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新しき星命 最後の祈り(パート3)  作者: 慧ノ砥 緒研音


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第4話 二つの核(調査の道 : ディアナ編)


 エルディア城内──


 夜明けとともに、リュシアは自分の部屋から抜け出ると、誰にも会わぬように東の塔へと向かった。


 カレンとレオンに報告の為、待ち合わせの約束をしていたのだ。

 女王陛下の極秘指令の為、カレン、レオンとリュシアだけの報告会となった。


 東の塔の書庫。

 朝の日差しが窓から差し込み、古い紙の臭いがリュシアの緊張した心を落ち着かせた。

 

 彼女は事前に教えて貰った、本を見つけると、その背表紙を押した。

 大きな本棚がスライドして空間が表れる。


 そこは大きな広間で、壁にはブラスター銃やグレネードなどが整然と並べて保管してあった。


 「隠し部屋か……でも、カレン陛下……本棚の裏が隠し部屋ってベタすぎだと思います…… しかも武器庫なのね……この武器の几帳面な置き方は、レオン様ね……」


 リュシアの推測どおり、その武器はレオンが独りで住んで居た頃、山小屋に隠してあった物だった。


 古びたテーブルの椅子に腰掛けると、リュシアは昨夜、回収したコアをテーブルの上に置いた。


 カプセルの鉱石が細い窓から差し込む日差しを反射する。


 その時、本棚がゆっくりと開いた。

 カレン「リュシア、無事だった!?」


 レオン「何事もなかった? ……訳では無いようだね」

 テーブルの二つのコアを見つめながら、レオンはリュシアの顔に視線を移す。

 「怪我はなかったのか?」


 「ええ、大丈夫です。 レオン様の指示で、馬型で行かせていただいた事は正解でした。  馬型で行ってなければ危なかったかも……」


 カレンとレオンは、昨夜遭遇した蠍型の襲撃と、砂漠に埋もれた狼型の報告を聞いた。


 カレン「まずは、『野犬を威嚇する為にブラスターを撃った』というディアナの話は嘘だった訳ね」


 リュシア「そうです。 狼型のアンドロイドが五十体ほど破壊されていました。 しかも、普通のブラスターではありません。 機関銃か……相当な光弾が撃ち込まれていましたから……」


 レオン「なぜ、野犬だなんて嘘を……」


 リュシア「たぶん、エルディアの襲撃だと思ったからか……紫芋女の性格からして、強気に『あんな襲撃、なんともなかったわ』って言いたかったのかなっと……」


 カレン「そうね……それとも、何かを察して、それを調べる為に私達には教えたくなかったか……」

 レオン「狼型はグラナディアを襲い、次はリュシアに蠍型……」


 カレン「蠍型……エルディアでは、この部屋の3人しか古代兵器は動かせない筈よ……」


 リュシア「そうなんです。 でも、あれは、エルディアの古代兵器の蠍型ではありません」


 カレン「え? どういう事?」


 リュシアは、目を閉じて思いだすように話した。

 「エルディアの蠍型、高出力レーザーは赤い閃光でした。 

 でも、森にいた蠍型は、オレンジ色の閃光でした。 

 装甲も微妙に色が違うなって思ってたんです。 

 戦闘中で、しかも月明かりの中だったから色が違って見えたのかな?とも思ったんですが……」


 リュシアはターコイズブルーの目を開くと、コアを手にとりながら続けた。


 「夜中に馬型を教会地下の倉庫に返した時に確信しました。 

 なぜなら蠍型の数は減っていませんでしたから……装甲の色もやっぱり違う。

 形も微妙に違っていました……だから、あれはエルディアの蠍型兵器ではありません」


 レオン「では、エルディアでは無く、他の文明……」

 カレン「狼型は、惑星マーノスでの戦闘時にソフィアお姉様達の報告時に聞いたわね」


 レオン「まさか……AIノアか…… そうだとしたら最悪だ…… 少なくともエルディアやグラナディアでは無い。 AIノアと違うとしても大問題だが……」


 AIノアという言葉に何かを思い出したのか、リュシアは無意識に、こめかみに手を当て顔をこわばらせた。


 カレン「どちらにしても、リュシアが命懸けで回収してくれた、この二つのコアが答えを出してくれるわね。 残念ながら、今のエルディアの技術では解析出来ないから、リュミエール王国に頼るしかないわ」


 レオン「リュシア、極秘任務の遂行ありがとう」

 カレンも頷きながら微笑み、リュシアの手に自分の手を重ねた。

 「リュシア、何よりも無事に帰って来てくれてよかったわ。 ありがとう」


 リュシアは二人の顔を見て、やっと緊張から解放されたように、少女のような笑顔ではにかんだ。


 * * *


 グラナディア王国。

 グラナディア城、謁見の間──


 濃紺の壁には、深緑色の草木の装飾が壁を這い、バイオレットとレッドの花の装飾が天井を埋め尽くすように描かれていた。

 

