第6話 繁栄の神(交渉の裏 : ディアナ編)
惑星エルディア グラナディア王国──
軍隊長のディアナは、山に囲まれた平地の地下にいた。周辺の山には、監視装置や妨害電波を発信する装置が隠すように建造されている。
ディアナは、宇宙船の格納庫を視察に来ていたのだ。
地下にありながら、塔の上からはるか遠くを眺める事が出来る。
戦艦5隻 巡洋艦10隻 駆逐艦20隻 空母5隻 そして、大型輸送船が30隻。各宇宙船が見渡す先まで騒然と並んでいた。
ディアナの横には、副隊長のコルシエが並ぶ。
ディアナ「フフフ、壮観な眺めだな、コルシエ……」
コルシエは、赤髪を揺らしてディアナへと目線を移す。
「はい。 いよいよ我らの宇宙艦隊が出撃する時が近いのですね!」
いつでも出撃できるように、各作業員がディアス達の眼下で動き回る。そのスピードは目に見えない程だった。
そう、作業員は全てがアンドロイドロボット。そして、艦隊の船を動かすのもAIであった。
旗艦や輸送船など、数隻の船だけが人間が乗り込めるが、そもそも無人での戦闘、運航用に設計されていた。
今や、設計開発は全てAIにより制御され、アンドロイドが製造作業をも行う。
人間は承認するだけ。
いや、正確にはディアナが承認する。
ディアナの耳の後ろに差し込まれている装置はグラナディアの中央制御と直結しており、ディアナの思考だけがそれをコントロールする。
ミディス王も、同様のコントロールが出来るが、実質的にはディアナに全権が与えられていた。
ディアナ「ここまでの道のりは長かった……やっと国王に恩返しが出来る……ミディス国王の心を、私が満たす事が出来るのだ……」
ディアナは、ふたたび遠くを仰ぎ見た。
その時、ディアナの端末に通信が入る。
王国直轄のコントロールセンターからだ。
「ディアナ軍隊長! ご依頼いただいていた、セラフィムゲートのハッキングが成功しました。 いつでもゲート通過が可能です! あわせて通過痕跡も残せないように出来ます。
古代文明時代のままのセキュリティレベルで、思った以上に容易でした」
ディアナは、アメジストの宝石のような瞳を輝かせ、顔はその瞳の色のように紅潮した。
「コルシエ! ミディス王には私から報告しておく。 明後日の朝に惑星マーノス襲撃へ出撃とする! 総員に伝えよ!」
「はっ! ディアナ軍隊長! 了解いたしました! グラナディア繁栄の為に!」
ディアナ「グラナディア繁栄の為に!」
ふたりは、塔の上で手を高く掲げた。
* * *
ディアナは国王ミディスにマーノス襲撃準備が整い、明後日に出撃する旨を報告をした。
ミディス国王は、満足げにディアナを見やる。
「承知した! ディアナ! わが国の平和と繁栄の為に思う存分、戦ってくるがいい!……そうじゃ、わしからも其方にプレゼントがある……」
ディアナ「プレゼント……?」
「フフフ、ディアナ……来週は其方の20回目の誕生日であろう」
ディアナの眼光が僅かに和らいだ。
「ええ、国王……覚えていていただけるとは、この上ない幸せでございます」
ミディス「誕生日プレゼントは……わが国の技術を結集した最終兵器じゃ!」
ミディス国王は、端末を操作するとふたりの目の前にホログラム画像が現れた。
「ウラニュウムを応用利用した新型ミサイルじゃ」
ディアナ「あの夢のミサイルが……完成したのですね!」
ミディス「実験も兼ねて、敵国マーノスにこの新型ミサイルを撃ってくるがいい。 データ測定も忘れぬようにな。 プレゼントは、この新型ミサイルじゃ。
……我が娘のディアナよ……血はつながっておらぬが、其方は大事なわしの娘じゃ。
くれぐれも無事で帰って来い! グラナディア繁栄の為に!」
「はっ!ミディス国王! いや……お父様! ご命令どおり必ず無事に帰って参ります! グラナディア繁栄の為に!」
* * *
ディアナは、旗艦オルトシア号の作戦ルームに座っていた。
副隊長のコルシエと、軍の主要メンバーと各チーム兵長がテーブルを囲む。
コルシエがホログラムのスイッチを入れた。
光の点で描かれた、惑星マーノスがテーブルの上に映り、ある陸地が3Dマップに拡大される。
「今回の目的は、マーノスの殲滅だ!
ただ未知の敵が故に、敵の全容を解明するミッションもある。
そこを叩いても、そこが本丸とは限らぬからだ! よって、第一作戦は陸上から攻め入る」
コルシエがホログラムマップを指揮棒で指しながら説明を続ける。
「チーム、α(アルファ)ブルーとα(アルファ)グリーンの2部隊がアンドロイド兵とともに、それぞれ山と海上に降下。
そこより、資源調査と敵の調査を並行する。
β(ベータ)イエローは、上空より資源調査と敵の調査を実施。
データ測定と分析が完了したら、γ(ガンマ)レッドのチームは、私コルシエ。
γ(ガンマ)バイオレットのチームは軍隊長ディアナの指揮にて、
今回の兵器コントロール信号を発信している地点を目指し殲滅します。……質問は?」
まだ年齢が若そうな兵士が手をあげた。
「敵はアンドロイド兵器との事ですが、もちろん生命体もいるのですよね?」
ディアナが口を開いた。
「アンドロイドは殺しても、人間は殺したく無いように聞こえるな……」
「いえ、そういう訳ではありません!」
ディアナ「フフフ、いいだろう。 生命反応は、惑星のそばまで行かないと検出できない。
しかし、必ずどこかに、その兵器を操っている人間が潜んでいる。
見つけたら捕虜にするのがふさわしいが、危険と判断するならば躊躇なく撃て。
撃たなければ殺されるぞ……
いずれにせよ、特出すべき資源が発見されなければ、植民地にする必要も無い!
惑星マーノスを徹底的叩く!
グラナディアは襲撃を受けているのだ。 これは戦争だ!」
若い兵士は直立して手を掲げた。
「了解いたしました! グラナディア繁栄の為に!」
ディアナ軍隊長はゆっくり手を掲げた。
そこに居合わせた兵士は全員が直立して手を掲げた。
「グラナディア繁栄の為に!」




