...固有スキルってやつ?はぁ...呆れた。そんな茶番どうでもいいから俺はシェフになりてぇよ。」


「そういわずになんでも...とはかないが私ができる範囲のことは全てしてやろう。」


「しかたねぇ。シェフになるのは自分で努力するか。それならまず知識をくれ。固有スキルってのはあんたの世界を知ったあとじゃないと意味がないと思う。」


「その通りだ。話せることはできるだけなんでも話そう。」


それから胡散臭い犬の神様に俺は一通りの説明を受けた。


まずこいつの作った世界は剣と魔法の世界であるということ。

これは異世界ものでよく聞く話だ。


次に人類は獣人類と呼ばれており獣人だけしか存在してないということ、

食材に使われる家畜などはモンスターが使われており動物は存在してないということ。


それから各地にギルドが存在しておりそのギルドに所属することで様々な職に就いたり仕事を貰うことができるということ。


最後に転生者は今のところ俺だけだと言うことだ。


しかし話してくれたのはこれだけでこの先の事は世界の琴線に触れるとかで教えてくれない。

質問もしたが曖昧な回答をされてりしてイライラした。


「で?俺も獣人として生まれると思うけどなんの動物かは選べるわけ?」


「もちろんそれくらいはやらせてくれ。」


「おぉ!とびきりかっこよくしてもらってもいい?身長も欲しいなぁ。狼とかどう?」


「....すまない身長は変えられないんだ。私の世界の転生ルールは元の姿に準じた骨格になることになっている。」


「はあ?出来ねーことばっかじゃん。」


「すまない。規則なんだ。狼獣人に変えるのは容易いことなのでそれで勘弁してくれ。」


「あーはいはい。じゃあオッドアイにするとかも?」


「...できない。」


「あーそうですか。そうですか。分かりました。じゃあもうなんか適当にやってくれ。な?」


「申し訳ない。」


「もういいから次はギフト?だっけ。何は禁則に触れるから貰えないとかがあったらもう教えてくれる?イライラするから。」


「そうだな。時間回帰や時間移動を司る魔法は一応世界で禁止事項になっていて封印された古代魔術の類なのでそういったものでなければ...。」


「死者蘇生とかは?」


「あー。それならもう存在しているよ。条件があってそれを満たさないと生き返らせることは出来ないが...。」


「じゃあその条件なしで誰でも彼でも生き返らせる能力ってのは...?」


「すまない。」


「だよな。いや、いいんだ。その能力が欲しい訳じゃなくてあんたの世界で禁止されてることはできないってことが理解したかっただけだから。」


「そうか。それなら他にどんな能力が欲しい?料理で人を魅了する能力か?」


「は?なめんじゃねぇぞ。ギフトで魅了したって俺の料理で感動させたことにはならねぇだろ。俺のプライドまで汚すならこのまま昇天させてくれ。」


「すまない。そんなつもりはなかったのだ。」


「ちっ、あ、じゃあさ平均より高いステータスをくれよ。魔法や体術とか剣術とか全て並み以上にこなせるようにさ。」


「あぁ、それならもう既にそういうギフトがついているよ。転生者に苦労させすぎる訳にはいかないからね。

他に欲しい能力があればつけてやれるのだがどうだろうか?」


「ふーん。気が利くところもあるんだな。それじゃめっちゃモテる!とかは?」


「いいだろう。」


「あっいやいや冗談だよ。ちょっと待ってな。よく考えるから。」


「わかった。ソナタが納得いくまで考えるがよかろう。」


俺はさっきの話をまとめて考えてみることにした。

俺がこの世界に転生したところで目的はひとつこの世界で1番のレストランでシェフをやることだ。


料理にもスキルを使うだろうしそういったものは強化しやすいようにしておいた方がいいよな。


「料理にもスキルがあるんだろ?」


