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新しき星命 最後の祈り(パート3)  作者: 慧ノ砥 緒研音


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第34話 光の憧憬(新たな繁栄 : ディアナ編)


 漆黒の空間に、白銀の巨体が恒星の光を受けて輝いた。

 惑星エルディアの遥か上空。大気圏を離脱した白銀の戦艦、セラフィム号──

 その白銀の翼は、オーロラを救出する為、ミディスとの最終決戦に向けて惑星リュミエールへ舵を取っていた。

 

 リュミエール王国のソフィア女王は、セラフィム号の艦橋で、エルディア王国のカレン女王の手を握っていた。

 「カレン……オーロラを必ず取り戻すわ……」


 カレンは、姉でもあるソフィア女王の手を強く握り返した。

 「私は、オーロラを取り返すまで、絶対に泣かないわ……ソフィア……」


 ふたりは誓うように、強く抱擁した。

 

 ふたりの瞳に悲しみは無かった。

 自分たちの運命を受け入れる……

 しかし、それは自分の力で切り開けるもの。 それは願いや祈りに守られるもの。そう信じた強い意志が瞳に宿っていた。


 その傍らで、リュシアがふたりに膝まずいて報告する。

 「ソフィア陛下、カレン陛下……セラフィムゲートに入ります」


 リュシアも、その表情には少女の面影はなく、瞳には覚悟を決めた戦士の光を宿していた。


 * * *


 マックス博士とオラクル、そしてレオン王配は、エルディア王国の研究所にて、星祝のペンダントから測定したデータを解析していた。


 レオン王配は、オーロラを取り戻す為に惑星リュミエールへと向かったカレン達を見送ると、マックス博士の報告を聞いていた。

 

 「ソフィア陛下の太陽をかたどったペンダントとカレン陛下の三日月型のペンダント……。 それはリュミエール王国に古くから伝わる星祝のペンダントと呼ばれるものとの事でした。 おふたりが幼少期にお母様より譲り受けた、形見のような物だそうです。

ふたつのペンダントは、ひとつに合わせると楕円形のひとつのペンダントになります。

そうする事により、何か、微弱ながら特殊な信号を発信するようです……」


 レオン「特殊な信号? ミディスは、それを欲しがっているのだろうか……」


 マックス「ふたつのペンダントが何かのキーになっているのかと思われます……さらに何かをペンダントに加える事によって、発信する信号は増強されるのでは?と考えています。 現物はおふたりがお持ちですが、コピーしたデータで、更に解析をします」


 レオン「分かり次第、ソフィア陛下達に報告しましょう。ソフィア陛下の血と星祝のペンダントを持って来いだなんて……ミディスの最終目的は何なのか……奴に勝てる、ヒントになるかもしれない……」


 衛星エレーネの通信設備を使って、ゲート航行中の船とも交信が出来る事が発見されていた。

 オラクルは、オレンジ色の光りを瞬かせて、セラフィムゲート内のファランと通信チェックを重ねていた──


 * * *


 まばゆい光の中を真紅の戦艦が走り抜ける。

 セラフィムゲート内、ミディスの乗るオルトシア号。倉庫の奥、隔離された部屋──

  

 小型カプセルの中では、エルディア王国の王女オーロラがすやすやと寝息を立てていた。

 その傍らで、王女を見守るように見つめるディアナの姿があった。

 ディアナは、オーロラの髪の毛に触れるように、カプセルのガラスを優しく撫でる。


 その瞳は、憂いと慈愛に満ちていた。

 「オーロラ……あなたは幸せ?」

 オーロラが答える事はなく、天使のような微笑みをみせながら眠りについていた。


 オーロラは、ふと目を開けるとむっくりと体を起こし、周囲を見渡して表情をこわばらせた。

 「……まぁー、まぁー……」

 母親を探すように泣き声をあげた。


 「あぁ……どうすればいいの?」

 ディアナは困惑し、震える手でカプセルのハッチを開いた。

 泣きじゃくるオーロラを、壊れ物を扱うように、おそるおそる抱き上げる。


 「……あたたかい……」


 その瞬間、ディアナの胸を貫いたのは、かつてエルディア城の揺りかごの前で感じた、あの激しい「揺らぎ」だった。

 自分の腕の中に、確かな鼓動がある。ずしりとした命の重み。

 ミディスの冷たい鋼鉄の世界には存在しない、燃えるような生命の熱。

 オーロラは、ディアナの胸に顔をうずめ、小さな手で彼女の硬い戦闘服をぎゅっと掴んだ。


 ディアナには、この子に与えられる乳も、母としての名前も無い。

 だが、彼女は壁のコンソールを操作し、備え付けの滅菌パックから人肌に温まった栄養剤を取り出した。


「お腹が、空いたのね……」


 ディアナは、ぎこちない手つきで授乳のように栄養剤を与え始めた。

 オーロラは、小さな両手をディアナの手に重ね、懸命に吸い口に食らいつく。

 栄養剤を飲むオーロラの喉が鳴るたびに、ディアナの凍てついた心が少しずつ溶けていくような感覚に陥る。

 もし、自分がミディスの手先としてではなく、一人の女としてこの子に出会えていたなら。

 『この清らかな命を、あの方の暗い欲望のために差し出す事はないのだろう』


 慈愛と、それ以上に深い罪悪感が、彼女の瞳を濡らした。

 それは「母性」という言葉よりも、もっと根源的な――失われた光への「憧憬しょうけい」だった。



 その時、部屋のドアが乱暴に開いた。


 ディアナは咄嗟にオーロラをかばう様にドアに背を向けた。

 ドアには、ミディスが立っていた。


 「ディアナ! このゲート航行中に、わしは覚醒する事にした。 ゲートの中ならば誰にも邪魔されん! ソフィアの血は後で融合させる。 その赤子を連れて、医務室に来い! 」


 ドアが閉まると、ディアナはオーロラを再び抱きしめた。

 

 宇宙船の窓の外は、光の束が様々な色で輝きを変え、虹の中を走っているようだった——



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