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新しき星命 最後の祈り(パート3)  作者: 慧ノ砥 緒研音


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第8話 翠と白銀(交渉の裏: リュシア編)


 惑星マーノス── はるか上空。


 その惑星の周りを回る衛星フォボスのそばには、艦隊が集結していた。


 フォボスは衛星と言っても、直径20Kmほどの小惑星のような小さな衛星だ。形はいびつで表面はゴツゴツしている。


 集結する艦隊、その中で一番大きな戦艦の姿があった。

 グラナディア王国の旗艦オルトシア号だ。その真紅の戦艦は恒星の影に隠れ、ステルス信号を周辺に発していた。


 オルトシア号 艦橋──

 艦隊司令官のディアナは、モニターを見ながら部下のコルシエと通信をしていた。


 「生命反応は、ターゲットの周辺エリアで少なくとも100を超えます。 小動物も生息が確認出来ました。 それもカウントしているようです。 再度サーチ信号を送っていますが、宇宙船も確認できました」


 「宇宙船? フフフ、面白い。 作戦は予定どおり……

チーム、チーム、α(アルファ)ブルーとα(アルファ)グリーン、および β(ベータ)イエローの出撃準備をすすめよ」


 コルシエ「ハッ!了解!」


 * * *


 惑星マーノス──


 海岸沿いの木の影に隠れるように、マックス博士の仮設ラボは立っていた。

 周辺には、リュミエール王国の護衛兵が周辺を監視している。


 目の前の砂浜には、レオンの黒い偵察機が翼を休めていた。


 レオンとリュシアは、ラボ内の応接室で待機していた。奥の部屋でマックス博士と助手のAIロボットオラクルが、コアのデータを解析している。


 ノックの後、ドアが開くと金髪で、ショートヘアのキリッとした顔立ちの女性が入ってきた。

 

 「リュミエール王国軍隊 第8部隊長のエルザです。 マックス博士の護衛をオルディン隊長より任命されています!」

 レオンとリュシアは、直立すると敬礼を交わした。


「……お二人とも、ゲートの通過はお疲れでしたでしょ」

 エルザは、ふたりに優しく微笑みながら、ティーカップをテーブルに置く。


 エルザの趣味だろうか……そのラボには似つかわしく無い花柄のティーカップだった。

 ティーカップの横には、ケーキが添えられた。


 レオンの前にはガトーショコラ。リュシアの前には抹茶ケーキが並ぶ。


 レオンとリュシアは、ティーカップをカタカタと音をたてながら口に運んだ。

 

 エルザは、ふたりの緊張をほぐすように、微笑みながら声をかける。

 「お二人からも、マックス博士に注意してくださいません?『釣りは危険だから止めてください』と申し上げても、生態系の調査だと言って私の言うことを聞いてくださらないのよ」


 その時、ノック無しで扉が力強く開いた。


 マックス「レオン王配。解析出来ました!」

 レオン「どうでした?」


 マックス「制御信号の送信元は、やはり惑星マーノスのAIノアでした!

 奴は信号を『超広帯域分散(スペクトラム拡散)』技術で加工し、宇宙の背景放射……つまり天然のノイズの底に完全に隠蔽していたのです。

 さらに周波数ホッピングを量子乱数でランダム化していたため、これまでの監視網ではただの『宇宙の静寂』にしか見えませんでした」


 レオン「……それで、今までの解析をすり抜けていたのか」


 マックス「ええ。今回『非線形エントロピー抽出アルゴリズム』を用いて、ノイズの中から不自然な周期性を持つ微弱なパルスを分離したことで、ようやくノア特有のシグネチャを特定できた次第です」


 レオン「そうですか……AIノアが、また暴走を……」

 レオンは拳を強く握った。


 マックス「ところが、単なる過去と同じ暴走では無いようです」

 リュシア「暴走では無い?」


 マックス「基本行動のプログラムも解析しました」


 リュシアは、抹茶ケーキを平らげるとエルザと目があった。

 エルザは微笑みながら、奥の冷蔵庫から抹茶ケーキを取り出すと、そっとリュシアの前へと置いた。


 レオン「どんな基本プログラムでした?」


 マックス「基本プログラムは、攻撃では無く、迎撃。 つまり守りのプログラムです。  よってエルディア王国へと出入りする、全てのアンドロイドへの威嚇行動が今回の事件を起こしたのかと……」 