「もちろんだ。魔法をベースにしたものだから普通は基礎魔術を勉強したものが習得できるんだ。」


「それならその料理のスキルを強化してもらうのはどうだ?」


「んー。君には既に今の料理の実力に準じたスキルが身についた状態で転生してもらう予定だ。」


「あっ、それもついてるんだ。マイナスイメージから嬉しいことがあるとプラスに転換しやすいな。」


「...それはよかった。」


「んー!それなら魔法をすげー使えるようにしてもらえる?基礎魔術がベースってことは上級とかそういうのがあったらすげーやべーんじゃね?」


「その通りだ。活躍しているプロの料理人は賢者並みの魔力を保有して上級どころかその先の魔術すら習得していることも少なくは無い。」


「うしっ!決まり!つーわけでよろしくな。」


「わかった。君にはまず初級から上級を全てとその先の魔術書の知識を少し与える。これは普通十年ほど魔術に精通しなければ扱うことや理解することが難しい。」


「へー!すげー!」


俺が興味無さそうに聞いていたらおっさんが俺の頭に手を置く。

すると頭の中にすげえ勢いで知識が流れ込んできた。

一瞬で魔術がどんなものでどう扱ったら良いのかまで理解した。


「さんきゅー!あと世界の常識や倫理観それから地図も頭に入れてくれ。あ、それから歴史もな。こういうの料理する上ですげー重要だから頼むわ。」


「良いだろう。」


俺の頭にさらに情報が流れ込んできた。

過去にあった紛争、世界の危機、勇者の登場、その後の文明の発達、世界の地理や名産品なんかも知ることができた。


この世界は思ったより文明が発達しているようで電子機器や車なんかもあるみたいだ。

ただのファンタジーな世界じゃないんだな。


「ワクワクしてきたぜ!」


「ほっほっ、何よりだ。」


「平和な世界そうでよかったぜ。過去には勇者がいてそいつが救ってくれたのか。すげーや。」


「なつかしい...最後の勇者の名前はレオだったか...。そんなこともあったな。」


「ともかくこんだけ施してもらえばどうにかなりそうだぜ!んじゃ行ってくるからぱぱっと送ってくれよ。」


神様のおっさんは俺を見て黙って頷くと両手をかざし大きな光を起こした。

俺はその眩しさに目を細める。

眩んだ目が慣れてきて細めた目を大きく開けるとそこは....。


アクアベリーという街だった。

地球で言うところのポルトガルとイタリアを合体させたような所。


この世界で二番目に大きな街で歴史と交易の街である。


辺りを見渡すと美しいレンガ造りの建物が並んでいた。

ここは歴史的な建造物が立ち並ぶエリアで何百年前からあるらしい。

奥には丘がありそこを登ると高級住宅街がありその奥には高級な店やレストランが立ち並んでいる。

でその反対方向にはマルシェが立ち並ぶエリアがありその奥にはギルドがある。

ギルドのエリアは昔ながらを大事にしているが高級住宅街の方は車なども沢山ある。


なぜ俺がそんなことを知っているかといえば神から与えられた知識があるから。

あぁこりゃいいな、便利だぜ。


恐らくあの神はこの街でレストランをやるのが最適だと思ってここに飛ばしてくれたのだろうが俺はマルジニアという町に飛ばして欲しかった。

言えばよかったな。


マルジニアは地球で言うところの日本と中国と韓国を足して三で割ったような文化がある場所。

結束力が高く陰湿な国民性と高い技術力が特徴だ。

和室もあるし日本の文化にもそっくりなのだ。

積み上げてきたものがある分そこの方が上手くやれそうだと思ったのだが。

アクアベリーに飛んでしまったからにはまずはこの街でフレンチに近いものを探してみることにした。

そして金が集まればここから出る船に乗り、フランスの文化に近いところで生の料理を食べることの方が大事そうに思える。


その後にマルジニアでフレンチの店をやるのも悪くないよな。


「あのぉ。」


