第13話 白の少年(火の星 : レオリュシ編)
惑星マーノス──
グラナディアからの襲撃から逃げた、森の中。
レオンとリュシアは、さらに森の奥へと進んでいた。
「ソフィア姉さん達の話では、おそらくこちらの方角にAIノアの神殿があったと思うが……」
レオンとリュシアは、AIノアと謁見し、今回の顛末に至る経緯をノアに確認する事。
あわせてグラナディア軍から逃れる術が無いか問う為に、宮殿を探していた。
ノアは、もう居ないかもしれない。しかし、そこへ行ってみるしか策を思いつかなかった。
レオン「森が開けてきた……この先に砂漠がある筈だ! その先の丘に碧い門が……」
レオンとリュシアはユニコーンのスピードをあげる。
しかし、森を抜けたその先には、砂漠ではなく美しい草原が広がり、牛や山羊達が草を食べていた。
「……ここは?」
それは、かつてカレンとレオンが出会った頃の自然に恵まれた、エルディア村の光景のようだった。
丘の方には、塔が二つそびえ立っていた。
ふたりは、ゆっくりと草原の中へとユニコーン型を進める。
不思議なことに、ここには大蛇も狼も蜂も、襲撃には来ない。アンドロイドの姿は見えなかった。
静寂の中に、風の音だけが響いている。
ふたつの塔の間には、鮮やかなコバルトブルーの巨大な門が立っていた。門の高さと幅は大きく、左右対称の重厚な壁が奥へと続く。
塔のドアが開いた──
レオンは、咄嗟にルミナスソードに手をかけた。
中から子供達が顔をだす。
10歳ぐらいの少年が歩み出た。こちらに向かって手を振る。
「レオン様! リュシア様! こちらです!」
その笑顔に、リュシアも表情が緩んだ。
レオン「油断するな。 リュシア……罠かもしれない……」
その少年の後ろから、子供達が沢山出てきた。5歳から12歳ぐらいまでだろうか……
肌や髪の毛の色も様々だった。
レオンとリュシアを見ると子供達が駆け寄って来た。
「レオン様! リュシア様!」
レオンは、ルミナスソードに手をかけたままだった。
「なぜ、名前を知ってる!?」
「お二人は、私達の希望であり神のような存在です。 お名前は、ノアから教えてもらいました」
子供達に囲まれる。
皆はレオンとリュシア、アンドロイドの馬が珍しいのか、おそるおそる触れたりしていた。
「ノアから到着を聞いていました。 レオン様、リュシア様。 こちらへどうぞ。 ノアがお待ちです」
ひとりの少年が歩み出た。髪の毛は白く、その白と同じ肌の色をしていた。光を反射して髪の毛は虹色に輝く。瞳の色だけが黒かった。
白い少年の、その無垢な笑顔に、レオンはルミナスソードから手を離した。
レオンとリュシアは、馬型から降りると少年の後をついていく。後ろからは子供達がキャッキャッと騒ぎながらついてきた。
隣にいた金髪の少年が、リュシアの指を甘えるように触る。年齢が一番幼いようだ。リュシアは手を繋いで歩く。
リュシア「大人は居ないの?」
少年は手を繋いでもらったのが、嬉しいのか飛び跳ねながら答えた。
「ええ、人間は私達だけです。 大人の人と初めてお話ししました」
幼いのに、しっかりとした口調で話す。
リュシア「お父様やお母様は……?」
金髪の少年は瞳を落としながら呟いた。
「ノアの守る地下のカプセルに眠っています。 そこに並んでいる、カプセルの中の人たちが、僕たちのご先祖様であり、お父様お母様なんです。 ……皆、永遠の夢を見ています」
リュシア「そう……それは寂しいわね」
「いいえ、寂しくはありません。 皆が家族なので……」
レオン「言葉は? どうやって覚えたの?」
隣を歩く、そばかすの少女がレオンの袖を掴みながら答えた。
「寝ている間にノアが教えてくれました」
レオンは、そばかすの少女の手を握って歩く。
レオン「食事は?」
そばかすの少女「皆で作っています。」
「食材は?」
後ろの少し背の高い少女が答えた。
「自給自足です」
レオン「狩りもするの?」
「はい。 皆で弓の練習をしたり、勉強をしたり……自然界から恵みで食事を摂取しています」
レオン「勉強の先生は誰なの?」
「新たな事柄は、自分達で本を読んで学び、それを担当の子が皆に教えてくれたりします。 本はノアが書いてくれたり、古文書を訳したり……狩りの実践は、主に一番年上のデュカリオンが教えてくれます」
レオン「デュカリオンは? どこ?」
「彼よ。 私達のリーダーなの」
少女は先頭を歩く白い髪の少年を指さした。
デュカリオンは、振り返ると無垢な笑顔で微笑む。
コバルトブルーの門に到着した。
デュカリオン「ノアの部屋に入ります。 ここから先は、私とレオン様、リュシア様だけで……」
子供達は、その事を理解しているように門の手前で立ち止まり、レオンとリュシアに手を振った。
デュカリオンは地下の階段を進む。しばらく歩くと扉が表れた。
デュカリオンは壁の岩に手を触れる。その岩が発光すると扉が開いた。
奥は石を切り出して積みあげたような通路が続く。もう一つの扉の前で、彼は胸の前で指を組んだ。
扉の奥から光があらわれる。その光は風となり、少年の髪がなびいた。その風は、レオンとリュシアの髪もゆるやかになびかせて消えた。
ドアが音もなく開く。
そこは、大きな広間になっていた。
中央には丸い舞台のような、円形でかたどられた場所がある。目線の高さに鉱石がゆっくりとその円を守るように、宙に浮いて回転をしていた。そこだけ、頭上は吹き抜けのようになっている。
デュカリオンは、端の椅子に座るようにふたりを導く。
デュカリオン「ここは誰にも邪魔されません。 ノアの《祈りの部屋》です」
レオン「……ノアはどこ?」
デュカリオンは微笑む。
「レオン様、そんなに焦らずに……」
デュカリオンは、木を削ったコップに水を汲むと、ふたりの前に静かに置いた。
「いただきます」
喉が渇いていたリュシアは、コップを手に取ると口に運んだ。
「おいしっ──!」
デュカリオンは、リュシアのコップに水を注ぎ足した。
「今、この惑星マーノスもエルディア王国も危機に陥っています。 あなた方の力を借りたい。 もう、私ひとりでは阻止する事が出来なくなってしまいました」
リュシア「私ひとりって? 阻止って……ノアはどこなの?」
白い髪の毛が虹色に輝いた──
デュカリオン「私がノアです」




