第11話 金属の卵(エルデ防衛 : カレン編)
惑星エルディア エルディア城──
カレン女王は、『女王の間』で不安な時を過ごしていた。
窓の外の空は夕日に染まり始めているが、レオンからは『無事にマーノスに着いた』という通信が最後。
その後はエルザからの救援信号がリュミエールとエルディアに放たれた。それが最後だった。
「レオン……リュシア……どうか無事に……」
胸騒ぎを抑えるように、カレンは胸の『星祝のペンダント』を握りしめる。
ベッドには、すやすやと娘のオーロラが眠る……
カレンが、その天使のような寝顔を見つめると、急にオーロラが泣き出した。
手の中で『星祝のペンダント』が、激しく振動する。
その時、王国の城の上空に轟音が響く。
煙の尾を引きながら、宇宙船が夕焼けの空を切り裂きながら滑空してきた。
カレンは、部屋のドアを開けると階段を駆け降りた。
「何事ですか!?」
サディス軍隊長も玉座の間に駆け込んで来たところだった。
「陛下! リュミエール王国の識別信号です!……リュミエールの宇宙船です!……」
城の中庭に、ボロボロになった中型宇宙船が緊急着陸した。船体は焦げ、所々から煙を上げている。
カレンとサディスが駆け寄ると、ハッチが開く。
マックス博士とオラクル、そして護衛兵長のエルザたちが転がり出てきた。
王国の軍隊も駆け寄ると、消火作業をはじめる。
カレン「マックス博士! 大丈夫ですか……!」
エルザが崩れるように膝をつく。
「カレン陛下……申し訳ない!……私達は逃げるのが精一杯だった……」
マックス博士は咳き込みながら、絶望的な事実を告げた。
「グラナディアだ。 奴らがマーノスに攻め込んできた。 レオン殿とリュシア殿は……我々を逃がすために、たった二人で敵の大軍の中に残った……」
「なんですって……!」
カレンの顔から血の気が引く。
オラクル『セラフィムゲートを抜けたところでも待ち伏せされました。 光学迷彩で突破しようとしましたが、ゲートの信号で、出てくるタイミングを察知され、ミサイルを乱撃されました……』
その時、城内の警報が鳴り響いた。
『敵襲! 敵襲! 上空に多数の艦影! 未確認の艦隊です!』
サディスの額を汗が伝う。「グラナディア……」
見上げれば、夕焼けの空を覆い尽くすように、コルシエ率いる戦艦エウノミアとグラナディア艦隊が降下を開始していた。
夕日の空の中、紫色の艦隊が空を染める。
上空の輸送船のハッチが開くと、無数の降下ポッドが、雨のように城下町へ降り注ぐ。
ヒュルルルル……
風切り音の後、ズドン!!という重い地響きが城下町のあちこちで鳴り響く。
空から降ってきたポッドは、轟音と共に石畳を砕き、あるものは民家の屋根を無慈悲に突き破った。
カレン「グラナディアが……そんな……和平交渉はどうなったの……」
マックス「騙されたのです! 奴らの狙いは最初から侵略だった!」
サディスが剣を抜き、叫ぶ。
「総員、防衛戦用意! ガルス中隊長! 第1部隊を率いて陛下をお守りしろ!」
サディスの部下ガルスと、その部隊がカレンの周りに盾を掲げる。
「陛下、城の地下へ……」
「待って! 教会へ……私は教会へ行きます! あそこには、『星の聖杯』があります! この国の守護神を呼び起こします!」
サディス「……陛下、承知しました。 ガルスは、オーロラ姫とバロック様、エレーナ様達を城から教会へ護衛! 城の皆を教会まで誘導せよ!」
カレン「あともう一つ、ガルス中隊長! 東の塔の書庫に武器が隠してあるわ。 バロックお父様が場所を知ってるから、それを使って!」
ガルス「陛下!了解しました!」
ガルスは、カレンとサディスに敬礼すると部隊を率いて城へと駆け込んでいった。
カレンの凛とした声に、サディスは息を呑んだ。かつて「魔女」と呼んで恐れた少女は、今、国を守るためにその力を使う真の女王としてそこに立っていた。
黒く焦げた金属の塊は、着陸の熱か、蒸気を上げている。
プシューッという音と共にハッチが弾け飛び、中から無機質な光を宿したアンドロイド兵が無言で立ち上がった。
アンドロイドの腕には、ブラスターの機関銃。甲高い関節の駆動音と共に、辺り構わずブラスターを撃ちはじめた。
エルザは、マックス博士を部下の2名に任せる。
「マックス博士、カレン陛下と一緒に教会の地下へ向かって下さい! オラクルも、マックス博士とカレン陛下を守って!」
オラクル『私の戦闘力は低いですが、防御シールドの展開なら可能です』
エルザは、振り返りながらオラクルに親指を立てて微笑む。
エルザは、バックの中のランチャーを背負うと、残りの2名の部下と共に、城の外縁の門へと駆けだした。
サディスはじめ、エルディア王国軍隊も外縁の門へと集結する。
石畳を割りながら、アンドロイド兵は隊をなしてまっすぐ城へと向かって行進する。
乱射するブラスターの機関銃が街並みの木々や家の壁を破壊する。
エルザはランチャーのスコープを覗き込みながら呟く。
「もっと狙って撃って来い! それじゃ、頭空っぽなの丸分かりだぞ! この屑鉄野郎!」
エルザの左右で、ライフルを構える部下のバルドとマグナスは、大きな体を揺らしながら笑いを堪えていた。
エルザはランチャーの引き金を引く。
銀色の弾頭は青白い尾を引き、アンドロイドの群れの中央へ吸い込まれた。
刹那、クラスター弾が炸裂した。
爆風と共にアンドロイド兵が吹き飛ぶ。
サディス軍も応戦するが、旧式のライフルはアンドロイド兵の装甲に弾かれるばかりだ。
「装甲が硬い……これでは歯が立たん」
バルドとマグナスは、アサルトライフル型のブラスター弾を撃ちこんだ。
アンドロイド兵の足が一瞬とまる。
バルドが叫ぶ。
「サディス軍隊長! 目だ! 赤いセンサーを狙え!」
サディス軍隊は、旧式ライフルで赤いセンサーを狙う。
夕日が沈み薄暗くなってきた中。ふたつの赤いセンサーは狙いを定めやすかった。
赤いセンサーから火花が散らすと、アンドロイド兵は、右へ左へと向きを変えながらお互いのブラスターで倒れていく。
サディスの部下ガルスが、大きなバックをもってサディスの横に滑り込んで来た。
「軍隊長! これを使って下さいとの事です」
バックからブラスターやグレネード取り出すと、サディスや隊員へと渡す。
サディス「これは、心強い!」
エルディア軍とリュミエール軍、エルザ護衛隊の火力はアンドロイド兵の歩みを鈍らせた。
しかし、上空を巨大な影が覆った。
巡洋艦、駆逐艦が10隻──
大気を震わせる重低音と共に、サディス達の方へと急降下をはじめたのだった。