俺がぼーっと道の真ん中に突っ立って考え事をしていると髪の長い綺麗な顔をした狐の獣人に声をかけられた。


「なんですか?あ、じゃまでしたか。すみません。」


「いえ、そうじゃなくてあなたからすごい魔力を感じたので...つい声をかけてしまいました。」


「あ...そうか魔力って目に見えるのか。」


「は?」


「いえ、こちらの話です。」


「はい...それで折り入ってご相談があるのですが一緒にAランクの依頼に行っていただくとはできないでしょうか?」


...おっと予想外のお誘いだ。

どっちにしても金が一銭もない挙句装備もフライパン一個だけなので後でギルドに行こうと思っていた。

あと、料理人として店をやるならそもそもギルド登録必須だし。


「あぁ、かまいませんよ。でもギルド登録を実はしたことがなくてまだ駆け出しの冒険者なのですがそれでも構いませんか?」


俺は男にそう言うと、男は目を丸くして驚いた。


「...あなたのようなお強い方がギルド未登録?しかも駆け出しの冒険者?」


「えぇ、ずっと田舎の...あっロージニア大陸の山奥で修行だけをしてきたものですから。満足いくまで強くなれたので大きなギルドがあるこの街にやって来ました。」


「あぁ、そうだったのですね。それでは私がギルドまでご案内しましょう。登録が終わりましたらせっかくですから一緒に簡単な依頼からやってみませんか?私の依頼はその後で構いませんので。」


通常ギルド登録したあとはEランクスタートでランクの2つ上までしか依頼を受けることができないのだが自分よりランクが上の冒険者がいればそれに合わせることができるのだ。


「良いのですか?私のような田舎者に親切にしていただいて。」


「あぁ、構いません。後ほどあなたのその強さをお借りできるのでしたらいくらでも手を貸しますよ。」


よっしゃいい人に声をかけてもらえてラッキー!

俺のステータスに運の良さがあるならきっとそれが甲を制したんだろうなぁ。

などと非現実的なことを考えてみる。だってここは元いた世界からしたらありえない世界なのだから。


「それではギルドへ行きましょうか。」


男に連れられギルドへと足を運んだ。

古い木造の建物で入口の上に掛けられた看板には


「〜ギルド〜 ベル」とこの世界の文字で書かれていた。


あー文字や言語覚えなくていいなんてチートだよチート。

英語とフランス語の勉強をアホみたいにしてきたのがバカみたい。


「それではこちらでステータスを測ります。その後こちらのギルドカードがあなたのギルドとうり6証明になります。身分証明書として世界中で使うことが可能です。」


受付のきゃわいい猫獣人のねーちゃんがほっそりとした腕と可愛い小さなおててでiPadみたいな機械に表示された重要説明事項を読み上げる。

こんなもんもあんのかよすげー!iPhoneもあるかなぁ?


「それから職業と武器の登録をしたいのでお伺いしたいのですがご職業はこちらに書かれた料理人さんということでよろしいでしょうか?料理人ギルドへの登録もこちらで出来ますがいかが致しますか?」


「ぜひ!お願いします!」


料理人ギルドとは名前の通り料理人が登録するギルドである。

登録しておくことでレストランからスカウトや依頼が来る。

自分で開業する時、国からの営業許可もSランク以上なら取れるらしい。



書き物を済ませるとステータスチェックのために水晶に触れた。

俺のステータスが数値化されてゲームのコマンド画面みたいなのがホログラムで目の前に表示された。


ダイゴ マツカゼ Lv 35


HP 500

MP 520


体力 250

攻撃 250

防御 150

魔力 225

素早さ 200



スキル

魔術、料理術、料理体術。

固有スキル

ギフト


てな感じで書かれていた。

す、すげーーーー!ド○クエみたい!

つーかこれって強いわけ?わかんねー!

