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新しき星命 最後の祈り(パート3)  作者: 慧ノ砥 緒研音


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第36話 星々の鍵(新たな繁栄 : レオン編)


 惑星エルディア、王立研究所──


 張り詰めた空気の中、部屋の中央に立つ赤色のロボット――オラクルが、円筒形のボディを回転させながら、頭部のインジケーターを激しく明滅させていた。


 かつてミレイが「お父様は惑星イ○カンダルに行こうとしていたのかしら」と冗談を言ったその愛嬌ある姿からは、想像できないほどの速度で、複雑な古代文字と幾何学模様をホログラムとして空中に描き出していく。


 『解析、完了しました。……データの照合に成功しました』


 オラクルの少し甲高い、機械音声が響くと同時に、ホログラムがひとつの結論を映し出した。

 それを見たマックス博士は、額に滲んだ脂汗を拭うのも忘れ、呆然と呟いた。


 「……信じられん。これはただのキーじゃない。銀河そのものを動かす入力装置コンソールだ……」


 その背後で、腕を組んで画面を見つめていたレオン王配が、眉をひそめて問いかける。

 「どういうことですか? マックス博士。

あのペンダントが、それほど危険なものだと言うのですか?」


 マックス博士は、空中の画像を操作した。

 ソフィアの持つ太陽のペンダントと、カレンの持つ三日月のペンダント。その二つのデータが重なり合い、楕円形のひとつの物体へと変化するシミュレーションが表示される。


 「レオン様、ご覧ください。二つのペンダントは、物理的に結合することで回路が接続され、本来の機能を発揮する『認証デバイス』となります。

 しかし、それだけでは起動しません。このデバイスが要求しているのは、高レベルのセキュリティ……すなわち『王家の生体認証バイオメトリクス』です」


 「生体認証……?」


 「はい。具体的に例えると、リュミエール王家の『太陽の遺伝子』と、エルディア王家の『月の遺伝子』。……つまり、ソフィア陛下とカレン陛下の『DNA』が揃わなければ、この鍵は回らない仕組みなのです」


 マックス博士は、深刻な表情で付け加えた。


 「お二人とも、その身に流れる血の源流は同じですが……システムは厳密に『二つの個体』の同時接続を求めているようです。 王家の方、お二人が揃わなければ、鍵は決して開かない」


 レオンは息を呑んだ。

 ミディスのこれまでの不可解な行動が、一本の線で繋がったからだ。


 カレンから、未知の『何か』を抽出し、さらにオーロラを誘拐した。

 そして今、執拗にソフィアを呼び出し、その身柄を求めていること。


 「奴は……初めからこれを狙っていたのか。ソフィアとカレン、二人のDNA信号とペンダントが揃った時、一体何が起きるんだ?」


 レオンの問いに、オラクルがくるりと頭部を回して答えた。

 その目は、警告色である赤へと変わっていた。


 『認証が完了すると、その近くにあるゲートは『管理者モード』に移行します。

 それは、銀河に点在する全ての古代ゲートを強制開放オープンし、座標を自在に書き換える権限です』


 「座標を……書き換える?」


 「つまり、こういうことです」

 マックス博士が深刻な面持ちで補足する。

 「このゲートを使えば、一瞬にして銀河の果てへ軍隊を送り込むことも……逆に、敵の惑星の直上にブラックホールの出口を開くことも可能になる。

 距離や時間の概念を無視して、あらゆる場所を攻撃し、支配できる……まさに『神の力』です」


 「馬鹿な……そんなことが……」

 レオンは拳を握りしめ、机を叩いた。

 「ソフィアは、そんなものを起動させるために呼び出されたというのか! ミディスの狙いは、この銀河すべてを自分の庭にすることか……!」


 沈黙が研究所を支配する。

 だが、マックス博士は諦めてはいなかった。モニターの隅に表示された、小さな「解析不能領域エラーコード」を食い入るように見つめていた。


 「……だが、レオン様。一つだけ気になるデータがあります」


 「気になるデータ?」


 「この認証システムには、物理的なDNA以外に、もう一つ……『精神波形』のような不確定なパラメータが組み込まれているようです」


 マックス博士は、ノイズのように揺らぐ波形を指差した。


 「数値化できない、極めて抽象的な信号……古代人や私達が『祈り』と呼んでいるものかもしれません。

 システムは、鍵を回す者の『心』をスキャンしている可能性があります。もし、邪悪な意思を持った者が、無理やりこじ開けようとすれば……」


 オラクルがガガガ、と電子音を立てて身震いのような動作をした。

 『予測不能。システムの暴走、あるいは自己崩壊の危険あり』


 「……そこに、唯一の勝機があるかもしれません」


 レオンは、モニターに映るセラフィムゲートの輝きを見つめた。

 その光の向こうにいる、愛する妻と、囚われた娘のことを想う……


 「ソフィア……カレン……。 二人の『祈り』だけが、最後の頼みの綱なのか……」


 * * *


 その頃、セラフィムゲート内、光の束の中を駆ける白銀の大型戦艦、セラフィム号艦橋──


 制御AIであるファランが、歪んだ空間の中で声をあげた。


 『報告します! オルトシア号と思われる艦影を確認! ……追跡します』


 司令席に座るソフィアは、鋭い眼光で前方を見据えた。


 「惑星リュミエールには近づけさせない! オーロラの命を守る為に、この亜空間での闘いに……私は命を賭ける!」


 白銀の船体が、大きく翼を広げた──



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