 静まり返った広い部屋の中央のテーブルで、国王ミディスはディアナの報告に耳をかたむけていた。

 

 話しを初めてすぐ……

 ミディスは手元のモニターを見ながらミディス国王に目配せした。


 そして、急に振り返るとブラスターを背後に撃ち放った。


 くうで、火花が弾けた。


 ミディス「ど、どうしたディアナ?」


 ディアナは椅子を立ち上がると、モニターを見ながら、後ろに歩きだした。何かを確認すると、こちらを振り返る。


 「失礼しました国王。 小さなネズミが居たようです……」

 「ネズミ?」


 「ええ、小型ドローンです。 画像と音声信号を発信していました。 ご安心下さい。もう破壊しましたので」


 「どこのスパイ兵器だ?」


 「恐らく……それは、後ほどご説明します」


 「ふむ、では本題にはいろう……エルディアはどうだったのじゃ」


 ディアナ「はい。 まず、国王がお気にされていたエルディアの軍事力。

 これについては、我々の予想をはるかに下回る状況でした。

 我が軍の騎兵隊を見ただけで、副軍隊長の小娘は、ピーマン色の髪の頭を震わせて、泣き出しそうでした」


 ミディス「ハッハッハッ そうか、古代兵器も宝の持ち腐れ、恐れて使えないという訳じゃな!」


 ディアナ「DNA認証のシステムは解析出来ているものの、まだ実用化は出来ていないようです。

 持参した端末で、こっそりとサーチ信号を仕掛けましたが、謁見した人物の中で古代文明人のDNAを持っている……古代兵器を稼働できる人物は3名だけのようです」


 ミディス「やはりそうか! 流れ者の偽女王の魔女と、親殺しの王配、そしてピーマン頭の小娘だけしか古代兵器は稼働出来ぬ。という訳じゃな! それはお粗末な国じゃ!」


 ディアナ「あと、注意すべきは恐らく……エルディアの魔女の姉、リュミエール王国の女王が油断ならぬ……と思います。

 数年前、この惑星へ黒仮面の襲撃がありました。 それを抑え込んだ事や、今回のセラフィムゲートを発見したのも、姉のソフィアなる魔女が大きく関わっているようです」


 ミディス「ゲートの事もあるが故、そのうち会う事となろう。 楽しみじゃな」


 ディアナ「ミディス国王。 あと、最後にもう一点。 今回の交渉とは別案件ですが、面白いものを手にいれました」 


 ディアナは、机の上に狼型アンドロイド兵器のコアを置いた。


 音をたてて机の上に置かれた楕円形のカプセルは、鼓動繰り返すように、光をゆっくりと瞬かせていた。


 ミディス「な、なんじゃ……これは?」


 ディアナ「道中で狼型アンドロイドの襲撃に遭いました。 全滅させましたが、気になったのでコアを抜き取り、分析したのです」 


 ミディス国王は、身を乗り出した。

 「それで、その狼型兵器は、どこの国の物じゃった!?」

 

 「コントロール信号の発信源は、なんと空に伸びていきました」


 「ほほー!面白い! 発信源はどこじゃ?エルディアでは無いと言う事じゃな!?」


 「ええ、国王。 面白い結果でした。 発信源は……惑星マーノスからでした」


 「な、なんと! 惑星マーノスに古代文明を扱う者がいるという事……しかも、我が軍を危険に落としいれた……これは宣戦布告の奇襲攻撃ではないか!」


 「はい。 恐れるべきはエルディアでもリュミエールでもありません。

 惑星マーノスが、我が国の脅威になるかと……調べたところセラフィムゲートがマーノスにも通じています。

 そこから兵器を送り込んでいるかと……そして、先ほどのスパイ兵器のドローンも恐らくマーノスからかと……」


 ミディス「よくやった! ディアナ! やられたら、やり返す。 宣戦布告を受けたからには反撃じゃ! 惑星マーノスを殲滅せよ!」


 ふたりは直立すると右手を掲げた。

 ディアナ「はっ!承知しました!グラナディアの繁栄の為に!

 ミディス「グラナディアの繁栄の為に!」


 ディアナは、国王に一礼すると、扉の方へと歩みだした。


 途中、小型ドローンの残骸を踏みにじると、ひとり微笑む。


 ディアナは、パープルのブーツで床に甲高い足音を立てながら謁見の間を後にした。


                              

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