うんの良さはないんだ?へー。

などと顔を喜怒哀楽させていると受付の人も後ろの狐の男も驚いた顔をしていた。


「未登録の方でここまで強い方は見たことがありません。それからギフトという固有能力は初めてお見かけしました。何十万人もも登録をしてきましたが見たこともない能力です。」


はいそうでしょうね。

グフフ。お決まりの転生ものの俺Tueeeeってやつ?

もしかして、この世界最強?

天下取っちゃおうか。

などとニヤニヤしていると次に放たれる受付の一言で俺の夢は打ち砕かれた。


「Aランク並みの冒険者の能力です。」

本人は褒めたつもりでしょうね。ええ、そうでしょうそうでしょう。


「わ、わーい。」


俺は涙を流しながら自分のアホさに落胆した。


「マツカゼさんは特別待遇でDランクスタートになります。」


「すごいじゃないですか!」

後ろの狐獣人は俺の肩に手を乗せて喜んでいる。

え?これ凄いの?たった一ランク飛ばしてるだけじゃん!

Aランク並なんでしょ!?Aランクスタートでいいじゃん!


「はぁ。」

俺がため息を着くと二人はなぜ?という表情をしていた。


ギルドカードができあがりそれを受け取るとまずはCランクの依頼を受けてみることにした。


簡単な魔物退治の依頼。

本当は料理の以来もあったんだけど料理ギルドの方はEランクスタートなので皮むきとかしかなくて今はあまりやりたくないのでやめておいた。


ちなみに誰かと一緒に依頼をこなすとパーティ認定される。

そしてその中で一番ギルドランクが高いものがパーティーリーダーになる。

今回は狐の男が着いてきてくれるのでBランク冒険者の彼がリーダーだ。


やたら広すぎるアクアベリーの街の中をぬけてやっと東門にたどり着く頃には夕方になっていた。

まぁ夜に出る魔物の依頼だからちょうどいいんだけどね。


目的地までは街からさらに三十分。

普通の転生者なら根をあげそうだが、一日十五時間労働で立ちっぱなしだった俺には全くもって余裕である。

それに転生の時体力もつけてもらったみたいだしね。


歩いている間にお互いの自己紹介をきちんとした。

狐の男の名前はハルート、職業は吟遊詩人だ。

レベルは30らしい。


「ふぅ。少し疲れましたね。ダイゴさんは全然平気そうで凄いです。」


「まぁ。修行してたんで。」


つーか歩いてる間全然魔物が来なかったな。

俺がつえーから?それともハルートが何かしてんのか?


「あのハルートさん。ここに来るまで全然魔物に出会いませんでしたけどハルートさんが何かしてくださったんですか?」


「あぁアクアベリーの周辺は冒険者が多いですからね。魔物の方も用心してあまり近づいてきません。」


「あぁ。なるほど。」


「ふふっ、本当に色々なことをご存知なくて...少し安心します。」


「...?」


「あいえ、変な意味ではないんです。

嫌な気持ちにしてしまったら本当にすみません。そんなにもお強いのに知らないこともあるのかと思いまして。」


んだよ。俺にも知らねーことあんのかよ。

常識は身についてるはずなのにな。

細けーことは頭で考えろってことですか?

神様よ。


「ははっなにせ山奥にいましたから。俺がおかしなことを言った時はむしろ教えてください。勉強は好きなんです。」


これは割と事実。料理に繋がるのだったらなんだって吸収したい。


「勉強熱心だなぁ。おっ、そろそろ例のおばけの魔物が出る時間ですよ。」


今回の依頼は幽霊の魔物を退治すること。

この奥に畑があるのだけど夜に水やりをしなくてはならない野菜がありそのためここを通ろうとした農家が襲われたとの事だった。


幽霊の魔物といえばレイスかスケルトンかゾンビとかキョンシーとか?

