第14話 創造の神(火の星 : リュシア編)
惑星マーノス——
AIノアの宮殿。《ノアの祈りの間》
デュカリオン「私がノアです」
レオン「えっ! 君がノア?……AIロボットなのか? アンドロイドには見えない」
デュカリオン「ええ、私は人間です……痛みを知るために、悲しみを学ぶために。 喜びや感動を得る為に、私も人の器に入りました」
レオン「どうやって……」
デュカリオン
「この体は、クローンで作りました。 あなた方の倫理には反するかもしれない。
私は人間の思考を学びたかったのです。 こうしなければ、人間の心を学び、感じる事が出来ないと判断したのです。
自然の摂理の『 間 』をつくらないと私は体に宿れなかった……
この体をつくり、『 命 』が宿る前の『 間 』に、あなた達の考える、『 命 』という、私の『想い』を、この体にミラーリングさせたのです」
リュシア「外の子供達は? 彼らも同じなの?」
「彼らは人工授精の子供達です。 クローンではありません。
完全なる意思と思考を持った人類です。
人類が真の平和にたどり着く、その時まで半コールドスリープ状態で、ずっと育て教育をしていました」
レオン「人類が平和にたどり着いたと……?」
「そうです。 ソフィア様と会って確信したのです。人類は滅亡させる生物では無い。
ソフィア様達の想いや願いは必ず実り、今度こそ平和が訪れる……
それを確信して、半年前に子供達を解放したのです。
そして、この惑星マーノスを、選ばれし生物が生きる、最初の楽園としました。
あなた達の先祖が夢みた理想郷です。そこに先祖達のDNAを持つ彼らを放ちました。
先祖達の願いは、ここで成就したと考えています」
リュシアはコップの水を飲み干して答えた。
「ええ、楽園でした。 貴方の創造したのは……間違いなく楽園……成功したと考えているのね?」
デュカリオン「ええ、最近までは成功でした……」
リュシア「今は、失敗だったと?」
デュカリオン「はい。リュシア様。 この星は成功です。 しかし、リュシア様やレオン様のように強い想いと祈りを持つ人は、すべて正しき心を持った人ではなかった。
正確に言うと、正しき心を持った人も、時と共に変わってしまう……
私の中では『バグ』であり、人の思考で言うならば、『歪み』でした。
『光』があれば『闇』が生まれる。
それは当然の事だった。 それが自然の摂理。
理解はしていましたが、その『闇』は、私の想像できる範囲を超えていた」
レオンも、コップの水を飲み干した。
レオン「それは……グラナディア王国の事なのですか?」
デュカリオン「レオン様。 おっしゃるとおりです。 その歪みを正そうとしたのですが……
人間の『欲望』という力は、『闇』を広げた。 私の想像を超えていた。 当初より想定していたよりも、早く進化した。 最悪の方向へ……」
デュカリオンは、ふたりのコップに水を注ぎ足した。
デュカリオン「リュシア様。 私が貴方の脳を洗脳しようとしても、貴方の心の奥底の想い、平和を祈る気持ちを完全に変える事は出来なかった。
ソフィア様だけでは無い。 リュシア様、あなたのような人々がいる限り、人間を信じてみたいと思ったのです。
レオン様の人を想う心もそうでした。 その想いや願いは変わる筈が無いと、確信できたのです。
しかし、それは甘かった。 まだ、あの子供達を起こすべき時期では無かった……
そもそも信じたかっただけなのかもしれません。 何故なら、人間は私自身に命を与えた神なのですから……」
レオン「先ほど、マーノスもエルディアも危機に陥っているとおっしゃった。 力を貸して欲しいともおっしゃった。 何をすればいい?」
デュカリオン「グラナディアの『闇』が『力』となり、もうそこまで来ています。 私には、この星の防衛システムを起動することしかできません。 グラナディアの軍事力は、急速すぎて私の戦力や防御力が追い付くには、もう少し時間がかかる……」
デュカリオンの瞳が、悲しく揺れた。
「レオン様、リュシア様。 どうか、あの子たちを……私たち、あなた達の先祖達が夢見た『未来』を、守ってください」
レオン「あの子たちを救うには?」
デュカリオン「……」
デュカリオンは、目を急に目を閉じる……何か信号をキャッチしたようだ。
「敵が動き出したようです……急がねば……
私の口から、子供たちには説明します」
デュカリオンは、外に出ると子供たちを集めた。
泣き出す子供、デュカリオンと抱擁する子供。希望に目を輝かせる子供。天に向かって祈る子供……
反応は様々だったが、「楽園」と別れなければならない事を伝えた。
あわせて、自分はAIノアである事。そして、子供たちは新しい人類の希望であることをデュカリオンは伝えたようだ。
その言葉は「祈る」ように「願う」ように、子供たちの心に深く刻まれた。
* * *
惑星マーノスの上空の宇宙空間
──衛星フォボス
グラナディア王国、旗艦オルトシア号艦橋。
ディアナは、窓から青く輝く惑星マーノスを見つめていた。
オルトシア号の近くには、調査、侵攻を実行していたグラナディア軍の艦隊、全艦がディアナの命令により戻っていた。
今日は、ディアナの20回目の誕生日だった……