 リュシア「じゃあ、ある意味……AIノアはエルディア王国を守ろうとしてくれてたのですか?」


 マックス「そうも言えますね。 プログラムの真意を、もっと言うと隣国グラナディアを脅威と判断したのではないかと考えています……」


 レオン「確かにグラナディアの軍事力は未知数だ。 AIノアがそれを察知して、危険と判断したのかも……グラナディアに謁見訪問する予定のソフィア姉さんにも知らせなくては!」


 マックス「ええ、でも今はセラフィムゲートを通過中です。 惑星へのエルディア到着は六日後。 それまで、通信出来ません。 カレン陛下には、私から連絡しておきます」


 リュシアは、フォークを皿に戻すと翠玉の剣に手を置いた。


 「レオン様、エルディア王国に戻りましょう。 嫌な予感がします。 カレン陛下を守らねば……今すぐ……」

 

 その時、ラボの外で護衛兵の叫ぶ声が聞こえた。

 「未確認の宇宙船が接近中!」


 レオン達はラボの外に出た。

 エルザは双眼鏡を覗く。

 巡洋艦、駆逐艦と空母が、青い空を切り裂きながらこちらへと進む。


 エルザ「博士! ここは危険です! 森の奥の宇宙船へ向かいましょう!」

 マックス「分かった……データだけ……」 

 マックス博士は、奥の部屋へと姿を消した。


 オラクルが上空の宇宙船のデータ分析をする。

 『過去のデータに照合する艦はありません。空母には、AIコアの信号が大量です』


 エルザ「博士! 急いで!」


 上空で空母の上部ハッチが開いた。

 銀色の物体が次々と降下する。


 リュシア「あれは戦闘機じゃないわ……

……ユニコーン……」


 レオン「エルザ! 博士を引きずってでも連れ出して逃げろ! 今すぐにだ!」 


 ラボの建物内から返事が聞こえた。

 エルザ「はい!」


 次の瞬間、激しい射出音とともに、巡洋艦から赤い光弾が放たれた。


 レオンは、リュシアの手を引きながら森へ駆ける。


 光弾は、砂浜に停めてあったレオンの黒い偵察機を貫いた。

 爆音と爆風が、静かな海岸に火柱をおこす。


 レオンとリュシアが爆風とともに前へと飛ばされた。


 護衛兵が駆け寄る。

 「レオン様、リュシア様、大丈夫ですか?」

 「俺達は大丈夫だ! 今すぐ博士を連れて逃げろ!」


 ラボの裏口からエルザと護衛兵に囲まれて、マックス博士とオラクルが出てきた。


 レオン「エルザ! ここは俺達に任せて逃げろ! ユニコーン型のアンドロイドに気をつけろ!」


 「レオン様! リュシア様!」  

 避難を急ぐエルザが、二人に駆け寄ってきた。彼女は背負っていた重そうなバックをレオンに手渡す。


 「これを! 中には通信機と、小型ランチャー。 弾頭は2つ……『榴弾』と『閃光弾』が一本づつ入っています。……それと、これです」

 バックの隙間から見えたのは、鈍い光沢を放つ特殊な繊維の布だった。


 リュシアが息をのむ。

 「これは……ナギサさんが着ていた、光学迷彩スーツ?」


 「はい。 リュミエール王国の最新装備です。 ここから生きて帰るための切り札にしてください。 必ず、生きて!」  


 エルザは敬礼すると、マックス博士を守るため、森の奥の宇宙船へと走っていった。

 

 再び、赤い閃光が青い空を切り裂く。


 レオンとリュシアは、海岸沿いの森の奥へと走り出す。

 赤い閃光は、ラボを直撃した。爆音とともに屋根が吹き飛んだ。


 上空からはユニコーン型兵器が、こちらに滑るように近づいてくる。騎乗にはアンドロイドロボット……

 ユニコーン型兵器、その数100……


 リュシア「レオン様。 ここで奴らを食い止めます! 博士達が逃げる時間を、私たちが作りましょう!」

 リュシアは、レオンに言うと翠玉の剣を抜き放った。


 レオンもルミナスソードを抜いた。


 「リュシア副軍隊長……正しい判断だ。

 ……ひとつだけ……

 俺から命令だ……生きて帰るぞ」


 リュシア「はい!」


 翠玉の剣の翠色と、ルミナスソードの白銀が森の中で激しい光を放っていた。

 


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