与えられた知識の中にこの辺は入ってる。


俺たちがじっと現れるという岩の上を眺めていると月のあかりが雲に隠れた瞬間そいつは現れた。


レイスだ。

亡者の魂が上手く成仏できずこの世界の魔素と呼ばれるものを悪い方向に吸収して魔物になる

それがレイスである。


「レイスですね!それなら光の魔法が効くかな。」


「はい!私はレクイエムで亡者の悲しみを少しでも癒します。力が弱まるはずですのでその隙にサクッとお願いします。」


初戦闘、思った以上に緊張しなかった。

モンスターみたいなじじいと底意地の悪いババアと戦ってきたことが効いてるらしい。


ハルートはどこからともなくハープをだしそれを奏で出す。

優しくどこか懐かしいメロディーとハルートの甘く切ない声が響き渡る。

こちらに気が付き攻撃をしようとしてきたレイスの動きが止まった。


よし!今だぜ!

「ルシャイマ!」


光の魔法の上級魔法をレイス目掛けて思い切り放った。

レイスは俺のはなった光の中へ消え去りあっけなく戦闘が終わった。


うわ、これきもちーーー!

やべー俺ってもしかして勇者!?


「凄いです。上級魔法が使えるんですね。」


レクイエムを終えたハルートは俺に駆け寄る。


「まぁ。修行してましたから。」


俺はにやにやしそうなのを必死に抑えながらハルートに答える。


街に戻り俺たちはギルドへの報告をすると報酬を受け取った。


さすがに申し訳ないので今回は手間賃としてハルートに全額受け取ってもらった。

あまりにあっけなく終えられたのはおそらくハルートの歌があったから。

レイスは本来危険な魔物で魂を吸い取るのだ。


「ダイゴさん!泊まるところはありますか?良ければ私が泊まっている宿に行きましょう。奢るのでぜひそこで休んでください。」


「え、悪いですよ。大丈夫です。その辺で野宿しますから。」


「そんな訳には行きません。明日からは私と共にAランクの依頼をこなしていただくのです。今日はちゃんと休んでください。」


....お言葉に甘えちゃおっか。


俺はハルートに連れられ、ロープウェイのような乗り物で30分ほど揺られ、高級街手前の丘のまで行きその下にある宿に行くと全奢ですげーベッドがふかふかな部屋を用意してもらった。


ハルートの部屋よりランクが高いらしい。


「ほんとすみません。良かったら俺がランク低い方で寝るんで。」


「いえ、空いてなかったので仕方ないですよ。私の部屋は本やらなにやら散らかってますからこちらで休んでください。」


「何から何まですみません。」


「いえいえ。あ、ダイゴさん!ぶどう酒はお好きですか?今夜は高級街側のレストランはもう遅くてどこもやってませんのでブルスケッタとぶどう酒を後ほどお持ちしますね。」


「だ、だだ大好きです!ぶどう酒は白ですか?赤ですか?」


「ブルスケッタなので白をお持ちしようと思います。」


「ひゅー!わかってますねぇ。ぜひ頂戴します。」


思えばこの世界に来てから何も食ってねーし飲んでねー。

しかも結構疲れてる...そんなところにイタリアンのブルスケッタとワインが食べれるだって!?

何ここ天国?

....ある意味そうかも。


ハルートは会釈をして俺の部屋から出ていった。


ハルートを見送りながら俺はベッドで伸びたり縮んだりしてた。


つーか...ここまで施して貰えるとなんか裏を感じなくもない。

もしかしてAランクの依頼って死ぬかも的なやつ?

それとも俺のシリアナ狙ってる系?

