表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新しき星命 最後の祈り(パート3)  作者: 慧ノ砥 緒研音


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/43

第10話 楽園の実(火の星 : リュシア編)


 惑星マーノス──漆黒の夜の森。


 グラナディア軍の襲撃から逃れた、レオンとリュシアは森の中をひたすら走っていた。

 自動操縦に切り替えた、2騎の馬型兵器《Unicorn-287》が並走して走る。

 紫色の重力波が草木を揺らしていた。


 やがて、夜は明け始め、霧がやわらかな光を返していた。


 レオンは腕に装着している小型モニターを操作した。

 「この辺りは、電波も通信も何も届かない……かなり奥地へ来たようだ……」


 リュシア「レオン様……なんか、この辺りは空気が違う気がします……シールドか何かに囲まれているような……」


 自動操縦の騎上で、少し眠ってしまっていたリュシアは、目をこすりながら空を見上げる。

 明るくなりだした空は、虹色の波紋がところどころに広がっている。


 リュシアは次の瞬間、制するように手をあげる。

 レオンにサインを送るとユニコーンのスロットを緩めた。


 「前方、11時……何かいます……」


 2騎のユニコーンは、静かに地面へと足を降ろした。

 レオンがルミナスソードに手をかけて、前方の木々を見渡す。


 ……木の影から、薄茶色に白い斑点が姿をだした。


 レオン「鹿だ……」


 その鹿は、こちらに気付き、レオンと目を合わせると、何も無かったように草木を食べ出した。

 レオン「アンドロイドでは無いようだ……」


 ユニコーン型をゆっくりとすすめる。

 その鹿の背後には、子供の鹿が数匹……同じように木の実を食べていた。


 リュシア「鹿さん……逃げないの?」

 リュシアもゆっくりとユニコーンをすすめる。


 「待って、リュシア……」

 レオンは、周りを見渡しながらユニコーンから降りると、近くの木に手を伸ばした。


 「実がなっている……」


 それは、赤く大きな実だった。

 レオンは実をかじると、もう一つ木の実を採って、リュシアに優しく投げた。


 リュシアは落としそうになりながらも、両手で木の実をつかんだ。

 レオン「食べれるよ……水分を補給しておこう」


 朝日が昇りだして明るくなる森の中。

 あらためて周りを見渡すと、実を沢山貯えた木々が並び、小動物達が朝の食事を探しに出掛けるように、せわしく木の上をかけていた。


 ソフィア達から聞いていた、アンドロイドの襲撃にあった惑星マーノスの姿とは違う、楽園のような、その光景に二人は目を見張った。


 レオン「これは、もしかしてAIノアが進化させた生態系……」


 リュシアもユニコーンから降りる。


 目を閉じると、背伸びをしながら朝の日差しの光を大きく吸って、赤い実をかじった。

 

 ひとときの戦闘の疲れを癒すように、その光はリュシアの翡翠色の髪の毛を朝霧の中で輝かせていた。


 * * *

 

 惑星マーノス 衛星軌道上──

 グラナディア旗艦 オルトシア号


 艦橋のモニターには、森から逃げ出した2機のユニコーンの姿が映し出されていた。

 その騎乗には、背景が滲むように揺れるが誰も乗っていないように見える。


 「ユニコーンの制御を奪い、我が軍の包囲を突破するとは……」

 ディアナは、アメジストの瞳を細めてその映像を睨みつける。

 

 「隠れ家を破壊した時の画像を出せ!」

 ディアナは画像解析班に命じる。

 モニターには、建物から出てきた数名の人影が映る。


 「拡大せよ!」

 背の高い男と、翡翠色の髪が僅かに見えた。


 ディアナは、画面を食い入るように睨む。


 「隊長、あの動き……データ照合しました。 エルディア王国のレオン・エルナート、およびリュシア副隊長と断定します」


 側近の報告に、ディアナは冷ややかな笑みを浮かべると、堪え切れずに声を出して笑いだした。


 「ハハハッ! やはりな。 マーノスからの攻撃信号……それは、エルディアがこの星を拠点とし、我々を陥れるための罠だったというわけだ!」


 ディアナの中で、推測は確信へと変わる。

 「奴らは、ここで我々の足止めをするつもりだ。 ……だが、甘い」


 ディアナは通信スイッチを入れると、副隊長コルシエに命じた。

 「コルシエ! 貴様は直ちに艦隊の半数を率いて惑星エルディアへ戻れ!」


 「えっ? しかし、マーノスの制圧は……」


 「ここのネズミ狩りは私がやる。 貴様の任務は『本丸』だ!」 


 ディアナは、モニターに映る、煙をあげる黒い機体を指さした。

 「エルディア王国の『戦力の要』は、今マーノスの森で逃げ回っている。 つまり、今のエルディア城は抜け殻も同然!」


 「和平交渉など破棄だ! 奇襲をかけろ。 王城を制圧し、魔女カレンを捕らえよ! 抵抗するなら……全て焼き払ってしまえ!」

 「ハッ! 了解いたしました!」


 コルシエは艦長席を立ち上がり、艦内へ指令をとばした。


 「二番艦エウノミア号、抜錨せよ! 旗艦オルトシア艦隊より離脱、回頭せよ!」

 

 オルトシア号の横に並んでいた巨大な戦艦──姉妹艦エウノミア号が、重低音と共に回頭を始める。

 それに従い、多数の艦が隊列を組んでセラフィムゲートへと向かった。


 ディアナは再びモニターに向き直った。

 「さあ、レオン・エルナート。 貴様がここで足掻いている間に、魔女の国がどうなるか……楽しみだな」

 

 アメジストの宝石のように、その瞳は妖しく輝いていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