うわそれならもう一変しぬほうがマシ。


俺がアホな思考を巡らせているとワイングラスとワインとバスケットを持ったハルートが再び部屋にやってきた。


ベッドの横にある小さな椅子に腰掛けると目の前にあるこれまた小さめなテーブルの腕にレースのハンカチをのせてテーブルクロスの代わりにしてその上にバスケットを乗せた。


「うおお!いい匂いがする。」


バスケットからはオリーブオイルやらトマトやらニンニクやらチーズやらバジルやらの香りが漂っていた。


ハルートがバスケットを開けるとその中には紙ナプキンに一つ一つ丁寧に包まれて具材が崩れないようにされていたブルスケッタが入っていた。

チーズがたっぷり乗っているものの中には見た感じオイルやニンニクがが塗ってないものもありカナッペのようにも見えた。


「これカナッペ混じってますか?」


「よく分かりますね。料理人と仰ってましたが、本当にお料理がお好きなんですね?」


「はい。まぁ料理やるために魔法覚えたようなものなので。」


「試すようなことをしてすみません。私も料理が少しだけできるので料理の実力も見てみたくなってカナッペを混ぜてみました。」


カナッペとブルスケッタは見た目ほぼ同じものだが作り方が違う。


ブルスケッタはイタリアンなのでニンニクとオリーブオイルをたっぷり塗りたくる。

その上にチーズやらトマトやら乗せて作り上げる前菜。


カナッペはフレンチで、オイルやニンニクは塗らずにチーズや野菜を載せて楽しむ通常アペロという食前酒を楽しむための時間に付け合せ出てくることが多い料理だ。


「ハルートさん。今度一緒に同じものを作ってみませんか?味を比べてみたいです。」


「はい、それはぜひ。明日からの依頼が終わってアクアベリーに戻ってきたらやってみましょう。キッチン付きのホテルを二部屋取ればそれぞれ作れると思うんです。」


「うわ!なにそれ最高。早く作りたい。」


まずはこの世界にカナッペやブルスケッタがあったことだけでも嬉しいのに向こうの世界のフレンチのようなものに精通した友人ができたことに俺は感動した。


右手にブルスケッタを手に取り注いでもらった白ワインを左手で乾杯させ、それの香りを楽しんだあと反対の手に持っているブルスケッタを口に運ぶ。


ジュワリと染み込んだニンニクとオリーブオイルが口へ広がり上に乗っているバジル付のトマトと薄切りモッツァレラが口の中で絡み合う。

刺激的なニンニクとオリーブオイルの塩気と油分、トマトの酸味と甘み、チーズの濃厚な香り。

全てが合わさって口の中をワインを楽しむモードに変えてくれる。


白ワインはミディアムボディで程よい苦味とフルーティな香りが口の中に広がる。

酸味と甘みと苦味と渋み、調和が完璧でさっぱりとしたその味わいはブルスケッタのニンニクの香りをかき消しすぎず余韻を残しながらもっと欲しいと思わせてくる。


こんなもんを用意できるハルートって相当料理ができるな。チクショウなんてこったい転生って悪くねーじゃねーの!?


今夜ってめっちゃいい夜なんじゃね!?


ストイックさはある方だと思うが元が多分結構あほなので俺は割と本気でこの世界に絆され始めてきた。


このまま何事もなく明日も依頼をこなし金を得たら色んな場所で色んな料理を食ってみてぇなあ。


そんなことを思いながらカナッペもたのしみつつブルスケッタや白ワインをめいっぱい楽しんだ。


ハルートは食事を終えると丁寧に片付けを済ませ自分の部屋へ戻って行った。


あぁ、片付けの所作。ありゃ素人じゃないな。


あいつは無駄がなく全てに理由がある動きをしていた。

料理の片付けや準備には必ず理屈が絡んでくるのだがそういうのをちゃんと分かっているように見えた。


くぅ〜いいんじゃね!この世界!お局ババアもくそったれジジイのスーシェフ達もきったねーツラしたオーナーもクソ厳しい山崎シェフもいねぇなんてよ!

ある意味正解じゃね!?

神様!おっさんとか言ってごめーーん!

ちょーーありがとぉ!


死ぬ前にこがれていたワインを一滴たりとも残すことなく気持ちよく酔っ払った俺はベッドで伸びたり縮んだりしながらそのまま眠りに落ちていった。


〜続く〜

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